問いしるべ
問いから始める物理 電磁気と波の総合演習

電磁気と波の総合演習

東大の電磁気・波の過去問を発展させる

著者:柚木芹香

第25・27章の波と光を,第7章の振動,第14章の測定と組み合わせます.回路は第21・23章の電流とエネルギーで解きます.発生・反射・受信の時刻を区別してください.最後に逆算の精度,損失,背景を調べます.

総合演習 26

東京大 1994 後期(改題) ★★★★☆

周波数の揺れと反射縞から音源を探す

静止空気の音速は v=340ms−1 です.鉛直で平らな壁を x=0,水平な観測線を y=0 とし,音源を (d,h),d=0.500m に置きます.壁以外の反射を無視します.周波数 f0,高さ h は未知です.

壁を吸音材で覆い,音源を鉛直に小さく単振動させると,直下 (d,0) で受ける周波数の最大は 5100Hz,最小は 4900Hz,変動周期は 0.200s でした.次に吸音材を除き音源を止めると,(X,0) 付近に反射音と直接音の干渉縞が生じ,隣り合う強め合いの間隔は 0.680m でした.測定位置は h に比べて |X|,d が小さい範囲です.反射での位相変化は0とします.

  1. f0,音源の最大速さと振幅を求めよ.受信周期と運動周期が等しい理由も示せ.

  2. 光路差に相当する音の経路差から h を決め,近似の条件も確かめよ.

  3. 音源が同じ x=d の線上,高さ H で短い音波の束を発する.直下での直接音と反射音の到着時刻の差を Δt として H を逆算する式を導け.H=8.00m で到着時刻差を求め,連続音との違いを述べよ.

鉛直壁,音源の平衡位置 \((d,h)\),直下の観測点と観測線上の点 \((X,0)\) を描く.直接経路と壁を経る経路,鏡像音源を示す. 鉛直壁,音源の平衡位置 \((d,h)\),直下の観測点と観測線上の点 \((X,0)\) を描く.直接経路と壁を経る経路,鏡像音源を示す.
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考え方

周波数の極値で速度,干渉縞で位置を決める.静止空気,点音源と平面反射を仮定する.

  1. 最大速さを um とすると,音源が下向きで接近,上向きで遠ざかり

fmax=f01−um/v,fmin=f01+um/v.

両式の逆数を加え,差も取れば

f0=2fmaxfminfmax+fmin=4998Hz,um=vfmax−fminfmax+fmin=6.80ms−1.

発生時刻を s,直下までの距離を r(s) とすれば受信時刻は t=s+r(s)/v.一周期後に距離が戻るため t(s+T)−t(s)=T で,受信周期も T=0.200s である.従って振幅は A=umT/(2π)=0.216m.

  1. 直接経路と反射経路の長さは rD=h2+(X−d)2,rR=h2+(X+d)2.二次まで展開すると

Δ=rR−rD≃2dXh,δX=hλ2d,h=2df0δXv=10.0m,λ=vf0.
  1. 発生位置が共通なので

vΔt=H2+4d2−H,H=4d2−(vΔt)22vΔt.

数値は Δt=1.83×10−4s である.束の間の運動を無視する.

連続音の同一受信時刻では,反射音は早く発生した音である.加速する音源では,発生速度を分ける.vΔt→0 では高さが増す一方,時間差の相対誤差も拡大する.干渉の近似には d/h,|X|/h が小さく,捨てた経路差を λ で割った量も小さいことが要る.A/h=0.0216,um/v=0.0200 も小さい.

総合演習 27

東京大 2013 前期(改題) ★★★★☆

2つの角度の反射時間で深さと音速を分ける

2液体 A・B の平面境界に超音波を送ります.A の厚さは hA=0.0200m,音速は vA=1.50×103ms−1 です.B の音速 vB と境界からの深さ h にある小さな散乱体の位置は未知です.音は各層で一定速度で進み,境界の法線に対する入射角を θ,屈折角を ϕ とします.入射経路を戻る後方散乱を測ります.

送受信点を動かして散乱体を測ると,垂直入射の往復時間は t0=56.67μs,θ=30.0∘ の往復時間は tθ=71.04μs でした.散乱体の大きさ,分散,多重反射,装置の遅れを無視します.

  1. 境界で位相がつながる条件から屈折の法則を導き,往復時間を表せ.

  2. 2測定から vB,h を求めよ.

  3. 入射角を小さくすると深さと音速の分離が難しくなる理由を,θ の二次までの展開から説明せよ.各時間の不確かさを 0.20μs とし,θ=3.0∘ での2層目の時間差と比較せよ.大きい角度にも測定上の限界があることを述べよ.

