問いしるべ
問いから始める物理 測定と不確かさ(発展)

測定と不確かさ(発展)

何をどう測るかの演習

著者:柚木芹香

測定器を選ぶ前に,測る量と測定の始め・終わりを決めましょう.以下の数値は練習のための架空の値です.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

端が欠けたものさしで,細い棒の長さを測ります.棒の左端の読みは 18.6cm,右端は 51.2cm でした.最小目盛りは 1mm です.

棒の両端をものさしの途中の目盛りに合わせる.読みは左18.6 cm,右51.2 cm.棒の長さは示していない. 棒の両端をものさしの途中の目盛りに合わせる.読みは左18.6 cm,右51.2 cm.棒の長さは示していない.
  1. 棒の長さを求めよ.

  2. ものさしの端に棒を合わせるより,この測り方がよい理由を述べよ.小数第2位までの cm を記録することに意味はあるか.

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考え方 長さは両端の位置の差であり,ものさしの端からの距離とは限らない.

  1. L=51.2−18.6=32.6cm=0.326m.両方の読みの桁にそろえた.

  2. 欠けた端と目盛りの0が一致するとは限らないが,途中の目盛りを使えば端の欠けを避けられる.最小目盛りの 1/10 は 0.1mm=0.01cm なので,真正面から目分量で読めるなら小数第2位にも意味がある.ただし今回の記録にはその桁がなく,計算の後から0を足して読みの情報を増やすことはできない.確かめとして,ものさし全体の読みが同じだけずれても差は変わらない.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

毎秒250枚を等間隔に撮る動画で,台車の先端が線Aを通るのが120枚目,線Bを通るのが195枚目でした.両線の間隔は 0.600m です.時刻は各画像を撮った瞬間とします.

台車の同じ先端が線Aを通る画像と線Bを通る画像を示す.線の間隔は0.600 m. 台車の同じ先端が線Aを通る画像と線Bを通る画像を示す.線の間隔は0.600 m.
  1. 通過にかかった時間と,区間の平均の速さを求めよ.

  2. 195枚目の判定を196枚目に変えたとき,時間はどれだけ変わるか.250枚毎秒という表示だけから,通過時刻が必ず正確だといえるか.

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考え方 画像の枚数そのものではなく,画像間の時間間隔の個数を数える.

  1. 間隔は 195−120=75 個なので,t=75/250=0.300s,v¯=0.600/0.300=2.00ms−1.

  2. 1画像間隔の 1/250=0.00400s 長くなる.撮影の露光中に先端がぼけることや,線を斜めから見て位置がずれることがある.撮影間隔の正しさも確かめる必要がある.確かめとして,1画像の違いは75間隔の約1.3 % に当たり,表示の細かさだけではこの判定の違いは消せない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

滑らずに転がる車輪の外周の長さを C=0.480m と測りました.車輪が一定の速さで12回転する時間は 9.60s でした.時間の読みには,全体で 0.06s 程度のずれがあり,回転数によらないとします.外周の測定のずれは無視します.

車輪の周上の印と,その印を数える固定の目印を示す.外周はC.速さの答えは示していない. 車輪の周上の印と,その印を数える固定の目印を示す.外周はC.速さの答えは示していない.
  1. 車輪の並進の速さを求めよ.

  2. 1回転だけ測る場合と12回転の場合で,時間の相対的なずれを比べよ.測定の始めと終わりに同じ印を同じ向きで合わせる理由も述べよ.

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考え方 滑らない車輪は1回転で外周分だけ進む.回転数を増やせば,測る距離も時間も同じ割合で増える.

  1. 道のりは 12C=5.760m,速さは v=12C/t=0.600ms−1.

  2. 1回転の時間は 9.60/12=0.800s で,相対的なずれは 0.06/0.800=0.075,つまり7.5 %.12回転では 0.06/9.60=0.00625,つまり0.63 % ほどになる.同じ印・同じ向きを使うと,始めと終わりの間が整数回転と定まる.ただし車輪が滑れば 12C が道のりにならず,時間だけ丁寧に測っても直せない.確かめとして,C/t の単位は速さの単位になる.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

小球を静かに放し,高さ h から落ちる時間を手動の時計で測る計画です.空気抵抗を無視すると h=gt2/2 で,g=9.8ms−2 とします.手動の時間のずれは全体で 0.08s 程度です.

