問いしるべ
問いから始める物理 熱力学の法則

熱力学の法則

第16章の章末問題

著者:柚木芹香

系の境界と熱・仕事の符号を確かめ,装置の条件から状態変化を決めてください.エントロピーは,実際の熱と可逆な計算用の経路を区別して求めましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

固定容器の気体を羽根でかき混ぜ,仕事 240J を与えると,熱 90J が逃げました.定積熱容量は 15JK−1 で一定です.Q,W,ΔU,温度上昇を求め,定積なら仕事0といえるか説明してください.

固定容器内の気体を羽根でかき混ぜる.外から240 Jの仕事が入り,同時に90 Jの熱が外へ逃げる.容器の体積は一定である. 固定容器内の気体を羽根でかき混ぜる.外から240 Jの仕事が入り,同時に90 Jの熱が外へ逃げる.容器の体積は一定である.
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考え方 入る仕事は負に数える.

Q=−90,W=−240,ΔU=Q−W=150(単位 J),ΔT=ΔU/C=10K.体積仕事は0でも羽根から仕事が入る.定積なら仕事0といえるのは,体積仕事だけの場合である.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

CV=2R が一定の理想気体 ν mol が,初め (p0,V0,T0) にあります.体積仕事だけを行う3経路で,各終状態の温度,仕事,熱を求めてください.Iは定積,IIは準静的な定圧で,ともに熱 6νRT0 を与えます.IIIは別の単原子理想気体を同じ初状態から pV2=p0V02 を保って準静的に 2V0 まで膨張します.IIIは断熱ですか.

温度T₀,物質量n mol,モル定積熱容量C_V=2Rの気体を2つ用意する.左は固定容器で定積加熱,右は動くピストンで準静的な定圧加熱を行い,どちらにも同じ熱6nRT₀を与える.破線は右のピストンの初めの位置である. 温度T₀,物質量n mol,モル定積熱容量C_V=2Rの気体を2つ用意する.左は固定容器で定積加熱,右は動くピストンで準静的な定圧加熱を行い,どちらにも同じ熱6nRT₀を与える.破線は右のピストンの初めの位置である.
単原子分子の理想気体がA(p₀,V₀)からB(p₀/4,2V₀)まで,青いpV²=p₀V₀²の経路で準静的に膨張する.経路の下の塗った面積が仕事Wである.同じ始点からの比較用の断熱線はγ=5/3の橙の破線で,指定の経路より上を通る. 単原子分子の理想気体がA(p₀,V₀)からB(p₀/4,2V₀)まで,青いpV²=p₀V₀²の経路で準静的に膨張する.経路の下の塗った面積が仕事Wである.同じ始点からの比較用の断熱線はγ=5/3の橙の破線で,指定の経路より上を通る.
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考え方 比熱と経路から仕事を出し,第一法則で熱を照合する.

Iでは ΔT=3T0 だから Tf=4T0,W=0.IIでは理想気体のマイヤーの関係より Cp=3R,ΔT=2T0 だから Tf=3T0,W=2νRT0.両者の Q は 6νRT0.IIIでは T/T0=V0/V より Tf=T0/2.W=∫V02V0p0V02V−2dV=p0V0/2,ΔU=−3p0V0/4 より Q=−p0V0/4.仕事と放熱の両方で冷えるので,断熱ではない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

液体と蒸気が共存できる温度 T0,体積 V0 の飽和水蒸気(初め液体なし)を,可逆に等温圧縮して V0/3 にします.飽和圧を ps,モル質量を M,蒸発熱を Lv として,凝縮質量,Q,ΔS,ΔF を求めてください.蒸気は理想気体,液体の体積は無視します.

熱源 T₀ に接した飽和水蒸気を,可逆に体積 V₀ から V₀/3 へ圧縮する前後の断面.圧力 p_s と温度 T₀ を保ちながら液体 m が現れ,熱 Q は熱源へ出る.液体の薄い帯は相の出現を示し,その体積は無視する. 熱源 T₀ に接した飽和水蒸気を,可逆に体積 V₀ から V₀/3 へ圧縮する前後の断面.圧力 p_s と温度 T₀ を保ちながら液体 m が現れ,熱 Q は熱源へ出る.液体の薄い帯は相の出現を示し,その体積は無視する.
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考え方 相共存中は飽和圧一定である.

