問いしるべ
問いから始める物理 電流と磁場

電流と磁場

磁化と磁性体の演習

著者:柚木芹香

B,H,M を区別し,測定値から磁性を調べましょう.数値計算では μ0=1.26×10−6NA−2 とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

線形な試料X,Yの内部の磁場の強さを一様な H=2.0×104Am−1 にすると,BX=2.5704×10−2T,BY=2.4948×10−2T を得ました.

  1. B=μ0(H+M) から,各試料の比透磁率と磁化を求めよ.

  2. 常磁性と反磁性に分類し,H を逆向きにしたときの磁化の向きを述べよ.

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考え方 真空の値と比べて磁化を求める.

  1. 真空の値は μ0H=2.52×10−2T.したがって μr,X=BX/(μ0H)=1.020,μr,Y=0.990.また M=(μr−1)H より,MX=4.0×102Am−1,MY=−2.0×102Am−1 である.

  2. Xは常磁性体,Yは反磁性体である.H を逆にしてもXの磁化は同方向,Yは逆方向を向く.μr→1 で M→0 となり,真空の関係に戻る.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

体積 V=2.5×10−6m3 の試料の磁化は加えた場と同方向で一様であり,M=1.6×106Am−1 です.原子の数密度は n=8.0×1028m−3 とします.

  1. 全体の磁気モーメントと,原子あたりの平均モーメントを求めよ.

  2. 各原子の磁気モーメントの大きさを m0=2.5×10−23Am2 とし,加えた場に平行か反平行の2方向だけをとる模型を考えます.平行な原子の割合を求めよ.

試料の体積を𝒱,磁化をM,原子の数密度をnとする.拡大した模型では,各原子のモーメントの大きさはm₀で,加えた場に平行か反平行の二方向をとる.二つの矢印は許される向きを示し,原子数の比を表さない. 試料の体積を𝒱,磁化をM,原子の数密度をnとする.拡大した模型では,各原子のモーメントの大きさはm₀で,加えた場に平行か反平行の二方向をとる.二つの矢印は許される向きを示し,原子数の比を表さない.
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考え方 逆向きのモーメントを差し引く.

  1. 全体は m=MV=4.0Am2.原子数は N=nV=2.0×1023 だから,平均は m/N=M/n=2.0×10−23Am2 である.

  2. 平行な割合を p とすると,平均は pm0−(1−p)m0=(2p−1)m0.したがって 2p−1=0.80,p=0.90 で,90 %が平行である.p=1/2 で磁化が0,p=1 で最大の nm0 となる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

平均の周長 ℓ=0.30m,断面積 S=2.0×10−4m2 の環状の鉄心に,N=300 回の巻線を均等に巻きました.断面の幅と環の半径の比を十分小さくして場を一様とみなし,Hℓ=NI,磁束を Φ=BS とします.消磁後,電流を増やして次を得ました.電流と寸法は正確とし,各磁束の不確かさは ±0.50×10−6Wb です.

I(A)

Φ(10−6Wb)

0.10

25.2

0.20

50.4

0.30

69.3

0.40

75.6

  1. 最初の2点から一定の比透磁率をもつ模型を決めよ.

  2. 後の2点の予測値と実測からの B/(μ0H) を求めよ.不確かさの範囲で全点を説明できるか.

平均磁路長ℓ,断面積Sの環状鉄心にN回の巻線を均等に巻く.電流Iと磁束Φの正方向を示す. 平均磁路長ℓ,断面積Sの環状鉄心にN回の巻線を均等に巻く.電流Iと磁束Φの正方向を示す.
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考え方 低電流で磁束の比例係数を決め,他の点で検証する.

  1. Φ=μ0μrNSI/ℓ より,Φ/I=2.52×10−4WbA−1.したがって

μr=ℓμ0NSΦI=1.0×103

である.

