問いしるべ
問いから始める物理 外部運動と内部運動

外部運動と内部運動

外部運動と内部運動の演習

著者:柚木芹香

全体の運動を先に求め,残りを内部運動として数えてください.外力の仕事では,どの点の変位を使ったかも説明しましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

水平面上の3つの小物体A,B,Cの質量はそれぞれ m,m,2m,ある瞬間の速度は (3u,0),(0,3u),(0,0) である.m,u>0 とする.

  1. 全運動量,重心速度,各物体の重心に対する速度を求めよ.

  2. 全運動エネルギーを外部と内部に分け,内部の運動量が0であることと矛盾しない理由を説明せよ.

AとBの直交する速度3uと,静止したCを真上から描く.質量m,m,2mを記す. AとBの直交する速度3uと,静止したCを真上から描く.質量m,m,2mを記す.
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考え方 速度の単純平均ではなく質量を重みにした平均を使う.運動量は符号付きの和,エネルギーは速度の大きさの2乗の和である.

  1. P=(3mu,3mu),V=(3u/4,3u/4).したがって vA′=(9u/4,−3u/4),vB′=(−3u/4,9u/4),vC′=(−3u/4,−3u/4).質量を掛けて足すと各成分が0になる.

  2. K=9mu2.外部の分は K外=(4m)(18u2/16)/2=9mu2/4,内部の分は差を取って K内=27mu2/4 である.直接計算でも m(90+90+36)u2/32=27mu2/4.逆向きの運動量は相殺するが,正のエネルギーは相殺しない.どの項も質量×速度の2乗というエネルギーの次元を持つ.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M=4.0kg の密閉された装置が,水平な実験台に対して V=3.0ms−1 で並進している.内部の部品の,装置全体の重心に対する運動エネルギーは 8.0J,ばねの弾性エネルギーは 5.0J である.

  1. 実験台から見た運動エネルギーと,ばねを含めた力学的エネルギーを求めよ.

  2. 同じ向きへ 1.0ms−1 で等速運動する観測者には,それぞれいくらになるか.内部の量が変わらない理由も説明せよ.

並進する装置の箱の中にばねと部品を描き,箱のVと観測者の速度を同方向に示す. 並進する装置の箱の中にばねと部品を描き,箱のVと観測者の速度を同方向に示す.
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考え方 観測者を変えるとすべての速度から同じ速度を引く.重心速度も同じだけ変わるので,差である内部速度は変わらない.

  1. K外=4.0×3.02/2=18J より K=26J,E=K+5.0=31J.部品の運動を装置の質量に含めた上で,内部の運動エネルギーも加える必要がある.

  2. 重心速度は 2.0ms−1 なので K外=8.0J,K=16J,E=21J.相対速度とばねの伸びは変わらず,内部の 8.0+5.0=13J は共通である.一般に観測者の速度を w とすると E(w)=M(V−w)2/2+13J.w=V で最小になることも,重心運動の分を取り除いたという解釈に合う.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

空気抵抗のない空中で,3つの小部品が一体となり速度 V0 で飛んでいる.質量はA,Bが m,Cが 2m である.内部のばねを解放すると,瞬間的にAは重心に対し (u,0),Bは (0,2u) の速度を得た.解放中の重力の力積を無視する.

  1. Cの重心に対する速度と,必要だったばねのエネルギーを求めよ.

  2. 解放から時間 t 後のCの位置を,解放時の重心位置 R0,Cの重心に対する初期位置 rC0′,一定の重力加速度 g を用いて書け.

解放直後のAの内部速度(u,0)とBの内部速度(0,2u),Cの位置を描く.Cの速度は描かない. 解放直後のAの内部速度(u,0)とBの内部速度(0,2u),Cの位置を描く.Cの速度は描かない.
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考え方 爆発・解放でも内部速度の質量付きの和は0である.解放後は各部品と重心が同じ重力加速度を受ける.

  1. m(u,0)+m(0,2u)+2mvC′=0 から vC′=(−u/2,−u).外部の運動エネルギーは変わらないので,損失のない解放に必要なばねのエネルギーは

Q=12mu2+12m(2u)2+12(2m)(u24+u2)=154mu2

である.V0 が式に入らないことが重要である.

  1. R(t)=R0+V0t+gt2/2 で,重心に対するCの加速度は0.したがって

rC(t)=R0+V0t+12gt2+rC0′+(−u/2,−u)t

となる.u→0 なら3部品は位置関係を保って自由落下する.内部の相対的な広がりと,重心全体の落下を別々に足せばよい.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

水平面上に静止した,質量 M,半径 R の一様な円板を考える.円板の面は水平で,面との摩擦はない.短い時間,円板の中心から距離 b(0≤b≤R) の点へ,その点への半径と垂直な水平力を加えた.力積の大きさは J,中心まわりの慣性モーメントは MR2/2 である.

  1. 直後の外部と内部の運動エネルギーを求めよ.

  2. 外力の実際の仕事と重心の仕事はどう違うか.b=R の場合の比も求めよ.

水平円板の中心G,半径R,Gからbの作用点と接線方向の力積Jを真上から示す. 水平円板の中心G,半径R,Gからbの作用点と接線方向の力積Jを真上から示す.
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考え方 重心の並進は力積で,回転は力積のモーメントで決まる.同じ外力が両方を変える例である.

  1. MV=J,IGω=Jb より V=J/M,ω=2Jb/(MR2).したがって K外=J2/(2M),K内=J2b2/(MR2) である.力積の向きを正に選んだ回転の符号を使えば,エネルギーは常に非負になる.

  2. 変形・発熱を無視した理想剛体では,実際の仕事は両者の和 W=J2/(2M)+J2b2/(MR2).重心の仕事は WG=J2/(2M) だけである.b=R では W/WG=3.短時間だからといって,仕事も0とはできない.力が大きく,作用点の速度も変わるからである.b=0 なら回転は生じず両仕事は一致する.これは外力が内部運動も変えうる明瞭な例である.

ポイント 教える人へ

  • 「内部の運動量は0」と「内部では誰も動かない」を区別できるか,演習1の速度を図に描かせて確かめてください.

  • 座標系の変更では,各速度と重心速度から同じ量を引く手順を言葉にさせます.

  • 仕事を計算する前に,重心と力の作用点のどちらが動いたかを問いかけます.外力が内部運動を変える演習4を,外力が無視できる演習3と比較すると,適用条件を確かめられます.