問いしるべ
問いから始める物理 仕事とエネルギー

仕事とエネルギー

力とポテンシャルの関係(微分と勾配)

著者:柚木芹香

ポテンシャルエネルギーから力を取り出す方法を学びます.

力とポテンシャルをつなぐ微分

定理 数学の道具:F=−dUdx と勾配

1次元 保存力の仕事は WA→B=∫xAxBFdx=U(xA)−U(xB) である.終点 xB を x と書いて両辺を x で微分すると,左辺は F(x),右辺は −dUdx となる.

F=−dUdx

力は,ポテンシャルのグラフの傾きの符号を変えたもので,坂を下る向きにはたらく.例:U=12kx2 なら F=−kx.

2次元:偏微分と勾配 U(x,y) のように変数が複数ある関数で,他方を定数とみて一方だけで微分したものを偏微分といい,∂U∂x,∂U∂y と書く.変位 dr=(dx,dy) に対する U の変化は

dU=∂U∂xdx+∂U∂ydy

であり,保存力では F⋅dr=−dU なので,係数を比べて

F=−(∂U∂x, ∂U∂y)(勾配 ∇U を使えば F=−∇U)

となる.

経路依存の判定 保存力なら Fx=−∂U∂x,Fy=−∂U∂y であり,偏微分の順序は入れ替えてよいので

∂Fx∂y=∂Fy∂x

が成り立つ.逆に,この式が成り立たなければ保存力ではない.(平面全体で力が定まっているとき,成り立てば保存力である.)

練習 1.

  1. U=x2y から F を求めよ.

  2. F=(y,−x) は保存力か.

答え:(1) F=−(2xy, x2). (2) ∂Fx∂y=1,∂Fy∂x=−1 で一致しないので,保存力ではない.

練習 2. (1) U=3x−4y+2(単位は SI)から F を求めよ.(2) U=12k(x2+y2) から F を求めよ.(3) F=(2xy, x2) は保存力か.保存力なら U を1つ求めよ.

答え:(1) F=(−3, 4)(一定の力).(2) F=−k(x, y)(原点向きで距離に比例).(3) ∂Fx∂y=2x,∂Fy∂x=2x で一致するので保存力.U=−x2y とすると −∂U∂x=2xy,−∂U∂y=x2 となる.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 0.50kg の小球が長さ 1.0m の軽い糸でつるされている.糸が鉛直と 60∘ の角をなす位置まで小球を持ち上げ,静かに放す.重力加速度は 9.8ms−2 とする.

振り子の初期位置と最下点.長さ \(L\) の糸でつるした振り子.鉛直線から \(60^\circ\) の初めの位置の小球と,最下点の小球を示している. 振り子の初期位置と最下点.長さ \(L\) の糸でつるした振り子.鉛直線から \(60^\circ\) の初めの位置の小球と,最下点の小球を示している.
  1. 最下点での小球の速さを求めよ.

  2. 最下点での糸の張力を求めよ.

解答を見る

考え方 張力は動きに垂直で仕事をしない.仕事をするのは重力だけなので,力学的エネルギーが保存する.

  1. 最下点を高さの基準とする.初めの高さは h=L(1−cos⁡60∘)=0.50m.力学的エネルギー保存則より

mgh=12mv2 ⟹ v=2gh=2×9.8×0.50≈3.1ms−1
  1. 最下点では円の中心(上向き)が向心方向である.運動方程式 mv2L=T−mg より

T=mg+mv2L=0.50×9.8+0.50×9.81.0≈9.8N

T=2mg で,静止時の2倍である.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

なめらかな水平面の上で,ばね定数 80Nm−1 の軽いばねを自然長から 0.10m 縮め,質量 0.20kg の小球を押しつけて静かに放す.小球はばねを離れたあと,なめらかな斜面(傾き 30∘)を上る.

ばねと滑らかな斜面.壁に固定したばねで縮めた小球から,水平面を経て,傾き \(30^\circ\) の斜面に続く装置の側面図. ばねと滑らかな斜面.壁に固定したばねで縮めた小球から,水平面を経て,傾き \(30^\circ\) の斜面に続く装置の側面図.
  1. ばねを離れるときの小球の速さを求めよ.

  2. 斜面を上る最大の高さと,斜面に沿った距離を求めよ.

解答を見る

考え方 仕事をする力はばねの力と重力だけ(どちらも保存力)なので,力学的エネルギーが保存する.

  1. ばねの弾性エネルギーが運動エネルギーになる.

12kx2=12mv2 ⟹ v=xkm=0.10×800.20=2.0ms−1
  1. 最高点で速さは 0.水平面を高さの基準にして 12mv2=mgh.

h=v22g=4.02×9.8≈0.20m

斜面に沿った距離は hsin⁡30∘≈0.41m.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

xy 平面上の力 F=(2xy, x2+3y2)(x,y は m の数値,力は N の数値とする)について次を答えよ.

保存力の線積分の経路.\(xy\) 平面に原点 O と点 B\((1,1)\),経路1(O から \((1,0)\) を通って B へ)を示している. 保存力の線積分の経路.\(xy\) 平面に原点 O と点 B\((1,1)\),経路1(O から \((1,0)\) を通って B へ)を示している.
  1. この力が保存力であることを確かめ,ポテンシャルエネルギー U(原点を基準)を求めよ.

  2. O から B(1,1) までの仕事を U から求め,経路1の線積分で確かめよ.

解答を見る

考え方 偏微分の条件を調べ,成り立てば F=−∇U から U を作る.

  1. ∂Fx∂y=2x=∂Fy∂x なので保存力.∂U∂x=−2xy より U=−x2y+g(y).∂U∂y=−x2+g′(y)=−(x2+3y2) と比べて g=−y3.原点で U=0 なので U=−x2y−y3[J].

  2. W=U(O)−U(B)=0−(−1−1)=2J.経路1では,O→(1,0) は y=0 で Fx=0 なので仕事は 0.(1,0)→B は x=1 で ∫01(1+3y2)dy=2.合計 2J で一致する.

ポイント ここまでのまとめ

  • 保存力とポテンシャルは F=−dUdx(1次元),F=−∇U(2次元)で結ばれる.

  • 2次元で ∂Fx∂y=∂Fy∂x が成り立たなければ,保存力ではない.

  • 力が仕事をするかどうかは,力の名前でなく F⋅dr で決まる.固定点からの糸の張力や固定された面の垂直抗力は動きに垂直で仕事をしない.仕事をするのが保存力だけなら,K+U は一定.

  • 振り子の最下点の速さは 2gh,ばねで打ち出す速さは xk/m.