小球の落下距離hと,放す瞬間から床に達するまでを測る時計を示す. 小球の落下距離hと,放す瞬間から床に達するまでを測る時計を示す.
  1. h=0.30m と 1.20m の落下時間を見積もり,時間の相対的なずれを比べよ.

  2. 高さを4倍にすれば相対的なずれは4分の1になる,という意見は正しいか.安全な高さの範囲で,測り方の改善を1つ提案せよ.

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考え方 落下時間は高さではなく高さの平方根に比例する.短い時間を手動で測ることの限界を考える.

  1. t=2h/g より,それぞれ 0.247s,0.495s.相対的なずれは 0.08/0.247≈0.32 と 0.08/0.495≈0.16 で,約32 % と16 % である.

  2. 時間は2倍にしかならないので,相対的なずれは半分である.例えば,放す瞬間と基準線を通過する瞬間を動画で判定すれば,手動の反応を避けられる.同じ小球を用い,高さは小球の同じ点の移動距離として決める.確かめとして,h→0 で時間が短くなり,一定の時間のずれの割合が大きくなるのは自然である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

壁から L=17.0m 離れた位置で短い音を出し,同じ位置で直接音と反射音を録音します.音は壁まで行って戻り,往復距離は 2L です.音速を c=340ms−1 として計画を立てます.手動の時間判定のずれは 0.05s,録音の波形による判定のずれは 0.001s 程度とします.

壁までの距離Lと,音源から壁まで行きマイクに戻る音の往復経路を示す. 壁までの距離Lと,音源から壁まで行きマイクに戻る音の往復経路を示す.
  1. 直接音と反射音の間隔を予測し,2つの測り方の相対的なずれを比べよ.

  2. 反射音の山がいくつも現れたとき,最も大きい山を選ぶだけではいけない理由と,確認のための測定を提案せよ.

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考え方 音が通る道を決めてから,その道に対応する2つの時刻を選ぶ.音の強さだけでは道は決まらない.

  1. τ=2L/c=34.0/340=0.100s.手動では 0.05/0.100=0.50,つまり50 %,録音では 0.001/0.100=0.010,つまり1 % 程度になる.

  2. 天井や別の壁からの音が重なると,大きい山が目的の壁の反射とは限らない.壁までの距離を変えて録音し,選んだ山の遅れが 2L/c に従って変わるか調べる.音源とマイクは互いに近く置き,配置と波形を保存する.確かめとして,距離を 3.4m 増やすと遅れは 0.020s 増えると予測できる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

斜面上の台車について,時刻 t の位置が x=v0t+αt2/2 で表せるとします.α は一定の加速度です.動画で t1=0.200s,t2=0.600s の位置を読み,その区間の平均速度を求める計画です.

固定カメラから斜面の台車を撮る.同じ先端の位置を時刻t₁とt₂で読む. 固定カメラから斜面の台車を撮る.同じ先端の位置を時刻t₁とt₂で読む.
  1. この平均速度は,どの時刻の瞬間速度に等しいか.

  2. v0=1.00ms−1,α=1.00ms−2 で値を確かめよ.区間を短くする利点と,位置の読みのずれが一定なら生じる不利を述べよ.

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考え方 位置の式の差を時間差で割り,t22−t12=(t2−t1)(t2+t1) を使う.

  1. v¯=v0+α(t1+t2)/2.瞬間速度は v(t)=v0+αt なので,時間の中点 0.400s に等しい.位置の中点とは限らない.

  2. x1=0.220m,x2=0.780m より,v¯=0.560/0.400=1.40ms−1=v(0.400).区間を短くすると,加速度が一定でない運動でも中点の速度に近づく.一方,同程度の位置のずれをより短い時間で割るため,速度のずれは大きくなる.カメラを固定し,目盛りを台車と同じ面に置く.確かめとして,α=0 では区間の選び方によらず v0 に戻る.

ポイント 教える人へ

「測定の始めと終わりは,何がどこに来た瞬間か」を言葉で答えてもらってください.細かい表示の器械を選ぶだけで安心していないか,条件の一定性と測る量の定義を確かめます.演習6では,時間の中点と位置の中点を区別できれば,平均速度の理解も確かめられます.