問いしるべ
問いから始める物理 非慣性系

非慣性系

コリオリ力の演習

著者:柚木芹香

外積の向きを決めてから,負号による反転を確かめましょう.地球上では東・北・上を右手系の軸とし,必要な近似の次数を明示してください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

水平な円盤が上から見て反時計回りに角速度 ω=(0,0,ω) で回る.円盤上の質量 m の物体について考える.

  1. 相対速度が v′=(u,0,0),(0,u,0),(0,0,u) のそれぞれで,コリオリ力を求めよ.u>0 とする.

  2. 回転系で静止した物体には遠心力とコリオリ力のどちらが残るか.またコリオリ力の仕事率を求めよ.

回転軸と三方向の相対速度.図中の記号と条件は「x」「y」「x方向の速度」「⊙ z,ω」「v'」「y方向の速度」「z方向の速度」である. 回転軸と三方向の相対速度.図中の記号と条件は「x」「y」「x方向の速度」「⊙ z,ω」「v'」「y方向の速度」「z方向の速度」である.
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考え方 fC=−2mω×v′ に成分を代入する.右ねじで決まる外積と,力の向きは逆である.

  1. 外積は順に (0,ωu,0),(−ωu,0,0),0.したがって力は (0,−2mωu,0),(2mωu,0,0),0 である.水平運動では進行方向の右へ働くが,軸に平行な運動では外積が0となる.速度があるだけで必ずコリオリ力が生じるわけではない.

  2. v′=0 ならコリオリ力は0である.遠心力は軸から離れた位置では残る.仕事率は P′=fC⋅v′=−2m(ω×v′)⋅v′=0.これはコリオリ力単独が相対的な運動エネルギーを変えないことを意味し,他の力も含めた速さが必ず一定という意味ではない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

北緯 30∘ の地点で,小物体が北向きに相対速度 u=20ms−1 で進む.ω=7.29×10−5rads−1 とする.東・北・上を成分の順とする.

  1. コリオリ加速度の成分と数値を求めよ.

  2. 他の水平力がなく,短時間 t=10s の間はもとの北向き速度を用いてよいとして,東西方向のずれを求めよ.この近似の条件を述べよ.

北へ進む物体の初期条件.図中の記号と条件は「x'」「y'」「O」「u」「北緯30°」「東」「北」である. 北へ進む物体の初期条件.図中の記号と条件は「x'」「y'」「O」「u」「北緯30°」「東」「北」である.
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考え方 地球の角速度は ω=(0,ωcos⁡λ,ωsin⁡λ) である.北向き速度と平行な北向き成分は外積に寄与しない.

  1. ω×(0,u,0)=(−ωusin⁡λ,0,0) より aC′=(2ωusin⁡λ,0,0).東向きに 1.458×10−3ms−2≈1.5×10−3ms−2 である.北へ進む人の右は東であり,向きの規則とも一致する.

  2. 初めの東向き速度を0として,x′=ωusin⁡λt2=0.0729m≈7.3cm.近似には ωt が1より十分小さく,移動距離が地球半径より十分小さいことが必要である.今回は ωt=7.29×10−4 である.新しく生じる東向き速度がコリオリ力へ与える補正は,この計算では2次の効果として省いている.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

赤道上の短い水平な直線レールを,質量 m の台車が東または西へ速さ u で走る.静止物体について測った有効重力を g とし,遠心力はすでに g に含める.地表の曲率による u2/R は無視できるとする.

  1. 東向きと西向きのコリオリ力を求めよ.

  2. レールからの垂直抗力の差を求めよ.「赤道ではコリオリ力は常に0」という説明が正しいか述べよ.

赤道の東向きと西向きの運動.図中の記号と条件は「東向き」「上」「⊗ 北向きのω」「西向き」である. 赤道の東向きと西向きの運動.図中の記号と条件は「東向き」「上」「⊗ 北向きのω」「西向き」である.
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考え方 赤道で消えるのは角速度の鉛直成分であり,角速度ベクトル全体ではない.鉛直方向のコリオリ力を残して考える.

  1. 赤道では ω=(0,ω,0).東向き v′=(u,0,0) なら ω×v′=(0,0,−ωu) だから,コリオリ力は上向きに 2mωu.西向きでは下向きに同じ大きさである.水平な偏向成分はどちらも0である.

