問いしるべ
問いから始める物理 光

光

屈折と光の停留時間の演習

著者:柚木芹香

法線から測る角と,光学距離を確かめてください.測定と連続媒質も考えます.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

屈折率 n1=1.50 の透明体から,n2=1.20 の液体へ光が進む.光速は c=3.00×108ms−1 とする.

  1. 両媒質での光の速さを求めよ.

  2. 臨界角を求め,入射角 50.0∘ と 60.0∘ で全反射するか判定せよ.

屈折率1.50の透明体から屈折率1.20の液体へ入る光を,入射角50.0°と60.0°の2配置で示す.破線は法線である. 屈折率1.50の透明体から屈折率1.20の液体へ入る光を,入射角50.0°と60.0°の2配置で示す.破線は法線である.
解答を見る

考え方 速さは屈折率で決まる.全反射の限界では屈折角が直角になる.

  1. v=c/n より v1=2.00×108ms−1,v2=2.50×108ms−1である.

  2. n1sin⁡θc=n2 より θc=arcsin⁡0.800=53.1∘.したがって前者は全反射せず,後者は全反射する.低屈折率側からは全反射できない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

空気の屈折率を1とする.厚さ h=12.0mm,屈折率 n=2 の平行平板へ,光が θ1=45.0∘ で入射する.多重反射は考えない.

  1. 出射光線が入射光線と平行になることを示せ.

  2. 入射光線をそのまま延長した直線と出射光線との垂直距離 s を導き,数値を求めよ.

空気中の平行平板の厚さhは12.0 mm,屈折率nは√2である.入射角θ₁は45.0°で,破線は法線と入射光線の延長を示す. 空気中の平行平板の厚さhは12.0 mm,屈折率nは√2である.入射角θ₁は45.0°で,破線は法線と入射光線の延長を示す.
解答を見る

考え方 2面の法線は平行である.横移動と光線に垂直なずれを区別する.

  1. 第1面で sin⁡θ1=nsin⁡θ2 より θ2=30.0∘.第2面の出射角を θ3 とすれば nsin⁡θ2=sin⁡θ3 なので θ3=θ1.

  2. 出射面上で延長線と出射点の横の差は h(tan⁡θ1−tan⁡θ2).これを光線に垂直に射影すると

s=h(tan⁡θ1−tan⁡θ2)cos⁡θ1=hsin⁡(θ1−θ2)cos⁡θ2=3.59mm

n→1 では θ2→θ1 となり,ずれは0へ戻る.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

断面が直角二等辺三角形のプリズムを,同じ液体中に沈める.プリズムの屈折率は n=1.60,液体は ne とする.光を一方の直角を挟む面へ垂直に入射させる.

  1. 斜辺の面で全反射する ne の条件を求めよ.等号の場合も区別せよ.

  2. ne=1.10 と 1.30 の場合を判定し,全反射した主光線が残る面から出る方向を求めよ.

屈折率nが1.60の直角二等辺プリズムを屈折率nₑの液体に沈める.入射光は左の面に垂直である. 屈折率nが1.60の直角二等辺プリズムを屈折率nₑの液体に沈める.入射光は左の面に垂直である.
解答を見る

考え方 最初の面では曲がらない.内部の入射角を断面の幾何から決める.

  1. 斜辺面の法線となす角は 45∘.全反射には nsin⁡45∘>ne,すなわち ne<1.60/2≈1.13 が必要である.等号は屈折光が境界に沿う臨界の状態である.

  2. 1.10 では全反射し,反射の法則により進行方向が 90∘ 曲がる.残る面には垂直に達するため,そのまま出る.1.30 では斜辺面から屈折して出る光がある.同じ屈折率の媒質間で全反射しないこととも一致する.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

空気中で頂角 A=60.0∘ のプリズムを回し,同じ単色光の最小偏角 δmin を3回測った.頂角の誤差は無視でき,偏角の代表値には平均,不確かさには最大値と最小値の差の半分を用いる.

測定

δmin

1

35.0∘

2

35.2∘

3

35.4∘

  1. 最小偏角で内部の光路が左右対称であることを用い,屈折率の式を導け.

  2. 屈折率とその不確かさを1次の誤差評価で求めよ.

頂角Aが60.0°のプリズムと光路を示す.外側の入射角θ₁,出射角θ₃,入射方向と出射方向の間の偏角δを示す. 頂角Aが60.0°のプリズムと光路を示す.外側の入射角θ₁,出射角θ₃,入射方向と出射方向の間の偏角δを示す.
解答を見る

考え方 偏角をそのまま屈折角に使わず,2面での曲がりを足す.微分にはラジアンを使う.

