𝐵,𝐻,𝑀 を区別し,測定値から磁性を調べましょう.数値計算では 𝜇0 =1.26 ×10−6 NA−2 とします.
線形な試料X,Yの内部の磁場の強さを一様な 𝐻 =2.0 ×104 Am−1 にすると,𝐵𝑋 =2.5704 ×10−2 T,𝐵𝑌 =2.4948 ×10−2 T を得ました.
𝐵 =𝜇0(𝐻+𝑀) から,各試料の比透磁率と磁化を求めよ.
常磁性と反磁性に分類し,𝐻 を逆向きにしたときの磁化の向きを述べよ.
解答を見る
考え方 真空の値と比べて磁化を求める.
真空の値は 𝜇0𝐻 =2.52 ×10−2 T.したがって 𝜇𝑟,𝑋 =𝐵𝑋/(𝜇0𝐻) =1.020,𝜇𝑟,𝑌 =0.990.また 𝑀 =(𝜇𝑟−1)𝐻 より,𝑀𝑋 =4.0 ×102 Am−1,𝑀𝑌 = −2.0 ×102 Am−1 である.
Xは常磁性体,Yは反磁性体である.𝐻 を逆にしてもXの磁化は同方向,Yは逆方向を向く.𝜇𝑟 →1 で 𝑀 →0 となり,真空の関係に戻る.
体積 V =2.5 ×10−6 m3 の試料の磁化は加えた場と同方向で一様であり,𝑀 =1.6 ×106 Am−1 です.原子の数密度は 𝑛 =8.0 ×1028 m−3 とします.
全体の磁気モーメントと,原子あたりの平均モーメントを求めよ.
各原子の磁気モーメントの大きさを 𝑚0 =2.5 ×10−23 Am2 とし,加えた場に平行か反平行の2方向だけをとる模型を考えます.平行な原子の割合を求めよ.
[図:試料と原子モーメントの二方向模型]試料の体積を𝒱,磁化をM,原子の数密度をnとする.拡大した模型では,各原子のモーメントの大きさはm₀で,加えた場に平行か反平行の二方向をとる.二つの矢印は許される向きを示し,原子数の比を表さない.
解答を見る
考え方 逆向きのモーメントを差し引く.
全体は 𝑚 =𝑀V =4.0 Am2.原子数は 𝑁 =𝑛V =2.0 ×1023 だから,平均は 𝑚/𝑁 =𝑀/𝑛 =2.0 ×10−23 Am2 である.
平行な割合を 𝑝 とすると,平均は 𝑝𝑚0 −(1−𝑝)𝑚0 =(2𝑝−1)𝑚0.したがって 2𝑝 −1 =0.80,𝑝 =0.90 で,90 %が平行である.𝑝 =1/2 で磁化が0,𝑝 =1 で最大の 𝑛𝑚0 となる.
平均の周長 ℓ =0.30 m,断面積 𝑆 =2.0 ×10−4 m2 の環状の鉄心に,𝑁 =300 回の巻線を均等に巻きました.断面の幅と環の半径の比を十分小さくして場を一様とみなし,𝐻ℓ =𝑁𝐼,磁束を Φ =𝐵𝑆 とします.消磁後,電流を増やして次を得ました.電流と寸法は正確とし,各磁束の不確かさは ±0.50 ×10−6 Wb です.
𝐼(A) | Φ(10−6 Wb) |
|---|
0.10 | 25.2 |
0.20 | 50.4 |
0.30 | 69.3 |
0.40 | 75.6 |
最初の2点から一定の比透磁率をもつ模型を決めよ.
後の2点の予測値と実測からの 𝐵/(𝜇0𝐻) を求めよ.不確かさの範囲で全点を説明できるか.
[図:環状鉄心の巻線と磁束]平均磁路長ℓ,断面積Sの環状鉄心にN回の巻線を均等に巻く.電流Iと磁束Φの正方向を示す.
解答を見る
考え方 低電流で磁束の比例係数を決め,他の点で検証する.
Φ =𝜇0𝜇𝑟𝑁𝑆𝐼/ℓ より,Φ/𝐼 =2.52 ×10−4 WbA−1.したがって
𝜇𝑟=ℓ𝜇0𝑁𝑆Φ𝐼=1.0×103
である.