  2. 鉛直の相対加速度を0とすれば,東向きでは NE−mg+2mωu=0,西向きでは NW−mg−2mωu=0.よって NE=m(g−2ωu),NW=m(g+2ωu),差は NW−NE=4mωu.東向きでは軽く測られる.赤道でも鉛直のコリオリ力は存在するので,提示された説明は誤りである.この式は NE>0 かつ曲率を無視できる範囲の局所的な結果である.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

北緯 λ で,高さ h から物体を地面に対して静かに落とす.静止時の有効重力を g とし,空気抵抗を無視する.h は地球半径より十分小さく,自転の1次の効果だけを求める.

  1. 東向き加速度と変位を時間の関数で求めよ.

  2. 着地時のずれを h で表し,高さを4倍にしたときの比を求めよ.h=45m,λ=60∘,g=10ms−2,ω=7.29×10−5rads−1 ではいくらか.

塔からの落下と東方向.図中の記号と条件は「h」「真下の基準点」「東」である. 塔からの落下と東方向.図中の記号と条件は「h」「真下の基準点」「東」である.
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考え方 1次のコリオリ力には,自転を無視した0次の速度を代入してよい.東向き加速度は時間とともに増すので,等加速度の式ではなく積分を使う.

  1. v′≈(0,0,−gt) とすると,ω×v′=(−ωgtcos⁡λ,0,0).よって ax′=2ωgtcos⁡λ.初期の東向き速度と変位が0なので,積分して vx′=ωgcos⁡λt2,x′=ωgcos⁡λt3/3 である.

  2. 落下時間は0次の tf=2h/g を使え,xf′=(ωgcos⁡λ/3)(2h/g)3/2.したがって高さ4倍ならずれは 43/2=8 倍になる.指定の値では tf=3.0s,xf′=3.28×10−3m≈3.3mm 東向きである.東向きに生じた速度による鉛直の補正は2次なので,ここでの落下時間には含めない.微小なずれでも,積分回数によって高さ依存性が変わることに注意する.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

地球上の小領域で,静止時の有効重力と床からの抗力がつり合い,水平にはコリオリ力だけが働く理想模型を考える.緯度は一定の λ>0,f=2ωsin⁡λ とする.東向きを x′,北向きを y′ とし,原点から初速度 (u,0) で動き始める.

  1. 速度成分を求めよ.

  2. 位置を求め,軌道の半径と一周の時間を示せ.模型を使う際の空間的な条件も述べよ.

水平な初速度の条件.図中の記号と条件は「x'」「y'」「O」「u」「北半球:λ>0」「水平力はコリオリ力のみ」である. 水平な初速度の条件.図中の記号と条件は「x'」「y'」「O」「u」「北半球:λ>0」「水平力はコリオリ力のみ」である.
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考え方 二つの水平成分は結びついている.片方を微分してもう片方を消去すると,速度に関する単振動の式になる.

  1. v˙x′=fvy′,v˙y′=−fvx′ なので,v¨x′=−f2vx′.初期条件 vx′(0)=u,vy′(0)=0 から vx′=ucos⁡ft,vy′=−usin⁡ft を得る.速さは (vx′)2+(vy′)2=u で一定であり,仕事率0の性質と一致する.

  2. 積分して x′=(u/f)sin⁡ft,y′=(u/f)(cos⁡ft−1).したがって (x′)2+(y′+u/f)2=(u/f)2 で,南側の点 (0,−u/f) を中心に時計回りに回る.半径は u/f,周期は 2π/f.軌道の広がりが地球半径より十分小さく,その範囲で緯度の変化を無視できる必要がある.赤道へ近づくと f が小さくなり,模型の円の半径が大きくなるため,局所近似の妥当性を改めて検討しなければならない.

ポイント 教える人へ

  • 外積そのものを一度書き,負号による反転を独立に確認させる.

  • 赤道で消える水平成分と,残る鉛直成分を区別させる.

  • 1次の力へ代入する速度が0次の解でよい理由を説明させる.

  • 仕事をしない力でも軌道は変わることを,速度成分の解で確かめさせる.