問いしるべ
問いから始める物理 力と運動の法則

力と運動の法則

運動方程式の演習

著者:柚木芹香

運動方程式を使う演習です.単位の確認,成分ごとの式,エレベーターの中の体重計など,いろいろな場面で ma=F を使ってみましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

(1)〜(3) の量の単位を,kg,m,s の組み合わせで表せ.また (4) に答えよ.

  1. 運動量 p=mv

  2. ばね定数 k(ばねの力を F=kx と書いたときの k)

  3. 前の節の例題2の F=kt における k

  4. 質量 2.0kg の物体に 5.0N の力が働くときの加速度の大きさ

解答を見る
  1. kgms−1 である.なお,運動量の時間変化の割合の単位は kgms−2=N となり,力と一致する.

  2. F=kx より k=F/x の単位は Nm−1=kgs−2 である.

  3. F=kt より k=F/t の単位は Ns−1=kgms−3 である.

  4. a=F/m=5.0/2.0=2.5ms−2 である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

なめらかな水平面上に,質量 0.50kg の物体が静止している.この物体に,水平面内で互いに直角な方向の力 3.0N(x 方向)と 4.0N(y 方向)が同時に働く.

  1. 加速度の大きさと向き(x 軸の正の向きとなす角 θ)を求めよ.

  2. 力が働き始めてから 2.0s 後の速さと,その間の変位の大きさを求めよ.

物体にx方向の3.0 Nとy方向の4.0 Nの力が働く.求める合力や加速度の方向は描かない. 物体にx方向の3.0 Nとy方向の4.0 Nの力が働く.求める合力や加速度の方向は描かない.
解答を見る
  1. 成分ごとに運動方程式を立てる.0.50ax=3.0,0.50ay=4.0 より,ax=6.0ms−2,ay=8.0ms−2 である.加速度の大きさは 6.02+8.02=10ms−2,向きは合力と同じで,tan⁡θ=4.0/3.0 より x 軸から約 53∘ である.

  2. 加速度の大きさが一定で,初速度は 0 である.速さは 10×2.0=20ms−1,変位の大きさは 12×10×2.02=20m である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

質量 60kg の人が,エレベーターの中の体重計に乗っている.体重計は,人が体重計を押す力(に等しい垂直抗力)N を g=9.8ms−2 で割った値を「キログラム」で表示するものとする.人に働く力は,重力 mg と,体重計が人を押し上げる力 N(垂直抗力)の2つとする(2つの押す力が等しいことは「作用と反作用」,垂直抗力は「垂直抗力と張力」の節で詳しく扱う).

  1. エレベーターが等速で動いているとき,表示は何 kg か.

  2. 上向きに大きさ 1.5ms−2 の加速度で動いているとき,表示は何 kg か.

  3. 表示が 48kg だった.エレベーターの加速度の向きと大きさを求めよ.また,エレベーターは上昇中か下降中か,これだけで分かるか.

  4. ケーブルが切れて自由落下するとき,表示は何 kg か.

エレベーター内で体重計に乗る人に働くmgとNを示す.加速度の向きは各設問の条件による. エレベーター内で体重計に乗る人に働くmgとNを示す.加速度の向きは各設問の条件による.
解答を見る

考え方 人に注目し,鉛直上向きを正とする.人に働く力は,下向きの重力 mg と,体重計からの上向きの垂直抗力 N の2つである.加速度 a(上向き正)として,運動方程式は

ma=N−mgすなわちN=m(g+a)

である.表示は N/g である.

  1. 等速なので a=0,N=mg=588N.表示は 60kg である.

  2. a=1.5 より,N=60×(9.8+1.5)=678N.表示は 678/9.8≈69kg である.

  3. 表示が 48kg なので,N=48×9.8=470.4N である.a=N/m−g=470.4/60−9.8=−1.96ms−2.よって加速度は下向きで,大きさは約 2.0ms−2 である.一方,この情報から分かるのは加速度の向きだけで,速度の向きは分からない.上昇しながら減速している場合も,下降しながら加速している場合も,同じ表示になる.

