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問いから始める物理 電磁気と波の総合演習

電磁気と波の総合演習

場の中の荷電粒子

著者:柚木芹香

第20章の電場による仕事と第22章のローレンツ力を,第7章の複素数による振動,第13章の相対論的な運動量と組み合わせます.集束,回転周期の変化,加速電場との位相を比べます.必要な式は問題中で示します.軌道を求めたあとに,通過と安定性の条件を確かめよ.

総合演習 7

オリジナル ★★★★☆

速度の違う粒子が同じ出口へ戻る長さ

0<x<ℓ に,E=Eey,B=Bez の一様な静電場と磁場を作ります.E,B>0,ey,ez は座標の単位ベクトルです.質量 m,電荷 q>0 の粒子を原点から x 方向へ入射させ,初速度を v0=vd+u,vd=E/B,|u|<vd とします.粒子同士の相互作用,重力,放射,端の電場を無視し,速さは光速より十分小さいものとします.y=±h の壁に接触した粒子は吸収されます.ω=qB/m と置きます.

長さ \(\ell\) の場の領域と上下の壁を描く.入射点,初速度,電場の上向き,磁場の紙面手前向き,壁の位置 \(\pm h\) を示す. 長さ \(\ell\) の場の領域と上下の壁を描く.入射点,初速度,電場の上向き,磁場の紙面手前向き,壁の位置 \(\pm h\) を示す.
  1. ローレンツ力の成分から x(t),y(t) を求めよ.複素数 W=(vx−vd)+ivy を用いてよいものとします.単調な前進と,電場の仕事による運動エネルギー変化を確かめよ.

  2. ℓ=2πvd/ω のとき,壁に触れずに u によらず同じ出口点を通ることを示し,出射速度と通過できる u の条件を求めよ.ℓ=πvd/ω に変更した場合の出射位置と速度,速度選択の方法を示せ.

  3. 最初と次の集束を領域長 ℓ1,ℓ2 を変えて観測しました.ℓ2−ℓ1=(0.1260±0.0008)m,E=2.00×103Vm−1,B=0.100T とし,他の誤差は無視します.比電荷と誤差を求めよ.また最初の集束長から δℓ だけずれた出口で,出射位置と方向の誤差の先頭の項を求めよ.位置測定だけでの調整の難しさを説明せよ.

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考え方

非相対論的な試験粒子の模型を用いる.力がつり合う速度を差し引くと,残りは複素平面で等速回転する.

  1. 成分の式は mdvxdt=qBvy,mdvydt=q(E−Bvx).従って dWdt=−iωW,W(0)=u より W=ue−iωt となる.実部と虚部を積分すると

vx=vd+ucos⁡ωt,vy=−usin⁡ωt,x=vdt+uωsin⁡ωt,y=uω(cos⁡ωt−1).

vx≥vd−|u|>0 なので出口までの x は単調増加する.速度の2乗は vd2+u2+2vducos⁡ωt であり,

K(t)−K(0)=mvdu(cos⁡ωt−1)=qEy(t).

mωvd=qE を使った.

  1. t∗=2π/ω では x=2πvd/ω,y=0.これが最初の出口通過で,出射速度は (vd+u,0) に戻る.途中の最大変位は max|y|=2|u|/ω なので,通過するには

|u|<vd,2|u|ω<h

が必要である.この長さの出口の穴では速度を選べない.

半分の長さでは t1/2=π/ω が最初の出口通過で,y1/2=−2u/ω,出射速度は (vd−u,0).出口に |y|<b の穴を置けば |u|<ωb/2 を選べる.

  1. u≠0 の粒子を複数の速度で観測すれば,全周期の整数倍で出口が集束する.従って間隔 D=ℓ2−ℓ1 は 2πvd/ω で,

qm=2πvdBD=2πEB2D.

数値は q/m=9.973×106Ckg−1.微小誤差に対し δ(q/m)/(q/m)=−δD/D なので,上限は 6.33×104Ckg−1.丸めて (9.97±0.07)×106Ckg−1 と表せる.

t=t∗+δt と置くと,δℓ=(vd+u)δt+⋯.出口の誤差の先頭の項は

yout≃−uω2(δℓvd+u)2,vy,out≃−uωδℓvd+u,vy,outvx,out≃−uωδℓ(vd+u)2.

位置は誤差の2次,方向は1次で変わり,自由飛行でずれが拡大する.展開には |ωδℓ/(vd+u)| が十分小さい必要がある.非相対論的には (vd+|u|)/c,端の近似には端の変化区間と装置長の比も小さくなければならない.u→0 で横ずれは0に戻る.

