問いしるべ
問いから始める物理 全範囲の総合演習

全範囲の総合演習

力学の総合問題(1)

著者:柚木芹香

回転する装置,天体の衝突,光の圧力の測定,棒の衝突の4題です.第5・6・8・10章の保存則を土台に,第7章の振動,第14章の測定,第25章の波,第26・29章の光を組み合わせます.拘束と境界の条件から,模型がどこまで使えるかも調べます.

総合演習 21

オリジナル ★★★★☆

筐体が回ると内部の時計はどう進むか

鉛直な同軸の筐体と回転子の慣性モーメントは J0,J,地上からの角度は β,α です.ねじりばねのエネルギーは κ(α−β)2/2 です.軸の位置は固定し,摩擦を無視します.重力の軸まわりのトルクは0です.S=J+J0 とし,ドットは時間微分です.

筐体,回転子,ばねを上から描く.角度 \(\alpha,\beta\) と地上へつなぐばね \(K\) を示す. 筐体,回転子,ばねを上から描く.角度 \(\alpha,\beta\) と地上へつなぐばね \(K\) を示す.
  1. 筐体固定時の周期 T0 と,自由な系の相対角 q=α−β の周期 T を求めよ.自由な系を α(0)=a,β(0)=0,両角速度0から放した後の両角度も求めよ.

  2. 自由な場合のエネルギーを相対運動で表せ.J0=4J の時計が,内部振動の1周期を T0 と数えるとき,経過時間を実際の何倍と表示するか.

  3. 筐体を地上へねじりばねでつなぎ,Kβ2/2 を加える.基準角振動数と,その2乗の K/κ の1次までの近似を求めよ.自由時の周期はどちらに受け継がれるか.

解答を見る

考え方

摩擦のない線形ばねの模型で,総角運動量から相対角の慣性を求める.

  1. 固定時は Jα¨=−κα より T0=2πJ/κ.自由な場合は

Jα¨=−κq,J0β¨=κq,q¨=−κ(1J+1J0)q.

したがって Jr=JJ0/S,Ω=κ/Jr とおけば T=2πJr/κ,q=acos⁡Ωt.初めの総角運動量が0なので Jα+J0β=Ja は一定であり,

α=JaS+J0aScos⁡Ωt,β=JaS(1−cos⁡Ωt).
  1. 総角運動量0より α˙=J0q˙/S,β˙=−Jq˙/S.運動エネルギーに代入して

E=12Jrq˙2+12κq2=12κa2.

J0=4J では T/T0=4/5.実時間 t の表示は tT0/T,約 1.12 倍に進む.

  1. 筐体へ −Kβ を加え,α=Acos⁡ωt,β=Bcos⁡ωt を代入すると

(κ−Jω2)A−κB=0,−κA+(κ+K−J0ω2)B=0.

D=κS+JK,x=ω2 とおけば,非零の振幅がある条件と根は

JJ0x2−Dx+κK=0,ω±2=D±D2−4JJ0κK2JJ0.

K=0 の根は0と Ω2.根の積 κK/(JJ0) より ω−2≃K/S.根の和 D/(JJ0) から引き,ϵ=K/κ の1次まで求めると

ω−2≃KS,ω+2≃κSJJ0+KJJ0S.

低い振動は A≃B の全体回転,高い振動は JA+J0B≃0 の内部振動で,時計の周期は後者に受け継がれる.展開には 1≫ϵ が必要で,K→0 で振動数は0と Ω に戻る.

総合演習 22

オリジナル ★★★★☆

重力が広げる天体の衝突断面積

質量・半径 M,R の球形天体へ,質量・半径 m,r の天体が遠方の相対速さ u で接近します.相対位置の原点と遠方の軌道の直線との距離を衝突径数 b とします.接触前は万有引力だけが働き,変形,自転,散逸を無視します.中心間距離 d=R+r で衝突と数えます.

遠方の相対軌道の直線,速さ \(u\),衝突径数 \(b\),曲がった軌道を描く.接触距離 \(R+r\) を示す. 遠方の相対軌道の直線,速さ \(u\),衝突径数 \(b\),曲がった軌道を描く.接触距離 \(R+r\) を示す.
  1. 保存則から衝突する最大の b と断面積 σ を求めよ.標的を固定した計算との違いも示せ.

  2. 同じ m,r,u の天体が数密度 n で一様に分布し,衝突は独立とする.時間 dt の衝突確率を Γdt として,未衝突確率,平均待ち時間,衝突確率が半分となる時間を求めよ.(M,m)=(2.0,1.0)×1030kg,(R,r)=(8.0,5.0)×108m,u=8.0×104ms−1,n=2.0×10−40m−3,G=6.67×10−11m3kg−1s−2,1yr=3.16×107s で数値も求めよ.