  4. 自由落下では,a=−g なので,N=m(g−g)=0.表示は 0kg である.体重計が人を押さなくなる「無重量」の状態である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

x 軸上を運動する質量 m の物体に,位置 x に応じて F=−kx(k>0)の力が働くとする.

x軸上の原点Oと,静かに放す位置x=Aを示す.加速度や運動後の方向は描かない. x軸上の原点Oと,静かに放す位置x=Aを示す.加速度や運動後の方向は描かない.
  1. 加速度 a を x で表し,a と x の関係を言葉で述べよ.

  2. x>0,x<0,x=0 の各場合に,加速度の向きはどうなるか.

  3. 物体を x=A>0 の位置で静かに放したとき,その後の運動を定性的に述べよ.速さが最大になるのはどこか.

解答を見る
  1. 運動方程式 ma=−kx より,a=−kmx である.加速度は位置に比例し,向きは位置と反対である.

  2. x>0 では a<0(負の向き),x<0 では a>0(正の向き),x=0 では a=0 である.いずれの場合も,加速度は原点に向かう向きである.

  3. 放した直後は a<0 なので,物体は原点に向かって加速し始める.原点に近づくほど加速度は小さくなるが,原点に達するまでは負のままで,速さは増え続ける.原点を通り過ぎると加速度は正になり,物体は減速する.よって,速さが最大になるのは x=0 の位置である.減速した物体は,やがて x<0 側のどこかで止まり,再び原点に引き戻される.このように,原点を中心に往復する運動になる.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

なめらかな水平面上に,質量 m1 の物体Aと質量 m2=3m1 の物体Bが静止している.それぞれに,同じ大きさ F の一定の力を,運動の向きに加える.

別々の物体AとBに,同じ大きさの力Fを同じ向きに加える. 別々の物体AとBに,同じ大きさの力Fを同じ向きに加える.
  1. 力を同じ時間 τ だけ加えたとき,A,Bの速さの比 v1:v2 を求めよ.

  2. 力を同じ距離 L だけ進む間加えたとき,A,Bの速さの比 v1:v2 を求めよ.

解答を見る

A,Bの加速度は,それぞれ a1=F/m1,a2=F/m2=F/(3m1) である.

  1. 静止から時間 τ の間加速すると,速さは v=aτ である.

v1:v2=a1:a2=Fm1:F3m1=3:1

である.

  1. 距離 L だけ進むときは,v2=2aL より v=2aL である.

v1:v2=a1:a2=3:1

である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

質量 m=0.50kg の物体が直線上を運動し,位置が時刻 t(単位は秒)の関数として x(t)=αt2−βt3(α=3.0ms−2,β=0.50ms−3)で与えられる.物体に働く合力 F(t) は,運動方程式から逆に求められる.

問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたxと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
  1. 合力 F(t) を求めよ.

  2. 合力が 0 になる時刻と,その時刻での速度を求めよ.

  3. 速度が再び 0 になる時刻と,そのときの位置を求めよ.

解答を見る

考え方 位置を時間で2回微分して加速度を求め,運動方程式に代入する.

  1. 速度は v=dxdt=2αt−3βt2,加速度は a=dvdt=2α−6βt である.したがって

F(t)=ma=m(2α−6βt)=0.50×(6.0−3.0t)=3.0−1.5t  [N]

である.

  1. F=0 となるのは t=2.0s である.そのときの速度は

v=2×3.0×2.0−3×0.50×2.02=12−6.0=6.0ms−1

である.加速度が 0 になるこの時刻に,速度は最大になる.

  1. v=2αt−3βt2=t(6.0−1.5t)=0 より,t=0 または t=4.0s である.t=4.0s での位置は

x=3.0×4.02−0.50×4.03=48−32=16m

である.

ポイント 教える人へ

  • 問いかけ:「力を2倍にしたら?質量を2倍にしたら?」と順に聞き,その結果から比例・反比例の関係を言葉にさせる.その後に F=ma を見せると,式が実験の要約だと分かる.

  • つまずき:「力=質量×速度」と書いてしまう,加速度の向きと速度の向きを同じだと思う,といった混同がある.力は加速度の向きに働き,速度の向きとは限らないことを,例題と演習3の (3) で確かめる.

  • 確かめ方:「重さ」と「質量」の違いを,月の上での押しやすさ・持ち上げやすさを使って説明させる.エレベーターの体重計の表示が変わる理由を,運動方程式で式にできれば,理解できている.