  1. 内部の角を r1,r2 とすると r1+r2=A,δ=θ1+θ3−A.対称条件より r1=r2=A/2,θ1=θ3=(A+δmin)/2.屈折の法則から

n=sin⁡[(A+δmin)/2]sin⁡(A/2)
  1. 平均は 35.2∘,不確かさは uδ=0.2∘=3.49×10−3rad.よって n=2sin⁡47.6∘=1.477.また dndδ=cos⁡47.6∘ なので un=0.6743uδ=0.00235.丸めて n=1.477±0.002 である.誤差の展開は uδ が1より十分小さいため有効であり,この幅は指定した評価法による.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

層状媒質の屈折率が n(y)=n0−αy である.0≤y≤H,α>0,n(H)>1 とする.原点から上向きに入った光線の鉛直との角は θ0,0<θ0<π/2 で,水平方向には右へ進む.

  1. 薄い層どうしで屈折の法則を使い,保存される量を示せ.層の内部で水平に転じる条件と高さを求めよ.

  2. 転じた後に y=0 へ戻るまでの水平距離 X を積分で求めよ.n0=1.60,α=0.0200m−1,H=20.0m,sin⁡θ0=0.875 で評価せよ.

上ほど屈折率が低くなる層状媒質を示す.原点から右上へ進む入射方向と鉛直との角θ₀,層の高さHを描く. 上ほど屈折率が低くなる層状媒質を示す.原点から右上へ進む入射方向と鉛直との角θ₀,層の高さHを描く.
解答を見る

考え方 隣接する層の法線は共通である.角度の保存式から光線の傾きを出し,位置を積分する.

  1. 各境界で nsin⁡θ が共通だから,連続極限でも p=n(y)sin⁡θ=n0sin⁡θ0 は一定である.水平になると sin⁡θ=1 なので y∗=(n0−p)/α.内部で転じる条件は n(H)<p<n0 である.

  2. 上昇中は dxdy=tan⁡θ=p/n(y)2−p2.u=n0−αy と置けば

x∗=pα∫pn0duu2−p2=pαln⁡n0+n02−p2p,X=2x∗

下降側は同じ屈折率の層を逆順に通るので水平距離が等しい.数値は p=1.40,y∗=10.0m<H,X=74.0m.幾何光学には,真空波長 λ0 に対して λ0α/n2 が十分小さく,波長内の屈折率変化が小さいことが必要である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

一様な屈折率 n の媒質に,断面が楕円 x2/R2+y2/K2=1 の内向きの鏡を置く.R>K>0,q=R2−K2 として焦点を F−=(−q,0),F+=(q,0) とする.楕円上の点 P には |PF−|+|PF+|=2R が成り立つ.

  1. F− から出た光が鏡で1回反射して F+ に達することを,接線方向への微小変位と反射の法則から示せ.

  2. 所要時間を求め,直接結ぶ経路と比べて「最小時間」という呼び方を検討せよ.真空光速を c とする.

楕円鏡の2焦点F₋とF₊,鏡上の点Pと接線を示す.入射光線はF₋からPへ向かう. 楕円鏡の2焦点F₋とF₊,鏡上の点Pと接線を示す.入射光線はF₋からPへ向かう.
解答を見る

考え方 距離の和の変化が0であることは,接線に沿う方向成分がつながることを意味する.停留は厳密な最小とは限らない.

  1. F− から P への単位ベクトルを u1,P から F+ への単位ベクトルを u2,接線の単位ベクトルを t とする.P を接線方向へ ds 動かすと距離の和の変化は (u1−u2)⋅tds=0.よって接線成分は等しい.両焦点が鏡の内側にあるため法線成分は反対向きであり,大きさが1であることから入射角と反射角が等しい.したがって反射光は F+ へ進む.

  2. 時間は t=2nR/c で,反射点によらない.直接の距離は 2q<2R なので,許されるなら直接経路の方が短い.鏡で1回反射する経路の中では時間は一定で停留するが,孤立した厳密な最小ではない.nR/c の次元は時間である.

ポイント 教える人へ

  • 入射角を面から測っていないか,法線を描いて確かめさせます.

  • 平行平板の横移動と,光線に垂直なずれを区別させます.

  • プリズムの角度測定では,微分に使う角度をラジアンへ直させます.

  • 層状媒質の保存量と,停留時間が必ずしも厳密な最小でないことを説明させます.