予測値は順に 75.6 ×10−6 Wb,100.8 ×10−6 Wb.実測の比は ℓΦ/(𝜇0𝑁𝑆𝐼) から約 9.2 ×102,7.5 ×102 となる.最初の2点が許す Φ/𝐼 の共通範囲は [249.5,254.5] ×10−6 WbA−1.この最小値でも後の予測は 74.85 ×10−6 Wb,99.80 ×10−6 Wb で,実測の上限を超え,全点は説明できない.飽和へ向かう応答と整合する.線形模型は最初の2点で整合するが,𝐼 ≥0.30 A の2点で破れる.
鉄心が同じヒステリシスの周期を振動数 𝑓 =40 s−1 でたどります.単位体積あたりの1周期の損失は 𝑤 =2.0 ×102 Jm−3,鉄心の体積は V =5.0 ×10−5 m3,密度は 𝜌 =8.0 ×103 kgm−3,比熱は 𝑐𝑠 =5.0 ×102 Jkg−1K−1 です.他の発熱は無視します.
損失による発熱の仕事率と,断熱状態で 10 min 運転したときの温度上昇を求めよ.
周囲からの温度上昇を 𝜃 とし,放熱が 𝐾𝜃,𝐾 =2.0 ×10−2 WK−1 のとき,定常の温度上昇を求めよ.模型が 𝜃 ≤15 K でのみ有効なとき,定常温度を確定できるか.
[図:鉄心の損失による発熱と放熱]鉄心は振動数fでヒステリシスの周期をたどり,単位体積・一周期の損失はwである.周囲からの温度上昇θに応じてKθの割合で放熱する.
解答を見る
考え方 損失に体積と振動数を掛けて発熱を求める.
𝑃 =𝑓𝑤V =0.40 W.質量は 𝜌V =0.40 kg,熱容量は 𝜌V𝑐𝑠 =2.0 ×102 JK−1.時間 𝑡 =6.0 ×102 s なので,Δ𝑇 =𝑃𝑡/(𝜌V𝑐𝑠) =1.2 K.
熱収支は 𝜌V𝑐𝑠d𝜃d𝑡 =𝑃 −𝐾𝜃.定常なら 𝜃 =𝑃/𝐾 =20 K だが,適用範囲外なので確定できない.上端でも 𝑃 −𝐾𝜃 =0.10 W >0 で,範囲内に定常状態はない.放熱を無視する近似は 𝐾𝜃/𝑃 が十分小さい間に限られ,(1)の温度上昇ではこの比は0.060である.
断面積 𝑆,長さ 𝑎 の細い棒を,コイルの軸上の 𝑥 =𝑋 から 𝑋 +𝑎 に置きます.棒がないときの場は 𝐵(𝑥) >0 の 𝑥 方向を向きます.電源はコイルの電流を一定に保ちます.棒は 𝑀 =𝜒𝐻 に従い,1 ≫|𝜒| として場の変化を無視し,𝑀 ≈𝜒𝐵/𝜇0 とします.微小部分の d𝑚 =𝑀𝑆d𝑥 に働く軸方向の力は d𝐹𝑥 =d𝑚 d𝐵d𝑥 とします.
棒の力を,両端の場 𝐵1 =𝐵(𝑋),𝐵2 =𝐵(𝑋 +𝑎) で表せ.𝐵2 >𝐵1 の場合,常磁性・反磁性の力の向きを述べよ.
棒の範囲で 𝐵(𝑥) =𝐵0 +𝑏𝑥 とします.中点の場 𝐵𝑐 で力を表し,中点のモーメント 𝑚 =𝜒𝑆𝑎𝐵𝑐/𝜇0 に置き換える計算と比べよ.
[図:非一様な磁場の軸上に置いた棒]断面積Sの棒をxがXからX+aの範囲に置く.両端の磁場B₁とB₂はともに正のx方向を向く.
解答を見る
考え方 場所ごとのモーメントに働く力を積分する.
与えられた局所的な力を足すと
𝐹𝑥=𝜒𝑆𝜇0∫𝑋+𝑎𝑋𝐵d𝐵d𝑥d𝑥=𝜒𝑆2𝜇0(𝐵22−𝐵21)
となる.𝜒 >0 の常磁性は右,𝜒 <0 の反磁性は左へ,それぞれ強い場,弱い場へ引かれる.
𝐵2 −𝐵1 =𝑏𝑎,𝐵2 +𝐵1 =2𝐵𝑐 より 𝐹𝑥 =𝜒𝑆𝑎𝐵𝑐𝑏/𝜇0.中点のモーメントの力 𝑚𝑏 と一致する.一般の場では棒の長さと場の変化の長さの比が十分小さいことが要る.一様な場では 𝐵1 =𝐵2 となり力は0である.式は 1 ≫|𝜒| の近似であり,強磁性体には適用できない.