問いしるべ
問いから始める物理 運動を記述する

運動を記述する

円運動の運動学

著者:柚木芹香

問い

回転しているCDの端の点と,そこから半径の半分の位置にある点を比べます.どちらが「速い」でしょうか.また,一定の速さで円を描いて回る点は,速さが変わらないのに「加速している」といえるでしょうか.電車でカーブを曲がるとき,速さが一定でも体が外側へ押されると感じるのはなぜでしょうか.まず自分で考えてみてください.

考えてみる

CDは1周するのにかかる時間が,端でも半径の半分の位置でも同じです.同じ時間に,端の点のほうが大きい円を描くので,進む道のりが長くなります.したがって速さは端のほうが大きく,円周は半径に比例するので,半径が2倍なら速さも2倍になりそうです.一方,「単位時間にどれだけ回るか」という見方なら,どの点も同じ割合で回っています.この「回る割合」を表す量が必要で,これを角速度と呼び,速さと結びつけます.

後半の問いは,加速度の定義に戻って考えます.加速度は速度ベクトルの時間変化率でした.速度ベクトルは速さと向きの両方を持つので,速さが一定でも向きが変わっていれば速度は変化しており,加速度は0ではありません.円運動では速度の向きが常に変わり続けるので,加速度があります.その向きは,速度の向きの変わり方から考えると,円の中心を向くことが予想できます.以下で,これを式で確かめます.

角度と角速度

角度の測り方を1つ決めておきます.半径 r の円で,中心角 θ に対する弧の長さを s とします.

定義 弧度法(ラジアン)

中心角 θ を,弧の長さ s と半径 r の比 θ=sr で測る.単位はラジアン(rad)で,1周は 2πrad である.

これで,弧の長さは s=rθ とごく単純に書けます.度数法では s=π180rθ のように係数が付くので,回転の計算ではラジアンを使います.

定義 角速度・周期・振動数

円周上を動く点の,円の中心のまわりの回転角を θ(t) とする.

ω=dθdt

を角速度という.一定の角速度での1周の時間を周期 T,1秒あたりの回転数を振動数(回転数)f とすると,

ω=2πT=2πf,f=1T

この節では,回転角が増える向き(反時計回り)を正の向きに選び,回転の向きは途中で逆転しないものとします.このとき ω>0 で,逆向きに回る場合は ω<0 となるので,一般には速さは r|ω| と書きます.

弧の長さ s=rθ を時間で微分すると,円周に沿った速さは

v=dsdt=rdθdt=rω

となります.角速度はどの点でも同じ,速さは半径に比例します.冒頭の問いの答えは,端の点のほうが半径の分だけ速い,です.

位置ベクトルから速度・加速度へ

半径 R の円周上を一定の角速度 ω で回る点を,座標で表します.時刻 t=0 に x 軸上の点 (R,0) を出発するとして,位置ベクトルは

r(t)=(Rcos⁡ωt, Rsin⁡ωt)

です.成分ごとに微分します(連鎖律を使います).

v=drdt=(−Rωsin⁡ωt, Rωcos⁡ωt)
a=dvdt=(−Rω2cos⁡ωt, −Rω2sin⁡ωt)=−ω2r

ここから読み取れることを整理します.

法則 等速円運動の速度と加速度

  • 速さは |v|=Rω で一定.

  • 速度は位置ベクトルと垂直(v⋅r=0).つまり円の接線方向を向く.

  • 加速度は a=−ω2r.位置ベクトルと逆向きなので,常に円の中心を向く.その大きさ a=Rω2=v2R=vω を向心加速度という.

最初の問いの2点では,角速度 ω が等しく半径が R と R/2 です.速さは Rω と Rω/2,向心加速度は Rω2 と Rω2/2 となり,どちらも端が2倍です.「速さが一定なのに加速度がある」という疑問は,加速度が速度ベクトルの変化率であることを思い出せば解けます.カーブを曲がる電車の中で体が外側へ押される感じがするのは,電車の加速度が内側を向いているためです(なぜ「押される」と感じるのかは第4章で扱います).

速さが変わる円運動

角速度が時間とともに変わる場合も,同じ手順で扱えます.半径 R の円周上で,回転角が時間の関数 θ(t) のとき,

r=R(cos⁡θ, sin⁡θ)

です.接線方向(回転角が増える向き)の単位ベクトルを et=(−sin⁡θ,cos⁡θ),中心向きの単位ベクトルを en=(−cos⁡θ,−sin⁡θ) とします.また時間微分を θ˙=dθdt,θ¨=d2θdt2 と書きます.微分すると,積の微分から

v=Rθ˙et,a=Rθ¨et+Rθ˙2en

となります(e˙t=−θ˙r/R を使いました).

法則 接線加速度と法線加速度

加速度は接線方向と中心方向に分解できる.

at=Rθ¨=Rdωdt=dvdt,an=Rω2=v2R

at は速さの変化を,an は向きの変化を表す(θ˙>0 として,v=Rθ˙ を速さとしたときの式である).全加速度の大きさは a=at2+an2 である.

等速円運動は at=0 の特別な場合です.

ポイント ここまでのまとめ

  • 角度はラジアンで測り,弧の長さは s=rθ.角速度 ω=dθdt,周期 T,振動数 f の間に ω=2π/T=2πf が成り立つ.

  • 回転角が増える向きを正とし,回転が逆転しないとき,速さは v=rω で,角速度はどの点でも同じ,速さは半径に比例する(一般には v=r|ω|).

  • 等速円運動の加速度は a=−ω2r で,常に円の中心を向く.大きさは rω2=v2/r.速さが一定でも,向きが変わるので加速度がある.

  • 速さが変わる円運動では,加速度は接線成分 at=dvdt と法線成分 an=v2/r に分かれる.