問いしるべ
問いから始める物理 原子核と素粒子

原子核と素粒子

原子核の構成と大きさの演習

著者:柚木芹香

陽子数と核子数を区別し,長さ・体積・質量がどう対応するかを確かめます.力の強さを比較するときは,同じ距離で比べることと,相互作用の届く範囲に注意してください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

核の半径を R=r0A1/3 とします.未知の核Xは陽子と中性子を同数含み,半径が A=192 の核の半径の 1/2 です.核YはXと同じ陽子数で,中性子を2個多く含みます.

  1. XとYの原子番号 Z,質量数 A を求め,同位体か答えてください.

  2. YとXの体積比と電荷の比を求めてください.

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考え方 半径比を3乗すると質量数の比になる.電荷を決めるのは核子数でなく陽子数である.

  1. AX=192(1/2)3=24.陽子と中性子が同数なので ZX=12.Yは ZY=12,AY=26 となる.原子番号が同じで質量数が異なるので同位体である.

  2. 体積比は RY3/RX3=AY/AX=26/24=13/12.電荷は両方 12e だから比は1である.RY/RX=(13/12)1/3>1 となり,中性子の追加で電荷を変えずに半径が増すことも確かめられる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

中性子星を質量 M=2.4×1030kg,半径 R∗=1.30×104m の球とします.比較用の核物質は R=r0A1/3,質量 Am0 に従う一様な球とし,r0=1.20×10−15m,m0=1.66×10−27kg とします.一般相対論による補正は扱いません.

  1. 星の平均密度と核物質の密度の比を求めてください.

  2. 核物質と同じ平均密度で質量 M の球を作ると,半径はいくらになりますか.星の各点の密度も分かりますか.

半径R_*,質量Mの中性子星と,半径R,質量Am_0の一様な核物質の球.2つの図の縮尺は共通でない. 半径R_*,質量Mの中性子星と,半径R,質量Am_0の一様な核物質の球.2つの図の縮尺は共通でない.
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考え方 平均密度は全質量を全体積で割る.平均値は内部の分布を指定しない.

  1. 星では ρ∗=3M/(4πR∗3)=2.61×1017kgm−3.核物質では R3=r03A だから ρ0=3Am0/(4πr03A)=2.29×1017kgm−3.比は ρ∗/ρ0=1.14 となり,質量 M の精度に合わせれば約1.1倍である.

  2. Req=(3M/(4πρ0))1/3=1.36×104m≈1.4×104m.星の各点の密度は求められない.計算に使った核物質の一様性と,星の平均値の比較は別の仮定である.質量を8倍にすれば同密度の半径は2倍となり,体積の次元も合う.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

核半径の測定結果を表に示します.1fm=10−15m です.R=r0Aα という模型の指数と係数を調べてください.

A

R(fm)

27

3.60±0.04

64

4.80±0.04

125

6.00±0.04

  1. 中央の測定値を使い,最初の2点から α と r0 を決め,3点目を検証してください.対数を取ったグラフの軸も指定してください.

  2. α=1/3 と確定した後,3点目だけで求める r0 の不確かさを求めてください.核物質の密度 ρ0∝r0−3 の相対不確かさも1次までで求めてください.

横軸ln A,縦軸ln(R/(1 fm))に,Aが27,64,125の測定点と半径の誤差棒を置いた図. 横軸ln A,縦軸ln(R/(1 fm))に,Aが27,64,125の測定点と半径の誤差棒を置いた図.
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考え方 べき乗の関係は対数で直線になる.不確かさは指数が既知か未知かを区別して伝える.

  1. α=ln⁡(4.80/3.60)/ln⁡(64/27)=1/3.よって r0=3.60/271/3fm=1.20fm.3点目の予測は 1.20×1251/3fm=6.00fm で一致する.指定の対数グラフでは ln⁡(R/(1fm))=ln⁡(r0/(1fm))+αln⁡A となる.

