問いしるべ
問いから始める物理 電磁気と波の総合演習

電磁気と波の総合演習

測定から模型を決める

著者:柚木芹香

第14章の直線化と不確かさを,第20・21章の電荷と回路,第23章の共振,第27章の干渉計に組み合わせます.測定器の負荷と零点も含めます.測り方を替えて検査します.不確かさは小さい誤差の一次までを残し,積・商の相対不確かさの上限を,各相対不確かさの和で見積もります.

総合演習 19

オリジナル ★★★★☆

電圧計を替えて漏れを測る

未知の容量 C のコンデンサーには,電圧によらない未知の漏れ抵抗 Rp が並列に付いています.電圧計の入力抵抗 Rm も並列に入ります.コンデンサーの両端電圧を V(t),電圧計の表示を Y(t)=V(t)+b とし,零点のずれ b は時間によらず,電圧計を替えても同じとします.各測定で同じ電圧に充電して電源を切り離し,次の表示を得ました.

測定

入力抵抗

時間間隔 Δt

Y(0)

Y(Δt)

Y(2Δt)

Y(3Δt)

A

1.00×106Ω

0.693s

4.10V

2.10V

1.10V

0.600V

B

2.50×105Ω

0.277s

4.10V

2.10V

1.10V

0.600V

表示と抵抗の不確かさを無視し,各時定数の相対不確かさの上限を2 %とします.配線の抵抗・自己誘導,容量の電圧依存,温度変化は無視します.

  1. 放電の微分方程式を立て,等間隔の表示の差から時定数 τ と b を求める方法を導け.測定 A・B に適用し,ln⁡Y を時刻に対して直線化する方法の問題点も説明せよ.

  2. C,Rp を決め,C の相対不確かさの上限を求めよ.2種類の入力抵抗が近いと推定が不安定になる理由を述べよ.

  3. 測定 A で初めに蓄えたエネルギーと,漏れ抵抗・電圧計で発生する全ジュール熱を求めよ.さらに,別の放電で隣り合う表示の差の比が時間とともに変わった場合,この模型のどの仮定を検討すべきか挙げよ.

コンデンサー,漏れ抵抗,電圧計を並列に描く.電源切断のスイッチ,\(C,R_p,R_m\),両端電圧 \(V\) と表示 \(Y\) を記す. コンデンサー,漏れ抵抗,電圧計を並列に描く.電源切断のスイッチ,\(C,R_p,R_m\),両端電圧 \(V\) と表示 \(Y\) を記す.
解答を見る

考え方

2本の放電電流を足す.表示の差で零点のずれを消し,入力抵抗の異なる測定から容量と漏れを分離する.容量・抵抗・零点一定の模型を使う.

  1. 正に帯電した極板の電荷は Q=CV であり,外へ流れる電流は V/Rp+V/Rm である.したがって

CdVdt=−(1Rp+1Rm)V,V(t)=Vie−t/τ,1τ=1C(1Rp+1Rm).

r=e−Δt/τ,Yj=Y(jΔt) とおくと Yj=b+Virj.連続する差 Dj=Yj−Yj+1 は Vi(1−r)rj なので

r=Dj+1Dj,τ=−Δtln⁡r,b=Yj+1−rYj1−r.

両測定の差は 2.00,1.00,0.500V,比は 1/2 である.よって b=0.100V,Vi=4.00V,τA=0.693/ln⁡2≃1.00s,τB=0.277/ln⁡2≃0.400s となる.

正しい直線化は ln⁡[(Y−b)/Vi]=−t/τ である.一方,dln⁡Ydt=−V/[τ(V+b)] は一定ではない.正の零点ずれがあると,放電後半ほど見かけの時定数が大きくなる.

  1. aA=1/τA,aB=1/τB,gA=1/Rm,A,gB=1/Rm,B とおく.2式の差から

C=gB−gAaB−aA=3.00×10−6ln⁡2/0.277−ln⁡2/0.693F≃2.00×10−6F.

未丸め値では C=1.99717×10−6F,1/Rp=CaA−gA=9.97596×10−7Ω−1 なので,Rp≃1.00×106Ω である.それぞれの逆数の相対不確かさも一次では2 %だから,差の絶対不確かさの上限は

δ(aB−aA)≤0.02(aB+aA)=0.0700s−1,δCC≤0.07001.50≃0.047.

従って容量の相対不確かさの上限は約4.7 %である.入力抵抗が近いと gB−gA,従って aB−aA が小さくなる.差に誤差が残り,相対不確かさが拡大する.

