問いしるべ
問いから始める物理 電荷と電場

電荷と電場

クーロン力と電場の例題

著者:柚木芹香

点電荷の問題は,どの電荷が「受ける側」かを決め,ほかの電荷が作る電場をベクトルとして足すのが基本です.向きは図に矢印で描き,大きさは k|q|/r2 で計算してから成分に分けると,符号の間違いが減ります.ここでは,つり合い,対称性を使った重ね合わせ,力学と組み合わせた測定の3つを練習します.

ポイント 点電荷の問題の手順

  1. 力を受ける電荷を1つ決め,それ以外の電荷を電場の源とする.

  2. 各電荷が作る電場の大きさ k|qi|/ri2 と向き(正電荷から遠ざかる向き,負電荷へ近づく向き)を図に描く.

  3. 対称性で打ち消し合う成分を先に消し,残りを成分ごとに足す.

  4. 受ける力は F=qE.負電荷では電場と逆向きになる.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

x 軸上の原点に電荷 Q(Q>0),x=d に電荷 4Q がある.ここに3つ目の点電荷 q を x 軸上に置き,3つの電荷がどれも力のつり合いの状態になるようにしたい.重力は無視する.

  1. 3つ目の電荷を置く位置と,q の値を求めよ.

  2. 電荷 Q と 4Q を固定し,3つ目の電荷だけを x 軸に沿って少しずらしたとき,つり合いの位置に戻るか.

原点に Q,x = d に 4Q,その間の未定の位置 x に電荷 q を置く.距離 x と d − x を示し,q の符号やつり合いの位置は示さない. 原点に Q,x = d に 4Q,その間の未定の位置 x に電荷 q を置く.距離 x と d − x を示し,q の符号やつり合いの位置は示さない.
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考え方 まず3つ目の電荷が受ける力のつり合いから位置を決める.Q と 4Q は同符号なので,間に置かないと2つの力が同じ向きになる.次に Q が受ける力のつり合いから q を決め,最後に 4Q のつり合いを確かめる.

  1. 3つ目の電荷を 0<x<d に置く.q の符号によらず,2つの電荷から受ける力が逆向きで大きさが等しければよいので

kQ|q|x2=k⋅4Q|q|(d−x)2

より (d−x)2=4x2,d−x=2x(0<x<d なので正の側),x=d/3 である.

次に原点の Q を考える.4Q からの斥力は −x 向きで大きさ 4kQ2/d2.これを打ち消すには,q から +x 向きの引力が要るので q<0 で

kQ|q|(d/3)2=4kQ2d2,|q|=49Q

よって q=−49Q を x=d3 に置く.

確かめに 4Q を考える.Q からの斥力は +x 向きに 4kQ2/d2,q からの引力は −x 向きに

k⋅4Q⋅49Q(2d/3)2=4kQ2d2

で,確かにつり合う.3つの電荷に働く力の和はいつも0(作用反作用)なので,2つがつり合えば残りもつり合う.

  1. Q と 4Q が作る電場の x 成分は,0<x<d で

Ex(x)=kQx2−4kQ(d−x)2

であり,x=d/3 で0になる.微分すると

dExdx=−2kQx3−8kQ(d−x)3<0

なので,x=d/3 から +x 向きに δ ずらすと Ex≈dEx/dx⋅δ<0 となる.q<0 なので力 qEx は正,つまりずらした向きに働く.つり合いの位置からさらに離れていくので,戻らない(不安定).

確かめ:負電荷 q は近いほうの正電荷に強く引かれるので,少しでも近づいたほうへ引き寄せられる,という直観に合う.x 軸に垂直にずらした場合は2つの引力の和が軸へ戻す向きになるが,どの向きにも安定な点電荷のつり合いは作れないことを,次の次の題材で確かめる.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

1辺 a の正三角形 ABC の頂点に点電荷を置く.正三角形の重心を G とする.

  1. 3つの頂点に同じ電荷 q(q>0)を置いたとき,G の電場を求めよ.

  2. A,B に q,C に −q を置いたとき,G の電場の大きさと向きを求めよ.

    1. の G に電荷 −q を置いたとき,それが受ける力の大きさと向きを求めよ.

1辺 a の正三角形 ABC の A と B に +q,C に −q を置き,重心 G を示す.G における電場の向きや解答で求める距離は示さない. 1辺 a の正三角形 ABC の A と B に +q,C に −q を置き,重心 G を示す.G における電場の向きや解答で求める距離は示さない.
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考え方 G から各頂点までの距離は等しい.(1) は対称性で打ち消し合う.(2) は (1) の配置に「C に −2q を足したもの」と見ると,重ね合わせで1つの電荷の電場を求めるだけになる.