総合演習 8

オリジナル ★★★★★

平行な電場と磁場の中でらせんの間隔が広がる

一様な静的な場 E=Eez,B=Bez の中に,質量 m,電荷 q>0 の粒子を入れます.E,B>0 です.時刻0に原点で x 方向の運動量 p0>0 を与え,その他の運動量成分は0とします.相対論の式

p=γmv,γ=11−v2/c2,γmc2=m2c4+p2c2,dpdt=q(E+v×B)

を使ってください.γ0=1+(p0/mc)2 と置きます.場は十分広いものとします.

共通の \(z\) 軸方向に向く電場と磁場,原点で \(x\) 方向へ与える運動量 \(p_0\) を描く.座標軸と場の領域を示す. 共通の \(z\) 軸方向に向く電場と磁場,原点で \(x\) 方向へ与える運動量 \(p_0\) を描く.座標軸と場の領域を示す.
  1. 横方向の運動量の大きさが保存することを示し,pz(t),γ(t),z(t) を求めよ.電場の仕事と全エネルギー増加の一致も確かめよ.

  2. px=p0cos⁡ϕ,py=−p0sin⁡ϕ,ϕ(0)=0 と置き,回転角 ϕ(t) と x(t),y(t) を求めよ.s=qEt/(mc) を用いてよいものとします.

  3. ϕ=2πn となる時刻 tn と位置 zn を求め,1回転で進む z 方向の距離が増すことを示せ.最初の1回転だけ γ=γ0 と近似した周期を T0 とします.E/(Bc)=0.100 のとき,厳密な t1/T0 と,厳密な z1 の一定 γ の予測に対する比を求めよ.半径が一定でも補正が要る理由と近似条件を説明せよ.

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考え方

重力,放射,相互作用を捨てた試験粒子の模型で,電場が増す平行運動量から毎時刻のエネルギーを決める.保存する横運動量と,保存しない横速度を区別する.

  1. 横成分の式は dpxdt=qBvy,dpydt=−qBvx.従って

ddt(px2+py2)=2qB(pxvy−pyvx)=0

であり,px2+py2=p02.軸方向は dpzdt=qE だから pz=qEt=mcs.エネルギーの式より

γ(t)=γ02+s2,vz=csγ02+s2.

dt=mcds/(qE) を用いて積分すれば

z(t)=mc2qE(γ02+s2−γ0).

全エネルギー増加は mc2(γ−γ0)=qEz で,電場の仕事に等しい.

  1. 横成分を複素数でまとめると,ddt(px+ipy)=−iqB(px+ipy)/(γm).従って

dϕdt=qBγm,ϕ(t)=BcEln⁡s+γ02+s2γ0.

dxdϕ=p0cos⁡ϕ/(qB),dydϕ=−p0sin⁡ϕ/(qB) なので,r=p0/(qB) と置いて

x=rsin⁡ϕ,y=r(cos⁡ϕ−1).

投影は中心 (0,−r),半径 r の円である.γ が増すと回転が遅くなり,v⟂=p0/(γm) も減る.

  1. χn=2πnE/(Bc) と置く.ln⁡[(sn+γ02+sn2)/γ0]=χn を指数関数に直し,γ02+sn2−sn=γ0e−χn も使うと

sn=γ02(eχn−e−χn),γn=γ02(eχn+e−χn).

従って

tn=mcγ02qE(eχn−e−χn),zn=mc2γ0qE(eχn+e−χn2−1).

xn=yn=0 に戻っても zn は増える.z を回転回数の関数と見ると,指数関数の和の2階微分は正で,zn+1−zn は増加する.

一定 γ の周期は T0=2πγ0m/(qB).その間の軸方向運動は zapp=qET02/(2γ0m) と予測される.χ=2πE/(Bc) とすると,

t1T0=eχ−e−χ2χ,z1zapp=eχ+e−χ−2χ2.

χ=0.6283 で比はそれぞれ約 1.067,1.033.半径だけでは,回転時刻や軸方向の間隔に現れる補正を見落とす.

一定 γ の近似には nχ が十分小さい必要がある.最初の回転では t1/T0=1+χ2/6+⋯,z1/zapp=1+χ2/12+⋯.非相対論的な式には p0/(mc) と qEt/(mc) も十分小さくなければならない.E→0 で z→0,ϕ→qBt/(γ0m) の円運動に戻る.

