問いしるべ
問いから始める物理 電磁誘導と交流

電磁誘導と交流

運動起電力と導体の運動の演習

著者:柚木芹香

仕事と電気エネルギーを結び付けます.回路自身の磁場と摩擦を無視します.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

水平なレールの間隔は l=0.30m,左端を結ぶ抵抗は R=1.8Ω です.他は無抵抗です.導体棒を右へ v=2.0ms−1 で動かします.磁場は下向きで B=0.60T です.

  1. 棒のどちらの端へ正電荷が押されるか,電流の向きと大きさを求めよ.

  2. 等速を保つ外力とその仕事率を求め,抵抗の発熱と比較せよ.

レール,抵抗,棒と速度を上から描く.棒の上側をA,下側をDとし,磁場を示す. レール,抵抗,棒と速度を上から描く.棒の上側をA,下側をDとし,磁場を示す.
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考え方 電荷への力と棒への力を分けて調べる.

  1. 正電荷はAへ,棒内の電流はDからAへ流れる.上から見て反時計回りである.起電力は E=Blv=0.36V,電流は I=E/R=0.20A である.

  2. 棒への磁気力は左向きで IBl.外力は右向きに F=IBl=0.036N,仕事率は Fv=0.072W.I2R=0.072W となる.外力がエネルギーを与え,Fv=IE の次元も仕事率で一致する.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

長さ l=0.400m の棒を,棒にも磁場にも垂直に動かし,静止したレールと高抵抗の電圧計で起電力を測ります.棒と磁場も互いに垂直で,電圧計の正端子は運動によって正電荷が押される側につなぎます.電流は無視します.読みには一定のずれ Vb が加わります.

v[ms−1]

0.500

1.000

1.500

V[V]

0.132

0.252

0.372

  1. V と v の関係から B,Vb を求めよ.

  2. 両端の値で,各読みの誤差が 0.003V 以下なら,B の誤差の最大値はいくらか.l,v の誤差は無視せよ.

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考え方 傾きと切片で磁場と計器のずれを分ける.

  1. V=Blv+Vb.傾きは (0.372−0.132)/(1.500−0.500)=0.240Vsm−1 より,B=0.240/0.400=0.600T.切片は Vb=0.132−0.240×0.500=0.012V.

  2. 差の誤差は最大 0.006V なので,|δB|≤0.006/(0.400×1.000)=0.015T.速度反転で起電力の符号が変わり,切片は残る.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

横幅 a,縦の辺の長さ l,全抵抗 R の長方形コイルを右へ一定速度 v で動かします.0<x<w の帯状領域だけに紙面奥向きの一様磁場 B があり,w>a です.時刻0に右辺が x=0 に達します.

  1. 反時計回りを正として,電流を時刻で場合分けせよ.

  2. 通過中の総発熱量と外力の総仕事を求めよ.境界の幅は無視せよ.

帯状磁場とコイル,辺a,lと速度v,境界x=0,wを描く. 帯状磁場とコイル,辺a,lと速度v,境界x=0,wを描く.
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考え方 磁場との重なり面積の変化を追う.

  1. 紙面手前を正の法線とすると,進入中の磁束は Φ=−Blvt.よって E=−dΦdt=Blv である.電流は

I={Blv/R0<t<a/v,0a/v<t<w/v,−Blv/Rw/v<t<(w+a)/v.

退出中は重なる面積が減るため符号が逆になる.

  1. 通電時間は 2a/v.したがって Q=(Blv/R)2R(2a/v)=2B2l2av/R.進入・退出とも磁気力は左向きに B2l2v/R であり,外力が働く距離は合計 2a.仕事も W=2B2l2av/R=Q となる.完全に磁場内なら両辺の起電力が相殺する.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

面積 S,巻数 N の長方形コイルを一様磁場 B の中で角速度 ω で回します.正の法線と磁場の角は ωt で,静止した抵抗を含む全抵抗は R です.

  1. 起電力と電流を複素振幅の実部で表せ.虚数単位は i.

  2. t=0 から t1=π/(2ω) までに流れる電荷と発熱量を求めよ.

