問いしるべ
問いから始める物理 運動を記述する

運動を記述する

相対運動の演習

著者:柚木芹香

「だれから見た,だれの速度か」を最初に書き,速度の合成の式に添字をつけて立式してください.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

自転車が点Pを一定の速さ 5.0ms−1 で通過した.その 20s 後に,オートバイが同じ点Pを同じ向きに一定の速さ 15ms−1 で通過した.

自転車が点Pを通過した20 s後にオートバイが同じ点を通過する.各速さと方向を示す. 自転車が点Pを通過した20 s後にオートバイが同じ点を通過する.各速さと方向を示す.
  1. オートバイが自転車に追いつくのは,オートバイがPを通過してから何秒後か.

  2. 追いつく地点はPから何mか.

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考え方 オートバイから見た自転車の相対速度と,通過した瞬間の相対位置(自転車が先にいる距離)に注目する.

  1. オートバイが通過する時点で,自転車は 5.0×20=100m 先にいる.自転車から見たオートバイの相対速度は 15−5.0=10ms−1 だから,詰まるまでに 100/10=10s かかる.

  2. オートバイはその間に 15×10=150m 進む.確認として,自転車は 5.0×(20+10)=150m 進んでいて,一致する.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

対気速度(空気に対する速さ)が 60ms−1 の飛行機で,真北にある 120km 離れた空港へ向かう.空気は西から東へ 20ms−1 で動いている(西風).

出発点の真北120 kmに空港があり,風は東向き20 m s⁻¹.機首の向きは描かない. 出発点の真北120 kmに空港があり,風は東向き20 m s⁻¹.機首の向きは描かない.
  1. 機首をどちらへ向ければ,空港まで真北に進めるか.

  2. そのとき,地面に対する飛行機の速さと,所要時間を求めよ.

  3. 風がなければ所要時間は何分か.

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考え方 地面に対する速度は,空気に対する速度と風の速度の和である.東向きの成分を打ち消すように機首を傾ける.

東向きに x,北向きに y をとる.機首を真北から西へ φ だけ傾けると,空気に対する速度は 60(−sin⁡φ,cos⁡φ),風は (20,0) である.

  1. 東西成分が0になる条件は −60sin⁡φ+20=0,すなわち sin⁡φ=1/3,φ≈19∘.機首を真北から西へ約 19∘ 傾ける.

  2. 地面に対する速さは北向き成分 60cos⁡φ=601−1/9=402≈57ms−1.所要時間は 1.2×105/(402)≈2.1×103s,約 35 分である.

  3. 風がなければ 1.2×105/60=2.0×103s,約 33 分である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

一定の速さ 10ms−1 で右向きに走る電車の床の上で,乗客がボールを床から真上に初速度 9.8ms−1 で投げ上げた(電車に対して真上).重力加速度は g=9.8ms−2 で,空気の抵抗は無視する.

  1. 電車の中から見たボールの運動を述べよ.ボールが床に戻るまでの時間と最高点の高さを求めよ.

  2. 地上から見たボールの初速度の大きさと向き,ボールが投げた位置から水平に進む距離,軌道の概形を述べよ.

右向きに走る電車の床から,ボールを電車に対して真上に投げ上げる.左は電車の中から見た軌道で,鉛直な直線を往復する.右は地上から見た軌道で,電車が右へ進む間にボールも水平に進むため放物線になる.最高点の高さは二つの図で同じ. 右向きに走る電車の床から,ボールを電車に対して真上に投げ上げる.左は電車の中から見た軌道で,鉛直な直線を往復する.右は地上から見た軌道で,電車が右へ進む間にボールも水平に進むため放物線になる.最高点の高さは二つの図で同じ.
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考え方 電車の中から見る運動は,電車の速度を差し引くだけで得られる.水平方向と鉛直方向は独立に扱える.

