問いしるべ
問いから始める物理 電磁気と波の総合演習

電磁気と波の総合演習

東大の電磁気・波の過去問を発展させる

著者:柚木芹香

第20・21章の電荷と回路,第22・23章の誘導,第26・27章の光を,第7章の振動,第14章の測定に組み合わせます.結合の不完全さ,電荷の遅れ,波長の違いを調べます.保存則と応答の速さを区別してください.最後に実験と照合します.

総合演習 22

東京大 2002 前期(改題) ★★★★☆

結合が不完全なコイルで負荷を選ぶ

結合した2コイルの自己インダクタンスを L1,L2,相互インダクタンスを M>0 とします.一次側は抵抗 R1 と電源 V0cos⁡ωt,二次側は可変抵抗 R2>0 で閉じます.電流方向は磁気エネルギーが UB=L1I12/2+MI1I2+L2I22/2 となるように選びます.巻線抵抗を含め,容量,鉄心の損失,飽和を無視します.M2<L1L2 とします.

L1=0.200H,L2=0.0500H,M=0.0800H,R1=4.00Ω,ω=100rads−1,V0=10.0V とします.

  1. 複素振幅 I^1,I^2 の連立方程式と,電源から見たインピーダンスを求めよ.

  2. 二次抵抗での平均電力 P2 を R2 の関数として求め,それを最大にする R2 と最大電力を求めよ.

  3. 二次側のリアクタンス ωL2 に R2 を合わせれば最大電力になる,という判断を検討せよ.電源と両抵抗の平均電力の収支も確かめよ.

一次閉回路に交流電源と \(R_1,L_1\),二次閉回路に \(R_2,L_2\) を描き,結合 \(M\),電流の向きと巻き方向を記す. 一次閉回路に交流電源と \(R_1,L_1\),二次閉回路に \(R_2,L_2\) を描き,結合 \(M\),電流の向きと巻き方向を記す.
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考え方

素子一定の線形集中定数回路として,2回路を同時に解く.

  1. 電流を I^jeiωt の実部とすれば

(R1+iωL1)I^1+iωMI^2=V0,iωMI^1+(R2+iωL2)I^2=0.

後式より I^2=−iωMI^1/(R2+iωL2).これを前式へ代入すると

Zin=R1+iωL1+ω2M2R2+iωL2,I^1=V0Zin.
  1. D=L1L2−M2>0 とおく.行列式を実部と虚部に分けると

I^2=−iωMV0R1R2−ω2D+iω(R1L2+R2L1),P2=R2ω2M2V022[(R1R2−ω2D)2+ω2(R1L2+R2L1)2].

分母の括弧内は aR22+bR2+c と書け,

a=R12+ω2L12,b=2R1ω2M2,c=ω4D2+ω2R12L22.

A=ω2M2V02/2 とすると P2=AR2/(aR22+bR2+c) だから

dP2dR2=Ac−aR22(aR22+bR2+c)2.

最大は R2∗=c/a である.代入して R2∗=2.02Ω,P2,max=1.46W.aR22,bR2,c の次元はすべて抵抗の4乗である.

  1. ωL2=5.00Ω は最適値と異なる.二次電圧を負荷によらず一定とすれば R2=ωL2 が出る.今回は一次電流も負荷で変わる.

時間領域の2式を各 I1,I2 で掛けて足すと

V(t)I1=R1I12+R2I22+dUBdt.

一周期で UB が戻るため,電源の平均電力は R1|I^1|2/2+P2 である.配線長 ℓ,伝播速度 vs に対し ωℓ/vs と鉄心の非線形・損失補正が十分小さくなければならない.

総合演習 23

東京大 1990 前期(改題) ★★★★★

抵抗を通した電荷の遅れが回転を減衰させる

回転式コンデンサーを慣性モーメント J の軸とねじりばねにつなぎます.角 θ=0 付近で C(θ)=C0+c1θ+c2θ2/2,C0,c1,c2>0 とします.ばねのトルクは −κ(θ−θr).電圧 V0 で0を平衡とするため θr=−V02c1/(2κ) とします.重力,軸の摩擦,端の電場,回路の自己誘導を無視します.

  1. 電圧一定での電気的トルクを,電源の仕事と静電エネルギーから導け.電荷を Q0=C0V0 に固定した場合を考え,両場合の0付近の小振動の角振動数と安定条件を比較せよ.

  2. 電圧一定で安定な系を,抵抗 R を通して電源 V0 へつなぎ,外部トルク Tacos⁡ωt を加えた定常応答で,θ と電圧ずれ δV の複素振幅を求めよ.τ=RC0 とし,ばねの強さと減衰係数を表せ.

