問いしるべ
問いから始める物理 運動を記述する

運動を記述する

相対運動と最接近

著者:柚木芹香

定理 数学の道具:最も近づく時刻(二次関数と内積)

2つの物体が等速で動くとき,相対位置は r(t)=r0+ut と表せます.ここで r0 は t=0 の相対位置,u は一定の相対速度です.両者の距離 d(t)=|r(t)| が最小になる時刻を求めます(相対速度は u≠0 とします.u=0 なら距離は一定です).

距離の二乗は,内積の定義より

d2=|r0|2+2(r0⋅u)t+|u|2t2

という t の二次関数です.平方完成すると,

d2=|u|2(t+r0⋅u|u|2)2+|r0|2−(r0⋅u)2|u|2

となるので,最接近の時刻と最小距離は

t∗=−r0⋅u|u|2,dmin2=|r0|2−(r0⋅u)2|u|2

です.t∗ は r(t∗)⋅u=0 を満たします.つまり最接近の瞬間には,相対位置と相対速度が垂直になります.t∗<0 なら,t≥0 の範囲では t=0 が最小で,最小距離は |r0| です(この場合は最接近の瞬間の垂直条件は成り立ちません).

練習 1. r0=(8,6)m,u=(−2,−1)ms−1 のとき,最接近の時刻と最小距離を求めよ.

練習 2. r0=(10,0)m,u=(−2,2)ms−1 のとき,最接近の時刻と最小距離を求め,その瞬間に r(t∗)⋅u=0 となることを確かめよ.

練習 3. r0=(3,4)m,u=(1,1)ms−1 のとき,t≥0 での最小距離を求めよ.

答え:(1) r0⋅u=−22,|u|2=5 より t∗=4.4s.dmin2=100−484/5=3.2 なので,dmin=3.2≈1.8m.(2) r0⋅u=−20,|u|2=8 より t∗=2.5s.r(t∗)=(5,5)m で,dmin=52≈7.1m.(5,5)⋅(−2,2)=0 である.(3) r0⋅u=7>0 なので t∗=−3.5s<0.t≥0 では離れていく一方で,最小距離は t=0 の 5m.

ガリレイ変換と慣性系

座標系の取り替えを式で書いておきます.地上系 S の座標を (x,y),S に対して x 方向に一定の速さ V で動く系 S′ の座標を (x′,y′) とします.時刻 t=0 で原点が一致していたとすると,

x′=x−Vt,y′=y,t′=t

です.これを微分すると vx′=vx−V,vy′=vy です.もう一度微分すると

a′=a

となり,系 S′ が一定の速度で動くかぎり加速度は両方の系で同じになります.速度は系によって変わりますが,加速度は変わらないのです.一方,系 S′ が加速度 A で動いている場合は a′=a−A となり,加速度も変わります.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

川幅 d=120m で,水は一様に u=3.0ms−1 で流れている.水に対する速さ v=5.0ms−1 の船で,対岸へ渡る.

  1. 最短時間で渡るには船首をどちらへ向ければよいか.そのときの時間と,対岸に着くまでに流される距離を求めよ.

  2. 流されずに真向かいの点に着くには,船首をどちらへ向ければよいか.そのときの時間を求めよ.

幅dの川が右向きに速さuで流れている.下の岸の出発点Aから,水に対する速さvの船で上の岸へ渡る.Aの真向かいの対岸の点をBとする.船首の向きは自由で,水に対する速さvが半径になる半円で表している. 幅dの川が右向きに速さuで流れている.下の岸の出発点Aから,水に対する速さvの船で上の岸へ渡る.Aの真向かいの対岸の点をBとする.船首の向きは自由で,水に対する速さvが半径になる半円で表している.
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考え方 岸に垂直な方向の動きは流れの影響を受けない.時間は垂直方向の速さだけで決まり,流れは着く位置にだけ効く.

岸に垂直に y 軸,下流向きに x 軸をとる.

  1. 船首を対岸にまっすぐ向け,垂直方向の速さを v=5.0ms−1 にするのが最短である.垂直方向の速さが最大だからである.時間は t=d/v=120/5.0=24s.その間に下流へ流される距離は ut=3.0×24=72m.

  2. 船首を上流側へ,岸に垂直な方向から角 θ だけ傾ける.岸に沿った成分が打ち消し合う条件は vsin⁡θ=u で,sin⁡θ=3.0/5.0=0.60,θ≈37∘.このとき岸に垂直な速さは vcos⁡θ=5.0×0.80=4.0ms−1 だから,時間は 120/4.0=30s.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

無風のとき,雨は鉛直に降る.速さ 10ms−1 で直線上を走る電車の窓から見ると,雨粒の筋は鉛直から 30∘ 傾いていた.

地上では鉛直に降る雨と,速さ10 m s⁻¹の電車から見える鉛直から30°傾いた雨の筋を並べる. 地上では鉛直に降る雨と,速さ10 m s⁻¹の電車から見える鉛直から30°傾いた雨の筋を並べる.
  1. 地面に対する雨粒の速さを求めよ.

  2. 電車の速さを 20ms−1 に上げると,窓の外の雨粒の筋は鉛直から何度傾いて見えるか.また,電車に対する雨粒の速さはいくらか.

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考え方 雨粒の電車に対する速度は,地面に対する速度から電車の速度を引いたものである.地面に対する雨粒の速度は鉛直下向きで,電車の速さによらない.

雨粒の地面に対する速さを w とし,電車の進む向きを x,鉛直上向きを y とする.vRG=(0,−w),vTG=(V,0) だから,

vRT=vRG−vTG=(−V,−w)

である.筋が鉛直となす角を ϕ とすると tan⁡ϕ=V/w.

  1. V=10ms−1,ϕ=30∘ より w=V/tan⁡30∘=103≈17ms−1.

  2. V=20ms−1 のとき tan⁡ϕ=20/(103)=2/3≈1.15 なので ϕ≈49∘.電車に対する雨粒の速さは 202+(103)2=700≈26ms−1.

ポイント ここまでのまとめ

  • 等速で動く2物体の距離は,相対位置 r0+ut の大きさ.距離の2乗が t の2次関数なので,u≠0 なら,平方完成で最接近の時刻 t∗=−r0⋅u/|u|2 が出る.t∗≥0 のとき,その瞬間に相対位置と相対速度は垂直になる.t∗<0 なら t≥0 では t=0 が最小で,最小距離は |r0| である.

  • 等速で動く系へ移っても,加速度は変わらない(ガリレイ変換).加速度で動く系では a′=a−A となる.

  • 川の問題では,岸に垂直な成分と沿う成分に分ける.雨の見かけの傾きは tan⁡ϕ=V/w(電車の速さ V,雨の速さ w)で決まる.