問いしるべ
問いから始める物理 全範囲の総合演習

全範囲の総合演習

電磁気の総合問題(2)

著者:柚木芹香

静電場,荷電粒子の運動,磁束の保存,共振の測定の4題です.電磁気(第20〜24章)を力学と測定(第14章)に組み合わせ,安定の限界や補償の条件を調べます.

総合演習 41

オリジナル ★★★★☆

鏡像への引力で支持が失われる

接地した導体平面を z=0 とし,高さ h に永久電気双極子を置きます.固定電荷 ±q を長さ a の剛体棒で結び,p=qa は一定です.p は xz 平面内で +z 方向と角 θ をなします.1≫a/h とし,双極子の場を

E=ker3[3(p⋅n)n−p],ke=14πε0

と与えます.r は距離,n は観測方向の単位ベクトルです.導体は即座に応答し,損失を無視します.

  1. 鏡像双極子の位置・モーメントと,相互作用エネルギー U(h,θ) を求めてください.無限遠を基準とし,電荷を0から増して係数を確かめてください.

  2. 高さ一定の安定な向きと鉛直力を求めてください.

  3. 向きを θ=0 に固定し,高さ可変の支持装置を付けます.重力を含む装置の上向き合力は κ(h0−h) です.安定条件と限界高さを求めてください.κ=0.20Nm−1,h0=0.040m,ke=8.99×109Nm2C−2 で限界の p も求めてください.

接地した導体平面 z=0 の上に,長さ a の棒で電荷 ±q を結んだ双極子を置く.中心の高さ h と,+z 方向からの角 θ を示す.右は小問(3)の θ=0 の設定で,支持装置の基準高さ h₀ と与えられた上向き合力 κ(h₀−h) を示す. 接地した導体平面 z=0 の上に,長さ a の棒で電荷 ±q を結んだ双極子を置く.中心の高さ h と,+z 方向からの角 θ を示す.右は小問(3)の θ=0 の設定で,支持装置の基準高さ h₀ と与えられた上向き合力 κ(h₀−h) を示す.
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考え方

実電荷一定,導体電位0で,誘導電荷を含むエネルギーを微分する.接地線の仕事は0である.

  1. 鏡像は電荷の符号を反転して位置を平面で反射するから,中心は z=−h,p′=−psin⁡θex+pcos⁡θez.実物の中心で

Eim=kep8h3(sin⁡θex+2cos⁡θez).

実電荷を s 倍すれば誘導電位も s 倍である.実電荷の自己エネルギーを除く仕事は,∑jqjVim(rj)=−p⋅Eim より

U=−∫01sdsp⋅Eim=−kep216h3(1+cos2⁡θ).

鏡像を実物と数えると2倍になる.

  1. U は θ=0,π で最小,π/2 で最大だから,平面に垂直な向きが安定である.そこで U=−kep2/(8h3) を微分して

Fz=−∂U∂h=−3kep28h4.

負号は導体への引力を表す.

  1. D=3kep2/8 とおけば F=κ(h0−h)−D/h4.つり合いは D=κ(h0−h)h4,0<h<h0 を満たす.右辺の微分は κh3(4h0−5h) なので最大は h∗=4h0/5.つり合いで dFdh=κ(4h0/h−5) より,h>h∗ の枝が安定である.従って

0<p<p∗,p∗2=8κ3keh05(4h05)4.

数値は p∗=7.1×10−10Cm.等号では合力が近傍で負となり,下へのずれを戻せない.p→0 の安定な高さは h0 に戻る.近似には a/h が小さいことが必要である.

総合演習 42

オリジナル ★★★★★

加速管の偏向を二つの磁場で補う

長さ ℓ の真空管で,電荷 +e,質量 m のイオンを原点から静かに放します.管軸を x とし,一様電場 Eex と横磁場 Bez を加えます.出口 x=ℓ で許すずれは b,管内でも |y|≤b が必要です.相互作用と端の場を無視し,a=eE/m,Ω=eB/m,B>0 とします.

  1. 速度と位置を時刻の関数として求め,出口に到達する条件を求めてください.到達時刻を tf とし,α=Ωtf で |y(tf)|/ℓ を表してください.壁の条件も調べてください.

  2. 小さい b/ℓ に対する磁場上限を求めてください.ℓ=0.40m,b=0.0020m,出口エネルギー Kf=eEℓ=8.0×103eV,m=6.64×10−27kg,e=1.60×10−19C で計算してください.1eV=1.60×10−19J,c=3.00×108ms−1 とし,非相対論的な近似を確認してください.

  3. 前半 0<x<ℓ/2 の磁場を B1,後半を B2 とします.磁場の1次で出口変位を0にする B2/B1 を求めてください.出口の横速度も0になりますか.

