問いしるべ
問いから始める物理 ボルツマン分布と等分配則(発展)

ボルツマン分布と等分配則(発展)

等分配則と比熱の演習

著者:柚木芹香

等分配則や比熱の式の条件を確かめましょう.物質量は ν=N/NA,気体定数は R=8.30Jmol−1K−1 とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

単原子気体A,二原子気体B,非直線形の多原子気体C,結晶Dを各 1mol 用意します.B,Cは回転が有効で振動が凍結し,結晶の原子は3方向に古典的に振動します.仕事を加えず,定積で同じ熱量 Q を与えます.有効な運動は変わりません.

  1. 各試料の自由度 f と定積モル比熱を求めてください.

  2. 温度上昇の比と,CとDが等しい理由を答えてください.

各1 molのA単原子気体,B二原子気体,C非直線形気体,D結晶を並べる.AからCは並進を青,回転を緑で示し,気体の振動は凍結している.Dの原子は3方向に振動し,橙の矢印はその向きを表す. 各1 molのA単原子気体,B二原子気体,C非直線形気体,D結晶を並べる.AからCは並進を青,回転を緑で示し,気体の振動は凍結している.Dの原子は3方向に振動し,橙の矢印はその向きを表す.
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考え方 エネルギーの独立な2乗項を数える.

  1. Aは並進3,Bは並進3・回転2,Cは並進3・回転3,Dは3方向の運動と位置で6項.順に f=3,5,6,6,CV/R=3/2,5/2,3,3 である.

  2. ΔT=Q/CV より比は 10:6:5:5.CとDは2乗項が同数である.Dの配置座標は3個,2乗項は6個であり,自由度は配置座標の数ではない.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

回転準位は EJ=kBθrotJ(J+1),θrot=30K です.振動準位は Ej=(j+1/2)ε です.J,j=0,1,2,…,ε>0 は定数です.

  1. 最初の2つの回転間隔を求め,振動と比べてください.

  2. 零点エネルギーが熱容量に効かない理由を説明してください.

左は特性温度θ_rot=30 Kの回転準位で,J=0,1,2,3に対してE_J/k_B=0,60,180,360 Kを示す.準位間隔は60,120,180 Kと広がる.右は振動準位E_j=(j+1/2)εで,j=0,1,2,3を等間隔εで示す.エネルギー0を破線で示し,最低準位の零点エネルギーε/2を明記する.左右は別々の尺度で描く. 左は特性温度θ_rot=30 Kの回転準位で,J=0,1,2,3に対してE_J/k_B=0,60,180,360 Kを示す.準位間隔は60,120,180 Kと広がる.右は振動準位E_j=(j+1/2)εで,j=0,1,2,3を等間隔εで示す.エネルギー0を破線で示し,最低準位の零点エネルギーε/2を明記する.左右は別々の尺度で描く.
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考え方 準位の差と温度微分を使う.

  1. 最初は 2kBθrot=60kBK,次はその2倍の 120kBK である.回転は等間隔でなく,特性温度は間隔の係数である.振動の間隔は ε で一定である.

  2. 零点を含む平均には定数 ε/2 が加わる.c=d⟨E⟩/dT ではその微分が0になる.凍結は熱容量に寄与しないことで,完全な静止ではない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

断熱された硬い容器に,ν=0.50mol,初温 300K の単原子理想気体を入れます.羽根車で Win=249J の仕事を加え,止めて熱平衡を待ちます.仕事はすべて気体に残り,容器と羽根車の熱容量は無視します.

  1. 熱 Q,気体が外へする仕事 W,最終温度を求めてください.

  2. 「定積だから仕事0」を訂正してください.

断熱壁で囲まれた剛体容器の中に気体と羽根車を描く.羽根車の軸は容器の外へ伸びており,外からW_in=249 Jの仕事を入れる.容器の体積は一定で,体積仕事は0である.回転の矢印は羽根車を動かして気体をかき混ぜる操作を表す. 断熱壁で囲まれた剛体容器の中に気体と羽根車を描く.羽根車の軸は容器の外へ伸びており,外からW_in=249 Jの仕事を入れる.容器の体積は一定で,体積仕事は0である.回転の矢印は羽根車を動かして気体をかき混ぜる操作を表す.
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考え方 ΔU=Q−W の仕事は体積仕事だけではない.

