問いしるべ
問いから始める物理 確率振幅から組み立てる量子力学(発展)

確率振幅から組み立てる量子力学(発展)

同種粒子の散乱と状態の占有の演習

著者:柚木芹香

交換した過程が同じ検出結果になるかを確かめてください.交換の符号と状態の占有を,散乱,光子の数,電子を詰める順序へ結びつけましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

2粒子を散乱させ,検出器 D,E に1個ずつ届く事象を調べる.交換前の振幅を a=1/10,交換した過程の振幅を b=1/20 とする.内部状態はそろえてあり,散乱で変わらない.

  1. 区別できる粒子,同種ボース粒子,同種フェルミ粒子の検出確率と,その比を求めよ.

  2. 経路を区別する標識を付けると,交換による干渉は残るか.

2本の入射経路から検出器D,Eへ至る2組の経路を示す.実線の組の振幅a=1/10と破線の組の振幅b=1/20は,それぞれ2粒子の過程全体の振幅である. 2本の入射経路から検出器D,Eへ至る2組の経路を示す.実線の組の振幅a=1/10と破線の組の振幅b=1/20は,それぞれ2粒子の過程全体の振幅である.
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考え方
区別できる場合は確率を足し,同種粒子では交換の符号を含めて振幅を足す.

  1. 区別できる場合は Pdist=|a|2+|b|2=5/400.ボース粒子は PB=|a+b|2=9/400,フェルミ粒子は PF=|a−b|2=1/400.したがって比は順に 5:9:1 である.

  2. 標識から検出器への対応が分かれば最終状態が異なり,確率は 5/400 となる.標識を読み取らなくても,その情報が残る限り干渉しない.検出器を指定した事象なので,確率に余分な係数2を付けない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

温度 T の空洞にある振動数 ν の各光子モードの平均占有数を n¯ とする.準位差 hν の原子について,下準位と上準位の個数を Nl,Nu とし,吸収率は Bn¯Nl,放出率は B(n¯+1)Nu と与える.状態数は等しく,熱平衡では Nu/Nl=e−hν/(kBT) である.

  1. 吸収と放出のつり合いから n¯ を求めよ.

  2. 体積 V の空洞で,中心振動数 ν0,幅 Δν の狭い帯域のモード数は G=8πVν02Δν/c3 である.hν0=kBT,G=2.0×108 の場合の平均光子数を求め,帯域を狭いとする条件を述べよ.

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考え方
放出の n¯+1 の1を残して平衡を解く.光子数はモード数と占有数の積になる.

  1. n¯Nl=(n¯+1)Nu より,n¯/(n¯+1)=e−hν/(kBT).整理して n¯=1/(ehν/(kBT)−1) である.

  2. 帯域内でモード密度と占有数を一定と近似すると,N¯=G/(e−1)=1.16×108≈1.2×108.Δν/ν0 と hΔν/(kBT) が十分小さいことが必要である.G と N¯ は無次元であり,低温の極限では占有数が0へ近づく.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

状態数の等しい上下2準位を持つ N 個の原子を用いる.下準位の原子1個あたりの励起率を w,上準位から下準位への自発的な緩和率を γ とし,レーザー光が弱い段階では wNl=γNu,Nl+Nu=N が成り立つ.モードの光子数 n に比例する正味の誘導放出率は Bn(Nu−Nl),光子の損失率は κn とする.

  1. 反転分布 Nu>Nl の条件と,微小な光が増幅される条件を区別して求めよ.

  2. κ/(BN)=0.20,γ=4.0×107s−1 のとき,増幅に必要な w を求めよ.自発放出が存在するだけで増幅するといえるか.

上下2準位の励起率w,緩和率γと,上準位・下準位の原子数Nᵤ,Nₗを示す.共振器内のモード光子数はn,光子損失率はκnである. 上下2準位の励起率w,緩和率γと,上準位・下準位の原子数Nᵤ,Nₗを示す.共振器内のモード光子数はn,光子損失率はκnである.
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考え方
原子の占有数を先に決め,光子数に比例する生成と損失の係数を比較する.

  1. Nu=Nw/(w+γ),Nl=Nγ/(w+γ) より,反転分布は w>γ.増幅には BN(w−γ)/(w+γ)>κ が必要である.η=κ/(BN) とおくと,η<1 で w>γ(1+η)/(1−η).η≥1 では有限の励起率でこの条件を満たせない.

