問いしるべ
問いから始める物理 仕事とエネルギー

仕事とエネルギー

ニュートンダイアグラムの計算

著者:柚木芹香

この節では,作図に使う数学の道具を確かめ,数値を与えてニュートンダイアグラムを描き,衝突後の速度を読みます.

定理 数学の道具:内分点,タレスの定理,余弦定理・正弦定理

内分点 速度空間では,点の位置ベクトルがそのまま速度である.線分 AB(位置ベクトル a,b)を s:t に内分する点 X は,x=a+ss+t(b−a) すなわち

x=ta+sbs+t

である.重心 V=m1v1+m2v2m1+m2 は t=m1,s=m2 の場合で,A1G:GA2=m2:m1,重い方の点に寄る.

タレスの定理 円の直径 AB と円周上の点 X について ∠AXB=90∘.中心を C とすると CA=CB=CX で,三角形 CAX,CBX は二等辺三角形.底角を α,β とすると,三角形 ABX の内角の和 2α+2β=180∘ から ∠AXB=α+β=90∘ である.円周角の定理(円周角は中心角の半分)の,中心角が 180∘ の場合にあたる.

余弦定理・正弦定理 三角形 OGB で OG=V,GB=r,∠OGB=γ,θ=∠GOB とする.OB→=OG→+GB→ で,2つのベクトルのなす角は 180∘−γ だから

OB2=V2+r2+2Vrcos⁡(180∘−γ)=V2+r2−2Vrcos⁡γ,rsin⁡θ=OBsin⁡γ

である(B から直線 OG へ下ろした垂線の長さを rsin⁡γ と OBsin⁡θ の2通りに書くと,右の式が出る).速度空間では,OB が速さ,θ が向きを表す.

練習 1.

  1. m1=1.0kg,m2=3.0kg,v1=(8.0,0)ms−1,v2=(0,4.0)ms−1 のとき,G の座標と A1G:GA2 を求めよ.

  2. OG=5.0,GB=3.0,γ=60∘ のとき,OB と θ を求めよ.

答え:(1) V=1.0⋅(8.0,0)+3.0⋅(0,4.0)4.0=(2.0,3.0).A1G=45,GA2=5 で,比は 3:1=m2:m1. (2) OB2=25+9−15=19 より OB≈4.4.sin⁡θ=3sin⁡60∘19≈0.60.GB<OG で θ は鋭角だから θ≈37∘.

練習 2. (1) 2辺の長さが 3.0 と 5.0 で,その間の角が 120∘ の三角形の残りの辺の長さを求めよ.(2) この三角形で,長さ 3.0 の辺に向かい合う角を正弦定理で求めよ.

答え:(1) 余弦定理で c2=9.0+25−2×3.0×5.0cos⁡120∘=49,c=7.0.(2) sin⁡α=3.0sin⁡120∘7.0≈0.37.最大の角が 120∘ なので α は鋭角で,α≈22∘.

ABの内分点X,直径ABに対する円周角,三角形OGBの辺V,rと角γ,θを示す. ABの内分点X,直径ABに対する円周角,三角形OGBの辺V,rと角γ,θを示す.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

なめらかな水平面上で,質量 2.0kg の球Aが速さ 6.0ms−1 で,静止した質量 1.0kg の球Bに弾性衝突する.重心系での散乱角が χ=90∘ のとき,ニュートンダイアグラムを描いて,衝突後のAとBの速さと,Aの元の進行方向に対する向きを求めよ.

O=A₂とA₁=(6.0,0)のみを与え,Gと円は読者が描く. O=A₂とA₁=(6.0,0)のみを与え,Gと円は読者が描く.
解答を見る

考え方 進行方向を x 軸に取り,A1=(6.0,0),A2=O とする.G と2つの円を描き,三角形で読む.

V=2.03.0×6.0=4.0ms−1,G は (4.0,0).vrel=6.0 で,円の半径は A 側が 1.03.0×6.0=2.0,B 側が 2.03.0×6.0=4.0(O を通る).χ=90∘ なので,B1 は G の真上 2.0,B2 は G をはさんで真下 4.0 の点である.

三角形 OGB1(OG=4.0,GB1=2.0,直角)から

vA後=4.02+2.02≈4.5ms−1,tan⁡θ=2.04.0 ⟹ θ≈27∘

三角形 OGB2(OG=GB2=4.0,直角)から

vB後=4.02≈5.7ms−1,φ=45∘

である.Aは上向き 27∘,Bは下向き 45∘ に進む.

確かめ:成分は (4.0,2.0),(4.0,−4.0) で,運動量 (12,0) と運動エネルギー 36J が衝突前と一致する.

G=(4.0,0),半径2.0と4.0の円.B₁=(4.0,2.0),B₂=(4.0,−4.0)をOから読む. G=(4.0,0),半径2.0と4.0の円.B₁=(4.0,2.0),B₂=(4.0,−4.0)をOから読む.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平面上で,質量 1.0kg の円板A,Bが衝突する.衝突前の速度は A が (4.0,0)ms−1,B が (0,3.0)ms−1 である.