蒸気の物質量 psV/(RT0) は初めの1/3になる.凝縮質量は m=2psV0M/(3RT0).水全体を系とすると Q=−mLv,ΔS=Q/T0=−mLv/T0.W=ps(V0/3−V0)=−2psV0/3 より ΔF=(Q−W)−T0ΔS=2psV0/3.凝縮するため,等温でも水全体の ΔU は0ではない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

熱源 T0 に接した理想気体 ν mol が (p0,V0) にあります.外圧を突然 2p0 にして平衡まで圧縮し,突然 p0 に戻して平衡まで膨張させます.各初終温度は T0 です.各 W,Q と一往復の気体・熱源の ΔS を求めてください.ピストンの熱容量と初終の運動エネルギーを無視し,散逸は気体内だけとします.

温度T₀の熱源に接したシリンダー内の理想気体について,平衡状態のピストン配置を3つ並べる.初めの外圧p₀,体積V₀から,外圧を突然2p₀にして体積V₀/2まで圧縮する.次に外圧を突然p₀へ戻して体積V₀まで膨張させる.赤い下向きの矢印は外圧による作用を示し,各段階の初めと終わりの気体温度はT₀である. 温度T₀の熱源に接したシリンダー内の理想気体について,平衡状態のピストン配置を3つ並べる.初めの外圧p₀,体積V₀から,外圧を突然2p₀にして体積V₀/2まで圧縮する.次に外圧を突然p₀へ戻して体積V₀まで膨張させる.赤い下向きの矢印は外圧による作用を示し,各段階の初めと終わりの気体温度はT₀である.
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考え方 仕事は外圧と体積変化の積で数える.

p0V0=νRT0,体積は V0→V0/2→V0.圧縮の W=−νRT0,膨張の W=νRT0/2.各 ΔU=0 より Q=W.気体は元に戻るので ΔS=0.熱源は正味 νRT0/2 を受け取り,ΔS源=νR/2.投入仕事が熱として残り,全体でエントロピーを生成する.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

断熱した固定容器の2室に,異なる理想気体Aを ν mol,Bを 2ν mol 入れます.両方の初温・初圧は T0,p0,体積は V0,2V0,CV=3R/2 です.混合後も各成分は理想気体に従います.

断熱した固定容器を体積V₀と2V₀の2室に分け,左に気体Aをn mol,右に気体Bを2n mol入れる.両気体の初期温度はT₀,圧力はp₀である.仕切りを取り除くと,青い丸のAと橙の四角のBが混ざり,どちらの気体も全体積3V₀を占める. 断熱した固定容器を体積V₀と2V₀の2室に分け,左に気体Aをn mol,右に気体Bを2n mol入れる.両気体の初期温度はT₀,圧力はp₀である.仕切りを取り除くと,青い丸のAと橙の四角のBが混ざり,どちらの気体も全体積3V₀を占める.
  1. 仕切りを抜いた後の温度,全圧,エントロピー変化を求めてください.計算には成分を選別する半透膜を使う可逆等温膨張を考えられます.

  2. 同じ初温・初圧の同種気体だった場合はどうなりますか.分子に番号を付けて左右をA,Bと名付ければ,(1) と同じ混合エントロピーを作れますか.

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考え方 収支と,成分を物理的に区別できるかを分けて考える.

  1. Q=W=0,U=9νRT/2 が保存されるので Tf=T0.全圧は 3νRT0/(3V0)=p0.各成分の可逆膨張比は3と 3/2 なので ΔS=νRln⁡3+2νRln⁡(3/2)>0.実際の吸熱0を温度で割っても求められない.

  2. 温度と圧力は変わらず,ΔS=0.同種気体は初めから同じ密度・温度で,エントロピーの示量性から2室の和は終状態の値に等しい.番号による架空の識別から混合エントロピーを作ってはいけない.異種気体は半透膜で選び分けられる物理的な成分であり,名前だけの区別とは異なる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

比熱一定の理想気体で,A→Bは準静的断熱圧縮,B→Cは定積加熱,C→Dは準静的断熱膨張,D→Aは定積冷却とします.VA=VD,VB=VC,r=VA/VB>1 です.効率を r,γ で表し,r=4,γ=7/5 の値を求めてください.後者は回転が有効で振動が凍結した温度域の値を,一定と近似します.

