問いしるべ
問いから始める物理 運動を記述する

運動を記述する

速度から位置へと積分

著者:柚木芹香

前の節で,v-tグラフの面積が変位になることを見ました.毎回細い長方形を足し合わせるのは大変なので,ここでは微分の逆向きの操作を使った近道を作り,積分の道具として整えます.

原始関数と微積分学の基本定理

前の節の結果をよく見てください.v=3t2 の0から1までの変位が1でした.ところが x=t3 を微分すると 3t2 になり,x(1)−x(0)=1−0=1 と一致します.これは偶然ではありません.

定義 原始関数と不定積分

微分すると f(t) になる関数 F(t),すなわち F′(t)=f(t) を満たす F を,f の原始関数という.原始関数は定数だけの違いを除いて決まるので,

∫f(t)dt=F(t)+C(C は積分定数)

と書き,不定積分という.

定理 微積分学の基本定理

F が v の原始関数であるとき,

∫abv(t)dt=F(b)−F(a)

が成り立つ.右辺を [F(t)]ab とも書く.

証明の筋だけ述べます(v は連続とします).定積分の上端を動かして S(t)=∫atv(s)ds という関数を作ります.時刻が h だけ進むと,S は幅 h の細い帯の面積だけ増えます.h が小さければ帯はほぼ長方形で,高さは v(t) なので

S(t+h)−S(t)≈v(t)h⟹S(t+h)−S(t)h→v(t)(h→0)

となり,S′(t)=v(t) です.すなわち S は v の原始関数の1つです.ほかの原始関数 F との差 F−S は,微分すると0になるので定数であり,F(b)−F(a)=S(b)−S(a)=S(b) となります.これが定理の中身です.

運動の言葉に直すと,「位置を微分すると速度」の逆として「速度を積分すると位置の変化」が成り立ちます.時刻 t の位置は,初めの位置に,そこまでの変位を加えて

x(t)=x(0)+∫0tv(s)ds

と書けます.不定積分で書くなら x(t)=F(t)+C で,積分定数 C を決めるのが初期条件 x(0)=x0 です.速度から位置を求めるには,速度だけでは足りず,出発点の位置という情報が1つ必要です.同じ速度でも,どこから出発したかで位置は変わるからです.加速度 a(t) から速度を求めるときも同じで,v(t)=v(0)+∫0ta(s)ds となり,初速度が必要です.

定理 数学の道具:積分

べき関数,三角関数,指数関数の原始関数は,微分の公式を逆に読んで得られる.C は積分定数,k は0でない定数,ω も0でない定数とする(k=0 なら ekt=1 で ∫dt=t+C,ω=0 なら sin⁡(ωt)=0 で積分は定数 C となる).指数関数の微分 (ekt)′=kekt は高校数学の結果としてそのまま使う.

∫tndt=tn+1n+1+C (n≠−1),∫sin⁡tdt=−cos⁡t+C,∫cos⁡tdt=sin⁡t+C,∫ektdt=ektk+C

定数倍と和は項ごとに積分できます.

∫(αf+βg)dt=α∫fdt+β∫gdt

確かめ方は,右辺を微分して被積分関数に戻ることを見るだけです.また sin⁡(ωt) のように中身が ωt のときは,微分で ω が出てくることを逆に使って

∫sin⁡(ωt)dt=−cos⁡(ωt)ω+C

です.定積分は,原始関数を1つ見つけて端点の値の差をとります.

∫132tdt=[t2]13=9−1=8

練習 1. ∫02(3t2−4t+1)dt を求めよ.

練習 2. ∫0π/2cos⁡tdt と ∫0πsin⁡tdt を求めよ.

練習 3. ∫14tdt,∫0πsin⁡2tdt,∫01e2tdt を求めよ(∫tndt の公式は n=12 のような分数でも使える).

練習 4. 速度が v=4−2t[ms−1] の物体について,t=0 から 3s までの変位と道のりを求めよ.

答え:(1) 原始関数は t3−2t2+t なので,8−8+2=2.(2) [sin⁡t]0π/2=1,[−cos⁡t]0π=1−(−1)=2.(3) [23t3/2]14=23(8−1)=143.[−12cos⁡2t]0π=−12+12=0.[12e2t]01=e2−12≈3.19.(4) 変位は [4t−t2]03=3m.t=2 で v=0 となって向きを変えるので,道のりは 0→2s の 4m と 2→3s の 1m を足して 5m.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

x軸上を運動する物体の速度が v=3t2(ms−1,t の単位は s)で表されるとき,t=1s から t=3s までの変位を求めよ.さらに t=0 の位置が x=2m のとき,x(t) を求めよ.

問題で与えられたvと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたvと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
解答を見る

考え方 速度の積分が変位になる.原始関数を見つけて端点の値の差をとる.位置そのものは初期条件で積分定数を決める.

3t2 の原始関数の1つは t3 なので,

Δx=∫133t2dt=[t3]13=27−1=26m

である.位置は x(t)=t3+C と書け,x(0)=2 から C=2 であるので,x(t)=t3+2(m).

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

x軸上を運動する物体の加速度が a(t)=6t−4(ms−2)で,t=0 での速度が v(0)=2ms−1,位置が x(0)=1m である.速度 v(t) と位置 x(t) を求めよ.また,速度が最小になる時刻と,そのときの速度を求めよ.

問題で与えられたaと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない. 問題で与えられたaと時刻tの関係を示す.求める量やその値は記入しない.
解答を見る

考え方 加速度を積分して速度,速度を積分して位置を得る.そのつど初期条件で積分定数を決める.速度の最小は a=0 の時刻に現れる.

v(t)=∫(6t−4)dt=3t2−4t+C1.v(0)=2 から C1=2 なので

v(t)=3t2−4t+2

である.次に x(t)=∫(3t2−4t+2)dt=t3−2t2+2t+C2.x(0)=1 から C2=1 で,

x(t)=t3−2t2+2t+1

となる.速度の最小は a=6t−4=0 より t=23s.このとき v=3⋅49−83+2=43−83+2=23ms−1 で,a が負から正に変わるので最小である.

ポイント ここまでのまとめ

  • F′(t)=f(t) となる F が原始関数.定積分は ∫abvdt=F(b)−F(a)(微積分学の基本定理).

  • 公式:∫tndt=tn+1n+1+C(n≠−1),∫sin⁡tdt=−cos⁡t+C,∫cos⁡tdt=sin⁡t+C,∫ektdt=ektk+C(k≠0).sin⁡(ωt) のように中身が ωt のときは ω≠0 の定数として −cos⁡(ωt)/ω を使う.

  • x(t)=x(0)+∫0tv(s)ds,v(t)=v(0)+∫0ta(s)ds(積分変数は s,上端の t と区別する).積分定数は初期条件(初めの位置・初速度)で決める.

  • 位置を求めるには,速度のほかに出発点の位置が1つ要る.