問いしるべ
問いから始める物理 電流と磁場

電流と磁場

磁場の中の荷電粒子の演習

著者:柚木芹香

速度の成分と曲がる向きを確かめてください.重力,粒子間の力,放射損失を無視し,速さは光速より十分小さいとします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

質量 m=6.4×10−27kg,電荷 q=3.2×10−19C の正イオンを,一様磁場 B=0.20T に入射させます.速さは v=2.0×105ms−1,磁場との角 θ は sin⁡θ=0.60,cos⁡θ=0.80 です.電場はありません.

  1. らせんの半径,回転周期,1回転の間に磁場方向へ進む距離を求めよ.

  2. 速さだけを2倍にしたときの各量の倍率と,磁気力の仕事を答えよ.

正イオンの入射速度vと一様磁場Bのなす角θを示す.破線は速度の平行成分と垂直成分を読むための投影である. 正イオンの入射速度vと一様磁場Bのなす角θを示す.破線は速度の平行成分と垂直成分を読むための投影である.
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考え方 垂直成分は円運動をし,平行成分は変わらない.

  1. v⟂=vsin⁡θ=1.2×105ms−1,v∥=vcos⁡θ=1.6×105ms−1.向心力の式 mv⟂2/r=qv⟂B より r=mv⟂/(qB)=1.2×10−2m.周期は T=2πr/v⟂=2πm/(qB)=6.3×10−7s.ピッチは p=v∥T=0.10m である.

  2. 半径とピッチは2倍,周期は1倍.仕事率は q(v×B)⋅v=0 なので仕事も0である.速さが一定でも,速度の向きは変わる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

陽子を磁場 B=0.40T,使用できる軌道の最大半径 R=0.20m のサイクロトロンで加速します.陽子の質量は m=1.7×10−27kg,電荷は e=1.6×10−19C です.すき間を半回転ごとに通り,各通過で加速電圧 V=2.0×103V によるエネルギー eV を得ます.すき間の幅と初期エネルギーは0とします.

  1. 加速電場の振動数と,収容できる最大運動エネルギーを求めよ.

  2. 半径の限界を超えない加速回数の最大整数を求めよ.光速 c=3.0×108ms−1 と比べ,近似を点検せよ.

二つの半円形電極の間に加速電圧Vを加える.紙面手前向きの一様磁場Bと使用可能な最大半径Rを示す.すき間は見やすく広げてある. 二つの半円形電極の間に加速電圧Vを加える.紙面手前向きの一様磁場Bと使用可能な最大半径Rを示す.すき間は見やすく広げてある.
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考え方 半回転ごとに電場を反転させ,電場の仕事で加速する.

  1. 周期 T=2πm/(eB) の電場なら半周期で反転する.したがって f=eB/(2πm)=6.0×106Hz.vmax=eBR/m より Kmax=e2B2R2/(2m)=4.8×10−14J.

  2. neV≤Kmax より,丸める前の値を使うと n≤150.588… で最大150回.vmax=7.5×106ms−1,vmax/c=0.025 で,捨てた相対論的補正の尺度 vmax2/c2=6.3×10−4 は小さい.すき間の通過時間も半周期に比べて十分短いことが前提である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

正イオンを静止から電圧 V で加速し,速度に垂直な一様磁場 B=0.10T に入れます.実際の加速電圧には一定のずれ V0 があり,mv2/2=q(V+V0) とします.測定値は次のとおりです.

V(V)

r2(m2)

100

4.8×10−4

200

8.8×10−4

300

1.28×10−3

  1. 直線化によって q/m,V0 を決め,3点目を検算せよ.

  2. 傾きの相対不確かさを0.020,B の相対不確かさを0.010とする.小さい不確かさを足して上限を見積もるとき,q/m の相対不確かさを求めよ.

正イオンを電圧Vで加速して磁場Bの領域へ入れる.加速電圧には一定のずれV₀がある.磁場内で測る円弧の半径rを示す. 正イオンを電圧Vで加速して磁場Bの領域へ入れる.加速電圧には一定のずれV₀がある.磁場内で測る円弧の半径rを示す.
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考え方 速さを消して直線の傾きと切片を読む.