  3. 外部駆動で振幅 A と ω を保つとき,一周期のジュール熱を求め,熱が最大になる R を求めよ.

ねじりばねと回転軸につながる可動極板,固定極板,抵抗付き直流電源を描く.角度 \(\theta\),回転の向き,容量 \(C(\theta)\),外部トルクを示す. ねじりばねと回転軸につながる可動極板,固定極板,抵抗付き直流電源を描く.角度 \(\theta\),回転の向き,容量 \(C(\theta)\),外部トルクを示す.
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考え方

電源を含めて仕事を数える.有限抵抗での電荷の遅れを一次までの応答で求める.

  1. 電源の仕事は dWs=V0dQ=V02dC,場の増加は dU=V02dC/2 である.差が軸の仕事なので,トルクは Te=V02(c1+c2θ)/2.合トルクは −κVθ,ただし κV=κ−V02c2/2 である.

電荷一定では U=Q02/[2C(θ)] から

Te=−dUdθ=Q02(c1+c2θ)2C2,dTedθ∫|θ=0=V02c22−V02c12C0.

0でのトルクは同じである.G=V02c12/C0>0 とおけば

ωV=κVJ,ωQ=κV+GJ.

安定条件は各根号の中が正であること.

  1. 電荷変化は δQ=C0δV+V0c1θ,電源の式は RI+δV=0,I=dδQdt である.eiωt の実部で表し,複素振幅を使うと

δV^=−V0c1C0iωτ1+iωτθ^,θ^=TaκV−Jω2+Giωτ1+iωτ.

ix/(1+ix)=(x2+ix)/(1+x2) だから,分母の実部と虚部は

κeff−Jω2+iωΓ,κeff=κV+Gω2τ21+ω2τ2,Γ=Gτ1+ω2τ2>0.

θ(t) は θ^eiωt の実部である.ωτ→0 では電圧一定,ωτ→∞ では電荷一定のばねの強さを回収する.

  1. 電流振幅は |I^|=V0c1ωA/1+ω2τ2.平均発熱 R|I^|2/2 に周期を掛けると

H=πGA2ωτ1+ω2τ2=πΓωA2.

x/(1+x2) の微分は (1−x2)/(1+x2)2 なので,最大は ωτ=1,R=1/(ωC0) で,Hmax=πGA2/2 となる.電荷が戻るため直流電源の正味の仕事 V0∫Idt は0で,熱は機械的駆動から来る.

近似条件は |c1A|/C0,|c2A2|/C0,|δV|/V0 が十分小さいことである.

総合演習 24

東京大 2014 前期(改題) ★★★★☆

不等間隔スリットはどの波長を集めるか

遮光板に,y=±yj,yj2=2jλ0f0,j=1,…,N の位置で z 方向に伸びる細いスリットを開けます.y=0 のスリットはありません.スリットごとの振幅を同じ as とし,伝播距離による差を無視します.光路はスリットの横位置の2次までの近軸近似で求めます.f0=0.400m,λ0=600nm,N=40 とします.

  1. 波長 λ0 の平面波を垂直に入射させると,板から距離 f0 の軸上で各スリットの光が強め合うことを示せ.同次数で波長 λ を集める距離 f(λ) を求めよ.

  2. 板の手前の軸上,距離 a=1.20m に点光源を置く.第一の集光次数について,像までの距離 b の式と,λ=660nm での値を求めよ.

  3. 平面波の配置に戻し,検出器を f0 に固定する.軸上の強さを設計波長での強さで割った式を,複素振幅の和から導け.設計波長に最も近い両側の零点の波長を求め,近軸展開で位相まで正しく保つ条件を検討せよ.

遮光板の対称な不等間隔スリットと軸を描く.平面波入射の配置,距離 \(a\) の点光源と距離 \(b\) の観測点の配置を並べ,\(y_j\) と最外スリットを示す. 遮光板の対称な不等間隔スリットと軸を描く.平面波入射の配置,距離 \(a\) の点光源と距離 \(b\) の観測点の配置を並べ,\(y_j\) と最外スリットを示す.
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考え方

光路を二次まで展開し,複素振幅を幾何級数で足す.

  1. 軸上距離 b までの光路は b2+yj2≃b+yj2/(2b).b=f0 なら中心軸からの余分な距離は jλ0 で,位相差は 2πj となる.対称な組の光路も等しく,2N 本が強め合う.波長 λ の同次数では yj2/(2f)=jλ より f(λ)=f0λ0/λ.