  1. 重心から頂点までの距離は,中線の長さ 32a の 23 で a3 である.3つの電場は大きさが等しく,互いに 120∘ ずつ違う向きを向く.3つのベクトルを足すと,正三角形を描いて元に戻るので,和は0である.よって G の電場は0.

  2. C の −q は,C の +q に −2q を重ねたものと見られる.(1) から3つの +q の電場の和は0なので,G の電場は C に置いた −2q の電場だけになる.大きさは

E=k⋅2q(a/3)2=6kqa2

で,負電荷へ近づく向き,つまり G から C へ向かう向きである.

  1. F=(−q)E なので,大きさ 6kq2a2,向きは G から C と反対向き(辺 AB の中点へ向かう向き)である.

確かめ:成分で直接足してもよい.G から C への向きを正にとると,C の −q の電場は正の向きに 3kq/a2.A,B の +q の電場は,それぞれ A,B から遠ざかる向きで,G から C への向きと 60∘ をなすので,成分は2つ合わせて 2×3kqa2cos⁡60∘=3kqa2,横の成分は打ち消し合う.和は 6kq/a2 で一致する.G の −q は C の −q に押され,A,B の +q に引かれ,どれも AB の側へ向かう.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

質量 m の小さな2つの球に同じ電荷 q(q>0)を与え,同じ点から長さ L の軽い絶縁体の糸で吊るしたところ,2つの球は距離 r だけ離れて静止した.球の大きさは r より十分小さく,点電荷とみなせるものとする.重力加速度の大きさを g,k=1/(4πε0) とする.

  1. 糸が鉛直となす角を θ として,つり合いの式を書け.

  2. r が L よりずっと小さいとして q を m,g,L,r,k で表し,m=1.0×10−3kg,L=0.50m,r=5.0×10−2m,g=9.8ms−2,k=8.99×109Nm2C−2 のときの値を求めよ.

  3. 一方の球の電荷だけを 2q にした.2つの糸の角は等しいままか.r は何倍になるか.

質量 m,電荷 q の2つの小球を長さ L の糸で同じ点から吊るす.糸と鉛直の角 θ と球の間隔 r を示し,解答で導入する力の矢印は描かない. 質量 m,電荷 q の2つの小球を長さ L の糸で同じ点から吊るす.糸と鉛直の角 θ と球の間隔 r を示し,解答で導入する力の矢印は描かない.
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考え方 1つの球に働く力は重力,張力,もう一方の球からの斥力の3つ.斥力は水平なので,水平と鉛直に分けてつり合いを書く.

  1. 張力を T,斥力の大きさを F=kq2/r2 とすると

Tsin⁡θ=kq2r2,Tcos⁡θ=mg

よって tan⁡θ=kq2mgr2.幾何から r=2Lsin⁡θ である.

  1. r が L よりずっと小さいと θ も小さく,tan⁡θ≈sin⁡θ=r2L である.(1) に入れて

r2L=kq2mgr2,q=mgr32kL

数値を入れると

q=1.0×10−3×9.8×(5.0×10−2)32×8.99×109×0.50=1.36×10−16≈1.2×10−8C

である.

  1. 2つの球が受ける斥力は作用反作用で大きさが等しく,質量も等しいので,2つの糸の角は等しいままである.斥力は k⋅q⋅2q/r2 になるので,(2) と同じ近似で r2L=2kq2mgr2,r3 が2倍になる.よって r は 21/3≈1.26 倍になる.

確かめ:(2) で θ≈r/(2L)=0.05 で,tan⁡θ と sin⁡θ の差は θ2/2 の割合,およそ 0.1 % なので近似は十分よい.q は電子 7×1010 個ぶんで,ふつうの摩擦帯電で得られる量である.(3) で角が等しいのは電荷の大小によらないが,質量が違えば m1tan⁡θ1=m2tan⁡θ2 となって角は違う.小球の半径が r よりずっと小さいことが,点電荷とみなす条件である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 点電荷の電場は,大きさ k|q|/r2 と向きを図に描いてから,成分に分けて足す.

  • 3つの電荷のつり合いでは,1つの電荷の位置を決め,残りの電荷のつり合いで電荷の値を決める.力の和はいつも0なので,最後の1つは確かめになる.

  • 静電気力だけによるつり合いは,どこかの向きに不安定になる.

  • 対称な配置の電場は0になる.配置の一部を変えたときは,「対称な配置+差の電荷」と見ると重ね合わせが簡単になる.

  • 糸で吊るした帯電球では,作用反作用から2つの角は電荷の大小によらず等しい.小角の近似で電荷を測れる.