  1. Q=0,W=−249J,ΔU=249J である.CV=3R/2 より ΔT=249/(0.50×3R/2)=40K,最終温度は 340K である.

  2. ∫pdV=0 は体積仕事だけの結論である.軸を通して仕事が入り,断熱でも孤立系ではない.内部の抵抗線に電流を流す場合も,定積のまま電気的な仕事が入る.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

二原子理想気体の比熱比は γ=Cp/CV=1.40 で,測定範囲で一定です.

  1. Cp=CV+R から f,CV,Cp を求め,有効な運動と凍結した運動を答えてください.

  2. この範囲で ν=0.40mol を 25K 温めるとき,定積と定圧の熱量の比と差を求めてください.体積仕事以外はありません.

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考え方 マイヤーの関係で比熱と2乗項の数を決める.

  1. γ=1+R/CV=(f+2)/f より f=2/(γ−1)=5,CV=5R/2,Cp=7R/2 である.古典的な等分配の近似では,並進3・回転2が有効で振動は凍結している.

  2. Q=νCΔT より QV:Qp=5:7 である.差は νRΔT=83J で,定圧膨張の仕事に等しい.マイヤーの関係は理想気体に限り,熱量計算には f 一定も必要である.回転や振動が効き始めれば比熱は変わる.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

断熱剛体容器の左右の等体積 V に,同温・同圧の理想気体を分子数 N1,N2 だけ入れ,仕切りを抜きます.反応はありません.

  1. 異種と同種の場合の ΔS を求めてください.

  2. 同種でも左出身をA,右出身をBと番号で区別すれば,混合エントロピーが生じるという説明を検討してください.

仕切りの左右は同じ温度Tと圧力pにあり,各室の体積はVである.左列は仕切りがある状態,右列は仕切りを抜いた後の体積2Vの容器を示す.上段は左室の丸と右室の三角が異なる種類の気体で,仕切りを抜いた後は両方が容器全体に分布する.下段は左右とも同じ種類の気体で,すべて同じ色と形の丸で描く. 仕切りの左右は同じ温度Tと圧力pにあり,各室の体積はVである.左列は仕切りがある状態,右列は仕切りを抜いた後の体積2Vの容器を示す.上段は左室の丸と右室の三角が異なる種類の気体で,仕切りを抜いた後は両方が容器全体に分布する.下段は左右とも同じ種類の気体で,すべて同じ色と形の丸で描く.
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考え方 物理的な成分と架空のラベルを見分ける.

  1. 同温・同圧・等体積より N1=N2.異種は各成分の体積が2倍となり,ΔS=(N1+N2)kBln⁡2>0 である.同種は前後で温度・圧力・数密度が同じで,ΔS=0 である.

  2. 同種分子の入れ替えは別の微視状態ではない.N=N1+N2 個の番号付きの数え方は N! 倍の数えすぎで,架空のラベルから混合エントロピーを作ってはいけない.異種は半透膜で選り分けられるが,過去の居場所ではできない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆
  1. 定数 c>0 の独立な2乗項 cq2 に等分配則を使える場合を選んでください.A:熱平衡で q は古典的に連続,広い範囲を動く.B:壁で |q|≤a,ca2 は kBT より十分小さい.C:準位間隔が kBT より十分大きい.D:熱流がある非平衡状態.

  2. 熱平衡で q は連続な実数全体を動き,E=αq4(α>0 一定)です.β=1/(kBT) とし,qe−βαq4 の微分を積分して ⟨E⟩ を求めてください.

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考え方 連続性・境界・平衡・2乗の条件を確かめる.

  1. Aだけである.Bは cq2≤ca2 より平均も小さく,広い範囲の条件が破れる.Cは古典的な連続変数,Dは熱平衡の条件が破れる.

  2. Z=∫−∞∞e−βαq4dq とおく.境界で qe−βαq4→0 なので

0=∫−∞∞(1−4βαq4)e−βαq4dq=Z−4βZ⟨E⟩

より ⟨E⟩=kBT/4 である.他の条件がそろっても4乗項には kBT/2 を使えない.

ポイント 教える人へ

  • 「振動1つでなぜ2項か」と問い,配置座標と区別させてください.

  • 定積で仕事0というつまずきには,エネルギーの入口を確かめてください.

  • 回転間隔と零点の微分を書かせ,凍結と静止の混同に注意してください.

  • 等分配の条件と,架空のラベルを使えない理由を説明させてください.