  1. 電車系では,投げ上げ直後の速度は鉛直上向きの 9.8ms−1,加速度は鉛直下向きの g である.ボールは同じ鉛直線上を往復する.戻る時間は t=2v0/g=2.0s,最高点の高さは v02/(2g)=4.9m.

  2. 地上系での初速度は (10,9.8)ms−1.大きさは 100+96.04≈14ms−1,水平から arctan⁡(9.8/10)≈44∘ 上向きである.水平には等速 10ms−1 で 2.0s 進むので 20m.軌道は放物線であり,最高点の高さは電車系と同じ 4.9m(高さは水平方向に動く系で変わらない)である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

一定の速さで下流から上流へ向かう船が,橋の真下で川に浮き輪を落とした.船は 10 分間そのまま進んでから,落としたことに気づいて直ちに引き返し,橋から下流へ 1.8km の地点で浮き輪に追いついた.川の流速を求めよ.船のエンジンの出力は一定で,水に対する船の速さは上りも下りも同じとする.

橋で落とした浮き輪と,橋から下流1.8 kmの再会地点を示す.船は10分間上ってから引き返す. 橋で落とした浮き輪と,橋から下流1.8 kmの再会地点を示す.船は10分間上ってから引き返す.
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考え方 川と一緒に動く系(水系)に移ると,浮き輪は静止し,船は一定の速さで遠ざかって同じ速さで戻ってくる.

水系では浮き輪は静止している.船の水に対する速さは行きも帰りも同じなので,離れる時間と戻る時間は等しく,どちらも 10 分である.つまり浮き輪を落としてから拾うまでに 20 分 =1200s が経過した.その間に浮き輪は川の流れに乗って橋から 1.8km=1800m 下流へ運ばれた.よって流速は

u=18001200=1.5ms−1 (=5.4km/h)

である.船の水に対する速さは分からなくても,流速は求まる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

海上で,船Aは時刻0に原点を出て東向きに一定の速さ 6.0ms−1 で進む.船Bは時刻0に原点から東へ 800m,北へ 700m の位置にあり,速度 (−2.0,−6.0)ms−1 で進む(東向きを x,北向きを y とする).

時刻0の船Aと船Bの位置と,地面に対する各速度を示す. 時刻0の船Aと船Bの位置と,地面に対する各速度を示す.
  1. Aから見たBの相対速度を求めよ.

  2. 2船が最も近づく時刻と,そのときの距離を求めよ.

  3. 最接近距離が 100m 以上でなければ危険とするとき,この2船は危険か.

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考え方 相対位置は r0+ut の形になる.最接近は相対位置と相対速度が垂直になる時刻である.数学の道具の公式を使う.

  1. u=vBA=(−2.0,−6.0)−(6.0,0)=(−8.0,−6.0)ms−1.|u|=10ms−1.

  2. r0=(800,700)m なので r0⋅u=−6400−4200=−10600,|u|2=100.よって t∗=10600/100=106s.このとき

r(t∗)=(800−8.0×106, 700−6.0×106)=(−48, 64)m

であり,距離は 482+642=80m.確認として r⋅u=384−384=0 で垂直になっている.

  1. 80m<100m なので危険である.

ポイント 教える人へ

  • 「走ると雨が斜めに見えるのはなぜか」を,「走る人から見て後ろへ動くから」と言葉で説明できるか確かめる.矢印を2本描かせ,差のベクトルを作らせると定着する.

  • つまずきやすいのは引き算の順序である.「Aから見たBの速度は vB−vA」を,具体的な車や船で確かめさせる.

  • 川渡りでは「船首の向き」と「実際に進む向き」を混同しがちである.「水に対する速度」と「地面に対する速度」を別の矢印で描かせる.

  • 最接近が「相対位置と相対速度が垂直」で決まる理由を,図でも説明できるか確かめる.

  • 加速度が等速の系で変わらない点は第4章の入り口である.ここでは導入にとどめる.