問いしるべ
問いから始める物理 波と音

波と音

倍音と音色の演習

著者:柚木芹香

波形と倍音の並びから,励起と境界条件が音色をどう変えるか調べてください.音の圧力のずれを δp,弦の張力を S,線密度を μ とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

ある点の音圧が δp=p∗(sin⁡ωt+12sin⁡2ωt) と測定された.p∗>0,ω=2πf,f=240Hz とする.

  1. 含まれる振動数と波形の最小周期 T を求めよ.

  2. t=0,T/8,T/4,3T/8,T/2 の値を求め,1周期の波形を描け.半周期後の波形は符号を反転したものか.

横軸t/T,縦軸δp/p*の作図用座標.横軸には1周期を8等分した目盛りを付ける. 横軸t/T,縦軸δp/p*の作図用座標.横軸には1周期を8等分した目盛りを付ける.
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考え方 各成分の位相を進め,圧力を足す.

  1. 振動数は 240Hz と 480Hz.基本音が存在するので,最小周期は T=1/f≈4.17×10−3s である.

  2. 指定時刻の δp/p∗ は順に 0,(2+1)/2,1,(2−1)/2,0.残り半周期では t=5T/8,3T/4,7T/8,T に順に (1−2)/2,−1,−(1+2)/2,0 を通る滑らかな曲線となる.半周期後は sin⁡ωt の符号だけが変わり,sin⁡2ωt は変わらないので,全体の符号反転ではない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

周期 T の音圧を,−T/2≤t≤T/2 で δp=p∗(1−4|t|/T) とし,周期的に延長する.p∗>0,ω=2π/T とする.

  1. δp=a0/2+∑n=1∞(ancos⁡nωt+bnsin⁡nωt) の係数を求めよ.

  2. 圧力の2乗の周期平均を求め,そのうち基本音が占める割合を求めよ.

周期Tのうち−T/2からT/2の音圧を示す.頂点は音圧p*,両端は音圧−p*で,その間は直線である. 周期Tのうち−T/2からT/2の音圧を示す.頂点は音圧p*,両端は音圧−p*で,その間は直線である.
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考え方 偶関数の対称性で正弦成分を消し,直交性で2乗平均を成分ごとに分ける.

  1. 平均は0だから a0=0,偶関数だから bn=0.q=nω とおくと

an=4p∗T∫0T/2(1−4tT)cos⁡qtdt=16p∗T2q2[1−(−1)n].

ここで ∫tcos⁡qtdt=tsin⁡qt/q+cos⁡qt/q2 を使った.よって偶数 n では0,奇数 n では an=8p∗/(π2n2) である.

  1. 波形を直接積分すると ⟨δp2⟩=2p∗2T∫0T/2(1−4t/T)2dt=p∗2/3.基本音の2乗平均は a12/2=32p∗2/π4 なので割合は 96/π4≈0.986.直交性から ⟨δp2⟩=∑an2/2 とも求まる.割合は1未満で,高い倍音の寄与は小さい.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

理想的な一様気柱の共鳴を掃引測定した.最も低い共鳴から連続する3つの値は次の表であり,各値の誤差の限界は ±1Hz である.この間に他の共鳴はない.音速 v=340ms−1 は既知とし,開口端補正を無視する.

共鳴の順

1

2

3

f(Hz)

205

615

1025

  1. 両端開管と一端閉管のどちらの模型が合うか.基本振動数 f0 の許される範囲を求めよ.

  2. 有効長 l を推定せよ.この結果だけで実際の楽器名を特定できるか.

長さlの両端開管と一端閉管を候補として並べ,開口端と閉口端を示す. 長さlの両端開管と一端閉管を候補として並べ,開口端と閉口端を示す.
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考え方 強い音のピークではなく,欠落のない共鳴の並びを境界条件の予言と比べる.

  1. 比は 1:3:5 であり,閉管の fn=(2n−1)v/(4l) に合う.開管の連続する共鳴の比 1:2:3 には合わない.3点が要求する範囲は順に 204≤f0≤206,614/3≤f0≤616/3,1024/5≤f0≤1026/5(単位は Hz).共通範囲は 204.8≤f0≤205.2(Hz)である.

