この本では,記号と単位の書き方を全体で統一しています.ここで一度まとめておくので,あとで迷ったら戻ってきてください.
量を表す記号
よく使う量には,次の記号を割り当てます.
量 | 記号 |
|---|
位置 | 𝑥,𝒓 |
速度 | 𝑣,𝒗 |
加速度 | 𝑎,𝒂 |
質量 | 𝑚,𝑀 |
力 | 𝑭 |
垂直抗力 | 𝑁 |
張力 | 𝑇 |
重力加速度 | 𝑔 |
静止摩擦係数 | 𝜇 |
動摩擦係数 | 𝜇′ |
時間 | 𝑡 |
𝑁 は垂直抗力ですが,個数を表す文字として使うこともあります.𝑇 は張力のほかに,周期にも使います.どちらの意味かは,その節の文脈と,文字の定義から分かるようにしてあります.
ベクトルと大きさ
向きと大きさをもつ量(ベクトル)は,この本では 𝒗 のように太字で書きます.手書きのときは ⃗𝑣 のように文字の上に矢印をつけるのがふつうで,印刷の太字と手書きの矢印は同じものを指します.ベクトルを初めて導入する第3章「位置とベクトル」の冒頭だけは,手書きの形に合わせて矢印つきで書き,そこから先は太字で統一します.
ベクトルの大きさは,同じ文字を太字にせずに 𝑣 と書きます.つまり 𝑣 =|𝒗| です.直線上の運動では,向きを正負の符号で表し,太字を使わないことがあります.その場合の 𝑣 は符号つきの速度で,負になることもあり,速さは |𝑣| です.どちらを正とするかは,図に描いて決めます.
ベクトルの成分は,𝑣𝑥,𝑣𝑦 のように下付きの添字で表します.
添字
同じ種類の量を区別するときは,添字をつけます.
時刻や状態の違い:初速度は 𝑣0,ある時刻の速度は 𝑣1,𝑣2 のように書きます.0 は初めの値を表します.
物体の区別:物体 A の質量は 𝑚A,物体 B の質量は 𝑚B のように,立体の文字で書きます.
方向の区別:𝑥 成分,𝑦 成分は 𝐹𝑥,𝐹𝑦 です.
2つの値の差は,Δ𝑥 =𝑥2 −𝑥1,Δ𝑡 =𝑡2 −𝑡1 のように Δ をつけて表します.差は小さいとは限りません.時間による微分は d𝑥d𝑡 と書き,時間の差 Δ𝑡 を限りなく0に近づけたときの変化率です.後の章では,時間による微分を文字の上の点で ˙𝑥 =d𝑥d𝑡,¨𝑥 =d2𝑥d𝑡2 と短く書くこともあります.
単位の書き方
単位は,数式の中でも立体の文字で書き,数値との間に細い空白を入れます.
𝑣=3.0ms−1
分数の形ではなく,各単位の冪を並べる形で書きます.速さは ms−1,加速度は ms−2,力は kgms−2 です(1 kgms−2 を 1 N と書きます).冪の形にしておくと,掛け算と割り算の計算が楽になり,次元のそろい方も見やすくなります.
たとえば重力加速度は 𝑔 =9.8 ms−2 と書きます.これは「地表付近で空気抵抗を無視すると,鉛直下向きの速度成分が1秒ごとに 9.8 ms−1 ずつ増える」という意味です.
ただし,文脈上その方が自然なときだけは,スラッシュを残します.車のメーターの km/h や,日常の言い回しの km/L がその例です.
接頭語は,k(キロ,103),M(メガ,106),m(ミリ,10−3),𝜇(マイクロ,10−6),n(ナノ,10−9)などを使います.1 km =103 m のように,式の中では計算する前に基本の単位に直すと,間違いが減ります.
有効数字
数値には,意味のある桁,つまり有効数字があります.この本では,問題文で与えられた数値の有効数字の桁数を目安に,答えの桁数をそろえます.
大きな数や小さな数は,𝑎 ×10𝑛(1 ≤|𝑎| <10,𝑛 は整数)の形で書きます.1200 と書くと桁数があいまいなので,1.2 ×103 か 1.20 ×103 と書き分けます.有効数字の詳しい扱いは,第2章「物理の見方」の「原子の見方の例題」の節で改めて取り上げます.
見積もりの問題では,答えを1桁または2桁で書きます.7.5 ×1013 J と書いても,実際の確かさは1桁ほどだと考えてください.
文章の表記
文章は,句読点に「,」と「.」を使います.これは理系の文書で広く使われる書き方で,数式の中のカンマとも自然につながります.この本の問題文・考え方・解答も,すべてこの書き方にそろえています.
数式は,文中に置けるものは文中に置き,大切な式や長い式だけを独立した行にします.文中の式も独立した式も,読むときは文の一部として,主語や述語と結びつけて読んでください.