問いしるべ
問いから始める物理 ゆらぎと拡散(発展)

ゆらぎと拡散(発展)

熱伝導と粘性の演習

著者:柚木芹香

温度差と熱流,速度差と粘性力を結びつけてください.気体では自由行程と容器の幅も比べましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

長さ L=2.0cm,断面積 S=1.0cm2 の棒の熱伝導率は κ=2.0Wm−1K−1,体積あたりの熱容量は ρc=2.0×106Jm−3K−1 です.側面は断熱し,物性値は一定です.

  1. 両端の温度差が 20K の定常状態で,高温端から低温端へ z 軸をとり,熱流束 q と熱流 P を求めなさい.

  2. 両端も断熱した後の均一化の時間を見積もり,同材質で長さ2倍の場合と比べなさい.

長さL=2.0 cm,断面積S=1.0 cm²の棒の側面は断熱され,両端の温度差は20 Kである.z軸は高温端から低温端へ向かい,熱流束qと熱流Pも同じ向きに流れる. 長さL=2.0 cm,断面積S=1.0 cm²の棒の側面は断熱され,両端の温度差は20 Kである.z軸は高温端から低温端へ向かい,熱流束qと熱流Pも同じ向きに流れる.
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考え方 熱流束を面積倍し,均一化は熱拡散率で見積もる.

  1. フーリエの法則より q=−κdT/dz=κ(20K)/L=2.0×103Wm−2,P=qS=0.20W で,高温端から低温端へ流れる.

  2. α=κ/(ρc)=1.0×10−6m2s−1.t≈L2/α=4.0×102s が目安である.長さ2倍では時間は4倍となる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

長さ L,断面積 S の棒2本の熱伝導率は κ,3κ です.温度 Th>Tc の熱源間に置き,側面は断熱し,接触熱抵抗は無視します.

  1. 高温側から κ,3κ の順につなぎ,直列の熱抵抗と接続点の温度を求めなさい.

  2. 並列の熱抵抗と,直列に対する全熱流の倍率を求めなさい.

各棒の長さはL,断面積はSで,熱伝導率はκと3κである.直列では高温側Thからκ,3κの順につなぎ,接続点をTiとする.並列では両方の棒が同じThとTcを共有する.直列では熱流が共通,並列では温度差が共通となる. 各棒の長さはL,断面積はSで,熱伝導率はκと3κである.直列では高温側Thからκ,3κの順につなぎ,接続点をTiとする.並列では両方の棒が同じThとTcを共有する.直列では熱流が共通,並列では温度差が共通となる.
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考え方 直列では熱流,並列では温度差が共通である.

  1. R1=L/(κS),R2=R1/3 だから Rs=4L/(3κS).接続点の温度は Ti=Tc+PR2=Tc+(Th−Tc)/4 である.

  2. 1/Rp=1/R1+1/R2 より Rp=L/(4κS).同じ温度差では Pp/Ps=Rs/Rp=16/3 となる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

長さ ℓ,内半径 a,外半径 2a の円筒状の断熱材の内外面を Th>Tc に保ちます.κ は一定で,端面は断熱します.

  1. 定常の熱流 P を求めなさい.

  2. 同材質を厚さ a だけ加え,外半径を 3a にします.内外面の温度が追加前と同じなら,熱流は何倍ですか.接触熱抵抗は無視し,ln⁡2=0.693,ln⁡3=1.10 とします.

追加前は内半径a,外半径2a,追加後は内半径a,外半径3aの円筒である.どちらも内面をTh,外面をTcに保ち,長さℓと材質は同じである.追加後の半径2aは材料の界面を表す.下に軸を含む断面と断熱された両端面を示す. 追加前は内半径a,外半径2a,追加後は内半径a,外半径3aの円筒である.どちらも内面をTh,外面をTcに保ち,長さℓと材質は同じである.追加後の半径2aは材料の界面を表す.下に軸を含む断面と断熱された両端面を示す.
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考え方 面積が半径で変わるので,円筒の熱抵抗を使う.

  1. 半径 r の面では P=−2πκrℓdT/dr.a から 2a まで積分すると Th−Tc=Pln⁡2/(2πκℓ).よって R=ln⁡2/(2πκℓ),P=2πκℓ(Th−Tc)/ln⁡2 である.

