問いしるべ
問いから始める物理 全範囲の総合演習

全範囲の総合演習

電磁気の総合問題(1)

著者:柚木芹香

電場に集まる気体,薄い板の抵抗,回転する電場,共振する受電回路の4題です.熱・振動・測定と組み合わせ(第7・14・17・20〜23・29章),検出の限界と最適な条件を問います.

総合演習 37

オリジナル ★★★★☆

電場に集まる気体と個数のゆらぎ

温度 T の密閉容器に中性分子 N 個を入れます.行き来できる A,B の体積は V,3V.A の平行板は電圧 V 一定,間隔 d,面積 S,V=Sd です.電場は A で E=V/d,B で0,境目だけ滑らかに変わります.分極は電場に平行で p=ε0αE,内部エネルギーは p2/(2ε0α) とします.永久双極子,分子間力,重力,電場への気体の影響を無視します.

温度 T の密閉容器に中性分子 N 個を入れる.A,B の体積はそれぞれ 𝒱,3𝒱 で,破線の境界を分子が通過できる.A の面積 S の平行板は間隔 d,電圧 V 一定で,電場 E = V/d を青の矢印で示す.B の電場は 0 である. 温度 T の密閉容器に中性分子 N 個を入れる.A,B の体積はそれぞれ 𝒱,3𝒱 で,破線の境界を分子が通過できる.A の面積 S の平行板は間隔 d,電圧 V 一定で,電場 E = V/d を青の矢印で示す.B の電場は 0 である.
  1. 内部エネルギーと相互作用 −pE から,A の1分子の有効な位置エネルギーを求めよ.ボルツマン因子 e−U/(kBT) を使い,密度比 nA/nB と平均個数 N―A を求め,η=ε0αE2/(2kBT) が小さいときの N―A−N/4 を示せ.

  2. A の分子が ΔNA 増すと,容量は ΔC=ε0αΔNA/d2 増します.電源の仕事と容量のエネルギー増加を求め,差を(1)と照合せよ.

  3. 分子の在否は独立とします.個数の標準偏差と,平均の増加が無電場の標準偏差を超す条件を求めよ.N=4.0×1018,T=250K,E=5.0×106Vm−1,α=6.0×10−30m3,kB=1.38×10−23JK−1,ε0=8.85×10−12Fm−1 で検算せよ.

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考え方

希薄気体,線形分極を仮定し,電源を含める.

  1. 平衡の分極を代入すると

uA=(ε0αE)22ε0α−ε0αE2=−12ε0αE2.

uA=−u0,uB=0 とおく.従って nA/nB=eη.全個数 N=VnA+3VnB から

N―A=Neη3+eη≃N4+3N16η.
  1. 電源から来る電荷は ΔQ=VΔC.Wb=V2ΔC=2u0ΔNA.容量のエネルギー増加は ΔUC=V2ΔC/2=u0ΔNA.従って Wb−ΔUC=u0ΔNA が移動へ渡る仕事である.

  2. f=N―A/N とおくと,在否の分散は f(1−f).N 個を足して σN=Nf(1−f),無電場では σ0=3N/4.求める条件は

3Nη16>3N4,η>43N.

値は η=1.92×10−7,増加個数は約 1.4×1011,σ0≃8.7×108 で,条件を満たす.条件は 1≫η,αnA,線形分極,電離なしである.

総合演習 38

オリジナル ★★★★☆

薄板の抵抗から接触と発熱を分ける

厚さ h,抵抗率 ρ の十分広い一様な薄板に,半径 a の円形電極2個を中心間距離 b で取り付けます.厚さ全体で接触し,電流は平面内を流れます.1≫h/a,1≫a/b とし,電極自体の抵抗は無視します.各接触抵抗は一定の Rc です.電極間に電流 I を流します.全抵抗の測定値を示します.

b/a

20

40

80

160

Rtot(Ω)

0.517

0.627

0.737

0.848

抵抗率 ρ,厚さ h の薄板に,半径 a の円形電極を中心間距離 b で取り付ける.平面図に電流 I の流入と流出を示し,流入側の周囲に半径 r の破線円を描く.下の断面は厚さを拡大し,電極が厚さ全体で接触する様子を示す.各電極の接触抵抗は R_c である. 抵抗率 ρ,厚さ h の薄板に,半径 a の円形電極を中心間距離 b で取り付ける.平面図に電流 I の流入と流出を示し,流入側の周囲に半径 r の破線円を描く.下の断面は厚さを拡大し,電極が厚さ全体で接触する様子を示す.各電極の接触抵抗は R_c である.
  1. 流入点近くの電流密度を求め,流入・流出の電位を重ね合わせよ.板の抵抗を主要項で求めよ.

  2. h=2.0×10−4m とします.両端を直線化し, ρ,Rc を決め,中間の2点と照合せよ.測定誤差が最大 0.001Ω なら, ρ の相対誤差の上限も求めよ.