p-V図でAからBへ準静的な断熱圧縮,BからCへ定積加熱,CからDへ準静的な断熱膨張,DからAへ定積冷却を行う.左右の鉛直線の体積はそれぞれV_B=V_CとV_A=V_Dである.2本の断熱線と2本の鉛直線で閉じた経路を,時計回りの矢印で示す. p-V図でAからBへ準静的な断熱圧縮,BからCへ定積加熱,CからDへ準静的な断熱膨張,DからAへ定積冷却を行う.左右の鉛直線の体積はそれぞれV_B=V_CとV_A=V_Dである.2本の断熱線と2本の鉛直線で閉じた経路を,時計回りの矢印で示す.
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考え方 断熱の温度比を使う.

x=rγ−1 とすると TB=xTA,TC=xTD.吸熱は QH=νCV(TC−TB),放熱の大きさは QL=νCV(TD−TA)=QH/x.よって η=1−r1−γ=1−4−2/5≈0.426,約43 %である.

演習 7

東京大 2004 前期(改題) ★★★☆☆

加熱部以外を断熱した2室を,左右の面積 A,3A の一体の水平ピストンで連結します.右室には面積 2A,質量 M の鉛直ピストンもあります.外は真空,摩擦はなく,両気体は単原子理想気体です.左だけをゆっくり加熱し,水平ピストンを右へ x,鉛直ピストンを上へ h 動かします.両圧力,右の温度・体積が一定の理由,x,Q を求めてください.

外が真空の2室を,左面 A と右面 3A の一体の水平ピストンでつなぐ.右室の上には面積 2A,質量 M の鉛直ピストンがある.左室だけへの熱 Q によって水平ピストンが右へ x,上のピストンが上へ h 動く.破線は動く前の位置で,赤い矢印は両気体の圧力による力の向きを示す. 外が真空の2室を,左面 A と右面 3A の一体の水平ピストンでつなぐ.右室の上には面積 2A,質量 M の鉛直ピストンがある.左室だけへの熱 Q によって水平ピストンが右へ x,上のピストンが上へ h 動く.破線は動く前の位置で,赤い矢印は両気体の圧力による力の向きを示す.
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考え方 つり合いと右の断熱条件を連立する.

p2=Mg/(2A),p1=3p2 で一定.右の物質量を ν2 とすると,準静的断熱・定圧だから ν2CpdT2=0,温度・体積は一定.−3Ax+2Ah=0 より x=2h/3.左の仕事は W=p1Ax=Mgh,ΔU=3W/2,Q=5Mgh/2.右の正味の仕事は0で,受けた仕事が鉛直ピストンへ渡る.熱は左の ΔU と Mgh に分かれる.

演習 8

東京大 2011 前期(改題) ★★★☆☆

鉛直な筒の下部は面積 A,高さ 2ℓ,上部は面積 3A です.初め底から高さ ℓ まで単原子理想気体があり,質量0のピストンの上に密度 ρ,高さ ℓ の非圧縮液体があります.表面より上は真空です.液体と気体の熱交換,摩擦,蒸発を無視し,ゆっくり加熱してピストンを ℓ/2 上げます.p0=ρgℓ,V0=Aℓ,初温 T0 として,上昇 x に対する p,T,最高温度,W,Q を求めてください.

下部の断面積 A,高さ 2ℓ の筒が,上部で断面積 3A に広がる.初めの質量0のピストンは底から ℓ,密度 ρ の液柱の表面は底から 2ℓ にあり,破線で示す.加熱後のピストンの上昇 x に対し,液体の体積保存により表面は x/3 上昇する.実線と薄い青の領域は上昇後の位置と液体である. 下部の断面積 A,高さ 2ℓ の筒が,上部で断面積 3A に広がる.初めの質量0のピストンは底から ℓ,密度 ρ の液柱の表面は底から 2ℓ にあり,破線で示す.加熱後のピストンの上昇 x に対し,液体の体積保存により表面は x/3 上昇する.実線と薄い青の領域は上昇後の位置と液体である.
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考え方 液体の体積保存を使う.

表面は x/3 上がり,液柱は ℓ−2x/3.y=x/ℓ として p=p0(1−2y/3),V=V0(1+y),T/T0=1+y/3−2y2/3.微分より y=1/4 で最高温度 25T0/24.終点では T=T0,ΔU=0.

W=p0V0∫01/2(1−2y/3)dy=512p0V0,Q=W.

δQ=p0V0(3/2−8y/3)dy>0 なので,温度が下がり始めても吸熱は続く.