問いしるべ
問いから始める物理 振動

振動

連成振動の数学と例題

著者:柚木芹香

数学の道具

定理 数学の道具:連立の微分方程式を和と差で分離する

2つの変数を入れ替えても同じ形になる連立方程式

x¨1=−αx1+βx2,x¨2=βx1−αx2

で,辺々を足したものと引いたものを作り,q+=x1+x2,q−=x1−x2 とおくと

q¨+=−(α−β)q+,q¨−=−(α+β)q−

となり,q+ と q− はそれぞれ独立な方程式になる(和と差で分離できるのは,この入れ替え対称な場合である).α−β>0 なら q+ は角振動数 ω+=α−β の単振動,α+β>0 なら q− は角振動数 ω−=α+β の単振動になる(係数が0なら等速運動,負なら指数関数的な運動である).x1=q++q−2,x2=q+−q−2 と戻す.q−=0 が同位相,q+=0 が逆位相の基準振動である.前の節の系は α=k+κm,β=κm にあたり,α∓β>0 をみたす.

うなりの計算には和積の公式を使う.

cos⁡A+cos⁡B=2cos⁡A+B2cos⁡A−B2,cos⁡A−cos⁡B=−2sin⁡A+B2sin⁡A−B2

加法定理 cos⁡(α±β)=cos⁡αcos⁡β∓sin⁡αsin⁡β の2式を足し引きし,α+β=A,α−β=B とおくと導ける.

練習 1. (1) x¨1=−2x1+x2,x¨2=x1−2x2 の基準角振動数を求めよ.(2) cos⁡11t+cos⁡9t を積の形に直せ.

答え:(1) α=2,β=1 より ω+=1,ω−=3 (2) 2cos⁡10tcos⁡t

練習 2. (1) x¨1=−3x1+x2,x¨2=x1−3x2 の基準角振動数を求めよ.(2) cos⁡21t+cos⁡19t を積の形に直し,うなりの角振動数を答えよ.

答え:(1) 和 s=x1+x2 は s¨=−2s,差 d=x1−x2 は d¨=−4d に従うので 2 と 2.(2) 2cos⁡20tcos⁡t.振幅 |2cos⁡t| は角振動数 2 で強弱をくり返す(21−19=2).

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

なめらかな水平面の上で,質量 0.20kg の2つの質点を,ばね定数 20Nm−1 のばね2本で左右の壁につなぎ,質点どうしを 30Nm−1 のばねでつなぐ.

質量0.20 kgの二つの物体を外側の20 N/mのばねと中央の30 N/mのばねで結ぶ.基準振動数の数値は記さない. 質量0.20 kgの二つの物体を外側の20 N/mのばねと中央の30 N/mのばねで結ぶ.基準振動数の数値は記さない.
  1. 基準角振動数を求めよ.

  2. 質点1を右に 2.0cm 引き,質点2をつり合いの位置に保って,同時に静かに放す.質点1の振れの振幅(包絡線)が初めて0になる時刻と,そのときの質点2の振幅を求めよ.

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考え方 前の節の式に数値を入れる.(2) は和積の公式でうなりの形にする.

  1. k=20,κ=30 のとき,ω1=k/m=20/0.20=10rads−1,ω2=(k+2κ)/m=80/0.20=20rads−1 である.

  2. ω¯=15rads−1,Δ=5rads−1 で,a=2.0cm として

x1=acos⁡5tcos⁡15t,x2=asin⁡5tsin⁡15t

である.質点1の包絡線の大きさ a|cos⁡5t| が初めて0になるのは 5t=π/2,すなわち t=π/10≈0.31s である.このとき質点2の包絡線の大きさは a=2.0cm である.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

長さ L=1.0m の軽い糸に質量 m=0.10kg の小球をつるした2つの振り子が,並んでつるされている.2つの小球を,水平に張った軽いばね(ばね定数 κ=0.020Nm−1)でつなぐ.重力加速度は 9.8ms−2,振れは小さく,ばねは水平を保つとする.

長さlの二つの振り子の小球を定数κのばねで結ぶ.鉛直からの小角をθ₁とθ₂とし,ばねは小角近似で水平とみなす. 長さlの二つの振り子の小球を定数κのばねで結ぶ.鉛直からの小角をθ₁とθ₂とし,ばねは小角近似で水平とみなす.
  1. 基準角振動数を求めよ.

  2. 振り子1だけを小さく振らせて放した.振り子1の振れが初めてほぼ0になるまでの時間を求め,κ が小さいとして ω2−ω1 を近似した値と比べよ.

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考え方 小球の水平変位 xi=Lθi の運動方程式を立て,前の節の系の k を mg/L に置き換える.

  1. 水平方向の力は,重力の成分 −mgθi=−(mg/L)xi と,ばねの力 ∓κ(x1−x2) である.運動方程式は

mx¨1=−mgLx1−κ(x1−x2),mx¨2=−mgLx2+κ(x1−x2)

で,前の節の k=mg/L の場合である.よって

ω1=gL≈3.130rads−1,ω2=gL+2κm=10.2≈3.194rads−1

である.

  1. 振り子1の振れの包絡線が0になるのは Δt=π/2 のときで,t=πω2−ω1=π0.0632≈50s.近似 ω2−ω1≈ω1κ/k(k=mg/L=0.98Nm−1)では 0.0639rads−1 で,t≈49s とほぼ一致する.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

2原子分子を,質量 m の2つの原子をばね定数 κ のばねでつないだものとみなす.壁は無く,2つの原子は一直線上を動く.酸素分子で m=16u=2.66×10−26kg,κ=1.2×103Nm−1 として,次を答えよ.

壁に固定されていない二つの質量mの原子模型.位置をx₁,x₂,結合ばねの自然長をl₀とする. 壁に固定されていない二つの質量mの原子模型.位置をx₁,x₂,結合ばねの自然長をl₀とする.
  1. 和と差で運動を分け,基準振動が何を表すか述べよ.

  2. 分子の振動の周期を求めよ.

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考え方 前の節の系で壁のばねを無くした(k=0)ものと考え,和と差に分ける.

  1. x1<x2 とすると,ばねの伸びは x2−x1−l0 で,mx¨1=κ(x2−x1−l0),mx¨2=−κ(x2−x1−l0) である.足すと m(x¨1+x¨2)=0 で,重心が等速直線運動をする(角振動数0の基準振動).引くと,r=x2−x1 について r¨=−2κm(r−l0) となり,ばねの長さが l0 のまわりで単振動する.

  2. 角振動数 ω=2κ/m=2400/(2.66×10−26)≈3.0×1014rads−1 で,周期は T=2π/ω≈2.1×10−14s である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 入れ替えて同じ形の連立方程式は,和と差を作ると独立な方程式に分かれ,係数が正なら独立な単振動になる.

  • 弱い結合では ω2−ω1≈ω1κ/k が小さく,エネルギーがほぼ移りきる時間 π/(ω2−ω1) は長い.

  • 壁の無い系では,角振動数0の基準振動が重心の等速運動を表す.