  1. 初めの場のエネルギーは Ui=CVi2/2≃1.60×10−5J である.測定中は電源が切り離されており,b は蓄える電圧に含めない.抵抗 Rj の熱を積分すると

Hj=∫0∞Vi2e−2t/τARjdt=Vi2τA2Rj=Ui1/Rj1/Rp+1/Rm,A.

未丸めの時定数と抵抗を使うと Hp≃7.98×10−6J,Hm≃8.00×10−6J.両抵抗はほぼ等しいが厳密には異なり,未丸めの熱の和は Ui と一致する.

差の比が一定でない場合,漏れ抵抗や容量の電圧依存,複数の時定数,零点の時間変化を検討する.放電終盤は丸めや雑音も比を乱すため,模型の破綻とは即断できない.配線長 ℓ,伝播速度 vs に対し ℓ/(vsτB) が十分小さく,自己誘導による過渡が測定の時間間隔より短いことが必要である.

総合演習 20

オリジナル ★★★★☆

共振曲線と自由減衰は同じコイルを示すか

未知のインダクタンス L と内部抵抗 r をもつコイル,未知のコンデンサー C,既知の抵抗 Rs=12.0Ω を直列につなぎます.電源の実効電圧は全角振動数で Ve=3.00V です.定常状態の電流の実効値を測ると,最大は ω0=1.000×103rads−1 で,次の値を得ました.半値とは電力が最大の半分になることです.

位置

ω

Ie

低周波側の半値

800rads−1

0.0707A

最大

1000rads−1

0.100A

高周波側の半値

1250rads−1

0.0707A

電源を短絡し,同じ閉回路の自由減衰を測りました.同符号の隣り合う電流の極大の間隔は 6.45ms,極大の大きさの比は後の値を前の値で割って0.400でした.内部抵抗一定,コンデンサーの漏れなし,磁気飽和なしを候補の模型とします.

  1. 複素インピーダンスから共振曲線を導き,r,L,C と,共振の鋭さ Q=ω0L/(Rs+r) を求めよ.半値点の差と積がどの量を与えるかも導け.

  2. 電源短絡後の特性方程式を複素指数関数で解き,周期と極大の比を予測せよ.測定と模型の整合性を判定せよ.

  3. Ve,Ie(ω0),ω0 の相対不確かさの上限をそれぞれ1 %,2 %,0.3 %,各半値角振動数の絶対不確かさを 5rads−1 とする.L,C の相対不確かさを見積もり,極大の比の食い違いを容量の測定誤差だけで説明できるか論じよ.

交流電源,抵抗,内部抵抗付きコイル,コンデンサーの直列回路を描く.電源を短絡へ切り替えるスイッチと電流測定位置を示し,図の別枠に表で与えた3測定点だけを置く. 交流電源,抵抗,内部抵抗付きコイル,コンデンサーの直列回路を描く.電源を短絡へ切り替えるスイッチと電流測定位置を示し,図の別枠に表で与えた3測定点だけを置く.
解答を見る

考え方

定常応答の幅と最大位置から定数を決め,自由減衰も計算する.電源短絡後にも Rs が残る.

  1. R=Rs+r とし,電圧・電流をそれぞれ複素振幅 V^,I^ に eiωt を掛けた実部とする.振幅 V0=2Ve の電源に対し

Z=R+iωL+1iωC=R+i(ωL−1ωC),I^=V^Z,Ie=VeR2+(ωL−1/(ωC))2.

最大ではリアクタンスが0だから ω02=1/(LC),R=3.00/0.100=30.0Ω,r=18.0Ω となる.半値点 ω−,ω+ は

ω−L−1ω−C=−R,ω+L−1ω+C=R.

各式を角振動数で掛け,差と和を整理すると ω+−ω−=R/L,ω−ω+=1/(LC)=ω02 である.従って

L=30.0450H=0.0667H,C=1Lω02=1.50×10−5F,Q=1000450=2.22.

半値点の幾何平均が最大の位置を与える.

  1. 極板の電荷 q と電流 I=dqdt に対し Ld2qdt2+Rdqdt+q/C=0.q∝est として

Ls2+Rs+1C=0,s=−α±iωd,α=R2L=225s−1,ωd=ω02−α2=974rads−1.

電流も e−αt と正弦波の積である.同符号の極大は位相が 2π 増えた位置にあり,時間間隔と比は

Td=2πωd=6.45ms,η=e−αTd=0.234.

周期は合うが比は合わない.測定値から逆に得る減衰率は −ln⁡0.400/Td=142s−1 である.同じ線形直列回路では両測定を説明できない.コイルの振幅依存,切り替え後の回路,測定器の接続を調べる.

  1. R=Ve/Ie(ω0) の相対不確かさの上限は3 %.幅 D=ω+−ω−=450rads−1 の不確かさは最大 10rads−1,相対値は2.22 %である.従って

δLL≤0.030+10450=0.0522,δCC≤δLL+2δω0ω0=0.0582.