  2. R′=ln⁡3/(2πκℓ) より P′/P=ln⁡2/ln⁡3≈0.63.厚さ2倍でも,面積も増すので熱流は半分にならない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

間隔 d,幅 w,流路長 L の静止した水平な平行平板の間に,粘性率 η 一定の非圧縮性液体を流します.入口は出口より圧力が Δp>0 高く,圧力は直線的に下がります.定常層流で,端・側面の影響と滑りは無視します.

  1. 下板からの高さを z,下流向きの速度を u(z) とし,力のつり合いから速度分布を求めなさい.

  2. 各板の粘性力を向きも含めて求めなさい.圧力差と寸法は同じで,η が2倍なら速度と力は何倍ですか.

上面図に流路長Lと幅wを,下の側面図に板間隔dと下板から上向きのz軸を示す.入口の圧力は出口よりΔpだけ高く,液体は右へ流れる.上下の板は静止している.高さzの厚さdzの薄い層を緑で示し,その流速をu(z)と記す. 上面図に流路長Lと幅wを,下の側面図に板間隔dと下板から上向きのz軸を示す.入口の圧力は出口よりΔpだけ高く,液体は右へ流れる.上下の板は静止している.高さzの厚さdzの薄い層を緑で示し,その流速をu(z)と記す.
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考え方 層を押す圧力の力を,上下の粘性力の差が打ち消す.

  1. 厚さ dz の層では Δpwdz+ηwLd2udz2dz=0.2回積分し,u(0)=u(d)=0 を使うと

u(z)=Δp2ηLz(d−z)

となる.

  1. 壁での勾配の大きさは Δpd/(2ηL).各板の力は F=ηwL|du/dz|=Δpwd/2 で,両方とも下流向きである.η が2倍なら勾配は半分となり,速度は半分,力は不変である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

理想気体の分子の質量 m,1分子あたりの熱容量 c1,衝突断面積 σ は一定とします.

  1. λ=1/(nσ) から κ,η が数密度によらないことを示しなさい.等温で圧力2倍,等圧で温度4倍にした場合の λ,v¯,D,κ,η の倍率を求めなさい.ともに 1≫Kn とします.

  2. 固定温度で p0=1.0×105Pa のとき λ0=1.0×10−7m です.隙間 d=1.0cm で Kn=1 となる圧力を求めなさい.異なる壁温度を保ち,0.010Pa から 0.0010Pa に下げると,気体の熱流は何倍ですか.放射と支持材の熱伝導は除きます.

同じ隙間dと壁温度Th>Tcをもつ2つの気体を比べる.左のλ≪dでは分子は衝突を繰り返し,輸送距離はλ程度である.右のλ≫dでは途中で衝突せず壁から壁へ直行し,輸送距離はd程度に限られる. 同じ隙間dと壁温度Th>Tcをもつ2つの気体を比べる.左のλ≪dでは分子は衝突を繰り返し,輸送距離はλ程度である.右のλ≫dでは途中で衝突せず壁から壁へ直行し,輸送距離はd程度に限られる.
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考え方 分子数の減少と自由行程の増加は打ち消し合うが,輸送距離は壁間隔が上限である.

  1. κ≈nv¯λc1/3=v¯c1/(3σ),η≈nmv¯λ/3=mv¯/(3σ) で n は消える.n=p/(kBT),v¯∝T,D≈v¯λ/3 より,等温では順に 1/2,1,1/2,1,1 倍.等圧では n が1/4倍で,順に 4,2,8,2,2 倍となる.

  2. Kn=λ0p0/(pd) より境目は p=λ0p0/d=1.0Pa.Kn=100,1000 で輸送距離は壁間隔となる.壁温度一定で熱流は n∝p に比例し,約1/10倍になる.真空断熱はこの領域で効く.

ポイント 教える人へ

  • 熱流束と熱流の違いを単位で説明させます.

  • 直列と並列で共通の量を問い,接続点の温度を確かめさせます.

  • 円筒で厚さだけを使う誤りには,各半径の面積を描かせます.

  • 静止板の粘性力を問い,両板の力の和を圧力の力と比べさせます.

  • 密度によらない結論の適用条件を,自由行程と隙間で説明させます.