問いしるべ
問いから始める物理 電磁誘導と交流

電磁誘導と交流

2階の線形微分方程式と電気振動

著者:柚木芹香

本体の節では,LC回路とLRC回路の振動を結果だけ示しました.ここで,第7章で使った est を代入する方法をまとめ直し,回路の切り替えの問題に使います.第7章では指数を λ と書きましたが,回路の話ではふつう s と書きます.中身は同じです.

定理 数学の道具:定数係数の線形微分方程式を est で解く

a,b,c を実数の定数として,aq¨+bq˙+cq=0 を考える(q˙=dq/dt).

重ね合わせ. 左辺は q について1次なので,q1 と q2 が解なら Aq1+Dq2 も解である.

特性方程式. q=est を代入すると q˙=sq,q¨=s2q なので (as2+bs+c)est=0,すなわち as2+bs+c=0.異なる2つの根 s1,s2 から,一般解 q=Aes1t+Des2t が得られる.

複素数の根. 根が s=−γ±iω′ のとき,e(−γ+iω′)t=e−γt(cos⁡ω′t+isin⁡ω′t) の実部と虚部は,どちらも実数の解である.係数が実数なので,u+iv を代入した式の実部と虚部がそれぞれ0になるからである.よって実数の一般解は q=e−γt(Acos⁡ω′t+Dsin⁡ω′t).

重解. s1=s2=s0 のときは q=(A+Dt)es0t.

右辺が定数. aq¨+bq˙+cq=f(f は定数)なら,qe=f/c が1つの解で,q−qe が右辺0の式をみたす.

定数 A,D は2つの初期条件で決める.回路では,コンデンサーの電荷とコイルの電流が切り替えの前後で連続であることを使う.1階の式 LI˙+RI=E0 も同じで,Ls+R=0 から s=−R/L,I=E0/R+Ae−Rt/L となる.

LRC回路 Lq¨+Rq˙+q/C=0 の特性方程式は Ls2+Rs+1/C=0 で,根は

s=−R2L±R24L2−1LC

です.γ=R/(2L),ω0=1/LC とおくと第7章と同じ形で,R<2L/C なら弱減衰,R=2L/C なら臨界減衰(重解),R>2L/C なら過減衰です.第7章の Q=ω0/(2γ) は回路では Q=ω0L/R です.

ポイント 数学の道具:エネルギーの式を作る

回路の式 Lq¨+Rq˙+q/C=0 に q˙=I を掛けると,Lq¨q˙=ddt(12Lq˙2),qq˙C=ddt(q22C) なので

ddt(12LI2+q22C)=−RI2

となる.第6章で運動方程式に速度を掛けて力学的エネルギーの式を作ったのと同じ操作である.電源があれば,右辺に電源の仕事率 EI が加わる.

練習1 L=10mH,C=1.0μF,R=40Ω の直列LRC回路の特性方程式の根を求め,減衰振動かどうかを答えよ.

練習2 q¨+6q˙+9q=18,q(0)=0,q˙(0)=0 を解け(単位は省く).

答え 練習1:s2+4.0×103s+1.0×108=0 より s=−2.0×103±i1.0×108−4.0×106≈(−2.0±9.8i)×103s−1.根が複素数なので減衰振動で,2L/C=200Ω より R が小さいことと合う.練習2:s2+6s+9=0 は重解 s=−3,qe=2 なので q=2+(A+Dt)e−3t.q(0)=0 から A=−2,q˙(0)=D−3A=0 から D=−6 で,q=2−(2+6t)e−3t.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

起電力 E0=12V で内部抵抗の無視できる電池にスイッチ S を直列につなぎ,その先に,自己インダクタンス L=0.60H,内部抵抗 r=4.0Ω のコイルと,抵抗 R=96Ω を並列につなぐ.S を閉じて十分時間がたった後,時刻0に S を開く.

  1. S を開く直前の,コイルと抵抗 R を流れる電流を求めよ.

  2. S を開いた直後に,抵抗 R の両端にかかる電圧の大きさを求めよ.

  3. S を開いた後のコイルの電流を求めよ.また,S を開いてから抵抗 R で発生する熱の総量を求めよ.

電池ℰ₀とスイッチSの先に,内部抵抗rをもつコイルLと抵抗Rを並列に置く.矢印はSを開く前のコイルの電流の向きで,電流や電圧の求める値は示していない. 電池ℰ₀とスイッチSの先に,内部抵抗rをもつコイルLと抵抗Rを並列に置く.矢印はSを開く前のコイルの電流の向きで,電流や電圧の求める値は示していない.
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考え方 十分時間がたった後はコイルの自己誘導による電圧 LdI/dt が0である.S を開いた瞬間もコイルの電流は連続で,その電流は抵抗 R を通る道しか残らない.

  1. コイルの電流は E0/r=3.0A,抵抗 R の電流は E0/R≈0.13A である.

  2. S を開くと,コイルと R だけの閉回路になる.コイルの電流 3.0A がそのまま R を流れる(R の中の向きは開く前と逆になる)ので,電圧の大きさは 3.0×96≈2.9×102V で,電池の電圧の24倍である.

  3. 閉回路の式は LI˙+(r+R)I=0.s=−(r+R)/L より I=3.0e−t/τA,τ=L/(r+R)=6.0ms である.コイルの初めのエネルギー 12LI02=12×0.60×3.02=2.7J が r と R の熱になり,同じ電流が流れるので熱は抵抗に比例して分かれる.R の熱は 2.7×96100≈2.6J である.

