問いしるべ
問いから始める物理 対称性から組み立てる力学(発展)

対称性から組み立てる力学(発展)

対称性と保存則の演習

著者:柚木芹香

ラグランジアンを変えない動かし方と保存量を対応させてください.全微分だけ変わる場合も調べます.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

質量 m の粒子が,外から与えられた場 U=k(x2+2y2)/2 の中を動きます.k>0 は定数です.

  1. ラグランジアンと3つの一般化運動量を書いてください.

  2. 座標軸に沿う平行移動,座標軸のまわりの回転,時刻のずらしのうち,連続な対称性と対応する保存量を答えてください.

xy平面の位置エネルギーの等しい楕円を2本と,紙面に垂直なz軸を描く.xとyの向きを示す. xy平面の位置エネルギーの等しい楕円を2本と,紙面に垂直なz軸を描く.xとyの向きを示す.
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考え方 場を固定し,変換でL が変わるかを調べる.

  1. L=m(x˙2+y˙2+z˙2)/2−k(x2+2y2)/2,px=mx˙,py=my˙,pz=mz˙.

  2. z 方向の平行移動と時刻のずらしが残る.したがって pz と E=m(x˙2+y˙2+z˙2)/2+k(x2+2y2)/2 が保存する.x,y 方向の平行移動と,どの座標軸のまわりの小さな回転でもU が変わる.角運動量の保存は一般には言えない.

確かめ:mx¨=−kx,my¨=−2ky から M˙z=xmy¨−ymx¨=−kxy となる.180度の回転は離散対称性なので,本体の定理の対象ではない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

外から影響を受けない3粒子が,相互の距離だけによる位置エネルギーを持ちます.全質量を M,全運動量を P,重心位置を R とします.ある慣性系で,t=0 の R は (1.0,0,0)m,M=4.0kg,P=(2.0,−4.0,0)kgms−1 でした.

  1. 時空の対称性による10個の保存量を列挙してください.

  2. t=3.0s の重心位置を求めてください.内部の運動によらない理由も説明してください.

三角形を作る3粒子と重心Gを描き,慣性系のx,y軸と初めの全運動量の向きだけを示す. 三角形を作る3粒子と重心Gを描き,慣性系のx,y軸と初めの全運動量の向きだけを示す.
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考え方 重心の運動には,ガリレイ変換の保存量を使う.

  1. 時間の一様性から E の1個,空間の一様性から P の3成分,等方性から M の3成分,ガリレイの相対性から B=MR−Pt の3成分で,合計10個.時空の対称性が保証する10個であり,全員が独立とは限らない.

  2. B=MR(0) なので

R(t)=R(0)+PMt

より R(3.0s)=(2.5,−3.0,0)m.距離だけの相互作用はガリレイ変換で変わらず,内部の運動は重心を加速しない.

確かめ:重心速度は (0.50,−1.0,0)ms−1.その3秒分の変位と一致する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

平面内の粒子のラグランジアンが L=m(x˙2+y˙2)/2−f(2x−y) です.f はなめらかな任意の関数です.

  1. x→x+ε,y→y+2ε が対称性であることを示し,保存量を求めてください.

  2. s=(x+2y)/5,n=(2x−y)/5 に座標を変え,保存量の意味を説明してください.

2x−yが一定の平行な直線を描き,それに沿うs軸と垂直なn軸,粒子を示す. 2x−yが一定の平行な直線を描き,それに沿うs軸と垂直なn軸,粒子を示す.
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考え方 2方向の移動を組み合わせるとU が変わらない.

  1. 変換後も 2x−y は同じで,速度も変わらない.ηx=1,ηy=2,Λ=0 から Q=px+2py=m(x˙+2y˙) が保存する.

  2. これは座標軸の回転なので,L=m(s˙2+n˙2)/2−f(5n).s は循環座標で,ps=ms˙ が保存し,Q=5ps である.場の等しい直線に沿う運動量が保存する.

確かめ:元の座標の方程式は mx¨=−2f′(2x−y),my¨=f′(2x−y).足し合わせると Q˙=mx¨+2my¨=0 になる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

L0=mx˙2/2−kx2/2 に,F=atx の全微分を加えた L1=L0+atx˙+ax を考えます.a は力の次元を持つ定数です.

  1. L1 の運動方程式,一般化運動量 p1,E1=p1x˙−L1 を求めてください.

  2. E1 自体は保存しません.保存量を見つけ,運動の法則には時間の一様性が残る理由を説明してください.

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考え方 全微分は運動を変えないが,p とE の表示は変える.

  1. p1=mx˙+at,∂L1/∂x=−kx+a なので,mx¨+a=−kx+a,すなわち mx¨=−kx.また

E1=12mx˙2+12kx2−ax

となる.

  1. 微分すると E˙1=(mx¨+kx)x˙−ax˙=−ax˙.したがって E1+ax=mx˙2/2+kx2/2 が保存する.L1 において時刻を ε ずらしたときの変化は aεx˙=εd(ax)/dt だけである.作用の変化は端点だけで決まり,運動の法則は変わらない.

確かめ:a=0 なら p1=mx˙,E1=E0 に戻る.p1 は,この表示では粒子の通常の運動量と一致しない.時間を含まないという条件は十分条件である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

L=m(x˙2−ω2x2)/2 の系で,x→x+εcos⁡ωt を考えます.ε は小さな長さ,ω>0 は定数です.

  1. ε の1次までで δL を求め,Λ=−mωxsin⁡ωt の全微分になることを示してください.

  2. 保存量 Q1 を求めてください.さらに x→x+εsin⁡ωt から保存量 Q2 を求め,x(0)=x0,x˙(0)=v0 の運動を再現してください.

横軸t,縦軸xの図に任意の経路と,そこへ小さな余弦波を加えた経路を描く.両端固定の変分とは区別する. 横軸t,縦軸xの図に任意の経路と,そこへ小さな余弦波を加えた経路を描く.両端固定の変分とは区別する.
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考え方 両端固定の変分とは区別し,任意の経路上でL の変化が全微分となることを示す.

  1. δx˙=−εωsin⁡ωt なので,δL/ε=−mωx˙sin⁡ωt−mω2xcos⁡ωt=Λ˙.

  2. p=mx˙ より Q1=mx˙cos⁡ωt+mωxsin⁡ωt.正弦波の変換では Λ=mωxcos⁡ωt だから Q2=mx˙sin⁡ωt−mωxcos⁡ωt.初期条件から Q1=mv0,Q2=−mωx0.2式を組み合わせて

x=Q1sin⁡ωt−Q2cos⁡ωtmω=x0cos⁡ωt+v0ωsin⁡ωt

と運動を復元できる.

確かめ:微分して t=0 を代入すると v0 に戻り,x¨=−ω2x も満たす.この相互作用には,時空の対称性以外の対称性もある.

ポイント 教える人へ

場を固定したまま何を動かすかを説明させてください.演習1では離散対称性と連続対称性,演習4ではL の表示と運動の法則を区別します.演習5の変換と両端固定の変分では目的が違うことも問いかけてください.