管軸 x に沿う一様電場 E と,+z 方向の磁場 B を示す.電荷 +e,質量 m のイオンは原点で静止している.管の長さは ℓ,管軸から壁までの距離は b である.下図では x=ℓ/2 を境に前半の磁場 B₁ と後半の磁場 B₂ の領域を示す. 管軸 x に沿う一様電場 E と,+z 方向の磁場 B を示す.電荷 +e,質量 m のイオンは原点で静止している.管の長さは ℓ,管軸から壁までの距離は b である.下図では x=ℓ/2 を境に前半の磁場 B₁ と後半の磁場 B₂ の領域を示す.
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考え方

磁場は仕事をしない.補償では早く受けた横向きの力ほど変位に寄与する.

  1. 運動方程式は dvxdt=a+Ωvy,dvydt=−Ωvx.u=vx+ivy とすれば dudt+iΩu=a,初速度0から u=a(1−e−iΩt)/(iΩ).成分を分けて積分すると

vx=aΩsin⁡Ωt,vy=aΩ(cos⁡Ωt−1),x=aΩ2(1−cos⁡Ωt),y=aΩ2(sin⁡Ωt−Ωt).

最大の x は 2a/Ω2 なので

B≤2mEeℓ,1−cos⁡α=Ω2ℓa,|y(tf)|ℓ=α−sin⁡α1−cos⁡α,0<α≤π.

等号では出口で vx=0 となり折り返す.vy≤0 だから出口のずれが最大である.

  1. t0=2ℓ/a,vf=2Kf/m,s=Ωt0 とおく.到達式から α≃s,前問の比の分子・分母はそれぞれ α3/6,α2/2 なので,ずれの比は s/3.s=3b/ℓ,t0=2ℓ/vf より上限は

Bmax≃3mvfb2eℓ2=4.8×10−4T.

vf=6.2×105ms−1,s=0.015 で小さい.m(vx2+vy2)/2=eEx にも合い,vf/c=0.0021 なので非相対論的である.

  1. 1次では vx=2ax.mdvydt=−eB(x)vx を位置で積分し,変位を積分すると

vy(x)=−em∫0xB(u)du,y(ℓ)=−2em2a∫0ℓB(u)(ℓ−u)du.

前半と後半の重みは ℓ3/2(1/2−1/(32)),ℓ3/2(−1/6+1/(32)).これらと B1,B2 の積の和を0にして

B2=−(1+22)B1,vy(ℓ)=−eℓ2m(B1+B2)=eℓ2mB1.

横速度は補償されない.近似には maxj|eBjt0/m| が小さいことが必要で,途中の最大変位も壁の制限内とする.

総合演習 43

オリジナル ★★★★★

磁気圧とつり合っても円筒は止まらない

長さ ℓ,初半径 r0,全質量 Ms の薄い導体円筒で,長さ一定,壁全体が同じ動径速度で動く模型です.内部の軸方向磁場は一様に B0,外部は0で,磁束は壁の円周電流で保たれます.電源はなく,抵抗,弾性,端の場を無視します.初め留め具で静止させ,時刻0に留め具を外すと同時に一定外圧 pe>B02/(2μ0) を加えます.

  1. ファラデーの法則で磁束保存を示し,半径 r での磁場,磁場エネルギー,磁気圧を求めてください.一定にする量も示してください.

  2. 等圧点の半径 re と,散逸なしで最初に内向き運動が止まる半径 rt を求めてください.B0=0.80T,r0=0.020m,ℓ=0.30m,pe=1.0×106Pa,μ0=4π×10−7NA−2 で両半径と折り返し時の磁場を計算してください.

  3. 弱い機械的減衰を加え,静止までの発熱を求めてください.外圧の仕事を含めてください.

薄い導体円筒の初半径 r₀,長さ ℓ,全質量 M_s,内部の一様な軸方向初磁場 B₀ を示す.外部の磁場は0である.一定外圧 p_e は壁の内向きに作用する.断面の両矢印は壁が動径方向に動く模型を表す. 薄い導体円筒の初半径 r₀,長さ ℓ,全質量 M_s,内部の一様な軸方向初磁場 B₀ を示す.外部の磁場は0である.一定外圧 p_e は壁の内向きに作用する.断面の両矢印は壁が動径方向に動く模型を表す.
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考え方

磁束一定の場と外圧の仕事を合わせる.等圧でも速度は残る.減衰は磁束を壊さない機械的散逸とする.

  1. 動く壁に沿って一周した E+v×B の積分は完全導体では0.ファラデーの法則から dΦdt=0,従って Φ=πr2B=πr02B0.

B=B0r02r2,UB=B2πr2ℓ2μ0=Φ2ℓ2μ0πr2.

