問いしるべ
問いから始める物理 この本の読み方

この本の読み方

独学の進め方

著者:柚木芹香

問いは紙の上で考える

各題材の本体の節は「問い」から始まります.ここで本を読み進めず,まず紙に自分の予想と,そう思う理由を書いてください.頭の中だけで考えると,あとから「そうだと思っていた」と記憶を書き換えてしまいます.紙に書いておけば,予想と答えのずれがはっきり見えます.外れたときの驚きが,その節でいちばん長く残る学びになります.

予想が思いつかないときは,「わからない」と書いて構いません.そのうえで,答えがどんな大きさ,どんな向き,どんな単位になりそうかだけでも書いてみましょう.

解答の使い方

演習や例題の解答は,次の順に使ってください.

  1. まず自分で解く.10分ほど考えても手がかりがなければ,次に進みます.

  2. 解答の「考え方」だけを読む.何に注目するかのヒントだけを受け取り,もう一度自分で解きます.

  3. それでも進まなければ,解答を最後まで読む.読み終えたら,本を閉じて,何も見ずに自分で書き直します.

答えの数値が合っていても,途中の考え方が違っていないかを確かめましょう.また,解き終えたら,次元は合っているか,極端な場合に妥当か,という検算を習慣にしてください.この検算は,第2章で学びます.

解答を読んだだけで分かったつもりになるのは,いちばん危ない使い方です.読んで「なるほど」と思うことと,白紙から自分で書けることの間には,大きな差があります.書き直して初めて,自分のものになります.

詰まったとき

分からない所が出てきたら,まず,どの言葉が分からないのかを特定してください.次のように,原因はいくつかに分かれます.

  • 用語が分からない.前の節に戻って,定義を読み直します.

  • 式の意味が分からない.文字の1つ1つが,何の量で,どんな単位かを書き出します.

  • 式変形が追えない.自分で1行ずつ書き写して,間の変形を埋めます.

  • 原理がなぜ成り立つのかが分からない.もっと簡単な数値や,極端な場合で試してみます.

これらは別々の問題で,手当ても違います.それでも分からなければ,その節に印をつけて先へ進み,あとで戻ってきても構いません.ほかの節で学んだことが,思いがけずその分からなさをほどいてくれることがよくあります.

物理が得意な人は,間違えない人ではなく,間違いに早く気づく人です.この本では,次元,極端な場合,桁の見積もりといった検算の方法を,第2章で先に身につけます.間違いに気づく道具を最初に手にしておくことが,この本の構成の狙いの1つです.

ノートの取り方

図は本文の中に置いてあり,動かせるものもあります.ただし図は眺めるものではなく,自分でも描くものです.問題を解くときは,必ず自分で図を描いてください.状況を図にできたら,問題の半分は解けています.

ノートには,式の変形だけでなく,「何を求めたいのか」「どの原理を使うのか」を日本語で1行書き添えると,あとで見返したときに自分の考えをたどれます.第2章で学ぶ「図・原理・式・検算」の順に,ページを区切って書くのもよい方法です.

  • 左のページに問題と図,右のページに解答,と分けると,見返しやすくなります.

  • 間違えた問題には,どこで間違えたかを一言書き,日をおいて解き直します.

  • 1節を終えるごとに,その節の要点を自分の言葉で3行にまとめます.本のまとめを写すのではなく,何も見ずに書くのがコツです.

進める速さ

1つの節は,ゆっくり読んで30分から1時間を目安にしています.問いと考えてみるに10分,理論に20分,ここまでのまとめを読んで自分の言葉で言い直すのに数分,という配分です.数学の道具の節や演習の節は,別の日に回しても構いません.

大切なのは,毎日少しずつでも続けることです.1日に1節を目安に,疲れた日は問いだけを読んで予想を書くところまでにしておく.それだけでも,次の日に続きを読むときの入り口が軽くなります.