Aは右へ4.0 m s⁻¹,Bは上へ3.0 m s⁻¹で衝突する直前.衝突後は描かない. Aは右へ4.0 m s⁻¹,Bは上へ3.0 m s⁻¹で衝突する直前.衝突後は描かない.
  1. 衝突でくっついて一体になるとき,衝突後の速度と,失われる運動エネルギーを求めよ.

  2. 衝突後の相対速さが衝突前の 0.6 倍で,散乱角が χ=90∘(相対速度を反時計回りに回す向き)のとき,衝突後のAとBの速さと向き,失われるエネルギーを求めよ.

解答を見る

考え方 速度空間に A1=(4.0,0),A2=(0,3.0) を打つ.等質量なので G は中点 (2.0,1.5) である.vrel=(4.0,−3.0),vrel=5.0ms−1,μ=0.50kg.

  1. B1=B2=G なので,速度は V=(2.0,1.5),速さ 2.5ms−1,x 軸から 37∘ 上向きである.失われるエネルギーは

12μvrel2=12⋅0.50⋅5.02≈6.3J

で,初めの運動エネルギー 12.5J の半分である.

  1. vrel を反時計回りに 90∘ 回すと (3.0,4.0),0.6 倍して w=(1.8,2.4).等質量なので m2M=m1M=12 で

vA後=V+12w=(2.9,2.7),vB後=V−12w=(1.1,0.3)

Aの速さは 2.92+2.72≈4.0ms−1,向きは x 軸から 43∘.Bの速さは 1.12+0.32≈1.1ms−1,向きは 15∘ である.失われるエネルギーは

12μ(1−0.62)vrel2=12⋅0.50⋅0.64⋅25=4.0J

である(衝突後の運動エネルギーは 8.5J).

G=(2.0,1.5)を中心とする半径2.5の円が1.5へ縮み,B₁=(2.9,2.7),B₂=(1.1,0.3)となる. G=(2.0,1.5)を中心とする半径2.5の円が1.5へ縮み,B₁=(2.9,2.7),B₂=(1.1,0.3)となる.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平面上で,質量 1.0kg の球Aが速さ 8.0ms−1 で,静止した質量 3.0kg の球Bに弾性衝突した.衝突後,Bは Aの元の進行方向から 60∘ の向きに飛び出した.衝突後のAとBの速さ,Aの進む向き,重心系での散乱角 χ を求めよ.

Aが右へ8.0 m s⁻¹で入射し,Bの反跳方向は下へ60°と観測された.Aの方向と両球の速さは未記入. Aが右へ8.0 m s⁻¹で入射し,Bの反跳方向は下へ60°と観測された.Aの方向と両球の速さは未記入.
解答を見る

考え方 Bは静止していたので,Bの円は O を通る.タレスの定理でBの速さが決まり,G が B1B2 を 3:1 に内分することでAが決まる.

進行方向を x 軸に取る.V=1.04.0×8.0=2.0,G は (2.0,0).円の半径は A 側が 6.0,B 側が 2.0.B 側の円は O を通り,その直径の O と反対の端を D=(4.0,0) とする.

Bの速さ:タレスの定理で ∠OB2D=90∘,また ∠B2OD=60∘ だから

vB後=OB2=ODcos⁡60∘=4.0×0.50=2.0ms−1

B2=2.0(cos⁡60∘,−sin⁡60∘)≈(1.0,−1.73) である.

Aの速度:B1G:GB2=3:1 なので B1=G+3(G−B2)≈(5.0,5.2).

vA後=5.02+5.22≈7.2ms−1,tan⁡θ=5.25.0 ⟹ θ≈46∘

Aは上向き 46∘ に進む.

散乱角:三角形 OGB2 は GO=GB2 の二等辺三角形で底角が 60∘ だから ∠OGB2=60∘.G から O への向きは A1 への向きの反対,B2 は B1 の反対側なので,χ=∠OGB2=60∘ である.

確かめ:三角形 OGB1(OG=2.0,GB1=6.0,γ=120∘)に余弦定理を使うと OB12=4+36+12=52 で一致する.エネルギーは 12⋅52+12⋅3.0⋅2.02=32J=12⋅1.0⋅8.02 で保存している.

的の小円の直径ODとタレスの直角を使う.χ=60°,反跳角φ=60°で,B₁=(5,3√3),B₂=(1,−√3)となる. 的の小円の直径ODとタレスの直角を使う.χ=60°,反跳角φ=60°で,B₁=(5,3√3),B₂=(1,−√3)となる.

ポイント ここまでのまとめ

  • G は A1A2 も B1B2 も m2:m1 に内分する.静止した的の円は O を通り,タレスの定理から的の速さが反跳角で決まる.

  • 三角形 OGB に余弦定理・正弦定理を使えば,衝突後の速さと向きが読める.

  • 衝突後の速度は V+m2Mw,V−m1Mw.w は vrel を χ 回して k 倍したもので,失われるエネルギーは 12μ(1−k2)vrel2 である.