問いしるべ
問いから始める物理 対称性から組み立てる力学(発展)

対称性から組み立てる力学(発展)

光の速さと時空の演習

著者:柚木芹香

出来事の位置と時刻を組にし,同じ時計の読みか,同時に測った2点かを区別してください.以下では c=3.0×108ms−1 とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

慣性系Aで静止している棒の長さは L0=15m です.慣性系Bは,棒に沿ってAに対して速さ 0.80c で動きます.

  1. Bで,両端の位置を同時に測って得る棒の長さを求めてください.

  2. Aで同時に両端の位置を記録した2つの出来事をBへ変換した場合,その位置の差を棒の長さと呼べますか.

Aで静止した棒の両端P,Qと長さL₀,Bの進む向きを描く.測定値は示さない. Aで静止した棒の両端P,Qと長さL₀,Bの進む向きを描く.測定値は示さない.
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考え方 長さは,測る系で同時に指定した両端の位置の差である.

  1. γ=1/1−0.802=5/3 なので,L=L0/γ=9.0m.

  2. Aで Δt=0,Δx=L0 とした2出来事は,Bでは Δx′=γL0=25m,Δt′=−γVL0/c2=−6.7×10−8s.同時ではないので,この 25m はBでの棒の長さではない.

確かめ:Bで同時という条件は Δt=VΔx/c2.棒はAで静止しているので Δx=L0 を入れると,Δx′=γL0(1−V2/c2)=L0/γ に戻る.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

慣性系Aで,出来事PからQまでの差が cΔt=3.0m,Δx=5.0m,Δy=Δz=0 でした.

  1. 間隔 Δs2 を求めてください.Pで発した光や,光より遅い物体がQへ届くことはありますか.

  2. PとQが同時になる慣性系Bの速度 V と,Bでの位置の差を求めてください.

横軸x,縦軸ctにPとQを置き,Pを通る左右の光の道すじを破線で示す.Qの座標を問題の値で示す. 横軸x,縦軸ctにPとQを置き,Pを通る左右の光の道すじを破線で示す.Qの座標を問題の値で示す.
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考え方 時間差を長さの単位へそろえ,変換後の時間差を0とおく.

  1. Δs2=3.02−5.02=−16m2.PからQへ進むには平均速度 Δx/Δt=5c/3 が必要なので,光や光より遅い物体では届かない.

  2. Δt′=γ(Δt−VΔx/c2)=0 より V/c=cΔt/Δx=0.60.γ=1.25 で,Δx′=1.25(5.0−0.60×3.0)=4.0m.

確かめ:Bでの間隔は 02−4.02=−16m2.同じ場所で起こる系はない.その場合は間隔が0以上となり,矛盾する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

慣性系Aで,x=−d と x=d に静止した2つの発光器が,t=0 に原点へ向けて光を出します.受信器はその瞬間原点にあり,x=vt,0<v<c で右へ動き続けます.d=120m,v=0.60c とします.

  1. 右と左からの光を受け取るAでの時刻をそれぞれ求めてください.

  2. 2回の受信の間に,受信器自身の時計が刻む時間を求めてください.どちらの光が先に届きますか.

左右の発光器を−d,dに置き,t=0で原点にいる受信器の右向き速度vと,2本の光の向きを示す. 左右の発光器を−d,dに置き,t=0で原点にいる受信器の右向き速度vと,2本の光の向きを示す.
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考え方 Aで光と受信器の位置が一致する時刻を求める.受信は同じ時計の上で起こる.

  1. 右からの光は x=d−ct なので tR=d/(c+v)=2.5×10−7s.左からの光は x=−d+ct なので tL=d/(c−v)=1.0×10−6s.

  2. Aでの受信時間差は Δt=7.5×10−7s.γ=1.25 より Δτ=Δt/γ=6.0×10−7s.右からの光が先に届く.

確かめ:同時の発光でも,受信は同時とは限らない.v→0 なら2つの受信時刻は同じ d/c に戻る.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

慣性系Aの原点にある送受信器が,t=0 に右向きに光を出します.反射器は x=d+vt を動き,v=0.60c です.光は反射器で直ちに左向きに反射され,原点に T=3.0×10−6s 後に戻りました.

  1. 反射した時刻と位置,t=0 における距離 d を求めてください.

  2. 反射器の時計は,Aで t=0 のとき0を示していました.反射のときの時計の読みを求めてください.cT/2 を初めの距離とする見積もりが,なぜ誤るかも説明してください.

横軸x,縦軸ctに原点の送受信器の縦線と,初めにx=dにある反射器の斜線を描く.往復する光の折れ線を示すが,交点の値は書かない. 横軸x,縦軸ctに原点の送受信器の縦線と,初めにx=dにある反射器の斜線を描く.往復する光の折れ線を示すが,交点の値は書かない.
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考え方 Aでは往路と復路で光の速さも距離も同じ.光速に反射器の速度を足し引きしない.

  1. 反射時刻を tr とすると,反射位置は ctr,復路の時間は同じ tr.したがって tr=T/2=1.5×10−6s,xr=cT/2=450m.ctr=d+vtr より d=(c−v)T/2=180m.

  2. 同じ反射器の時計の2つの読みを比べるので,τr=tr/γ=1.2×10−6s.cT/2 は反射した瞬間のAでの距離であり,光を出した瞬間の距離ではない.

確かめ:反射器は往路の間に vT/2=270m 進む.初めの距離 180m にこれを足すと 450m になる.反射器が静止していれば,d=cT/2 としてよい.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

慣性系Aで,3つの出来事が P:(x,ct)=(0,0),Q:(10,6)m,R:(4,12)m で起こります.慣性系BはAに対して右へ 0.80c で動き,原点の出来事Pで両系の時刻を0とします.

  1. BでのQとRの (x′,ct′) を求めてください.

  2. PからQ,PからR,QからRへ,光または光より遅い信号を送れますか.時刻の順序が系によって逆転する組と,逆転しない組を区別して説明してください.

x,ctの図にP,Q,Rを問題の座標で置き,Pから出る左右の光の道すじを破線で描く.信号の可否やBの座標は描かない. x,ctの図にP,Q,Rを問題の座標で置き,Pから出る左右の光の道すじを破線で描く.信号の可否やBの座標は描かない.
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考え方 変換は x′=γ(x−0.80ct),ct′=γ(ct−0.80x) と書ける.間隔と時間の向きで信号の可否を判断する.

  1. γ=5/3 より,Qは (26/3,−10/3)m,Rは (−28/3,44/3)m.BではQはPより前,RはPより後に起こる.

  2. PとQの間隔は 62−102=−64m2 で,信号は送れない.この組の順序は系によって逆転する.PからRは 122−42=128m2>0 で,速さ c/3 の信号が届く.QからRは Δx=−6m,cΔt=6m なので,左向きの光が届く.信号で結べるこの2組の順序は,全慣性系で同じである.

確かめ:BでQからRへの差は (Δx′,cΔt′)=(−18,18)m で,やはり左向きの光である.順序が逆転する出来事同士で,原因と結果を光速以下の信号で結ぶことはできない.

ポイント 教える人へ

どの系で同時に測るか,固有時は同じ時計の読みかを確認させてください.光の道すじから受信時刻を求め,光速の足し算をしていないかも見ます.演習5では原因と結果の順序まで逆転できると誤解していないかを確認します.