問いしるべ
問いから始める物理 熱力学の法則

熱力学の法則

自由エネルギーの演習

著者:柚木芹香

外部条件を確かめ,自由エネルギーの変化と全体のエントロピーを結びつけてみましょう.

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

温度 T=300K の熱源に接した理想気体 ν=0.40mol を,外から押して体積が半分になるまで等温で圧縮します.両端は平衡状態です.R=8.3Jmol−1K−1,ln⁡2=0.69 とします.

温度T = 300 Kの熱源に接した理想気体を外から押して圧縮する.同じ断面積のシリンダーで気体の長さが半分になり,V₂ = V₁/2,p₂ = 2p₁となる. 温度T = 300 Kの熱源に接した理想気体を外から押して圧縮する.同じ断面積のシリンダーで気体の長さが半分になり,V₂ = V₁/2,p₂ = 2p₁となる.
  1. ΔU,ΔS,ΔF,ΔG を求めてください.

  2. 初圧を p1,終圧を p2 として ΔG=νRTln⁡(p2/p1) を示し,今回の増加が最小原理に反するか説明してください.

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考え方

等温での状態量の差を計算し,自由エネルギーの最小原理が使える外部条件を確かめる.

  1. 理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まり,ΔU=0.V2/V1=1/2 より

ΔS=−νRln⁡2=−2.3JK−1,ΔF=−TΔS=6.9×102J.

両端で pV=νRT が等しく,ΔG=ΔF である.

  1. ΔF=−νRTln⁡(V2/V1) に状態方程式の V2/V1=p1/p2 を代入すればよい.エントロピーの減少により −TΔS>0 となる.今回は外から仕事を入れて体積を変え,両端の圧力も違う.仕事の授受がない定積での F 最小,等温・等圧の平衡状態を比べる G 最小の条件には当てはまらない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

一定圧力で,ある物質1 mol の融解について ΔH=6.0×103J,ΔS=22JK−1 とします.融点付近では両者を一定と近似します.

一定圧力でのΔG = G液体 − G固体は,ΔH − TΔSに従って右下がりになる.260 KではΔG = 280 Jで固体が安定,285 KではΔG = −270 Jで液体が安定である.ΔG = 0となる融点Tₘ ≃ 273 Kでは両相が共存できる. 一定圧力でのΔG = G液体 − G固体は,ΔH − TΔSに従って右下がりになる.260 KではΔG = 280 Jで固体が安定,285 KではΔG = −270 Jで液体が安定である.ΔG = 0となる融点Tₘ ≃ 273 Kでは両相が共存できる.
  1. 融点を推定してください.

  2. 260K と 285K での ΔG を求め,安定な相を答えてください.融点で両相が共存できる理由も説明してください.

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考え方

液体と固体の自由エネルギーの差を温度の関数とし,その符号から安定な相を判定する.

  1. 共存には,等温・等圧で両相の G が等しい必要がある.ΔG=ΔH−TΔS=0 より

Tm=ΔHΔS≃273K.

水の融点に近い温度という推定である.

  1. 代入すると,260K では ΔG=2.8×102J>0 で固体が安定,285K では ΔG=−2.7×102J<0 で液体が安定である.界面効果を無視すれば,融点では相の割合を変えても G が変わらず,共存できる.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

一定外圧 p0 のもとで,部屋と同温の過冷却水 m=1.0kg が凍り,同温の氷になります.部屋は −10∘C,すなわち T0=263.15K の理想熱源です.体積仕事だけがあり,融点 Tm=273.15K,融解熱 L=3.3×105Jkg−1 とします.定圧比熱は水 cw=4.2×103,氷 ci=2.1×103(単位は Jkg−1K−1)で,一定とします.

