問いしるべ
問いから始める物理 仕事とエネルギー

仕事とエネルギー

エネルギー保存の例題

著者:柚木芹香

エネルギー保存則は,使う場面と手順を整えておくと,式の立て方に迷いません.まず手順を整理し,3題で練習します.

ポイント 手順の整理:エネルギー保存で解く

1. 始点と終点を選ぶ. 知りたい量がある位置と,値が分かっている位置を選ぶ.途中の経路の形は問わなくてよい.

2. 力を仕分ける.

  • 保存力(重力・ばね)→ U に入れる.

  • 仕事をしない力(動きに垂直な力.固定点からの糸の張力や固定された面の垂直抗力など)→ 無視してよい.力の名前でなく F⋅dr=0 かどうかで判断する.

  • 非保存力(動摩擦・空気抵抗・手が押す力)→ 仕事 W′ を計算して足す.

3. 式を立てる. K1+U1+W′=K2+U2.W′ の符号に注意する(大きさが一定の動摩擦力は −μ′Ns,s は道のり).

4. 追加の条件を確かめる. 面から離れない(N≥0),糸がたるまない(T≥0),動き出す(外力が最大静止摩擦力より大きい)などは,運動方程式で調べる.

5. 検算する. 単位,符号,極端な場合.

例題

例題 1

オリジナル ★★★☆☆

半径 R=5.0m の垂直なループを,なめらかなコースから質量 m の台車が通る.台車は,ループの頂上でちょうど面から離れない最小の高さ h から静かに出発する.ループの最下点を高さの基準とする.重力加速度は 9.8ms−2 とする.

高さhからループへ入るコース.高さ \(h\) の出発点から下る滑らかなコースと,その先の半径 \(R\) のループ.最下点と頂上の位置を示す. 高さhからループへ入るコース.高さ \(h\) の出発点から下る滑らかなコースと,その先の半径 \(R\) のループ.最下点と頂上の位置を示す.
  1. 出発点の高さ h を求めよ.

  2. ループの最下点での,台車が受ける垂直抗力の大きさは,重力の何倍か.

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考え方 頂上で落ちない限界は N=0.出発点と頂上で,次に出発点と最下点でエネルギー保存を使う.

  1. 頂上で N=0 のとき,運動方程式 mv2R=mg より v2=gR.出発点と頂上でエネルギー保存を立てると,mgh=mg(2R)+12mv2.よって h=2R+R2=52R=12.5m.

  2. 最下点の速さの2乗は,出発点と最下点のエネルギー保存から vb2=2gh=5gR.最下点では垂直抗力が上向き,重力が下向きで,向心方向は上向きなので

mvb2R=N−mg ⟹ N=mg+5mg=6mg

つまり重力の6倍である.乗客は最下点で体重の6倍の力で座席に押される.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

傾き 30∘ の斜面を,高さ h=1.0m の点から物体が静かに滑り降り,なめらかにつながった水平面に入る.斜面と水平面の動摩擦係数はどちらも μ′=0.20 である.物体は,水平面の上でどれだけ進んで止まるか.

粗い斜面から水平面へ.高さ \(h\) の斜面(傾き \(30^\circ\))と,それに続く水平面.斜面上の物体の初めの位置を示す.止まる位置は描かない. 粗い斜面から水平面へ.高さ \(h\) の斜面(傾き \(30^\circ\))と,それに続く水平面.斜面上の物体の初めの位置を示す.止まる位置は描かない.
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考え方 始点(静止,高さ h)と終点(静止,高さ 0)の運動エネルギーはどちらも 0.摩擦が斜面と水平面でした仕事の合計が,位置エネルギーの減少に等しい.

物体が動くには tan⁡30∘≈0.58>μ′ が必要で,満たしている.斜面を降りる道のりは hsin⁡30∘=2.0m.斜面での摩擦力は μ′mgcos⁡30∘ で,水平面で進む距離を d とすると,水平面の摩擦力は μ′mg.ΔE=W′ から

0−mgh=−μ′mgcos⁡30∘⋅hsin⁡30∘−μ′mgd
d=hμ′−htan⁡30∘=5.0−1.7=3.3m

質量は消える.検算:斜面の水平方向の長さ h/tan⁡30∘≈1.7m と合わせた,出発点からの水平距離の合計は h/μ′=5.0m で,斜面の傾きによらない.

例題 3

オリジナル ★★☆☆☆

水平な机の上に質量 M=2.0kg の物体があり,軽い糸が机の端のなめらかな滑車を通って,質量 m=1.0kg のおもりにつながっている.机と物体の動摩擦係数は 0.25 で,最大静止摩擦力は動摩擦力に等しいとする.静かに放し,おもりが 0.50m 下がったときの速さを求めよ.

滑車でつながる2物体.机の上の物体と,机の端の滑車,糸でつるされたおもりを示している.おもりの下がる距離 \(0.50\,\mathrm{m}\) を記入する. 滑車でつながる2物体.机の上の物体と,机の端の滑車,糸でつるされたおもりを示している.おもりの下がる距離 \(0.50\,\mathrm{m}\) を記入する.
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考え方 二つの物体を一つの系と見る.糸の張力は,物体には正,おもりには負の仕事をして,合計は 0 になる.系の運動エネルギーの変化は,重力と摩擦の仕事の合計に等しい.

動き出すことを確かめる.おもりの重力 mg=9.8N が,最大静止摩擦力 0.25×2.0×9.8=4.9N より大きいので動く.距離 s=0.50m について,ΔK=W重力+W摩擦:

12(M+m)v2=mgs−μ′Mgs
v=2(m−μ′M)gsM+m=2×0.50×9.8×0.503.0≈1.3ms−1

ここで m−μ′M=1.0−0.50=0.50kg.

ポイント ここまでのまとめ

  • 手順:始点と終点を選ぶ,力を仕分ける,K1+U1+W′=K2+U2 を立てる,追加条件を確かめる,検算する.

  • 面から離れない条件は N≥0.ループの最小の高さは 52R.

  • 大きさが一定の動摩擦力の仕事は道のりに比例.斜面と水平面で同じ μ′ なら,出発点から止まる位置までの水平距離(斜面部分の水平投影を含む)は h/μ′.

  • 糸でつながれた2物体では,張力の仕事が打ち消し合う.系全体でエネルギー保存を使える.