問いしるべ
問いから始める物理 力と運動の法則

力と運動の法則

慣性の法則の例題

著者:柚木芹香

慣性系の考え方を使って,電車の中で投げ上げたボールの運動を調べます.

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

水平でまっすぐな線路を,一定の速さ V=20ms−1 で走る電車がある.電車の中で,ある人が手元からボールを真上に初速 u=4.9ms−1 で投げ上げた.重力加速度を g=9.8ms−2 とし,空気抵抗は無視する.

  1. 電車の中の人から見て,ボールは投げた人のどこに落ちてくるか.

  2. 投げてから手元に戻るまでの時間と,その間に地上の人から見てボールが進む水平距離を求めよ.

一定速度Vで走る電車内で,ボールを真上に速さuで投げる初期状態.求める地上からの軌跡は描かない. 一定速度Vで走る電車内で,ボールを真上に速さuで投げる初期状態.求める地上からの軌跡は描かない.
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考え方 地面を慣性系とし,ボールが水平方向に力を受けるかどうかに注目する.空気抵抗を無視するので,水平方向の力は 0 である.

  1. 水平方向には力が働かないので,ボールの水平速度は投げた瞬間の値 V のまま変わらない.この値は電車の速度と同じなので,電車の中の人から見ると,ボールは水平には動かない.したがって,ボールは投げた人の手元の真上を往復し,手元に落ちてくる.

  2. 鉛直方向は重力だけを受ける運動で,上向きを正とすると,高さは y=ut−12gt2 である.y=0 となる時刻から t=2u/g を得る.

t=2×4.99.8=1.0s

この間,地上の人から見ると,ボールは水平に速さ V で進むので,水平距離は

Vt=20×1.0=20m

である.地上の人から見たボールの軌跡は放物線になる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 地面から見て等速直線運動をする電車は慣性系である.その中では,ボールを投げ上げても止まっている部屋の中と同じように運動する.

  • 例題のように,水平方向に力が働かなければ水平速度は変わらない.力の有無を,慣性系の立場から数えるのが基本である.

  • 同じボールの運動でも,電車の中からは鉛直な往復,地上からは放物線に見える.どの基準系から見るかを先に言うと,運動の描き方が決まる.