総合演習 9

オリジナル ★★★★★

周期の増加を利用する電子加速器の位相安定性

一様な磁場 B の中で,電子を共通の短い加速間隙へ1回転ごとに戻す装置を考えます.電子の質量は m,電荷は −e です.間隙で電子が得るエネルギーを eV0cos⁡ϕ とし,ϕ は通過時の交流電場の位相です.交流の角振動数は ω,周期は Tr=2π/ω です.間隙の通過時間,放射,外場への反作用を無視します.磁場中では運動エネルギー K が一定で,円運動の周期と半径を,相対論の式

K=(γ−1)mc2,p=γmv,p2c2=K(K+2mc2),p=eBr

から求めるものとします.

共通の間隙に接する円軌道を数本と交流電源を描く.一定の磁場,加速間隙,通過ごとの位相 \(\phi\) を示す. 共通の間隙に接する円軌道を数本と交流電源を描く.一定の磁場,加速間隙,通過ごとの位相 \(\phi\) を示す.
  1. 周期を T(K)=A(K+mc2) と表し,A を求めよ.同期する粒子は各間隙で同じ位相 0<ϕs<π/2 を持ち,1回ごとに周期が整数 h≥1 倍の Tr だけ増すとします.必要なエネルギー増分 W と電圧振幅を求めよ.初回直前の周期も整数倍でなければならない理由を述べよ.

  2. B=0.080T,ω=2π×1.0×109s−1,h=1,ϕs=π/8 とします.初回直前の周期を Tr に選び,運動エネルギーが初めて 8.0MeV 以上となる通過回数と,その直後の軌道半径を求めよ.m=9.11×10−31kg,e=1.60×10−19C,c=3.00×108ms−1,1MeV=1.60×10−13J を用います.

  3. 同期からの微小なずれを考えます.第 n 回の通過時の位相偏差を δϕn,直後のエネルギー偏差を δKn とします.微小偏差の更新式から δϕn だけの差分方程式を導き,偏差が増幅しない ϕs の条件を求めよ.(2)の位相での偏差の振動周期を通過回数で表し,最大加速の位相 ϕs=0 が必ずしも安定でないことも説明せよ.

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考え方

間隙で瞬間的に加速する模型を用いる.相対論的な周期と全エネルギーの比例から同期を決め,位相偏差を1次まで残して安定性を調べる.

  1. 円運動で r=p/(eB) だから,周期は

T=2πrv=2πγmeB=2πeBc2(K+mc2),A=2πeBc2.

同期粒子は AW=hTr を満たすので,

W=heBc2ω,V0=Wecos⁡ϕs.

T(K0)=N0Tr を満たす整数 N0 を選べば,通過直後の周期は (N0+nh)Tr.交流の位相は同じ値へ戻る.最初の周期に端数があれば毎回その位相が加わり,同期しない.K0≥0 を満たす整数の選択も必要である.

  1. 与えられた値で mc2=0.5124MeV,W=1.1459MeV,V0≃1.24MV.N0=1 から K0+mc2=Tr/A=W であり,K0≃0.6335MeV.第 n 回直後は Kn=K0+nW なので,6回では 7.5090MeV,7回では 8.6549MeV.従って7回.

この直後の半径は

r7=K7(K7+2mc2)eBc.

分子をジュールに直すと r7≃0.38m となる.K0/(mc2)>1 なので,非相対論的な半径は使えない.

  1. 位相が δϕn だけ遅れると,エネルギー増分は

eV0cos⁡(ϕs+δϕn)≃W−aδϕn,a=eV0sin⁡ϕs>0.

従って加速での更新は δKn=δKn−1−aδϕn.次の1回転の時間偏差は AδKn なので,位相の更新は δϕn+1=δϕn+ωAδKn.前回の同式を引いてエネルギー偏差を消すと,

δϕn+1−(2−g)δϕn+δϕn−1=0,g=ωAa=2πhtan⁡ϕs.

δϕn∝sn の代入から特性方程式は s2−(2−g)s+1=0.根の積は1で,異なる2根が単位円上なら偏差は有界となる.s=e±iν,cos⁡ν=1−g/2 と表せる条件は

0<g<4,0<tan⁡ϕs<2πh.

遅い位相では加速が小さくなり,短い周期で遅れを補正する.ただし補正が強すぎると不安定になる.

指定の ϕs=π/8 では g=2πtan⁡(π/8)=2.60.ν≃1.88rad で,偏差の振動周期は 2π/ν≃3.35 回の通過である.ϕs=0 では g=0 の重根 s=1 となり,解は定数と通過回数に比例する項を持つ.g=4 も重根となり,同様に一般の偏差は有界とは限らない.

線形化には |δϕn| が十分小さく,同じ間隙へ戻る軌道が要る.間隙通過時間 τg の近似には ωτg,放射を捨てるには1回転の放射エネルギーと W の比が十分小さい必要がある.K→0 で T→2πm/(eB) に戻る.