  1. 予測値は順に 75.6×10−6Wb,100.8×10−6Wb.実測の比は ℓΦ/(μ0NSI) から約 9.2×102,7.5×102 となる.最初の2点が許す Φ/I の共通範囲は [249.5,254.5]×10−6WbA−1.この最小値でも後の予測は 74.85×10−6Wb,99.80×10−6Wb で,実測の上限を超え,全点は説明できない.飽和へ向かう応答と整合する.線形模型は最初の2点で整合するが,I≥0.30A の2点で破れる.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

鉄心が同じヒステリシスの周期を振動数 f=40s−1 でたどります.単位体積あたりの1周期の損失は w=2.0×102Jm−3,鉄心の体積は V=5.0×10−5m3,密度は ρ=8.0×103kgm−3,比熱は cs=5.0×102Jkg−1K−1 です.他の発熱は無視します.

  1. 損失による発熱の仕事率と,断熱状態で 10min 運転したときの温度上昇を求めよ.

  2. 周囲からの温度上昇を θ とし,放熱が Kθ,K=2.0×10−2WK−1 のとき,定常の温度上昇を求めよ.模型が θ≤15K でのみ有効なとき,定常温度を確定できるか.

鉄心は振動数fでヒステリシスの周期をたどり,単位体積・一周期の損失はwである.周囲からの温度上昇θに応じてKθの割合で放熱する. 鉄心は振動数fでヒステリシスの周期をたどり,単位体積・一周期の損失はwである.周囲からの温度上昇θに応じてKθの割合で放熱する.
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考え方 損失に体積と振動数を掛けて発熱を求める.

  1. P=fwV=0.40W.質量は ρV=0.40kg,熱容量は ρVcs=2.0×102JK−1.時間 t=6.0×102s なので,ΔT=Pt/(ρVcs)=1.2K.

  2. 熱収支は ρVcsdθdt=P−Kθ.定常なら θ=P/K=20K だが,適用範囲外なので確定できない.上端でも P−Kθ=0.10W>0 で,範囲内に定常状態はない.放熱を無視する近似は Kθ/P が十分小さい間に限られ,(1)の温度上昇ではこの比は0.060である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

断面積 S,長さ a の細い棒を,コイルの軸上の x=X から X+a に置きます.棒がないときの場は B(x)>0 の x 方向を向きます.電源はコイルの電流を一定に保ちます.棒は M=χH に従い,1≫|χ| として場の変化を無視し,M≈χB/μ0 とします.微小部分の dm=MSdx に働く軸方向の力は dFx=dmdBdx とします.

  1. 棒の力を,両端の場 B1=B(X),B2=B(X+a) で表せ.B2>B1 の場合,常磁性・反磁性の力の向きを述べよ.

  2. 棒の範囲で B(x)=B0+bx とします.中点の場 Bc で力を表し,中点のモーメント m=χSaBc/μ0 に置き換える計算と比べよ.

断面積Sの棒をxがXからX+aの範囲に置く.両端の磁場B₁とB₂はともに正のx方向を向く. 断面積Sの棒をxがXからX+aの範囲に置く.両端の磁場B₁とB₂はともに正のx方向を向く.
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考え方 場所ごとのモーメントに働く力を積分する.

  1. 与えられた局所的な力を足すと

Fx=χSμ0∫XX+aBdBdxdx=χS2μ0(B22−B12)

となる.χ>0 の常磁性は右,χ<0 の反磁性は左へ,それぞれ強い場,弱い場へ引かれる.

  1. B2−B1=ba,B2+B1=2Bc より Fx=χSaBcb/μ0.中点のモーメントの力 mb と一致する.一般の場では棒の長さと場の変化の長さの比が十分小さいことが要る.一様な場では B1=B2 となり力は0である.式は 1≫|χ| の近似であり,強磁性体には適用できない.

ポイント 教える人へ

  • B=μ0H と B=μ0(H+M) を磁化の有無から使い分けさせます.

  • 原子の向きの割合と平均モーメントを区別させます.

  • 予測と測定を不確かさも含めて比べさせます.

  • 力には場の空間変化が要ることを問います.