磁束一定での力 −dUBdr=Φ2ℓ/(μ0πr3) を側面積 2πrℓ で割れば pm=B2/(2μ0) となる.

  1. p0=B02/(2μ0) とおく.p0(r0/re)4=pe から re=r0(p0/pe)1/4.外圧の仕事は peπℓ(r02−r2) なので

Msd2rdt2=2πrℓ(pm−pe),12Ms(drdt)2+UB+peπℓr2=(p0+pe)πℓr02.

折り返しでは z=r2/r02 により p0/z+pez=p0+pe,すなわち (z−1)(pez−p0)=0.別の根から

rt=r0p0pe<re,Bt=B0pep0.

等圧点で内向き速度が最大となり,慣性で通過する.数値は re=0.014m,rt=0.010m,Bt=3.1T.

  1. Ueff=UB+peπℓr2 の最小値は 2πℓr02p0pe.従って発熱は

Q=πℓr02(pe−p0)2=93J.

外圧の仕事から磁場エネルギーの増加を引いた値である.pe→p0 で両半径は r0,発熱は0となる.近似には壁厚と半径の比,r/ℓ,電磁場の伝播時間と運動時間の比が小さいことが必要である.有限抵抗なら観測時間と磁束減衰時間の比も小さくなければならない.

総合演習 44

オリジナル ★★★★☆

共振の頂点では振幅計が鈍くなる

電圧源 V0cos⁡ωt に抵抗 R,コイル L(x)=L0(1+ηx),容量 C を直列につなぎます.x は試料の変位,η は未知で,ω2L0C=1 に固定します.V0=6.0V,R=20Ω,L0=0.010H,C=1.0×10−8F とし,校正誤差は無視します.H=V^R/V0 とし,V^R は抵抗電圧の複素振幅です.定常状態を測り,コイル・試料の損失と測定器の負荷を無視します.

  1. 複素インピーダンスから H を求めてください.δ=(L−L0)/L0=ηx,Q=ωL0/R として,振幅の変化と直交成分の変化が δ の何次から始まるか比べてください.直交成分は入力に対する虚部です.

  2. 両端2点を直線化して η を求め,模型との整合を確かめてください.

x/(10−6m)

ReH

ImH

−20

0.96154

0.19231

0

1.00000

0.00000

20

0.96154

−0.19231

  1. 振幅の減少と直交成分を ΔV=3.0×10−4V まで検出できます.原点付近の最小変化率・変位を両方式で比べ,変化の符号も判別できるか答えてください.

電圧源 V₀ cos ωt,抵抗 R,コイル L(x)=L₀(1+ηx),容量 C を直列につなぐ.抵抗の両端に電圧測定端子を設け,試料の変位 x を添える.ω²L₀C=1 に固定する.下図は入力を実軸とする複素平面の両軸である. 電圧源 V₀ cos ωt,抵抗 R,コイル L(x)=L₀(1+ηx),容量 C を直列につなぐ.抵抗の両端に電圧測定端子を設け,試料の変位 x を添える.ω²L₀C=1 に固定する.下図は入力を実軸とする複素平面の両軸である.
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考え方

ZL=iωL,ZC=1/(iωC) を使う.電圧は複素振幅に eiωt を掛けた実部である.

  1. Z=R+i(ωL−1/(ωC)),I^=V0/Z,V^R=RI^.z=Qδ とおけば

H=11+iz=1−iz1+z2,|H|=11+z2,ImH=−z1+z2.

小さい |z| に対し 1−|H|≃z2/2,ImH≃−z.振幅は2次,直交成分は1次である.数値は ω=1.0×105s−1,Q=50.

  1. A=ReH,D=ImH として

Y=Im1H=−DA2+D2=Qηx.

表の両端で Y≃−0.200,0.200.傾きは 0.400/(40×10−6m)=1.00×104m−1 なので η=200m−1.原点で Y=0,全点で Re(1/H)≃1 となり,模型と合う.損失増加なら後者も変わる.

  1. ϵ=ΔV/V0=5.0×10−5 とする.振幅方式では 1−1/1+z2=ϵ より

|δ|A=(1−ϵ)−2−1Q≃2ϵQ=2.0×10−4.

直交成分方式は |z|/(1+z2)=ϵ の原点に近い根で,|δ|P≃ϵ/Q=1.0×10−6.|x|=|δ|/|η| より最小変位はそれぞれ 1.0×10−6m,5.0×10−9m.直交成分は約200倍敏感で,虚部から δ の符号も分かる.近似に要る |Qδ| は両限界で 0.010,5.0×10−5 と小さい.1/H を用い,δ=0 で H=1 に戻ることも確かめられる.