問いしるべ
問いから始める物理 電磁気と波の総合演習

電磁気と波の総合演習

波と光の重ね合わせ

著者:柚木芹香

第25章のドップラー効果・定常波・群速度を,第26章の電磁波と第27章の干渉・偏光へつなげます.音も光も境界で位相をつなぎます.複素振幅を足し,明暗とエネルギーの移動を区別してください.分散では位相と波束を合わせる条件も比べます.第26章(発展)を飛ばした人は,第27章の初めにまとめた結果を使ってください.

総合演習 13

オリジナル ★★★★☆

動く鏡の反射を参照波と重ねる

静止した送信器から正の x 方向へ単色波を送り,xm=d+ut,d>0,u>0 の反射板で反射させます.受信器は x=0 に固定し,同じ送信器から分けた参照波と反射波を重ねます.一様で静止した媒質中の音では波の速さを v,振動数を f,真空中の光では速さを c,振動数を ν とします.音は板表面で変位0,光は瞬間の鏡の静止系で接線電場0とします.u<v とし,うなりを測る際には u/v と u/c が十分小さいものとします.反射波と参照波の振幅比 r は既知の正の一定値,光の偏光は同じ向きです.測定中の波の減衰,鏡への力による速度変化を無視します.

  1. 音と光を共通の速さ w,角振動数 ω で表し,動く境界での位相一致から反射波の ωr を導け.参照波との合成の2乗を速い振動について平均し,うなりの振動数と明暗の振幅を求めよ.

  2. v=340ms−1,f=2.00×103Hz,u=1.70ms−1 で音のうなりを求めよ.同じ板の速さを,波長 λ=680nm の光で調べるときのうなりも求めよ.c=3.00×108ms−1 とする.うなりから速度を求める式と低速の近似を比べよ.

  3. 光の鏡の運動を xm(t)=d+acos⁡Ωt,d>a,aΩ<c に変えます.往復の伝播時間を残した受信位相の式を導き,a=1.02μm,同じ波長で半周期ごとの明暗の繰り返し数を求めよ.変位振幅と速度の小ささの条件を区別し,明暗の記録だけで運動方向が決まるかも論じよ.

x=0の送受信器から動く反射板へ向かう波と戻る波,参照波の分岐を描く.鏡の位置d+utと正のx方向を示す. x=0の送受信器から動く反射板へ向かう波と戻る波,参照波の分岐を描く.鏡の位置d+utと正のx方向を示す.
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考え方

反射時刻の境界で位相をつなぐ.線形波と既知の振幅比を使い,受信器はうなりを分解するとする.

  1. 入射波の位相は ωt−kx,k=ω/w.反射波を ωrt+krx+ϕ,kr=ωr/w とする.境界上で両波の符号が反対になるため

ωt−k(d+ut)=ωrt+kr(d+ut)+ϕ−π.

時間の係数と定数をそれぞれ比べると

ωr=ωw−uw+u,ϕ=π−(k+kr)d.

音では媒質に対する速度を使う.光の振幅比は別に与えた.

x=0 の合成は,振幅 A の参照波を基準に ARe⁡[eiωt+rei(ωrt+ϕ)] である.速い振動を平均し,うなりより短い時間で測ると,2乗平均 J は

J(t)=A22[1+r2+2rcos⁡((ωr−ω)t+ϕ)].

最大と最小は A2(1+r)2/2,A2(1−r)2/2,可視度は V=2r/(1+r2).J はそれぞれ変位と電場の2乗平均である.うなりは

fb=2ufv+u,νb=2uνc+u.
  1. 音では fb=2(1.70)(2000)/(341.70)=19.9Hz.光では ν=c/λ=4.41×1014Hz なので,νb=2u/[λ(1+u/c)]≈5.00×106Hz となる.共通の送信振動数を f0,うなりを fb と書けば

u=wfb2f0−fb,u≈wfb2f0(1≫fb/(2f0)).

今回,近似による速度の過小評価は音で約0.50 %,光で約 5.7×10−7 %である.

  1. 反射時刻を tb,受信時刻を t とすれば

t=tb+xm(tb)c.

入射位相は ωtb−kxm(tb),受信時の参照位相は ωt なので,反射による π も含めた差は

δ(t)=π−2kxm(tb)=π−2kd−2kacos⁡Ωtb.

1+dxm/dtb/c>0 なら tb と t の対応は一意で,反射時の運動の各半周期は受信時にも単調な位相変化として現れる.鏡は半周期で 2a 動くので位相の変化の大きさは 4ka.明暗の周期数は

N1/2=4ka2π=4aλ=6.00.

