問いしるべ
問いから始める物理 測定と不確かさ(発展)

測定と不確かさ(発展)

何をどう測るかの例題

著者:柚木芹香

前の節で,測る量を決め,目盛りの読み方とまとめて測る理由を見ました.この節には新しい数学は出てきません.振り子の実験の計画を,数で確かめていきます.使う測定値は,説明のために作った例の値です.

ポイント 例題に入る前に

  • 値は「読んだ値そのもの」と「どれくらい違いうるか」を組で考える.

  • 足し算・引き算では,最後の桁の位置が最も粗いものに合わせる(第1章の有効数字の規則).

  • ずれの大きさを比べるときは,ずれそのものより,値に対する割合(相対的なずれ)で比べると,何が効いているかが分かりやすい.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

振り子の長さを測る.鉛直に立てたメートル尺(最小目盛り 1mm)で,支点からおもりの上端までを l′=786.2mm と読んだ.おもりは金属の球で,直径をノギス(最小の読み 0.05mm)で測ると D=25.40mm だった.

  1. 周期の式に入れる長さ l を,m を単位として,桁をそろえて求めよ.

  2. l′ の読み 786.2mm のうち,目分量で読んだ桁はどれか.

  3. おもりの半径を足し忘れて l′ をそのまま l として使うと,g は何 % ずれるか.g は l に比例する(g=4π2l/T2).

解答を見る

考え方 周期の式の l は,支点からおもりの中心までである.足し算なので,粗いほうの最後の桁の位置にそろえる.

  1. 半径は D/2=12.70mm.

l=l′+D2=786.2+12.70=798.90mm

l′ の最後の桁は 0.1mm の位なので,そこにそろえて l=798.9mm=0.7989m.

  1. 最小目盛りは 1mm なので,786mm までは目盛りで読み,最後の 0.2mm が目分量の桁である.この桁は確かではないが,786mm と 787mm の間のどのあたりかという情報を持っている.

  2. 使う長さが 12.70mm 短くなるので,相対的なずれは

12.70798.9=0.0159

である.g は l に比例するので,g も約 1.6 % 小さく出る.たとえば正しい値が 9.80ms−2 なら 9.64ms−2 になる.これは,何回測り直しても同じ向きに出るずれで,測る量の決め方の誤りから来る.確かめると,ノギスの読みのわずかなずれ(0.05mm 程度)は l の 10−4 以下で,半径の足し忘れに比べてずっと小さい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

周期がおよそ 1.8s の振り子で,ストップウォッチの押し始めと押し終わりのずれを合わせて,1回の測定に 0.1s ほどのずれがあるとする.このずれは,測る時間の長さによらないとする.

  1. 1周期,10周期,50周期をまとめて測るとき,1周期あたりのずれはそれぞれいくらか.

  2. 50周期を測るつもりで,実際には49周期で止めてしまったとする.10周期の測定から周期は 1.794s と分かっていて,49周期の時間は 87.9s だった.これを50で割ると周期はいくらになり,何秒ずれるか.

    1. の数え違いに気づくには,どうすればよいか.10周期の測定の1周期あたりのずれ((1) の値)を使って説明せよ.

解答を見る

考え方 ずれ δ が長さによらないなら,n 周期で割ると δ/n になる.一方,数え違いは周期1つ分という大きなずれになる.

  1. 0.1s,0.110=0.01s,0.150=0.002s.

  2. 87.950=1.758s.正しい周期 1.794s より 0.036s 短い.これは T50 に当たり,(1) の 0.002s の約 18 倍である.数え違いが1回でも起きると,まとめて測った利点は消えてしまう.

  3. 10周期の測定から,周期は 1.794s で,1周期あたり 0.01s ほどずれうる.したがって50周期の時間は 50×1.794=89.7s と予想でき,そのずれは 50×0.01=0.5s ほどである.49周期なら 49×1.794=87.9s,51周期なら 51×1.794=91.5s で,予想から 1.8s ほど外れる.0.5s より十分大きいので,数え違いだと分かる.1周期 → 10周期 → 50周期と段階を踏んで測れば,前の段階の結果で次の段階の数え違いを見つけられる.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

長さ 0.80m,周期 1.794s の振り子を,おもりの水平方向の振れ幅 A=0.070m(振れ角は約 5∘)で揺らす.おもりの水平の位置は x=Acos⁡ωt(ω=2π/T)で表せる(第7章で示す).これは,半径 A,角速度 ω の等速円運動を真横から見た影の動きと同じである.目でおもりの位置を見きわめられるのは 2mm ほどまでとする.

[図:円運動の影で見る最下点と折り返し点]

半径 A の円周上の点を水平軸に投影すると,影は中央で速く,両端でゆっくり動く.初期位相は45°.再生または位相の操作で動きを確かめられる.周期は例題の1.794 s.

  1. 最下点を通るときのおもりの速さを求めよ.目印から 2mm の範囲を通り過ぎるのにかかる時間はどれだけか.

  2. 折り返し点の近くでは,おもりは大きさ Aω2 の加速度で,等加速度運動をしているとみなせる.おもりが折り返し点から 2mm 以内にいる時間は,折り返しの前後それぞれどれだけか.

  3. 時刻を取る瞬間として,最下点と折り返し点のどちらがよいか.

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考え方 影の速度は,円運動の速度の水平成分である.中央では円運動の速度がちょうど水平を向くので,影の速さは最大の Aω になる.端では影が止まり,円運動の加速度 Aω2(第3章)がちょうど水平を向く.

  1. ω=2π1.794=3.50rads−1.最下点での速さは

Aω=0.070×3.50=0.245ms−1

2mm を通るのにかかる時間は 0.0020.245=0.0082s,およそ 0.008s である.

  1. 加速度の大きさは Aω2=0.070×3.502=0.858ms−2.折り返し点で速度が0の等加速度運動なので,折り返しから時間 t で進む距離は 12Aω2t2 である.これが 2mm になる時間は

t=2×0.0020.858=0.068s

折り返しの前後それぞれ約 0.07s,合わせて 0.14s ほどの間,おもりは折り返し点から 2mm 以内にいて,止まっているように見える.

  1. 最下点のほうがよい.目で見きわめられる時刻の幅は,最下点では約 0.008s,折り返し点では約 0.07s で,8倍ほど違う.確かめとして,0.068s の間に円周上の点が回る角は ωt=0.24rad(約 14∘)と小さく,円運動の加速度の向きはほとんど水平のままである.したがって (2) で等加速度とみなしたのは妥当である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 周期の式の l は支点からおもりの中心まで.半径を足し忘れると,何回測っても g は同じ向きに 1.6 % ずれる.

  • 押すずれが測る時間の長さによらなければ,n 周期まとめて測ると1周期あたり 1/n になる.ただし数え違いは周期1つ分のずれになるので,1周期 → 10周期 → 50周期と段階を踏んで確かめる.

  • 時刻は,おもりが速く動く最下点で取る.折り返し点では見きわめの幅が8倍ほど大きい.