問いしるべ
問いから始める物理 この本の読み方

この本の読み方

教わりながら進めるには

著者:柚木芹香

この節は,先生・家庭教師・保護者など,誰かに物理を教えながらこの本を使う人に向けて書いています.教わる側の人も読んで構いません.教える人が何を考えて問いかけているかが分かると,学びやすくなります.

説明より先に問いを投げる

この本の各題材の本体の節は,答えをまだ示していない問いから始まります.教えるときも,説明から始めず,問いをそのまま投げかけてください.教わる人が予想を言ったり,紙に書いたりしたら,その理由を聞きます.正しいかどうかは,この時点では言わなくて構いません.外れた予想こそ,次の「考えてみる」への最良の入り口になります.

教える人が答えを言ってしまうと,教わる人は考えるのをやめてしまいます.迷っている様子が見えても,少し待ってください.待つ時間も教えることの一部です.

「教える人へ」の囲みの使い方

演習の節の最後には,「教える人へ」という囲みがあります.そこには,おおよそ次の3つが書かれています.

  • 何を問いかけるか.その題材で,最初に投げかけるとよい問いと,予想を引き出す聞き方です.

  • よくあるつまずき.これまでの経験で,教わる人が止まりやすい所と,その手当てです.

  • 理解の確かめ方.答えが出たあとに,本当に分かっているかを見る問いです.

教える前に,その題材の「教える人へ」を一度読んでおいてください.読んだ内容をそのまま伝えるのではなく,目の前の人の様子に合わせて使います.囲みは台本ではなく,地図のようなものです.

教わる人が解答を見る前に

教わる人が詰まっているとき,すぐに解答を見せたり,解き方を言ったりするのは避けましょう.代わりに,次のように聞いてみてください.

  • どこまで考えましたか.

  • 何を求めたいのですか.図に描けますか.

  • 使えそうな法則は何ですか.

  • 極端な場合(0や無限大)で考えると,どうなりますか.

答えそのものより,考えた過程のほうが,次の学びに効きます.間違った答えの中にも,筋の通った考え方が隠れていることがあります.まずそこを探して,認めてから,ずれている所を一緒に探してください.

確かめるときの心がけ

答えが合っていたとき,「合っている」で終わらせず,「なぜそうなりますか」「数を変えたらどうなりますか」と一歩踏み込みます.答えられれば,式の意味まで分かっています.答えられなければ,分かったつもりになっているだけかもしれません.

間違えたときは,責める言葉を避け,間違いに気づけたこと自体を認めてください.物理が得意な人は,間違えない人ではなく,間違いに早く気づく人です.次元や極端な場合による検算を,教わる人が自分から使えるようになれば,教える人の役目は半分終わったようなものです.

教える人も,先に解いておく

教える前に,教わる人に出す予定の問題を,教える人も一度自分で解いておくと安心です.解答と見比べると,どこで手が止まりやすいかが分かります.解けた経験があると,教わる人が詰まったときに,答えを言わずにヒントを選べるようになります.解いてみて,自分も迷った所は,教わる人も迷う所です.

分からない質問が来たときは,無理に答えようとせず,「一緒に調べよう」と言って構いません.本の前の節に戻る,簡単な数値で試す,図を描き直す,といった方法を,教える人が実際にやってみせることが,いちばんよい手本になります.

★の使い分け

教わる人の様子を見て,★の段階を使い分けてください.★1が楽に解けるなら★2へ,★2で詰まったら★1の問題に戻る,という具合です.★3以上の章末の問題は,ひとりで解けなくても構いません.解答を読んで,一緒に考え方を確かめるだけでも,十分な学びになります.

1節に使う時間は,30分から1時間が目安です.一度に進めすぎず,次に会うまでの間に,教わる人が自分で解き直す課題を1つ決めておくと,次の時間が実りあるものになります.