回転軸,コイルと摺動接点,抵抗を描く.磁場,正の法線と角ωtを示す. 回転軸,コイルと摺動接点,抵抗を描く.磁場,正の法線と角ωtを示す.
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考え方 磁束を微分し,Z=R を使う.

  1. 磁束の総和は NSBcos⁡ωt.よって E=NSBωsin⁡ωt.E0=NSBω とおくと,複素振幅は E^=−iE0,I^=−iE0/R.各値は E^eiωt,I^eiωt の実部である.

  2. 積分すると q=∫0t1Idt=E0/(Rω)=NSB/R.また

Q=E02R∫0t1sin2⁡ωtdt=E02R[t2−sin⁡2ωt4ω]0t1=πN2S2B2ω4R.

q は回転の速さに依存せず,Q は遅く回すほど減る.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

間隔 l の水平レール上の質量 m の棒を,ばね定数 k のばねで固定壁につなぎます.端は抵抗 R>0 で結ばれ,それ以外の抵抗は0です.面に垂直な一様磁場の大きさは B>0 です.自然長からの変位を x とし,x(0)=A>0,v(0)=0 で放します.

  1. 減衰振動となる B の条件と x(t) を求めよ.

  2. (1)の減衰振動の条件を満たす場合,次の静止までの発熱量を求めよ.

壁,ばね,棒と抵抗,磁場を描く.自然長からの変位xと初期変位Aを示す. 壁,ばね,棒と抵抗,磁場を描く.自然長からの変位xと初期変位Aを示す.
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考え方 速度に比例する磁気力を減衰力とする.

  1. I=Blv/R より磁気力は −B2l2v/R.b=B2l2/R とおくと md2xdt2+bdxdt+kx=0.x=est を代入すれば ms2+bs+k=0.b2<4mk,すなわち B2<2Rmk/l2 で根は −γ±iΩ,ただし γ=b/(2m),Ω=k/m−γ2.初期条件から

x=Ae−γt(cos⁡Ωt+γΩsin⁡Ωt),v=−AkmΩe−γtsin⁡Ωt.
  1. 次の静止は t∗=π/Ω,x(t∗)=−Ae−γπ/Ω.力学的エネルギー E=mv2/2+kx2/2 は dEdt=−bv2=−I2R を満たす.したがって Q=kA2(1−e−2γπ/Ω)/2.B→0 では発熱が0となる.回路長を d,光速を c として dmax(γ,Ω)/c が1より十分小さいことが近似条件である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

間隔 l の水平レールの端を容量 C のコンデンサーで結び,質量 m の棒を置きます.一様磁場 B は面に垂直です.初め静止,電荷0で,抵抗は無視します.一定の右向き外力 F で動かし,時刻 t1 にコンデンサーとの接続を開きます.切断の力積は無視します.

  1. 接続中の加速度,速度,正極板の電荷を求めよ.

  2. t1 までの外力の仕事の収支と,切断後の加速度を求めよ.

棒,レール,コンデンサーと直列スイッチを描く.右向きの外力Fと磁場を示す. 棒,レール,コンデンサーと直列スイッチを描く.右向きの外力Fと磁場を示す.
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考え方 起電力が電荷を決め,充電電流が棒を制動する.

  1. q/C=Blv より q=CBlv,I=dqdt=CBla.運動方程式は ma=F−IBl なので,m∗=m+CB2l2 とおけば a=F/m∗,v=Ft/m∗,q=CBlFt/m∗.

  2. x=Ft2/(2m∗).v1=Ft1/m∗,q1=CBlv1 とすると

Fx(t1)=F2t122m∗=12mv12+q122C.

切断後は I=0,q=q1,加速度は F/m.速度は連続である.追加項は質量の次元を持つ.電荷再分布時間と外力の立ち上がり時間の比が十分小さい近似であり,切替えの細部は扱わない.

ポイント 教える人へ

  • 電荷への力,電流,棒への力を順に問う.

  • 一様磁場内のコイルの両辺の起電力を比べさせる.

  • 複素振幅の実部で電流の符号を確認する.

  • 発熱と蓄積エネルギーを区別し,近似の時間尺度も説明させる.