  1. r=mv/(qB) から r2=2m(V+V0)/(qB2)=aV+b.最初の2点より a=4.0×10−6m2V−1,b=8.0×10−5m2.よって q/m=2/(aB2)=5.0×107Ckg−1,V0=b/a=20V.3点目は a×300+b=1.28×10−3m2 で一致する.

  2. q/m∝a−1B−2 なので,相対不確かさの上限は 0.020+2×0.010=0.040,4.0 %である.これは不確かさの2次の項を無視する近似で,各相対不確かさが1より十分小さい範囲で使う.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

xy 平面で,0<x<d に +z 向き,d<x<2d に −z 向きの同じ強さ B の磁場があります.他の領域の磁場と電場は0です.質量 m,電荷 q>0 の粒子を原点から +x 向きに速さ v で入射させます.境界で速度は連続で,r=mv/(qB), 0<d<r とします.

  1. 第1領域から出るまでの時間と,境界での位置と速度を求めよ.

  2. x=2d に達する位置,速度,全通過時間を求めよ.d=3r/2 の場合も示せ.

xが0からdでは磁場は紙面手前向き,dから2dでは奥向きである.正電荷の粒子は原点から正のx方向へ速さvで入射する. xが0からdでは磁場は紙面手前向き,dから2dでは奥向きである.正電荷の粒子は原点から正のx方向へ速さvで入射する.
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考え方 位置と速度を引き継ぐ.

  1. ω=qB/m とし,最初の円弧の回転角を ϕ とすると x=rsin⁡ϕ, y=r(cos⁡ϕ−1),vx=vcos⁡ϕ,vy=−vsin⁡ϕ.α=arcsin⁡(d/r) で出るので,t1=α/ω,位置は (d,−r(1−cos⁡α)),速度は (vcos⁡α,−vsin⁡α) である.

  2. 第2領域での経過時間を s とすると速度の角は −α+ωs.変位は

Δx=r[sin⁡(−α+ωs)+sin⁡α],Δy=r[cos⁡α−cos⁡(−α+ωs)]

s=α/ω まで vx>0 で,Δx=d.出口は (2d,−2r(1−cos⁡α)),速度は (v,0),全時間は 2α/ω.指定値では α=π/3,出口は (3r,−r),時間は 2π/(3ω).d/r→0 で横変位は −d2/r に近づき,全時間は直進の 2d/v に戻る.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

+y 向きの一様電場 E と +z 向きの一様磁場 B の中で,質量 m,電荷 q>0 の粒子を原点から静止状態で放します.場は時間によらず,ω=qB/m, u=E/B とします.

  1. 運動方程式から x(t),y(t) を求めよ.

  2. 放した後で初めて y=0 に戻る時刻と位置を求めよ.最大の速さと,電場の仕事による検算も示せ.

正電荷qの粒子を原点から静かに放す.電場Eは正のy方向,磁場Bは紙面手前の正のz方向である. 正電荷qの粒子を原点から静かに放す.電場Eは正のy方向,磁場Bは紙面手前の正のz方向である.
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考え方 速度の定数成分を引き,単振動の式にする.

  1. dvxdt=ωvy,dvydt=ω(u−vx).w=vx−u とおけば d2wdt2=−ω2w.初期条件 w(0)=−u,dwdt(0)=0 より vx=u(1−cos⁡ωt), vy=usin⁡ωt.積分して

x=u(t−sin⁡ωtω),y=uω(1−cos⁡ωt)

サイクロイドである.

  1. 初めて戻るのは t=2π/ω,位置は (2πu/ω,0).速さの2乗は vx2+vy2=2u2(1−cos⁡ωt) だから最大は 2u.磁気力は仕事をせず,K=mu2(1−cos⁡ωt)=qEy は電場の仕事と一致する.非相対論的近似には,最大速度での無次元量 2E/(Bc) が1より十分小さいことが必要である.

ポイント 教える人へ

  • 電荷の符号と曲がる向きを問います.

  • 半径に使う成分と周期の独立性を確認します.

  • 軌道の接続では位置と速度の両方を引き継がせます.

  • 測定の切片と不確かさ,仕事をする場,近似の条件を説明させます.