  3. w=ρj2 の許容値を wmax とします.電流の上限を求めよ.接触抵抗0で厚さを2倍にした場合の電極近くの w を,電圧一定と電流一定で比べよ.

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考え方

板端と温度変化を無視し,電流保存を使う.

  1. 半径 r の円筒面を通る電流から 2πrhj=I,従って j=I/(2πhr),E=ρI/(2πhr).dVdr=−E を積分すると電位は対数になる.流入電極 A,流出電極 B からの距離を rA,rB とすれば

V=ρI2πhln⁡rBrA+定数.

A 表面で rA=a,rB≃b,B 表面では逆になる.電位差は ΔV=ρIln⁡(b/a)/(πh),従って Rs=ΔV/I を得る.

  1. X=ln⁡(b/a) に対し Rtot=AX+B,A=ρ/(πh),B=2Rc.端点から

A=0.848−0.517ln⁡8Ω,ρ=πhA≃1.0×10−4Ωm.

切片は B=0.517Ω−Aln⁡20,従って Rc≃0.020Ω.中間は 0.6273,0.7377Ω で,誤差内である.差の誤差は 0.002Ω なので,距離・厚さを正確とした ρ の相対誤差上限は 0.002/0.331≃0.0060.

  1. 電極のすぐ外の電流密度は主要項で I/(2πha).従って

Imax≃2πhawmax/ρ.

接触抵抗0,電圧 V 一定なら I=πhV/[ρln⁡(b/a)],j(a)=V/[2ρaln⁡(b/a)] は h によらず,w も変わらない.電流一定なら j が半分で w は 1/4 になる.近似には h/a,a/b,b/板幅 が小さいことが要る.接触部の発熱は別である.

総合演習 39

オリジナル ★★★★★

回転電場で同位体を選ぶ

磁場 B=Bez 中で,電荷 q>0,質量 m のイオンを原点で静止させます.時刻0から

E(t)=E0(cos⁡ωtex−sin⁡ωtey)

を加えます.ex などは座標軸の単位ベクトルです.半径 R の円周で回収します.両場は一様と近似します.衝突,空間電荷,放射損失を無視し,運動は xy 平面内で非相対論的とします.Ω=qB/m,w=vx+ivy,z=x+iy,δ=Ω−ω とおきます.

xy 平面の原点で静止する電荷 q > 0,質量 m のイオンと,半径 R の回収円周を示す.緑の ⊙ は +z 方向の一様磁場 B を表す.青の直線矢印は時刻 0 の電場 E_0 e_x,青の円弧矢印は角振動数 ω の時計回りの電場回転を表す.電極は模式的に描く. xy 平面の原点で静止する電荷 q > 0,質量 m のイオンと,半径 R の回収円周を示す.緑の ⊙ は +z 方向の一様磁場 B を表す.青の直線矢印は時刻 0 の電場 E_0 e_x,青の円弧矢印は角振動数 ω の時計回りの電場回転を表す.電極は模式的に描く.
  1. ローレンツ力で w の微分方程式を作り,δ≠0 で解け.δ→0 の速度と,速さが増す理由も求めよ.

  2. g=z+w/(iΩ) と定義します.g(t) とその大きさの上限を求めよ.共鳴での到達時間の主要項と,非共鳴で回収されない十分条件を求めよ.

  3. q=e,質量 40u,42u の2種を同時に入れ,軽い方に共鳴させます.B=0.40T,R=2.5×10−2m,E0=1.0×102Vm−1,e=1.60×10−19C,1u=1.66×10−27kg で到達時間と重い方の距離上限を求めよ.選別可能な E0 の上限も求めよ.

  4. h=6.63×10−34Js,c=3.0×108ms−1 として,軽いイオンの回収時の波長と R の比を見積もり,軌道と非相対論の近似を確かめよ.

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考え方

一様場で複素速度を解き,旋回中心の移動も数える.

  1. mdvxdt=q(Ex+Bvy),mdvydt=q(Ey−Bvx).a0=qE0/m とおけば

dwdt+iΩw=a0e−iωt,w=e−iΩt∫0ta0eiδsds=a0iδ(e−iωt−e−iΩt).

|w|=2a0|sin⁡(δt/2)|/|δ|.共鳴では w=a0te−iΩt となる.電場と速度が同方向で,仕事率 qE⋅v=qE0a0t>0 が K=ma02t2/2 を増やす.磁場は仕事をしない.

  1. dzdt=w より dgdt=a0e−iωt/(iΩ).積分して

g=−a0Ωω(1−e−iωt),|g|≤2a0Ωω=2E0Bω.

z=−w/(iΩ)+g より,共鳴では |z| は E0t/B に近い.従って tR≃BR/E0 で,誤差は最大 2/Ω.ϵ=E0/(BΩR) を小さいとした.非共鳴では

|z|≤2E0B(1|δ|+1ω).