  3. 数密度を半分ずつ,速さ u/2,3u/2 の集団に分けると衝突率はどう変わるか.単一速さの場合の衝突率を最小にする速さも求め,低速ほど衝突が減るとは限らない理由を述べよ.

解答を見る

考え方

無散逸の孤立二体運動を解き,断面積と遠方の流束を掛ける.

  1. 換算質量は mr=Mm/(M+m).接触ぎりぎりの軌道は最近接距離 d で半径方向の速度0となる.接線方向の速さを vd とすると

12mru2=12mrvd2−GMmd,mrbu=mrdvd.

vd2=u2+2G(M+m)/d を角運動量の式へ代入して

bmax2=d2(1+2G(M+m)du2),σ=πd2(1+w2u2),w2=2G(M+m)d.

b≤bmax で接触する.固定標的の GM は G(M+m) に変わる.

  1. 遠方の体積 σudt に含まれる個数より Γ=nσu=nπd2(u+w2/u).未衝突確率は dP0dt=−ΓP0,P0(0)=1 より P0=e−Γt.平均待ち時間は ∫0∞tΓe−Γtdt=1/Γ,半分になる時間は t1/2=ln⁡2/Γ.

数値は Γ=4.2×10−15s−1 より,平均 7.6×106yr,半分になる時間 5.3×106yr.

  1. それぞれの nσv を足すと

Γmix=nπd22[u2+3u2+w2(2u+23u)]=nπd2(u+4w23u).

逆数の平均が変わり,率は約 1.3 倍になる.dΓdu=nπd2(1−w2/u2) が負から正に変わる u=w で最小.低速側では重力集束が流束の減少を上回る.孤立二体近似には 1≫nbmax3 が必要で,u→0 の発散を延ばせるとは限らない.今回は約 1.5×10−10 である.

総合演習 23

オリジナル ★★★★★

光の運動量と温度上昇でパルスを測る

慣性モーメント J,ねじり定数 κ の振り子に,軸から距離 d の小鏡を付けます.ω=κ/J,T=2π/ω とします.初め静止した鏡へ垂直に,腕とも垂直な光パルスを入射します.エネルギー E の反射率は R,透過は0で,吸収分は熱容量 Ch の受光部を温めます.小角で腕の変化,減衰,熱損失,熱変形トルク,鏡の運動による光のエネルギー変化を無視します.光の運動量はエネルギーを c で割った値です.

吊り線,腕の長さ \(d\),鏡への垂直入射と反射,温度計を描く.時間幅 \(\tau\) の一定パワーのパルスも添える. 吊り線,腕の長さ \(d\),鏡への垂直入射と反射,温度計を描く.時間幅 \(\tau\) の一定パワーのパルスも添える.
  1. 瞬間的な照射の角力積,角振幅 A,温度上昇 ΔT を求めよ.測定から E,R を決める式と,模型と両立する条件も導け.

  2. J=1.50×10−5kgm2,T=6.00s,d=0.0400m,Ch=10.0JK−1,c=3.00×108ms−1 とする.測定値 A=3.40×10−5rad,ΔT=0.240K から E,R を求めよ.独立な A,ΔT の標準不確かさが1 %,2 %で,他の量は正確とする.推定値の標準不確かさも求めよ.偏微分と各標準不確かさの積の2乗を足し,平方根を取ってよい.

  3. 同じエネルギーを時間幅 τ の一定パワーで与える.照射中の角度と消灯後の振幅,τ=T/3 の倍率,瞬間的な式の誤差が約1 %以下となる条件,τ=T の測定の限界を求めよ.

解答を見る

考え方

小角で熱損失を除き,熱と角力積を連立する.有限時間の照射には復元トルクを入れる.

  1. 吸収光は (1−R)E/c,反射光は 2RE/c の運動量を渡す.角力積 Λ と熱量 H は

Λ=d(1+R)Ec,A=ΛJω,H=ChΔT=(1−R)E.

B=cJωA/d=(1+R)E とおくと

E=B+H2,R=B−HB+H.

正の E では B>0,0≤H≤B が 0≤R≤1 と同値である.

  1. B=4.0055J,H=2.400J より E=3.20J,R=0.251.不確かさは sB=0.01B,sH=0.02H なので

sE=12sB2+sH2=0.0313J,sR=2H2sB2+B2sH2(B+H)2=0.0105.

後者には ∂R∂B=2H/(B+H)2,∂R∂H=−2B/(B+H)2 を用いた.振動エネルギーの比 Jω2A2/(2E)≃3.0×10−15 は,光のエネルギー変化を捨てる近似と整合する.