一周期では12回だが,符号付き位相変化は0である.

a/λ=1.50 は小さくないので,e−2ikacos⁡Ωtb を変位の1次まで展開できない.一方,速度による振幅変化を省く条件は 1≫aΩ/c である.さらに遅れを省いて tb≈t−d/c とするには Ωa/c が小さく,tb≈t とするなら Ωd/c も小さくする.強度の cos⁡δ だけでは位相の増減を区別できない.方向には初期位置の情報や,位相が π/2 違う参照信号が要る.a→0 では静止鏡の往復光路 2d に戻る.

総合演習 14

オリジナル ★★★★☆

暗い場所にエネルギーはないのか

真空中で,角振動数 ω,波数 k=ω/c,電場振幅 E0 の平面波が正の x 方向へ進みます.負の方向には振幅 rE0,0<r≤1 の反射波が進み,反射位相は π,両電場はまずy方向とします.c=1/ε0μ0 を使い,場のエネルギー密度とポインティングベクトルを

u=12ε0E2+B22μ0,S=E×Bμ0

とします.検出器の信号は J(x)=⟨E2⟩ に比例し,検出器の反作用はまず省きます.

  1. 合成した電場・磁場,⟨u⟩,⟨Sx⟩,J(x) を求めよ.r=1 の電場の節と磁場の節を示し,第25章の弦の変位とひずみの節の関係と対応させよ.

  2. r=1 で平均エネルギー流が0であることと,瞬間のエネルギー流が0でないことを両立させて説明せよ.電場の節にエネルギーがないか,腹に小さな吸収体を置いても吸収できないかを検討せよ.

  3. 検出器が x 方向に幅 b を持ち,中心 x0 の周囲で J を一様に平均します.測定される可視度を導き,r=0.80,λ=600nm,b=150nm で求めよ.戻り波の電場を y 方向から角 θ 傾けた場合を考え,空間平均と偏光の違いによる可視度の低下を区別せよ.

向かい合う入射波と反射波の向き,同じy方向の電場,幅bの検出器と中心x_0を描く.節・腹の位置やエネルギー分布は描かない. 向かい合う入射波と反射波の向き,同じy方向の電場,幅bの検出器と中心x_0を描く.節・腹の位置やエネルギー分布は描かない.
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考え方

真空の線形波で,検出器は微弱とする.

  1. 進行方向を逆にすると,E,B の相対的な向きも逆になる.従って

Ey=E0[cos⁡(ωt−kx)−rcos⁡(ωt+kx)],Bz=E0c[cos⁡(ωt−kx)+rcos⁡(ωt+kx)].

⟨cos2⟩=1/2,⟨cos⁡(ωt−kx)cos⁡(ωt+kx)⟩=cos⁡2kx/2 から

J=E022(1+r2−2rcos⁡2kx),⟨B2⟩=E022c2(1+r2+2rcos⁡2kx).

干渉項は全エネルギーでは相殺し,

⟨u⟩=ε0E022(1+r2),⟨Sx⟩=ε0cE022(1−r2).

r=1 なら Ey=2E0sin⁡ωtsin⁡kx,Bz=2E0cos⁡ωtcos⁡kx/c.電場の節は kx=jπ,磁場の節は kx=(j+1/2)π,j は整数である.弦の定常波 y∝sin⁡kxsin⁡ωt でも変位の節はひずみ ∂y/∂x の腹になる.

  1. r=1 の瞬間の量は

u=2ε0E02(sin2⁡ωtsin2⁡kx+cos2⁡ωtcos2⁡kx),Sx=ε0cE02sin⁡2ωtsin⁡2kx.

流れの平均は0でもエネルギーは往復する.区間 [x1,x2] で積分・微分すると

ddt∫x1x2udx=Sx(x1,t)−Sx(x2,t)

となり,境界を通る流れで収支が閉じる.電場の節にも磁気エネルギーが残る.

吸収体は場を変え,定常な吸収には外から正味の流入が要る.無摂動の r=1 を保ったまま吸収させることはできない.弱い吸収の初期評価に ⟨E2⟩ を使えるが,吸収0とはならない.

  1. 一様な感度で平均すると

J―(x0)=1b∫x0−b/2x0+b/2J(x)dx=E022[1+r2−2rsin⁡kbkbcos⁡2kx0].

従って Vb=2r|sin⁡kb/(kb)|/(1+r2). kb=π/2 なので Vb=(1.60/1.64)(2/π)≃0.62.点なら約0.98で,最初に干渉項が消える幅は b=λ/2 である.

戻り波の偏光単位ベクトルを er=cos⁡θey+sin⁡θez とする.電場の2乗の交差項は内積 ey⋅er=cos⁡θ 倍になるので

Vb,θ=2r1+r2|cos⁡θsin⁡kbkb|.