確かめ:R を大きくするほど (2) の電圧は大きくなり,R→∞(逃げ道なし)では電圧が限りなく大きくなる.これがスイッチの火花である.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

電気容量 C=4.0μF のコンデンサーを V0=10V に充電し,時刻0に自己インダクタンス L=25mH のコイルにつなぐ.q は初めに正の電荷をもつ極板の電荷,I=q˙ とする.

  1. 回路の抵抗を無視して q(t),I(t) を求めよ.電流の大きさの最大値と,初めてエネルギーがすべてコイルに移る時刻も求めよ.

  2. 回路に R=10Ω の抵抗があるとき,γ と ω′ を求めよ.また,電荷の振幅(包絡線)が初めの半分になる時刻を求めよ.

電流Iの正方向はqの極板へ流れ込む向き.右は抵抗の有無による電荷qの時間変化と,抵抗がある場合の包絡線を示す模式図である.求める電流や時刻,減衰定数の値は示していない. 電流Iの正方向はqの極板へ流れ込む向き.右は抵抗の有無による電荷qの時間変化と,抵抗がある場合の包絡線を示す模式図である.求める電流や時刻,減衰定数の値は示していない.
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考え方 初期条件は q(0)=CV0 と,コイルの電流の連続性から q˙(0)=0 である.

  1. Ls2+1/C=0 より s=±iω0,ω0=1/LC=1/1.0×10−7≈3.2×103s−1.q=Acos⁡ω0t+Dsin⁡ω0t に初期条件を入れると A=CV0=4.0×10−5C,D=0.よって

q=CV0cos⁡ω0t,I=−CV0ω0sin⁡ω0t

電流の大きさの最大値は CV0ω0≈0.13A.エネルギーがすべてコイルに移るのは q=0 のときで,初めては t=π/(2ω0)≈5.0×10−4s である.

  1. γ=R/(2L)=2.0×102s−1,ω′=ω02−γ2=1.0×107−4×104≈3.2×103s−1 で,ω0 とほとんど変わらない.解は q=e−γt(Acos⁡ω′t+Dsin⁡ω′t) で,初期条件から A=CV0,D=γCV0/ω′.包絡線は e−γt に比例するので,半分になるのは t=ln⁡2/γ≈3.5×10−3s,周期 2π/ω′≈2.0ms の約1.7倍である.

確かめ:(1) で 12CV02=2.0×10−4J と 12L(CV0ω0)2=12CV02 は等しい.(2) は γ/ω0≈0.063 が小さい弱減衰で,Q=ω0L/R≈7.9 である.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

例題 2 と同じコンデンサーとコイルに抵抗 R を直列に入れ,同じ初期条件で放電させる.

  1. 振動せずに最も速く放電させる R の値を求めよ.

    1. のときの q(t) と I(t) を求め,電流の大きさが最大になる時刻とその値を求めよ.

  2. 抵抗で発生する熱の総量を,電流の2乗を積分して求め,初めの静電エネルギーと比べよ.

直列LRC回路と,振動せずに減る電荷q,負方向へ流れた後に0へ戻る電流Iの模式図.比較用に抵抗なしのqを薄く重ねる.問題で求める極値の時刻や値は示していない. 直列LRC回路と,振動せずに減る電荷q,負方向へ流れた後に0へ戻る電流Iの模式図.比較用に抵抗なしのqを薄く重ねる.問題で求める極値の時刻や値は示していない.
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考え方 振動しない範囲で最も速く0へ近づくのは臨界減衰で,特性方程式が重解をもつ.

  1. Ls2+Rs+1/C=0 の判別式が0になる R=2L/C=26.25×103≈1.6×102Ω である.

  2. 重解は s=−R/(2L)=−1/LC=−ω0 なので q=(A+Dt)e−ω0t.q(0)=CV0 から A=CV0,q˙(0)=D−ω0A=0 から D=ω0CV0.よって

q=CV0(1+ω0t)e−ω0t,I=q˙=−CV0ω02te−ω0t

te−ω0t を微分すると (1−ω0t)e−ω0t なので,|I| は t=1/ω0≈3.2×10−4s で最大になり,その値は CV0ω0/e≈4.7×10−2A である.

  1. ∫0∞t2e−2ω0tdt=2(2ω0)3 を使うと

∫0∞RI2dt=RC2V02ω04⋅14ω03=RC2V02ω04

Rω0=2L/C⋅1LC=2C なので,これは 12CV02=2.0×10−4J に等しく,初めの静電エネルギーがすべて熱になる.

確かめ:電流の最大値は抵抗の無い例題 2 の 1/e 倍になっている.q は t=0 から単調に減り,符号を変えない.

ポイント ここまでのまとめ

  • 定数係数の線形微分方程式は est を代入して特性方程式にする.複素数の根 −γ±iω′ からは減衰振動,重解からは (A+Dt)es0t が出る.

  • 右辺が定数なら,つり合いの解 qe からのずれを考える.定数は電荷と電流の連続性で決める.

  • LRC回路は R<2L/C で減衰振動,R=2L/C で臨界減衰.Q=ω0L/R.

  • 回路の式に I を掛けると,コイルとコンデンサーのエネルギーの和の変化が熱と電源の仕事で表される.