約5.2 %と5.8 %となる.α=D/2 は容量によらず,その不確かさは 5s−1 である.周期の測定値をそのまま使えば予測比は約0.227〜0.242であり,0.400には届かない.容量の誤差では説明できない.

模型のエネルギー LI2/2+q2/(2C) は dUdt=−RI2 を満たす.振幅による定数の変化率と ωℓ/vs が十分小さいことが必要である.また α/ω0=0.225 は0とみなせないため,減衰周期を無減衰周期に置き換えずに検算した.

総合演習 21

オリジナル ★★★★☆

気体の屈折率と測定管の伸びを分ける

マイケルソン干渉計の一方の腕に,気体を出し入れできる透明な管を入れます.光は管を往復し,真空中の波長は λ=600nm です.管内の気体は一様な希薄理想気体で,屈折率を n−1=Kp/T とする模型を考えます.K は未知の定数です.管の長さは ℓ(T)=ℓ0[1+α(T−T0)],ℓ0=0.100m,T0=300K とします.窓などによる,圧力によらない位相の変化もあります.

最初の T0・真空での位相を基準に,位相差の変化を 2π で割った符号付き縞数 N を連続して測りました.端数も読み取れます.

温度

p=0

p=20.0kPa

p=40.0kPa

300K

0.00

20.00

40.00

400K

3.00

18.15

33.30

  1. 各温度の真空での縞数を Nb(T) とし,N(p,T) の式を導け.圧力に対する傾きから K,α を決め,300K,100kPa での屈折率を求めよ.

  2. 各傾きの絶対不確かさの上限が 0.005kPa−1 で,他の量の不確かさを無視できるとする.K,α の不確かさを見積もり,管の伸びを検出したといえるか判定せよ.

  3. 管の断面積を温度によらず一定とし,T0,p0=40.0kPa で弁を閉じて 400K まで温める.密閉した同じ気体が管の伸びに合わせて全体積を変えるとき,圧力と縞数の変化を予測せよ.定圧で温める場合との違いを説明せよ.

2腕の干渉計の一方に,圧力計,温度計,弁を付けた気体管を置く.管内の往復光路と基準の腕を描き,\(\ell(T),p,T,\lambda\) を示す. 2腕の干渉計の一方に,圧力計,温度計,弁を付けた気体管を置く.管内の往復光路と基準の腕を描き,\(\ell(T),p,T,\lambda\) を示す.
解答を見る

考え方

真空測定を引いて背景を消し,傾きの温度依存から気体密度と管の伸びを分ける.密閉加熱には粒子数一定の条件を使う.

  1. T1=400K とする.往復の光路差は 2ℓ(T)(n−1) だから

N(p,T)=Nb(T)+s(T)p,s(T)=2Kℓ0λT[1+α(T−T0)].

表から s0=1.000kPa−1=1.000×10−3Pa−1,s1=0.7575kPa−1.従って

K=λT0s02ℓ0=9.00×10−7KPa−1,α=(T1/T0)(s1/s0)−1T1−T0=1.00×10−4K−1.

100kPa で n=1+Kp/T0=1.000300 と予測する.400K の真空の3縞を引かずに原点を通る直線を当てはめると,気体の係数まで誤る.

  1. K の相対不確かさは 0.005/1.000=0.005,従って δK≤4.5×10−9KPa−1 である.F=(T1/T0)(s1/s0)=1.010 とすると

δF≤F(0.0050.7575+0.0051.000)≃0.0117,δα≤δF100K=1.17×10−4K−1.

この上限は推定した α 自身より大きく,α=0 を排除できない.管の伸びは近い量の差から決めるため,高い精度が必要である.

  1. 断面積一定,粒子数一定の状態方程式は p(T)ℓ(T)/T=p0ℓ0/T0 となる.推定値を用いると

p(T1)=p0T1T0ℓ0ℓ(T1)=40.040030011.010kPa=52.8kPa.

気体に由来する縞数は 2Kp(T)ℓ(T)/(λT)=2Kp0ℓ0/(λT0)=40.00 で変化しない.変化するのは背景だけなので,終値は43.00,変化は3.00縞である.定圧の 40.0kPa なら表の終値33.30で,初めからの変化は −6.70 縞になる.

屈折率の減少を管の伸びが補償する.相殺は断面積一定と n−1∝p/T による.確かめとして n−1=3.00×10−4,α(T1−T0)=0.0100 はともに十分小さい.高密度での屈折率の非線形性,断面積の熱膨張,窓の圧力依存を含めれば相殺も背景除去も修正が要る.