水T₀から水Tₘへ昇温し,Tₘで凝固して氷となり,氷T₀へ冷却する仮想の可逆経路を破線で示す.T₀ = 263.15 K,Tₘ = 273.15 Kである.実際には同温の水から氷へ変わり,部屋へ−Qを放熱する.Q = ΔH < 0で,部屋のエントロピーは−Q/T₀だけ増える. 水T₀から水Tₘへ昇温し,Tₘで凝固して氷となり,氷T₀へ冷却する仮想の可逆経路を破線で示す.T₀ = 263.15 K,Tₘ = 273.15 Kである.実際には同温の水から氷へ変わり,部屋へ−Qを放熱する.Q = ΔH < 0で,部屋のエントロピーは−Q/T₀だけ増える.
  1. 図の可逆な経路で ΔH と ΔS を求めてください.

  2. 部屋のエントロピー変化と全体の生成量 Sgen を求め,Δ(F+p0V)<0 を確かめてください.

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考え方

昇温,凝固,冷却の可逆な経路で状態量の差を求め,実際の放熱による部屋の変化と合わせる.

  1. 定圧比熱より

ΔH=m(cw−ci)(Tm−T0)−mL=−3.09×105J.

各段階の可逆な熱をその温度で割って積分すると

ΔS=mcwln⁡TmT0−mLTm+mciln⁡T0Tm=m(cw−ci)ln⁡TmT0−mLTm≃−1.13×103JK−1.

状態量の差なので実際の経路によらない.

  1. W=p0ΔV と第一法則より,実際の熱は Q=ΔU+p0ΔV=ΔH.部屋の変化は

ΔS源=−QT0≃1.17×103JK−1,Sgen=ΔS+ΔS源≃44JK−1>0.

差は丸める前の値で計算する.水の減少より部屋の増加が大きい.両端で T=T0 より

Δ(F+p0V)=ΔH−T0ΔS=−T0Sgen≃−1.2×104J<0.

体積仕事を含めて減少する.水の ΔS を実際の Q/T0 としてはいけない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

全体積 V が一定の容器を,物質を通さず摩擦なく動く仕切りで2室に分けます.各室の理想気体の物質量は ν1>0,ν2>0,体積は V1,V−V1 です.両室は温度 T0 の熱源に接しています.

全体積Vが一定の容器の2室は温度T₀の熱源に接し,物質を通さず摩擦なく動く仕切りで分かれている.各室の物質量はν₁,ν₂,体積はV₁,V − V₁である.F(V₁)は下に凸で,V₁ = ν₁V/(ν₁ + ν₂)に唯一の最小をもち,そこでp₁ = p₂となる. 全体積Vが一定の容器の2室は温度T₀の熱源に接し,物質を通さず摩擦なく動く仕切りで分かれている.各室の物質量はν₁,ν₂,体積はV₁,V − V₁である.F(V₁)は下に凸で,V₁ = ν₁V/(ν₁ + ν₂)に唯一の最小をもち,そこでp₁ = p₂となる.
  1. F0 を定数として,全体の自由エネルギー F(V1)=F0−RT0[ν1ln⁡(V1/V)+ν2ln⁡(1−V1/V)] の最小から,平衡体積と圧力を求めてください.

  2. 2階微分で安定性を示し,仕切りの復元力と結びつけてください.

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考え方

全体は定積で仕事の授受がないので F を最小にする.停留条件と2階微分を,圧力と復元力に結びつける.

  1. 微分すると

dFdV1=RT0(−ν1V1+ν2V−V1)=p2−p1.

停留条件は p1=p2 であり,これを解くと V1=ν1ν1+ν2V,V2=ν2ν1+ν2V,共通圧力は p=(ν1+ν2)RT0V となる.

  1. 0<V1<V では

d2FdV12=RT0(ν1V12+ν2(V−V1)2)>0.

下に凸なので,停留点は唯一の安定な最小である.第1室を広げると p1 が下がり p2 が上がり,元へ戻す力が働く.圧力一致と F 最小は同じ平衡を表す.

ポイント 教える人へ

一定にした量と仕事の有無を確認させてください.過冷却水では ΔS の仮想経路と実際の Q を区別し,仕切りでは2階微分と復元力を対応させます.