厚さ \(h_A\) の液体 A と液体 B,小さな散乱体を描く.垂直経路と屈折した往復経路,角 \(\theta,\phi\),散乱体の深さ \(h\),送受信点を示す. 厚さ \(h_A\) の液体 A と液体 B,小さな散乱体を描く.垂直経路と屈折した往復経路,角 \(\theta,\phi\),散乱体の深さ \(h\),送受信点を示す.
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考え方

垂直入射で深さと音速の比,斜め入射で音速を決める.層と経路が波長より十分長い模型を使う.

  1. 接線座標を x とすると,入射・透過波の位相の傾きは kAsin⁡θ,kBsin⁡ϕ である.両者は等しく,振動数も共通なので kj=2πf/vj を使って

sin⁡θvA=sin⁡ϕvB,tθ=2(hAvAcos⁡θ+hvBcos⁡ϕ).
  1. A 内の既知の時間を引き,s0=t0−2hA/vA,sθ=tθ−2hA/(vAcos⁡θ) とおく.すると

s0=2hvB,s0sθ=cos⁡ϕ=1−(vBvAsin⁡θ)2,

従って

vB=vAsin⁡θ1−(s0sθ)2,h=vBs02.

s0=30.00μs,sθ=40.25μs を代入して vB=2.00×103ms−1,h=0.0300m.sin⁡ϕ=2/3,ϕ=41.8∘ で,両時間を再現する.

  1. sin⁡θ≃θ,(1−x)−1/2≃1+x/2 を使うと

sθ−s0≃s02(vBvA)2θ2.

角度を小さくすると違いは二次で消える.3.0∘=0.0524rad では,差は約 0.0731μs である.差の不確かさは 0.20+0.20=0.40μs となり,信号の違いより大きい.時間差が小さく,vB を精密に決められない.

大角度では差が増えるが,(vB/vA)sin⁡θ<1 を満たす必要である.臨界角近くでは横の移動と経路が長く,有限の試料と減衰に制限される.小角展開の条件は (vB/vA)2θ2 が十分小さいことで,3.0∘ では0.00487である.逆算には屈折の式を用いた.

総合演習 28

東京大 1998 前期(改題) ★★★★☆

コイルの電流を待ってから電圧へ変える

L=0.0200H,内部抵抗 r=4.00Ω のコイルに,電源から定常電流 I0=4.00A を流しておきます.電源を切り離し,コイルを抵抗のない導線で短絡して tw=3.00ms だけ待ちます.次に導線を無電荷の C=50.0μF のコンデンサーに替えます.切り替え中も電流の道を確保し,電流・電荷は連続とします.

接続時刻を t=0 とし,極板へ入る電流を I=dqdt とします.コイルの飽和,容量の漏れ,配線の容量・抵抗,切り替え中の損失を無視します.

  1. 待ち時間後の電流 Iw と,その間の発熱を求めよ.

  2. コンデンサー接続後の q(t) を複素指数関数から求め,電圧が初めて最大になる時刻と値を求めよ.初めの磁気エネルギーに対する最大時の静電エネルギーの割合も求めよ.

  3. 同じ素子で,最大電圧を 40.0V 以上にするために許される待ち時間の上限を求めよ.損失を無視する条件も述べよ.

電流準備,コイル短絡,コンデンサー接続の3回路を並べる.コイル内部抵抗 \(r\),\(L,C\),電流の連続する方向,時間 \(t_w\) を示す. 電流準備,コイル短絡,コンデンサー接続の3回路を並べる.コイル内部抵抗 \(r\),\(L,C\),電流の連続する方向,時間 \(t_w\) を示す.
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考え方

電流を引き継ぎ,各区間の発熱を差し引く.素子一定の線形回路とする.

  1. 待つ間は LdIdt+rI=0 なので Iw=I0e−rtw/L=2.20A.初めの磁気エネルギーは U0=LI02/2=0.160J,待ち時間後は Uw=LIw2/2=0.0482J.発熱は

Hw=∫0twrI02e−2rt/Ldt=LI022(1−e−2rtw/L)=0.112J.

和は U0 に戻る.

  1. q(0)=0,dqdt(0)=Iw として

Ld2qdt2+rdqdt+qC=0,s2+2αs+ω02=0,α=r2L,ω0=1LC.

根は s=−α±iωd,ωd=ω02−α2.2根から実解を作り,初期条件を入れると

q(t)=Iwωde−αtsin⁡ωdt,I(t)=Iwe−αt(cos⁡ωdt−αωdsin⁡ωdt).

V=q/C の最初の最大は I=0 だから

t∗=1ωdarctan⁡ωdα,Vmax=IwLCe−αt∗.

sin⁡(ωdt∗)=ωd/ω0 を用いた.数値は α=100s−1,ωd=995rads−1,t∗=1.48ms,Vmax=37.9V である.初めの磁気エネルギーに対する最大時の割合は

CVmax2/2LI02/2=e−2rtw/L−2αt∗=0.224.