  2. 中心値から l=v/(4f0)=340/820≈0.415m.限界値は約 0.4142m と 0.4150m である.実際の楽器では形状や開口端補正も効くので,名前までは決まらない.通常の演奏音のスペクトルなら,励起されない倍音もあり,この共鳴掃引と同じ推定はできない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

両端固定の長さ l の弦を,左端から b=l/4 の点で高さ a>0 まで引き,静かに放す.初期波形は 0≤x≤b で y0=ax/b,b≤x≤l で y0=a(l−x)/(l−b) である.小さな傾きの近似を用いる.

  1. 初期波形のモード係数 Bn=2l∫0ly0sin⁡(nπx/l)dx を求めよ.

  2. 欠ける倍音と B2/B1,B3/B1 を求めよ.

両端固定の弦をx=b=l/4で高さaまで引く.与えられた初期波形は二つの直線をつないだ三角形である. 両端固定の弦をx=b=l/4で高さaまで引く.与えられた初期波形は二つの直線をつないだ三角形である.
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考え方 はじいた点で積分を分ける.波形の折れ曲がりが各モードへの射影を決める.

  1. q=nπ/l とおく.部分積分で端点項は0となり,傾きが一定の区間を積分すると

∫0ly0sin⁡qxdx=1q[ab∫0bcos⁡qxdx−al−b∫blcos⁡qxdx]=alsin⁡qbb(l−b)q2.

したがって Bn=2al2sin⁡(nπb/l)/[n2π2b(l−b)]=32asin⁡(nπ/4)/(3π2n2).運動は y=∑Bnsin⁡(nπx/l)cos⁡ωnt,ωn=nπS/μ/l となる.

  1. n=4,8,12,… の成分が欠ける.比は B2/B1=2/4,B3/B1=1/9.欠けるモードははじく点に節をもつ.近似条件は両側の傾き,特に a/b=4a/l が1より十分小さいことである.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

両端固定の一様な弦(長さ l,線密度 μ,張力 S)が初め真っすぐだった.短い打撃により,l/3<x<2l/3 だけに一様な上向き速度 u>0 を与え,他は初速度0とする.運動は線形な弦の模型に従う.

  1. y=∑Ansin⁡(nπx/l)sin⁡ωnt,ωn=nπS/μ/l の係数と,励起されないモードを求めよ.

  2. 基本振動と第3モードのエネルギーの和は,全エネルギーの何割か.各モードについて En=μlωn2An2/4 を初期運動エネルギーから導いて用いよ.

初め真っすぐな両端固定の弦の中央3分の1だけに,一様な上向き初速度uを与える.区間の外では初速度は0である. 初め真っすぐな両端固定の弦の中央3分の1だけに,一様な上向き初速度uを与える.区間の外では初速度は0である.
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考え方 初速度を正弦級数に分け,変位の振幅へ直すには角振動数で割る.

  1. cn=ωnAn とすれば,直交性から

cn=2ul∫l/32l/3sin⁡nπxldx=2unπ(cos⁡nπ3−cos⁡2nπ3)=4unπsin⁡nπ2sin⁡nπ6.

よって An=cn/ωn.偶数モードはすべて欠け,奇数モードはすべて励起される.

  1. ∫0lsin2⁡(nπx/l)dx=l/2 より,時刻0の各モードのエネルギーは En=μ2cn2l2=μlcn2/4.全体は E=μ2u2l3=μlu2/6.c1=2u/π,c3=−4u/(3π) だから (E1+E3)/E=26/(3π2)≈0.878,約8.8割である.係数の符号はエネルギーに影響しない.小振幅の条件は u/S/μ が1より十分小さいことであり,実際には打撃区間の縁も滑らかになる.

ポイント 教える人へ

  • 半周期後の符号反転が,偶数倍音の有無とどう関係するか問います.

  • 波形の係数,音圧の2乗平均,弦のモードのエネルギーを区別させます.

  • 共鳴を掃引した測定と,演奏音のスペクトルの違いを確かめます.

  • 初期変位と初速度のどちらを展開しているか,係数の単位で確認させます.