問いしるべ
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運動を記述する

円運動と弧度法

著者:柚木芹香

定理 数学の道具:弧度法と小角近似

弧度法のよい点は,三角関数の微分が簡潔になることである.ddθsin⁡θ=cos⁡θ は,θ がラジアンで測られているときに限って成り立つ.

もう1つ,θ が小さいとき(ラジアンで)次の近似が使える.

sin⁡θ≈θ,tan⁡θ≈θ,cos⁡θ≈1−θ22

理由は図形から分かる.半径1の円で,中心角 θ に対する弧の長さは θ である.θ が小さいと,弧とその両端を結ぶ弦はほとんど重なる.弦の長さは 2sin⁡(θ/2) なので,弧と弦が近いことは 2sin⁡(θ/2)≈θ,すなわち小さい角 x=θ/2 で sin⁡x≈x であることを意味する.cos⁡θ の式は,cos⁡θ=1−2sin2⁡(θ/2)≈1−θ2/2 から得られる.

[図:半径1の円の弧と弦,sinθ,tanθ]

半径1の円で,中心角θに対する弧の長さθ(青),弦(黒),sinθ(緑),tanθ(橙)を並べて比べる図.初期状態はθ=0.5rad.θが小さいと弧と弦とsinθとtanθはほとんど同じ長さで,スライダーでθを大きくするとtanθが先に大きく離れ,sinθも少しずつ小さくなる.

練習 1. θ=0.05rad のとき,sin⁡θ の近似値と,近似の誤差を見積もれ.

答え:sin⁡0.05≈0.05.真の値は 0.049979 なので相対誤差は約 0.04 % である.

練習 2. 月の見かけの大きさ(視直径)は約 0.5∘,地球からの距離は約 3.8×105km である.月の直径を見積もれ.

答え:0.5∘=0.5×π/180≈8.7×10−3rad なので,直径は 3.8×105×8.7×10−3≈3.3×103km.

練習 3. (1) 30∘,135∘ をラジアンで,1rad を度で表せ.(2) 半径 2.0m の円で,中心角 0.30rad の弧の長さを求めよ.

答え:(1) π/6≈0.52rad,3π/4≈2.36rad,1rad=180∘/π≈57.3∘.(2) 2.0×0.30=0.60m.

練習 4. 小角近似で cos⁡0.1 と tan⁡1∘ の値を求めよ.

答え:cos⁡0.1≈1−0.01/2=0.995(真の値 0.99500).1∘=π/180≈0.01745rad なので tan⁡1∘≈0.0175(真の値 0.01746).

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

半径 R=0.20m の円周上を一定の角速度 ω で回る点がある.位置ベクトルが r=(Rcos⁡ωt, Rsin⁡ωt) と表されるとき,

半径Rの円上の点を中心からの位置ベクトルで示す. 半径Rの円上の点を中心からの位置ベクトルで示す.
  1. 速度 v と加速度 a を成分の微分で求め,a=−ω2r を示せ.

  2. 毎秒5回転するときの,速さと加速度の大きさを求めよ.重力加速度の何倍か.

解答を見る

考え方 各成分を時間で微分する.位置ベクトルと加速度ベクトルの成分を見比べると,比例関係に気づく.

  1. 成分ごとに微分して,

v=(−Rωsin⁡ωt, Rωcos⁡ωt)
a=(−Rω2cos⁡ωt, −Rω2sin⁡ωt)=−ω2(Rcos⁡ωt, Rsin⁡ωt)=−ω2r

内積 v⋅r=−R2ωsin⁡ωtcos⁡ωt+R2ωcos⁡ωtsin⁡ωt=0 であり,速度は位置ベクトルと垂直である.

  1. f=5s−1 より ω=2πf=10π≈31rads−1.速さは v=Rω=0.20×31.4≈6.3ms−1,加速度の大きさは a=Rω2=0.20×(31.4)2≈2.0×102ms−2.重力加速度 9.8ms−2 の約 20 倍である.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

アナログ時計の時針と分針は,12時ちょうどに重なっている.

12時ちょうどに重なる時針と分針を,長さと線種を変えて示す. 12時ちょうどに重なる時針と分針を,長さと線種を変えて示す.
  1. 時針,分針の角速度(radmin−1)を求めよ.

  2. 時針から見た分針の相対角速度を求め,次に2つの針が重なるのは何分後かを求めよ.

  3. 12時以降,2つの針が初めて直角をなすのは何分後か.

解答を見る

考え方 相対運動と同様に,角速度の差を考える.針の重なりは,分針が時針より 2π だけ多く回ったときに起こる.

  1. 分針は60分で 2π,時針は720分で 2π 回るので,ω分=2π60,ω時=2π720 radmin−1.

  2. 時針から見た分針の相対角速度は

ω分−ω時=2π(160−1720)=11⋅2π720 radmin−1

分針が時針に追いついて再び重なるには,相対角が 2π 進む必要があるから,t=2π/22π720=72011≈65.5 分後(約1時間5分27秒).

  1. 相対角が π/2 になる時刻は t=π/222π/720=18011≈16.4 分後.

例題 3

オリジナル ★☆☆☆☆

レコード盤が毎分 3313 回転で回っている.回転軸から 0.12m の位置にある盤上の点の速さを求めよ.また,その点の加速度の大きさを求めよ.

回転軸から0.12 mの点を示す.回転数は毎分33⅓回. 回転軸から0.12 mの点を示す.回転数は毎分33⅓回.
解答を見る

考え方 毎分の回転数を毎秒に直して振動数 f を出し,ω=2πf から v=rω と a=rω2 を求める.

f=3313 回転/分 =100/360=59s−1 なので,ω=2πf=10π9≈3.49rads−1.速さは v=rω=0.12×3.49≈0.42ms−1,加速度の大きさは a=rω2=0.12×3.492≈1.5ms−2(向きは中心向き)である.

ポイント ここまでのまとめ

  • ラジアンで測った角では ddθsin⁡θ=cos⁡θ が成り立つ.円運動の微分は,角をラジアンにそろえてから行う.

  • 角が小さい(ラジアンで1より十分小さい)とき,sin⁡θ≈θ,tan⁡θ≈θ,cos⁡θ≈1−θ2/2 と近似できる.

  • 位置ベクトル (Rcos⁡ωt, Rsin⁡ωt) を成分ごとに2回微分すると a=−ω2r が出る.

  • 針の問題のように角速度の差を考えると,追いつく時刻や直角になる時刻が相対運動と同じ手順で求まる.