  1. N0=Λ/τ とおくと,照射中は Jθ¨+κθ=N0.初期値0より

θ(t)=N0κ(1−cos⁡ωt),θ˙(t)=N0ωκsin⁡ωt.

消灯時の位置と速度から

Aτ=θ(τ)2+θ˙(τ)2ω2=2N0κ|sin⁡ωτ2|=ΛJω|sin⁡zz|,z=ωτ2.

τ=T/3 の倍率は 33/(2π)=0.827.小さい z で sin⁡z/z≃1−z2/6 より,相対補正は (ωτ)2/24.約1 %以下には τ/T≤0.078 が目安になる.τ=T では消灯時に原点で静止し,熱だけでは E,R を分けられない.短時間近似には 1≫ωτ,全体には小角 1≫|θ| と小さい熱損失が必要である.

総合演習 24

オリジナル ★★★★★

異なる材料の棒を,波の往復時間で組み合わせる

断面積 S の細い棒1,2を滑らかな水平面で一直線に衝突させます.棒1は右向きの速さ u,棒2は静止し,端面は平らです.密度,ヤング率,長さは ρj,Yj,Lj.軸方向変位 ξ の微小ひずみと引張応力を ε=∂ξ∂x,σ=Yjε とする1次元模型です.横運動,塑性変形,散逸を無視し,接触は圧縮力だけを伝え,両外端は自由です.

棒1と棒2の長さ,断面積,初速度を描く.接触面と外側の自由端を区別する. 棒1と棒2の長さ,断面積,初速度を描く.接触面と外側の自由端を区別する.
  1. 縦波の速さ vj=Yj/ρj を導け.Zj=ρjvj として,反射波が戻る前の共通接触速度 v∗ と圧縮応力の大きさ p∗ を求めよ.

  2. L1/v1=L2/v2=ta とする.自由端の反射から接触終了時刻と最終速度を求め,力積とエネルギーを検算せよ.

  3. ρ1=8.00×103kgm−3,Y1=2.00×1011Pa,ρ2=2.70×103kgm−3,Y2=9.72×1010Pa,L1=0.200m,S=2.00×10−5m2,u=6.00ms−1 とする.L2,接触時間,応力,最終速度を計算せよ.弾性限界は棒1で 1.20×108Pa,棒2で 8.00×107Pa として u の上限も求めよ.長さの条件を外しても同じ最終速度になるか.

解答を見る

考え方

1次元線形弾性の模型で自由端の反射を追い,内部振動を除く.

  1. 微小部分の両端の応力差から

ρjSdx∂2ξ∂t2=S∂σ∂xdx,∂2ξ∂t2=Yjρj∂2ξ∂x2.

波速は vj=Yj/ρj.棒2では質量 ρ2Sv2t が0から v∗ へ加速され,力積との等式 ρ2Sv2tv∗=p∗St より p∗=Z2v∗.棒1も同様に p∗=Z1(u−v∗).したがって

v∗=Z1Z1+Z2u,p∗=Z1Z2Z1+Z2u.
  1. 圧縮波は ta に両自由端へ着く.応力0の条件から,反射波は圧縮応力を p∗ だけ減らし,速度を棒1で −p∗/Z1,棒2で +p∗/Z2 だけ変える.反射波は 2ta に接触面へ戻り,

v1f=v∗−p∗Z1=Z1−Z2Z1+Z2u,v2f=v∗+p∗Z2=2Z1Z1+Z2u.

v2f−v1f=u>0 なので離れる.それまでの力は p∗S.質量 mj=ρjSLj=SZjta を使うと

m1(u−v1f)=m2v2f=2p∗Sta,12m1v1f2+12m2v2f2=12m1u2.

後式は Z1(Z1−Z2)2+4Z12Z2=Z1(Z1+Z2)2 より成立する.最後は無応力で各棒の速度も一様となる.

  1. (v1,v2)=(5.00,6.00)×103ms−1 より L2=0.240m.Z2/Z1=0.405 から 2ta=8.00×10−5s,p∗=6.92×107Pa,(v1f,v2f)=(2.54,8.54)ms−1.

低い弾性限界から umax=(8.00×107Pa)(Z1+Z2)/(Z1Z2)=6.94ms−1.長さの条件を外すと片側の反射が先に戻り,応力が変わる.内部振動が残り得るため,剛体の弾性衝突式を使えない.今回は p∗/Yj が約 3.5×10−4,7.1×10−4,u/vj も小さく,線形化と整合する.1次元模型には横寸法と長さの比も小さいことが必要で,Z1=Z2 なら速度交換に戻る.