問いしるべ
問いから始める物理 電流と回路

電流と回路

直流回路の例題

著者:柚木芹香

本体の節の道具を,測定の場面で使います.ブリッジのずれをテブナンの定理で見積もること,測定器の内部抵抗による誤差,非線形素子の動作点の3つです.どれも,測定器や素子を回路の一部として式に入れることが要点です.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

内部抵抗の無視できる起電力 E=3.0V の電池の正極を頂点A,負極を頂点Bにつなぐ.AからBへ,抵抗 R1=100Ω,接続点P,抵抗 R2=200Ω の順に直列につないだ枝と,抵抗 R3=150Ω,接続点N,抵抗 X の順に直列につないだ枝を置く.P,N間には抵抗 Rg=50Ω の検流計をつなぐ.

  1. 検流計に電流が流れないときの X を求めよ.

  2. X=310Ω のとき,検流計を流れる電流の大きさと向きを求めよ.

電池の正極をA,負極をBにつなぐ.左枝はR_1,P,R_2,右枝はR_3,N,Xの順.PとNの間に抵抗R_gの検流計を置く. 電池の正極をA,負極をBにつなぐ.左枝はR_1,P,R_2,右枝はR_3,N,Xの順.PとNの間に抵抗R_gの検流計を置く.
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考え方 (1) はブリッジの平衡の条件.(2) は検流計を外した残りを,P,N を端子とするテブナンの回路にまとめる.

  1. R1/R2=R3/X より

X=R2R3R1=200×150100Ω=300Ω
  1. 検流計を外すと,Bを基準として

VP=ER2R1+R2=2.000V,VN=EXR3+X=3.0×310460V≈2.022V

なので,開放電圧は Vth=VN−VP=146V≈0.0217V で,N の方が高い.電池を導線に置き換えるとA,Bが同じ点になり,P から見ると R1 と R2 が並列,N から見ると R3 と X が並列で,それらが直列につながる.

Rth=R1∥R2+R3∥X=100×200300Ω+150×310460Ω≈66.7Ω+101.1Ω=167.8Ω

検流計の電流は

Ig=VthRth+Rg=0.0217167.8+50A≈1.0×10−4A

で,N から P の向きに流れる.

確かめ:X=300Ω なら VN=2.000V で Ig=0 に戻る.X のずれ 10Ω で約 0.1mA なので,1μA を読める検流計なら 0.1Ω のずれまで分かる.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

抵抗 R を,電圧計の読み V と電流計の読み I から V/I として測る.電流計の内部抵抗は RA=0.50Ω,電圧計の内部抵抗は RV=5.0kΩ である.つなぎ方は次の2通りある.

  • つなぎ方 a:電流計を R と直列にし,電圧計を R と電流計の両方にまたがせる.

  • つなぎ方 b:電圧計を R の両端だけにつなぎ,電流計は R と電圧計に分かれる前に置く.

  1. R=10Ω と R=1.0kΩ のそれぞれについて,2通りのつなぎ方で V/I を求め,真の値からのずれを百分率で答えよ.

  2. つなぎ方 a の方が正確になるのは,R がどんな範囲のときか.

aでは電流計Aと抵抗Rの直列全体に電圧計Vをつなぐ.bではRだけに電圧計をつなぎ,電流計を分岐の手前に置く.計器の内部抵抗はR_AとR_V. aでは電流計Aと抵抗Rの直列全体に電圧計Vをつなぐ.bではRだけに電圧計をつなぎ,電流計を分岐の手前に置く.計器の内部抵抗はR_AとR_V.
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考え方 電流計と電圧計を内部抵抗をもつ抵抗として回路に入れ,V/I が何を測っているかを式にする.

  1. つなぎ方 a では,電圧計は R と RA の直列の電圧を読み,電流計はそこを流れる電流を読むので V/I=R+RA.相対的なずれは +RA/R である.つなぎ方 b では,電流計は R と電圧計の電流の和を読むので V/I=R∥RV=RRVR+RV.相対的なずれは −R/(R+RV) である.

