問いしるべ
問いから始める物理 外部運動と内部運動

外部運動と内部運動

重心のまわりの分解と外積

著者:柚木芹香

定理 数学の道具:重心のまわりで分ける

和と外積 外積は和と実数倍に分配できるので,i によらないベクトル c について (∑miai)×c=∑mi(ai×c) である.ai=ri′ や vi′ なら左辺は 0 なので,前の節の分解の交差項は消える.

平行軸の定理 質量 M の剛体が,重心 G から距離 d の固定軸のまわりを角速度 ω で回る.軸のまわりの角運動量のうち,G の運動の分は Md⋅dω=Md2ω(G の速さは dω で位置ベクトルに垂直),重心のまわりの分は IGω.和が Iω だから

I=IG+Md2

である.

2体の L′ r=r1−r2,vrel=v1−v2 とすると r1′=m2Mr,r2′=−m1Mr.速度も同じ比で

L′=[m1(m2M)2+m2(m1M)2]r×vrel=m1m2Mr×vrel=μr×vrel

である.

練習 1. 質量 0.40kg と 0.20kg の質点が重心系で x 軸上の 0.30m,−0.60m にあり,速度は +y 向きに 1.5ms−1,−y 向きに 3.0ms−1 である.Lz′ を求めよ.

答え:0.40×0.30×1.5+0.20×(−0.60)×(−3.0)=0.54kgm2s−1.μrvrel=0.40×0.200.60×0.90×4.5=0.54 と一致する.

練習 2. 質量 1.0kg の2つの質点が重心系で (±0.50,0)m にあり,x>0 の質点は +y 向き,x<0 の質点は −y 向きに 2.0ms−1 で動く.Lz′ を2通りに求めよ.

答え:1.0×0.50×2.0+1.0×(−0.50)×(−2.0)=2.0kgm2s−1.μ=0.50kg,r=1.0m,vrel=4.0ms−1 で μrvrel=2.0 と一致する.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 0.30kg,長さ 0.80m の一様な細い棒を,鉛直面内で重心のまわりに角速度 15rads−1 で回しながら,水平から 60∘ 上向きに速さ 6.0ms−1 で投げた.重力加速度は 9.8ms−2,空気抵抗は無視する.

投げ出す速さ6.0 m s⁻¹と角60度,角速度15 rad s⁻¹,最高点で棒が鉛直になるという条件を示す.求める時間・高さ・端点速度は表示しない. 投げ出す速さ6.0 m s⁻¹と角60度,角速度15 rad s⁻¹,最高点で棒が鉛直になるという条件を示す.求める時間・高さ・端点速度は表示しない.
  1. 最高点に達する時間と,最高点の高さを求めよ.

  2. 最高点までに棒が回る角と,重心のまわりの角運動量の変化を求めよ.

  3. 最高点でちょうど棒が鉛直になるとして,両端の速度の水平成分を求めよ.

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考え方 重心は放物運動をする.一様な重力では τG=0 なので ω は一定である.

  1. 鉛直成分は 6.0sin⁡60∘≈5.20ms−1.t=5.209.8≈0.53s,高さは 5.2022×9.8≈1.4m.

  2. IG=0.30×0.80212=0.016kgm2 より L′=IGω=0.24kgm2s−1 で,変化は0.回る角は ωt≈8.0rad.

  3. 最高点で重心は水平に V=6.0cos⁡60∘=3.0ms−1.回転による端の速度は水平で大きさ 15×0.40=6.0ms−1,向きは両端で逆なので,水平成分は 3.0+6.0=9.0ms−1 と 3.0−6.0=−3.0ms−1.運動エネルギーは投げた直後 5.4+1.8=7.2J,最高点 1.35+1.8=3.15J で,差 4.05J は Mgh に等しい.内部の 1.8J は変わらない.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平面上に,質量 0.20kg の球1と 0.60kg の球2が,長さ 0.80m の軽い糸でつながれている.ある瞬間,糸はぴんと張り,2球とも糸に垂直で同じ向きに,速さ 3.0ms−1 と 1.0ms−1 で動いている.