2.24割で,静電エネルギーは 0.0359J.残りは発熱である.

  1. 最大電圧は I0L/Cexp⁡[−rtw/L−αt∗] なので,指定電圧を Va とすると

tw≤Lrln⁡(I0L/Ce−αt∗Va)=2.73ms.

3.00ms は上限を超える.

待ち区間と最初の電圧最大までの損失をともに省くには,rtw/L と αt∗ がそれぞれ十分小さい必要がある.弱減衰なら αt∗≃πα/(2ω0) である.今回は rtw/L=0.600,αt∗=0.148 で,両区間の損失を残す.集中定数近似には ω0ℓ/vs が十分小さいことも要る.

総合演習 29

東京大 2007 後期(改題) ★★★★★

動く鏡の位相から加速度まで測る

真空中のマイケルソン干渉計に,波長 λ=640nm の単色光を入れます.c=3.00×108ms−1,ν=c/λ です.一方の鏡は固定され,他方は半透鏡から遠ざかる向きを正として直線運動します.反射時刻 s における距離を ℓ(s),速度を u(s)=dℓds,|u|<c とします.戻り光が半透鏡に到達する時刻を t,同じ光が半透鏡から出た時刻を te とします.

装置は相対位相 ϕ を,規格化信号 D1=cos⁡ϕ,D2=sin⁡ϕ で測れるものとします.反射で加わる一定の位相を除き,ϕ は固定腕の位相から可動腕の位相を引いた符号で定義します.

  1. t,te,s の関係から,相対位相と反射光の振動数を求めよ.符号付き縞の変化率 b=dϕdt/(2π) と u の関係を導け.

  2. 測定した b,dbdt から反射時刻での速度・加速度を求めよ.受信時刻で b=2.50×105Hz,dbdt=6.25×106Hzs−1 のときの値を求めよ.

  3. 2信号で運動方向を判定できる理由を示せ.レーザーの振動数がゆっくり変化し,可動腕が固定腕より 0.300m 長いとき,鏡を止めても生じる縞の変化率を求めよ.dνdt=1.00×1012Hzs−1 とし,速度の見かけのずれと対策を述べよ.

固定鏡と可動鏡をもつ干渉計を描き,可動鏡の距離 \(\ell(s)\),速度の正方向,出射・反射・帰着時刻を示す.2信号を読む検出部と固定腕の距離 \(\ell_r\) を記す. 固定鏡と可動鏡をもつ干渉計を描き,可動鏡の距離 \(\ell(s)\),速度の正方向,出射・反射・帰着時刻を示す.2信号を読む検出部と固定腕の距離 \(\ell_r\) を記す.
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考え方

出射時の位相を伝播時間を残して微分する.鏡の運動は外から指定し,速度による振幅変化を無視する.

  1. 往復の各長さは反射時の ℓ(s) なので

t=s+ℓ(s)c,te=s−ℓ(s)c,dsdt=11+u/c.

固定腕の長さを ℓr とすれば,出射時刻は固定腕で t−2ℓr/c,可動腕で te.従って

ϕ(t)=4πνc[ℓ(s)−ℓr],νr=νdtedt=ν1−u/c1+u/c,b=ν−νr=2νuc+u.

近づく鏡では u<0,b<0 となる.|u|/c が小さいとき b≃2u/λ である.

  1. 速度は u=cb/(2ν−b).加速度は反射時刻で微分し,a=duds より

dudt=2cν(2ν−b)2dbdt,a=dudtdtds=4cν2(2ν−b)3dbdt.

ν=4.6875×1014Hz より |b|/(2ν)=2.67×10−10 である.近似式 u≃λb/2,a≃(λ/2)dbdt を使って u=0.0800ms−1,a=2.00ms−2 となり,正確な式も一致する.反射時刻の値なので,受信時刻への補正が要る.

  1. (D1,D2) は単位円上を進む.その回る向きが b の符号を与える.D1 だけでは ϕ と −ϕ を区別できない.

ゆっくり変わる出射位相を Θ(t),dΘdt=2πν(t) とする.可動腕のほうが長い場合,固定鏡でも

12πdϕdt=ν(t−2ℓr/c)−ν(t−2ℓ/c)≃2(ℓ−ℓr)cdνdt.

距離差が 0.300m なら遅れの差は 2.00ns,見かけの b は 2.00×103Hz,速度のずれは λb/2=6.40×10−4ms−1 である.2信号でも鏡の移動と周波数変化を分離できない.腕の長さを近づけるか,周波数変化を別に測って補正する.

最後の展開では,遅れの間に dνdt がほぼ一定で,|Δν|/ν が小さいとした.運動では |u|/c=2.67×10−10 が十分小さく,2腕の遅れを超える可干渉時間も要る.u=0 かつ周波数一定なら縞も動かない.