R

a の V/I

a のずれ

b の V/I

b のずれ

10Ω

10.5Ω

+5.0 %

9.98Ω

−0.20 %

1.0kΩ

1.0005kΩ

+0.050 %

0.83kΩ

−17 %

小さい抵抗ではつなぎ方 b,大きい抵抗ではつなぎ方 a が正確である.

  1. a の方が正確な条件は,ずれの絶対値を比べて R/(R+RV)>RA/R.R>0 より,これは R2−RAR−RARV>0,すなわち

R>RA+RA2+4RARV2

である.境界の計算値は約 50.25Ω である.RV が R よりずっと大きい近似では,条件は R>RARV=5.0×101Ω となる.

確かめ:RA→0 なら a は常に正しく,RV→∞ なら b は常に正しい.電流計の抵抗は小さいほど,電圧計の抵抗は大きいほどよいことと合う.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

ある電球の電圧 V と電流 I の関係(特性)を測ると次の表のようになった.表の点の間は直線で結んだ折れ線を特性とみなす.

V

0V

1.0V

2.0V

3.0V

4.0V

5.0V

6.0V

I

0A

0.100A

0.150A

0.180A

0.200A

0.220A

0.235A

この電球を,内部抵抗の無視できる起電力 E=6.0V の電池と抵抗 R=10Ω に直列につなぐ.

  1. 電球の電圧と電流(動作点)を求めよ.

  2. 動作点での電球の抵抗 V/I と,表の 3.0V と 5.0V の点から求めた微分抵抗 rd を比べよ.

  3. 起電力を 0.30V だけ増やすと,電球の電流と電圧はどれだけ変わるか.微分抵抗を使って求め,表の折れ線から求めた値と比べよ.

表に与えられた電球の特性を折れ線で描き,I=(ℰ−V)/Rの直線を重ねる.交点を動作点として示す.座標値と解答で用いる接線は描かない. 表に与えられた電球の特性を折れ線で描き,I=(ℰ−V)/Rの直線を重ねる.交点を動作点として示す.座標値と解答で用いる接線は描かない.
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考え方 回路の側の関係 V=E−RI と電球の特性を同時に満たす点を探す.小さな変化は,電球を抵抗 rd に置き換えた回路で考える.

  1. 回路の側では I=(6.0−V)/10(I は A,V は V で測る).V=3.0 では直線が 0.30 で特性 0.180 より上,V=5.0 では直線が 0.10 で特性 0.220 より下なので,交点はその間にある.V=4.0 では直線も特性も 0.200 で一致するので,動作点は V=4.0V,I=0.20A である.直線は右下がり,特性は右上がりなので,交点はこの1つだけである.

  2. 動作点での抵抗は V/I=4.0/0.20Ω=20Ω.微分抵抗は

rd=5.0−3.00.220−0.180Ω=50Ω

で,V/I の2.5倍である.電流を増やすとフィラメントが熱くなって抵抗が増すので,電圧の増え方の割に電流が増えにくい.

  1. 電池と R から見ると,電球は小さな変化については抵抗 rd としてふるまうので

δI=δER+rd=0.3010+50A=5.0×10−3A,δV=rdδI=0.25V

表の折れ線で確かめる.新しい直線 I=(6.3−V)/10 と,4.0V と 5.0V の間の特性 I=0.200+0.020(V−4.0) の交点は,0.63−0.1V=0.120+0.020V から V=4.25V,I=0.205A で,上の結果と一致する.

確かめ:抵抗 V/I=20Ω を使って 0.30/(10+20)A=10mA とすると,変化を2倍に見積もってしまう.小さな変化に効くのは V/I ではなく接線の傾きである.微分抵抗で扱えるのは,変化 |δI|/I=0.025 のように,特性が直線とみなせる範囲に限られる.

ポイント ここまでのまとめ

  • ブリッジのわずかなずれは,検流計を外した残りをテブナンの回路にまとめると Ig=Vth/(Rth+Rg) で見積もれる.

  • V/I は,電流計を内側に入れると R+RA,電圧計を内側に入れると R∥RV を測る.R>RARV なら前者,小さければ後者が正確.

  • 非線形素子の動作点は,特性と直線 V=E−RI の交点.小さな変化は,素子を微分抵抗 rd に置き換えて計算する.