右辺が R 未満なら回収されない.

  1. ω=Ω40=9.64×105s−1,|δ42|=4.59×104s−1.従って tR≃1.0×10−4s,重い方の距離上限の計算値は 1.14125×10−2m で,有効数字2桁では 1.1×10−2m.丸め前の上限も R 未満である.十分条件から

E0<BR2(1/|δ42|+1/ω)≃2.2×102Vm−1.

弱電場ほど到達は遅い.

  1. 回収時の速さは v≃Ω40R=2.4×104ms−1.λ=h/(mv)≃4.1×10−13m,λ/R≃1.7×10−11 で,波長は小さい.さらに v/c≃8.0×10−5,ϵ≃0.010 で両近似は整合する.初期の広がりも R,mΩR より小さく,衝突間の平均自由時間は tR より十分長いことが要る.

総合演習 40

オリジナル ★★★★★

短絡で変わる共振と受電の最適負荷

直列回路は抵抗 R1,コイル L1,可変容量 C と電圧源 V(t)=V0cos⁡ωt です.相互インダクタンス M>0 で結合した二次コイル L2 を抵抗 R2 で閉じます.固定した線形コイルで,M2<L1L2 とします.相互項はともに +MdIdt となる電流の正方向を採用します.定常状態を扱い,寄生容量,放射,巻線抵抗を無視します.

一次は抵抗 R_1,コイル L_1,可変容量 C,交流電圧源 V(t) = V_0 cos ωt の直列回路である.二次はコイル L_2 と抵抗 R_2 の閉回路で,相互インダクタンスは M > 0 である.巻き方向の対応をコイル端子の黒丸で示し,両コイルの黒丸端子へ流れ込む向きを電流の正方向として矢印で示す. 一次は抵抗 R_1,コイル L_1,可変容量 C,交流電圧源 V(t) = V_0 cos ωt の直列回路である.二次はコイル L_2 と抵抗 R_2 の閉回路で,相互インダクタンスは M > 0 である.巻き方向の対応をコイル端子の黒丸で示し,両コイルの黒丸端子へ流れ込む向きを電流の正方向として矢印で示す.
  1. 複素電流の連立式と,入力の Zin を求めよ.二次の発熱を一次の実効抵抗 r で表せ.

  2. 共振を Im⁡Zin=0 と定義します.R2→0,∞ の共振角振動数を求め,比べよ.

  3. L1=0.040H,L2=M=0.010H,ω=1.0×103s−1,R1=2.0Ω,V0=8.0V を保ち,R2 を変えるたびに C を共振へ調整します.受電電力最大の負荷と容量をすべて求めよ.

  4. 二次電力を電源の平均電力で割った値を効率とします.効率最大の負荷,効率,二次の電力を求め,電力最大の条件と比較せよ.

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考え方

複素振幅と eiωt の実部を使う.集中定数回路とし,二次を消去する.

  1. インピーダンス iωL,1/(iωC) を用いると

V0=(R1+iωL1+1iωC)I^1+iωMI^2,0=(R2+iωL2)I^2+iωMI^1.

二次から I^2=−iωMI^1/(R2+iωL2).従って

Zin=R1+i(ωL1−1ωC)+ω2M2R2+iωL2,r=ω2M2R2R22+ω2L22.

二次の発熱は P2=R2|I^2|2/2=r|I^1|2/2.一次の発熱との和が供給電力である.

  1. 短絡極限では誘導項が −iωM2/L2 となる.従って

ωs=1C(L1−M2/L2),ωo=1CL1.

L1L2>M2 より ωs>ωo である.短絡は磁束変化を打ち消す.

  1. 共振では I^1=V0/(R1+r) が実数で,

P2=V02r2(R1+r)2,dP2dr=V02(R1−r)2(R1+r)3.

最大は r=R1.x=R2/(ωL2) なら r=10x/(1+x2)Ω,drdx=10(1−x2)/(1+x2)2Ω.従って最大 r=5.0Ω>R1 は x=1 で実現する.r=R1 は x2−5x+1=0,根は x=(5±21)/2.共振容量は

C=1ω2[L1−ω2M2L2/(R22+ω2L22)].

解は約 (2.1Ω,33×10−6F),(48Ω,25×10−6F).ともに P2,max=V02/(8R1)=4.0W,効率 1/2 である.

  1. 効率は η=r/(R1+r) で,r とともに増す.最大は R2=ωL2=10Ω,r=5.0Ω,従って ηmax=5/7≃0.71.このとき C≃29×10−6F,P2≃3.3W.効率は高いが,電力は減る.結合を0にすると r,P2→0 となる.集中定数近似には装置寸法 ℓ に対し 1≫ωℓ/c が必要で,調整後は過渡現象の減衰を待つ.