問いしるべ
問いから始める物理 電流と回路

電流と回路

電流と抵抗の演習

著者:柚木芹香

電荷の流れ,導線内の電場,発熱を結びつけて考えてください.この節の ρ は抵抗率を表し,電荷密度には使いません.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

電子の数密度 n=8.0×1028m−3,断面積 S=2.0×10−6m2,抵抗率 ρ=2.0×10−8Ωm の一様な導線に,右向きに I=3.2A が流れる.電気素量は e=1.6×10−19C とする.

  1. 電流密度と電子のドリフト速度の大きさ・向きを求めよ.

  2. 導線内の電場と,電子が平均して 1.0m 移動する時間を求めよ.

一様な導線の断面積Sと,右向きに流れる電流I = 3.2 Aを示す.数密度nと抵抗率ρは問題で与えられた値である. 一様な導線の断面積Sと,右向きに流れる電流I = 3.2 Aを示す.数密度nと抵抗率ρは問題で与えられた値である.
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考え方
断面を単位時間に通る電荷を数える.負の電荷の移動と電流の向きは逆である.

  1. j=I/S=1.6×106Am−2.時間 dt に断面を通る電子数は nSvddt なので,I=neSvd.よって vd=I/(neS)=1.3×10−4ms−1 で,電子は左へ進む.

  2. E=ρj より電場は右向きで,E=3.2×10−2Vm−1.丸める前の vd=1.25×10−4ms−1 を使うと,時間は 1.0/vd=8.0×103s.平均移動の時間は電場の変化が伝わる時間と異なり,点灯の速さを決めない.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

電池の電流 I と端子電圧 V を測った.計器の影響は補正済みで,起電力 E と内部抵抗 r は一定とする.

I

0.20A

0.50A

0.80A

V

4.50V

4.20V

3.90V

  1. V と I の関係から E,r を決め,中央の測定値も確かめよ.

  2. 電流 0.50A での外部への電力と内部の発熱率を求めよ.両端の電圧の誤差が各 ±0.02V 以内で,電流の誤差を無視すると,両端から求める r の誤差の最大値はいくらか.

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考え方
傾きから内部抵抗,切片から起電力を読む.

  1. V=E−rI だから,r=(4.50−3.90)/(0.80−0.20)=1.0Ω,E=4.50+1.0×0.20=4.70V.中央の予測も 4.70−1.0×0.50=4.20V で一致する.

  2. 外部電力は IV=2.1W,内部発熱率は I2r=0.25W.電圧差の誤差は 0.04V なので,r の誤差は最大 0.04/0.60≈0.07Ω.丸める前に 2.10+0.25=2.35W=EI で収支も合う.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

長さ ℓ,抵抗率 ρ の導体の円形断面の半径は,左端からの距離 x に対して a(1+x/ℓ) である.両端面を電極とし,側面は絶縁する.断面内の電位は一様と近似し,a/ℓ は十分小さいとする.

  1. 抵抗と,定常電流 I を流したときの電場 E(x) を求めよ.

  2. 同じ電圧で,半径 a,長さ ℓ の一様な導線と,全発熱率を比較せよ.

両端面を電極とする円すい台状導体.左端からの座標x,長さℓ,左端の半径aと右端の半径2a,抵抗率ρを示す. 両端面を電極とする円すい台状導体.左端からの座標x,長さℓ,左端の半径aと右端の半径2a,抵抗率ρを示す.
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考え方
断面を通る電流は一定で,小区間の電圧降下を足す.

  1. S(x)=πa2(1+x/ℓ)2,j(x)=I/S(x) より,E(x)=ρI/[πa2(1+x/ℓ)2].電圧は V=∫0ℓE(x)dx だから

R=VI=ρπa2∫0ℓdx(1+x/ℓ)2=ρℓ2πa2.
  1. 一様な導線の抵抗は Ru=ρℓ/(πa2)=2R.電圧一定では P=V2/R なので円すい台の発熱率は2倍である.ρℓ/a2 は抵抗の次元で,E(0)/E(ℓ)=4 である.近似には半径の傾き a/ℓ が十分小さいことが必要である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

起電力 E>0,内部抵抗 r>0 の電池に,可変抵抗 R>0 をつなぐ.

  1. 外部抵抗の電力 P を最大にする R と,そのときの外部への供給効率を求めよ.効率は P/(EI) とする.

  2. 装置が要求する端子電圧 V≥3E/4 を守る場合の最大電力を求めよ.

起電力ℰと内部抵抗rをもつ電池に外部抵抗Rを接続する.破線内が電池で,外部抵抗の両端に端子電圧Vの極性の基準を示す. 起電力ℰと内部抵抗rをもつ電池に外部抵抗Rを接続する.破線内が電池で,外部抵抗の両端に端子電圧Vの極性の基準を示す.
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考え方
電圧条件を抵抗の範囲に直して最大化する.

  1. I=E/(r+R),P=E2R/(r+R)2.微分すると dPdR=E2(r−R)/(r+R)3 なので,R=r で最大 Pmax=E2/(4r).効率は IR/E=R/(r+R)=1/2 である.

  2. V/E=R/(r+R)≥3/4 から R≥3r.この範囲では P は減少するため,最大は R=3r で P=3E2/(16r),効率は 3/4.R→0 と R→∞ で電力は0となり,途中の最大と整合する.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

温度上昇 θ=T−T0 の電熱線が,R=R0(1+αθ) に従う.α>0,熱容量を H,周囲への放熱率を hθ とし,温度は一様,θ(0)=0,h>αI2R0 とする.

  1. 定電流 I を流すときの θ(t) と平衡温度上昇を求めよ.

  2. V=IR0 の定電圧に変え,発熱率を αθ の1次まで展開せよ.平衡温度上昇を比較し,近似が使える条件を示せ.

定電流Iで加熱する熱容量Hの電熱線と,温度T₀の周囲への放熱hθを示す.小問(2)ではV = IR₀の定電圧源を用いる. 定電流Iで加熱する熱容量Hの電熱線と,温度T₀の周囲への放熱hθを示す.小問(2)ではV = IR₀の定電圧源を用いる.
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考え方
発熱と放熱の差が温度を変える.

  1. P0=I2R0 とおけば,Hdθdt=P0−(h−αP0)θ.h>αP0 なら θs=P0/(h−αP0) とおいて,d(θs−θ)dt=−(h−αP0)(θs−θ)/H.積分と初期条件から θ(t)=θs[1−e−(h−αP0)t/H] となる.

  2. V2/R0=P0 より,V2/R≈P0(1−αθ).したがって Hdθdt=P0−(h+αP0)θ,平衡値は θs′=P0/(h+αP0) であり,定電流より低い.近似には η=αP0/h が十分小さい必要があり,αθs=η/(1−η) も小さい.η→1 の発散は適用範囲外である.α→0 では両平衡値が P0/h に一致し,H/h は時間の次元をもつ.

ポイント 教える人へ

  • 電荷の符号から電子の速度と電流の向きを説明させてください.

  • 測定直線の傾き・切片と供給電力・内部損失を結びつけてください.

  • 小区間の電圧降下を足す理由を問うてください.

  • 電源による発熱の違いと,1次近似の条件を確かめてください.