問いしるべ
問いから始める物理 波と音

波と音

分散と波のエネルギー流の演習

著者:柚木芹香

波の速さを比べましょう.張力は S,線密度は μ とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

弦を y=Asin⁡(ωt−kx) が進む.v=S/μ=ω/k とし,線エネルギー密度は

e=μ2(∂y∂t)2+S2(∂y∂x)2

とする.

  1. 平均 ⟨e⟩ と仕事率 P=v⟨e⟩ を求めよ.

  2. μ=2.0×10−3kgm−1,v=80ms−1,ω=200rads−1,A=1.0×10−3m で P を求めよ.

線密度μの弦を波が右向きに進む.橙で示した微小区間の両端に,弦の接線方向に張力Sが働く. 線密度μの弦を波が右向きに進む.橙で示した微小区間の両端に,弦の接線方向に張力Sが働く.
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考え方 運動と変形のエネルギーを平均する.

  1. ∂y/∂t=Aωcos⁡(ωt−kx),∂y/∂x=−Akcos⁡(ωt−kx).Sk2=μω2 と ⟨cos2⟩=1/2 より ⟨e⟩=μω2A2/2,P=μvω2A2/2.

  2. 代入すると P=3.2×10−3W.近似条件 kA=Aω/v=2.5×10−3 は十分小さい.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

幅一定の水路を長い波が x=0 から x=L へ進む.水深は h=h1−(h1−h2)x/L,h1=100m,h2=25m,L=3.0×105m である.g=10ms−2,周期 T=2.0×103s,入口の水面変位の振幅 A1=0.10m とする.v=vg=gh,単位水面積の平均エネルギーは ρgA2/2 とする.反射・散逸はないとする.

  1. 到達時間を積分で求めよ.

  2. 出口の振幅と近似条件を求めよ.

距離Lの水路で水深が入口のh_1から出口のh_2へ直線的に減る.入口の水面変位振幅A_1と入口から出口への進行方向を示す. 距離Lの水路で水深が入口のh_1から出口のh_2へ直線的に減る.入口の水面変位振幅A_1と入口から出口への進行方向を示す.
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考え方 時間を積分し,仕事率一定.

  1. dt=dx/gh と dx=−Ldh/(h1−h2) から

t=Lg(h1−h2)∫h2h1h−1/2dh=2Lg(h1+h2)≈1.3×104s.
  1. 流れは ρgA2gh/2 なので A2/A1=(h1/h2)1/4=2,A2≈0.14m.k=2π/(Tv) から,浅水の条件 kh は最大0.010,小振幅条件 A/h は最大0.0057.緩やかな変化の条件 |dh/dx|/(kh) も最大0.050で,いずれも十分小さい.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

水面波を測定した.波数の誤差を無視し,角振動数の誤差を ±0.01rads−1 とする.g=9.80ms−2 とし,候補は浅水模型 ω2=ghk2 と深水模型 ω2=gk とする.

k(m−1)

0.25

1.00

4.00

ω(rads−1)

1.57

3.13

6.26

  1. 直線化の方法を示し,誤差を考慮して模型を選べ.

  2. k0=1.00m−1 の近くの2波 y±=Asin⁡(ω±t−k±x) の和を積にし,包絡線の速さと位相速度を求めよ.k±=k0±Δk/2,Δk/k0 は十分小さい.

横軸k,縦軸ωの座標に,表の三つの測定点を示す.角振動数の誤差は±0.01 rad s⁻¹である. 横軸k,縦軸ωの座標に,表の三つの測定点を示す.角振動数の誤差は±0.01 rad s⁻¹である.
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考え方 波数依存性と包絡線を調べる.

  1. ω2 を k または k2 に対して描く.深水の予測 1.565,3.130,6.261rads−1 は誤差の範囲内.ω2/k2 は約 39.4,9.80,2.45m2s−2 で一定ではない.深水模型が合う.

  2. ω¯=(ω++ω−)/2,Δω=ω+−ω− とすると

y++y−=2Acos⁡Δωt−Δkx2sin⁡(ω¯t−k0x).

包絡線は Δω/Δk→dω/dk=g/k0/2=vg≈1.57ms−1.位相速度は v=ω/k0=g/k0≈3.13ms−1 で群速度の2倍.条件は Δk/k0 と kA が十分小さく,kh が十分大きいことである.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

張力 S,線密度 μ1,9μ1 の長い弦を,質量のない点 x=0 で結ぶ.左から波が入射する.変位は

Y1=(Aie−ik1x+Areik1x)eiωt,Y2=Atei(ωt−k2x)

の実部で,Ai>0,μ2=9μ1,kj=ωμj/S とする.

  1. 変位の連続と力のつり合いから Ar/Ai,At/Ai を求めよ.

  2. 反射・透過の仕事率の割合 R,T と保存を確かめよ.

線密度μ_1の左側の弦と線密度9μ_1の右側の弦を,質量のないx=0の点でつなぐ.張力は共通にSで,波は左から入射する. 線密度μ_1の左側の弦と線密度9μ_1の右側の弦を,質量のないx=0の点でつなぐ.張力は共通にSで,波は左から入射する.
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考え方 複素振幅に境界条件を課し,仕事率を比較する.

  1. 連続条件は Ai+Ar=At.力のつり合いは S∂Y1/∂x=S∂Y2/∂x なので k1(Ai−Ar)=k2At.解くと

ArAi=k1−k2k1+k2=−12,AtAi=2k1k1+k2=12.

k2=3k1 を使った.反射の負の係数は位相差 π を表す.

  1. 右向き波の平均仕事率は Pj=Sωkj|Aj|2/2 である.演習1に vj=ω/kj,S=μjvj2 を入れれば得られる.よって R=|Ar/Ai|2=1/4,T=(k2/k1)|At/Ai|2=3/4,和は1となる.各波で kj|Aj| が十分小さいこと.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の質点を間隔 d で無限に並べ,隣同士をばね定数 κ で結ぶ.列に沿う変位は yj とする.

  1. yj=Aei(ωt−kjd) の実部を代入し,0≤kd≤π での分散関係を導け.

  2. 長波長の速さ v0,角振動数の上限,kd=2π/3 での群速度を求めよ.上限を超す進行波はあるか.

質量mの質点を間隔dで並べ,隣同士をばね定数κのばねでつなぐ.中央の質点の変位y_jは列に沿う右向きを正とする. 質量mの質点を間隔dで並べ,隣同士をばね定数κのばねでつなぐ.中央の質点の変位y_jは列に沿う右向きを正とする.
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考え方 隣との位相差を残し,連続近似を調べる.

  1. md2yjdt2=κ(yj+1−2yj+yj−1).共通因子を消すと −mω2=κ(eikd+e−ikd−2)=−4κsin2⁡(kd/2).よって ω=2κ/msin⁡(kd/2) である.

  2. kd が小さければ sin⁡(kd/2)≈kd/2 より v0=dκ/m.よって ωmax=2v0/d.微分すると vg=v0cos⁡(kd/2) なので指定点では vg=v0/2.上限を超すと実数の k はなく,進行波はない.上限では vg=0 で,エネルギー流も0.連続近似には kd,線形近似には |yj+1−yj|/d が十分小さいことが必要である.

ポイント 教える人へ

  • 位相,包絡線,媒質の速さを区別させます.

  • 弦と水面波のエネルギー密度の単位を確かめます.

  • 境界の変位と力から反射の符号を問います.

  • 波長との比から近似の限界を問います.