球1と球2は糸に垂直な同じ向きへ,それぞれ3.0 m s⁻¹と1.0 m s⁻¹で進む.長さ0.80 mと質量を示し,求める重心距離の数値は表示しない. 球1と球2は糸に垂直な同じ向きへ,それぞれ3.0 m s⁻¹と1.0 m s⁻¹で進む.長さ0.80 mと質量を示し,求める重心距離の数値は表示しない.
  1. 重心の速さ V,重心のまわりの角運動量 L′,角速度 ω,糸の張力 T を求めよ.

  2. 球2の小さな巻き取り機で糸をゆっくり巻き取り,長さを 0.40m にした.ω,K内,巻き取り機の仕事を求めよ.

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考え方 外力が無いので V は一定.糸も巻き取り機も内力だから L′ は変わらない.

  1. V=0.20×3.0+0.60×1.00.80=1.5ms−1.G から球1までは m2Ml=0.60m,球2までは 0.20m.μ=0.20×0.600.80=0.15kg,vrel=2.0ms−1 より L′=μlvrel=0.24kgm2s−1,ω=vrel/l=2.5rads−1.球1の向心力から T=m1ω2×0.60=0.75N.

  2. L′=μl′2ω′ が一定で ω′=2.5×(0.800.40)2=10rads−1.重心系の速さは 3.0ms−1 と 1.0ms−1 になり,K内 は(第6章の)12μvrel2=0.30J から 12×0.20×3.02+12×0.60×1.02=1.2J に増える.巻き取り機の仕事は 0.9J.重心は 1.5ms−1 のまま直進する.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

地球(質量 5.97×1024kg)と月(質量 7.35×1022kg)を,円軌道で互いのまわりを回る2体とみなす.中心間の距離は 3.84×108m,公転周期は 2.36×106s,地球の自転の角運動量は 5.8×1033kgm2s−1,地球の自転周期は 8.62×104s である.月の自転と太陽の影響は無視する.

地球と月を真上から見た図.共通の重心 G(地球の内部)を中心に,地球と月がそれぞれ円を描く.地球は自転の矢印も付け,月までの距離 \(r\) を示す. 地球と月を真上から見た図.共通の重心 G(地球の内部)を中心に,地球と月がそれぞれ円を描く.地球は自転の矢印も付け,月までの距離 \(r\) を示す.
  1. 地月系の重心のまわりの公転の角運動量を求め,地球の自転の何倍か答えよ.

  2. 潮汐の力で地球の自転は遅くなり,1日の長さは100年で 2.0ms 長くなる.この間に地月系の L′ が変わらないとして,月と地球の距離は100年で何 m 変わるか.ただし地球の自転の慣性モーメントは一定,円軌道のままとし,この変化では公転の角運動量が中心間距離の平方根に比例するという関係 L公転∝r を用いてよい.この関係の導出は次章で扱う.

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考え方 (1) 2体の L′=μrvrel(第6章の換算質量).(2) 自転が失った角運動量は公転が受け取る.円軌道では L′ が r とともに増える.

  1. μ=5.97×1024×7.35×10226.04×1024≈7.26×1022kg,ω=2π2.36×106≈2.66×10−6rads−1.L公転′=μr2ω≈7.26×1022×(3.84×108)2×2.66×10−6≈2.85×1034kgm2s−1.自転の約4.9倍である.

  2. 自転の角運動量は IGω∝1/T なので,100年の減少は 5.8×1033×2.0×10−38.62×104≈1.35×1026kgm2s−1.これが公転に移る.問題文で与えた関係より L公転′∝r.よって Δrr=2ΔL′L′=2×1.35×10262.85×1034≈9.5×10−9.Δr≈3.6m(年に約3.6 cm).月は遠ざかり,実測値(年に約3.8 cm)に近い.

ポイント ここまでのまとめ

  • 分解の交差項は,∑miri′=0 と外積の分配で消える.

  • 平行軸の定理 I=IG+Md2 は,L=R×P+L′ を剛体に使った結果である.

  • 2体では L′=μr×vrel.

  • 一様な重力では L′ は一定.内力は L′ を保ったまま K内 を変える.

  • 地月系では,自転が失った L′ が公転に移り,月が遠ざかる.撃力を受ける剛体の衝突は後の節で扱う.