θ=π/2 で明暗は消え,b→0 で空間平均の効果は消える.幅と偏光を別々に変えて原因を区別できる.確かめとして r→0 なら進行波の ⟨Sx⟩=c⟨u⟩ に戻り,検出器の反作用を省くには吸収・散乱の割合を十分小さくする必要がある.

総合演習 15

オリジナル ★★★★★

位相を合わせた光でも波束は重なるか

光を同じ長さの二つの経路へ分け,一方の長さ ℓ=0.200m の区間を透明媒質で満たし,もう一方は真空に保ちます.真空側には追加の距離 d を設けられます.反射・吸収と経路間の振幅差は無視します.媒質の屈折率は真空波長 λ に対し n(λ)=B+A/λ2 の形とし,A,B は未知です.表の値は模型内で正確とします.c=3.00×108ms−1 です.

λ/nm

n

500

1.5364

600

1.5100

750

1.4884

  1. n と 1/λ2 の直線関係から A,B を求め,3点目を検算せよ.k=nω/c,λ=2πc/ω,vg=dω/dk を使い,中心波長 λ0=600nm の位相速度と群速度を求めよ.

  2. 中心角振動数を ω0 とし,ω±=ω0±δω/2 の等強度の2成分を入れます.各成分の各経路単独の強さを Is とします.うなりより長い時間で平均した合成強度を,位相差 Φ(ω)=ℓ[k(ω)−ω/c]−ωd/c から導け.1次の分散で,中心位相差 Φ(ω0) そのものを0にする d と群遅延を0にする d の違いを求めよ.

  3. 連続した狭い帯域 |ω−ω0|≤Δω の波束に変え,群遅延を0にします.媒質の k″=d2∗dk2ω を導き,帯域両端の遅延の差と位相の2次項を評価せよ.Δω=6.0×1012rads−1 で,1次の分散だけを残せるか判定せよ.位相の2次項を0.10以下に抑える帯域幅の条件も求めよ.

分岐・再合流する二経路と,媒質の長さℓ,真空側の追加距離dを示す.入力の二つの近い振動数と,波束を使う場合の帯域幅を添える. 分岐・再合流する二経路と,媒質の長さℓ,真空側の追加距離dを示す.入力の二つの近い振動数と,波束を使う場合の帯域幅を添える.
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考え方

屈折率を直線化し,位相の傾きから群遅延を求める.狭い帯域でも蓄積する位相誤差を確かめる.

  1. 表の最初の2点を添字1,2で表すと

A=n1−n2λ1−2−λ2−2=2.16×10−14m2,B=1.4500.

750nm では A/λ2=0.0384,従って1.4884となる.周波数へ変換すると

dkdω=1c(n+ωdndω)=1c(n−λdndλ)=ngc,ng=B+3Aλ2.

n0=1.5100,ng0=1.6300 なので vp=c/n0=1.99×108ms−1,vg=c/ng0=1.84×108ms−1.

  1. 各周波数の二経路の複素振幅を足すと,その強さは 2Is(1+cos⁡Φ±) である.異なる周波数の交差項は長時間平均で消えるので

I=4Is[1+cos⁡Φ++Φ−2cos⁡Φ+−Φ−2].

Φ±≈Φ0±δωΔτ/2,Δτ=Φ′(ω0)=[ℓ(ng0−1)−d]/c として

I≈4Is[1+cos⁡Φ0cos⁡(δωΔτ/2)].

中心位相を掃引する縞の可視度は |cos⁡(δωΔτ/2)| となる.中心光の光路差を0にする値は dp=ℓ(n0−1)=0.102m.群遅延を0にする値は dg=ℓ(ng0−1)=0.126m であり,同じ条件ではない.追加距離なしでは 0.420ns,d=dp でも 0.0800ns 残る.d=dg でも中心位相は別に調整する.

  1. 波長の式を k に代入すると

k(ω)=Bωc+Aω34π2c3,k″(ω)=3Aω2π2c3.

追加の真空距離は2次項を消さない.ω0=3.14×1015rads−1,k0″=3.82×10−25s2m−1 より,帯域両端の相対遅延の差は

Δtband≈2ℓk0″Δω=9.2×10−13s.

位相の2次項は ϵ2=ℓk0″(Δω)2/2≃1.4 で,1より小さくない.Δω/ω0≃1.9×10−3 が小さくても,蓄積位相の誤差は大きい.波束の時間尺度 1/Δω≈1.7×10−13s と比べても,帯域内の遅延の広がりは無視できない.条件 ϵ2≤0.10 は

Δω≤0.20ℓk0″≃1.6×1012rads−1

である.3次項と2次項の比は最大 Δω/(3ω0) 程度で,今回も十分小さい.確かめとして A→0 なら ng=n,dg=dp,k″=0 に戻り,k″ℓ(Δω)2 は無次元になる.