  2. 入射側の光路も加えると,j に依存する部分は yj2(1/a+1/b)/2.光路差を λ とする条件は

1a+1b=λλ0f0,b=(λλ0f0−1a)−1.

右辺が正なら後方に実像ができる.660nm で b=0.522m.

  1. ϵ=λ0/λ−1 とおく.共通位相を除くと

A=2as∑j=1Ne−2πijϵ,∑j=1Ne−2πijϵ=e−πi(N+1)ϵsin⁡(Nπϵ)sin⁡(πϵ).

強さは複素振幅の絶対値の二乗に比例するので

I(λ)I(λ0)=1N2[sin⁡(Nπϵ)sin⁡(πϵ)]2.

極限は1である.近い零点は ϵ=±1/N だから,λ=λ0/(1+1/N)=585nm,λ0/(1−1/N)=615nm である.

二次近似が捨てた光路は最大で yN4/(8f03) 程度で,その位相誤差は設計波長で πN2λ0/f0 程度である.今回は yN/f0=0.0110,位相誤差は 0.00754rad で,ともに小さい.入射側の四次の項も波長と比べる.

総合演習 25

東京大 1998 後期(改題) ★★★★☆

ホール電圧の反転と,立ち上がる時間

長さ ℓ=0.0400m,幅 w=0.0100m,厚さ d=0.500mm の直方体試料に,x 方向の電流 I と z 方向の磁場 B を加えます.横電圧は VH=V(y=0)−V(y=w) と定義します.電子のみが伝導し,その数密度を n,質量を m=9.10×10−31kg,電荷を −e,e=1.60×10−19C とします.縦の抵抗は R=80.0Ω です.

表示には接点位置による ηIR と,電流・磁場によらない Vb が混ざり,Y(I,B)=VH(I,B)+ηIR+Vb です.I0=0.0100A,B0=0.200T で次の値を得ました.

(I,B)

(I0,B0)

(I0,−B0)

(−I0,B0)

(−I0,−B0)

表示 Y

−0.500mV

1.100mV

0.700mV

−0.900mV

平均速度には mdvdt=−e(E+v×B)−mv/τc という緩和模型を与えます.試料の有効な誘電率は ε=1.00×10−7Fm−1 です.

  1. 定常状態で横電流が0となる条件から VH を導き,4測定から n を求めよ.

  2. 磁場なしの定常伝導から抵抗率 ρ と τc を求めよ.

  3. 電流を I0 に保ち,磁場を0から B0 へ切り替える.切り替え後の時間を t とし,電子の慣性を無視して横電場の立ち上がりを求めよ.側面の回路は開き,jy+εdEydt=0 が成り立つ.立ち上がり時間と緩和時間を比較せよ.

直方体試料に \(x,y,z\) 軸,電流,磁場を示し,横の2接点と縦の抵抗測定端子を描く.幅 \(w\),厚さ \(d\),長さ \(\ell\) と,横電圧の定義を記す. 直方体試料に \(x,y,z\) 軸,電流,磁場を示し,横の2接点と縦の抵抗測定端子を描く.幅 \(w\),厚さ \(d\),長さ \(\ell\) と,横電圧の定義を記す.
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考え方

電流・磁場の反転で背景を消す.速度の緩和と側面の電荷蓄積の時間を分ける.

  1. I=−nevxwd.横速度0でローレンツ力の横成分が消える条件は Ey−vxB=0 である.電位差の定義から VH=Eyw なので

VH=−IBned.

表の順で表示を Y1,Y2,Y3,Y4 とすると

VH(I0,B0)=Y1−Y2−Y3+Y44=−0.800mV.

従って n=I0B0/[ed|VH|]=3.13×1022m−3.

  1. 磁場なしの定常状態では vx=−eτcEx/m,従って jx=ne2τcEx/m.ρ=Ex/jx と R=ρℓ/(wd) より

ρ=Rwdℓ=0.0100Ωm,τc=mne2ρ=1.14×10−13s.
  1. 慣性を落とした横成分から jy=σ(Ey−vxB0),σ=1/ρ である.与えた全電流の条件を使うと

εdEydt+σEy=σvxB0,Ey(t)=vxB0(1−e−t/τH),τH=ερ=1.00ns.

初期値0より VH(t)=−0.800(1−e−t/τH)mV.電荷蓄積と伝導が決める時間で,τc より約 8.8×103 倍長く,同一視できない.

切り替えは τc より遅く τH より速く,誘導電場・配線の遅れを無視する.τc/τH=1.14×10−4,eB0τc/m=0.00400 が小さく,慣性と縦電流の補正を無視できる.