  2. r0=R/5 なので δr0=0.04/5fm=0.008fm.微分から |δρ0|/ρ0≈3δr0/r0=0.020,約2.0 %である.評価は δr0/r0=0.0067 が十分小さく,指数と核子質量の不確かさを無視した場合に限る.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

炭素核 (Z1,A1)=(6,12) と酸素核 (Z2,A2)=(8,16) を,無限遠から表面が接するまで近づけます.両核は球対称な電荷分布を持ち,変形せず,半径は Ri=r0Ai1/3,r0=1.20fm です.接するまで核力を無視し,電子はありません.ke=1/(4πε0),kee2=1.44MeVfm,1MeV=1.60×10−13J とします.

  1. 準静的に近づける外力の仕事を求めてください.

  2. 中心間距離を接触距離の2倍にした位置までに,仕事の何割が必要ですか.核子数を固定して片方の陽子数だけを半分にした場合,接触時の仕事はどう変わりますか.

半径R_1,R_2,電荷Z_1e,Z_2eの2核.接触前の中心間距離dと,表面が接した配置を並べる. 半径R_1,R_2,電荷Z_1e,Z_2eの2核.接触前の中心間距離dと,表面が接した配置を並べる.
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考え方 重ならない球対称な電荷分布の相互作用は,中心に集めた点電荷で計算できる.接触距離は半径の和である.

  1. 距離 d の反発力は keZ1Z2e2/d2.接触距離 dc=1.20(121/3+161/3)fm=5.77fm までの仕事は W=∫dc∞keZ1Z2e2d−2dd=keZ1Z2e2/dc.したがって W=12.0MeV=1.92×10−12J である.

  2. d=2dc では W/2 なので5割である.陽子数だけを半分にすると,この半径模型では dc は同じで電荷の積が半分になるため,仕事も半分になる.距離を無限大へ戻すと仕事は0となる.これは電子の遮蔽と核力・変形を省いたクーロン障壁の見積もりである.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

陽子2個の引力を,距離 r≥a で FN=F0e−r/a とする模型で考えます.F0=1.0×103N,a=1.0×10−15m です.電気力は FE=kee2/r2,重力は FG=Gmp2/r2 とします.ke=8.99×109Nm2C−2,e=1.60×10−19C,G=6.67×10−11m3kg−1s−2,mp=1.67×10−27kg を使います.

  1. FE/FG を求め,距離に依存するか調べてください.

  2. s=r/a とおき,FN/FE の最大値とその距離を求めてください.s=1,6 の値も調べ,「強い力なら遠方でも電気力に勝つ」という主張を検討してください.

中心間距離rの陽子2個と,右の陽子に働く反発力F_E,引力F_N,F_G.矢印の長さは力の強さの比を表さない. 中心間距離rの陽子2個と,右の陽子に働く反発力F_E,引力F_N,F_G.矢印の長さは力の強さの比を表さない.
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考え方 逆2乗則どうしの比は一定だが,短距離力との比は距離で変わる.最大値は比を微分して求める.

  1. FE/FG=kee2/(Gmp2)=1.24×1036.r2 が消えるので距離によらず,この2粒子の比較で重力は無視できる.

  2. C=F0a2/(kee2)=4.35 とおくと f(s)=FN/FE=Cs2e−s.dfds=Ce−ss(2−s) は 1≤s<2 で正,s>2 で負なので,最大は r=2a,f(2)=4Ce−2=2.35≈2.4 である.また f(1)≈1.6,f(6)≈0.39 だから,近距離では核力が勝つが,遠方では電気力が勝つ.s→∞ で比が0になることも確かめられる.この模型は r<a の力を指定していないので,その範囲の安定性や実際の核内の運動まで結論してはいけない.

ポイント 教える人へ

  • 半径比を3乗する理由と,電荷を決める粒子を確認させます.

  • 平均密度の一致から内部構造まで決められるか問いかけます.

  • 測定値の誤差と模型の近似を区別し,密度の相対誤差が3倍になる理由を説明させます.

  • クーロン障壁の高さと核力の届く距離を,別の量として図で確かめます.