  2. w>4.0×107×1.20/0.80=6.0×107s−1.自発放出は光の種を供給するが,増幅係数を正にするとは限らない.損失を0にすると条件は反転分布だけになり整合する.占有数を固定する近似は,誘導遷移率 Bn が w+γ より十分小さい段階に限る.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

入力 A,B から各1粒子を同時に送り,出力 D,E へ混合する装置を考える.1粒子の振幅は ⟨D|A⟩=⟨E|B⟩=τ,⟨E|A⟩=⟨D|B⟩=i1−τ,0≤τ≤1 である.相互作用と損失はなく,内部状態と到着時刻はそろっている.同種ボース粒子2個が同じ出力に入る振幅は,対応する1粒子振幅の積の 2 倍とする.

  1. 区別できる粒子,ボース粒子,フェルミ粒子の,両出力に1個ずつ届く確率を求めよ.

  2. ボース粒子の両方が D に入る確率と,両方が E に入る確率を求め,規格化を確かめよ.τ=0.60 での同時検出確率も比較せよ.

入力A,Bから出力D,Eへの1粒子の接続を示す.A→DとB→Eは√τ,A→EとB→Dはi√(1−τ)である. 入力A,Bから出力D,Eへの1粒子の接続を示す.A→DとB→Eは√τ,A→EとB→Dはi√(1−τ)である.
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考え方
直接過程と交換過程を数え,同じ出力への増強と排他律も確認する.

  1. 直接過程は τ,交換過程は i2(1−τ)=−(1−τ).区別できる場合は Pdist=τ2+(1−τ)2.ボース粒子は PB=|τ−(1−τ)|2=(2τ−1)2,フェルミ粒子は PF=|τ+(1−τ)|2=1.

  2. 両方が D に入る振幅は i2τ(1−τ),確率は 2τ(1−τ).E も同じなので,全確率は (2τ−1)2+4τ(1−τ)=1.フェルミ粒子は同じ完全な状態には入れず,両方が同じ出力に入る確率は0である.τ=0.60 で1個ずつ届く確率は順に 0.52,0.040,1.ボース粒子の同時検出が0になるのは τ=1/2 であり,位相と到着状態がそろうという前提も必要である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

電子を1個ずつ閉じ込める装置には,軌道準位 Ej=E0+jΔ,j=0,1,…,Δ>0 がある.各軌道にはスピンの異なる2状態があり,それぞれ1電子だけ入る.電子数 N の基底状態の全エネルギーを,占有準位の和と KN(N−1)/2 の和で表す模型を採用する.K>0 は電子対あたりの反発エネルギーで,空の装置では U(0)=0 とする.追加エネルギー μN=U(N)−U(N−1) を測定した.

N

1

2

3

4

5

6

μN(eV)

0.40

0.60

1.40

1.60

2.40

2.60

  1. E0,Δ,K を求め,残る値でも確かめよ.

  2. μ7,U(7) を求めよ.軌道準位1つに2電子を入れることが,排他律と矛盾しない理由も述べよ.

等間隔の軌道準位Eⱼ=E₀+jΔを空のまま示す.各軌道にスピンの異なる2状態の空枠を置く.Δの数値と電子の占有は示さない. 等間隔の軌道準位Eⱼ=E₀+jΔを空のまま示す.各軌道にスピンの異なる2状態の空枠を置く.Δの数値と電子の占有は示さない.
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考え方
低い軌道から2個ずつ詰める.電子を1個加えると,新たにできる電子対は N−1 組である.

  1. 整数 q≥1 について,μ2q−1=E0+(q−1)Δ+(2q−2)K,μ2q=E0+(q−1)Δ+(2q−1)K.最初の値から E0=0.40eV,K=μ2−μ1=0.20eV.軌道が変わる差 μ3−μ2=Δ+K より Δ=0.60eV.q=2,3 を代入すると残る 1.60,2.40,2.60eV にも一致する.

  2. 第7電子は j=3 に入るので μ7=E0+3Δ+6K=3.40eV.全エネルギーは U(7)=2E0+2(E0+Δ)+2(E0+2Δ)+(E0+3Δ)+21K=12.40eV.異なるスピンは別の完全な状態なので排他律に反しない.追加エネルギーを7個目まで足しても同じ値になる.

ポイント 教える人へ

  • 粒子を交換しても同じ事象か,内部状態まで含めて問いかける.

  • 軌道が同じことと,スピンも含めた完全な状態が同じことを区別させる.

  • 自発放出,誘導放出,損失をそれぞれ式の項に対応させる.

  • 追加エネルギーの差の交互性から,排他律と反発の寄与を説明させる.