問いしるべ
問いから始める物理 万有引力と天体

万有引力と天体

軌道の演習

著者:柚木芹香

円と楕円を見分け,近点・遠点の距離を中心から測りましょう.中心天体の質量を M,衛星の質量を m とし,噴射のない区間では万有引力だけが働くものとします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

楕円軌道の近点距離が 2d,遠点距離が 6d である.

  1. 長半径 a,離心率 e,短半径 b を求めよ.

  2. 長半径と同じ半径の円軌道に比べて,周期と力学的エネルギーはどう違うか.

近点距離2d,遠点距離6dの楕円.2つの焦点を示す. 近点距離2d,遠点距離6dの楕円.2つの焦点を示す.
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考え方 近点・遠点の距離の和が長軸の長さであり,天体は楕円の中心ではなく焦点にある.周期とエネルギーは長半径だけで決まる.

  1. a=(2d+6d)/2=4d,e=(6d−2d)/(6d+2d)=1/2.また b2=rpra=12d2 より b=23d.焦点の中心からのずれは ae=2d である.ここで a を近点距離と取り違えないようにする.

  2. 両軌道とも a=4d に対応するため,周期は T=2π(4d)3/(GM),エネルギーは E=−GMm/(8d) で等しい.ただし楕円では速さが場所によって変化し,円では一定である.周期が等しいことは,各点での速さが等しいことや,軌道の周長が等しいことを意味しない.離心率を変えても長半径を保つ限り,この2量は変わらない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

半径 r の円軌道を進む衛星の速さを,瞬間的な接線噴射で v′=3/2GM/r に増やす.

  1. 噴射後の長半径と遠点距離を求めよ.

  2. 遠点での速さと,新旧の周期の比を求めよ.

元の円軌道と,その接線方向に向けた噴射後の既知の速度.新軌道は示さない. 元の円軌道と,その接線方向に向けた噴射後の既知の速度.新軌道は示さない.
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考え方 噴射中に位置は変わらず,噴射後のエネルギーから長半径が求まる.速さが円軌道より大きく脱出速度より小さいので,噴射点は楕円の近点になる.

  1. E′/m=3GM/(4r)−GM/r=−GM/(4r).これを −GM/(2a) と比較して a=2r.近点は rp=r なので,ra=2a−r=3r.実際,噴射直後の動径加速度は v′2/r−GM/r2=GM/(2r2)>0 で,中心距離は増え始める.

  2. 噴射後は L が保存するから rv′=3rva より va=v′/3=GM/(6r).周期は長半径の 3/2 乗に比例するので T′/T=23/2=22.噴射直後に速くなっても,周回の大部分を遠方で過ごすため1周は長くなる.噴射をまたいで角運動量が保存するとしてはいけない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

半径 r の円軌道で接線方向に減速し,速さを v′=2/3GM/r にする.中心天体の半径は R<r である.

  1. 噴射点は近点と遠点のどちらか.新しい近点距離を求めよ.

  2. 地表と接触しないための r の条件を求めよ.

半径Rの天体と半径rの円軌道.噴射後の接線速度だけを示す. 半径Rの天体と半径rの円軌道.噴射後の接線速度だけを示す.
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考え方 減速すると半径一定の円運動を支える速さが不足し,中心距離は減り始める.したがって噴射点は遠点として扱う.

  1. E′/m=GM/(3r)−GM/r=−2GM/(3r) より a=3r/4.遠点距離は ra=r だから rp=2a−r=r/2 である.また噴射直後に r˙=0,r¨=v′2/r−GM/r2=−GM/(3r2)<0 なので,遠点という判断も確認できる.近点速さは角運動量保存から噴射直後の2倍になる.

  2. 接触を避けるには rp>R,すなわち r>2R が必要である.r=2R なら理想的には地表に接するが,接触しないという条件は満たさない.r<2R なら計算上の楕円は地球の内部を通るため,外部の逆2乗力だけで楕円を1周するという予測は適用できない.実際に地表へ達するまでの外部軌道にだけこの解を使える.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

半径 r の円軌道から半径 4r の同一平面・同方向の円軌道へ,ホーマン遷移で移る.vc=GM/r,元の円軌道の周期を Tc とする.

  1. 2回の速度増分とその合計を vc で表せ.

  2. 遷移時間を Tc で表し,外側でも加速が必要な理由を説明せよ.

半径rと4rの円に接する半楕円と2つの噴射点. 半径rと4rの円に接する半楕円と2つの噴射点.
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考え方 遷移楕円の両端の速さと,それぞれの円軌道の速さとの差をとる.噴射は瞬間的とし,飛行時間は楕円の半周期で求める.

  1. a=5r/2 なので,近点で vp2=GM{2/r−2/(5r)}=8vc2/5.遠点では角運動量保存から va=vp/4=vc/10.外側の円速度は vc/2 である.したがって

Δv1=(8/5−1)vc,Δv2=(1/2−1/10)vc

となる.合計は約 0.449vc で,両方とも進行方向への速度増分である.

  1. t=π(5r/2)3/(GM)=12(5/2)3/2Tc≈1.98Tc.遠点速度は約 0.316vc で,そこにとどまる円速度 0.500vc より遅い.2回目を省けば再び内側へ落ちて元の近点へ戻るため,遠点での加速が必要になる.軌道が高くなるにつれ円速度が小さくなることだけから,2回目を減速と判断してはいけない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量の等しい2機の衛星が,同じ長半径 a をもつ別々の楕円軌道を進む.離心率はそれぞれ e1=1/5,e2=3/5 である.

  1. エネルギーと角運動量の大きさの比 E2/E1,L2/L1 を求めよ.

  2. 両衛星が中心距離 r=a を通るとき,速さは同じか.外向きに通る場合の動径速度と接線速度をそれぞれ求めよ.

同じ焦点と長半径aをもち,離心率が1/5と3/5の2軌道.補助円の半径もaである. 同じ焦点と長半径aをもち,離心率が1/5と3/5の2軌道.補助円の半径もaである.
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考え方 エネルギーは速さ全体を決め,角運動量はそのうち接線方向の成分を決める.同じ場所で同じ速さでも,速度の向きまで同じとは限らない.

  1. E=−GMm/(2a) より E2/E1=1.L2=GMm2a(1−e2) より L2/L1=(16/25)/(24/25)=2/3.離心率が大きい方の角運動量は小さい.

  2. v2=GM(2/a−1/a)=GM/a なので,共通の速さを v∗=GM/a と書ける.接線速度は vt=L/(ma)=v∗1−e2.外向きの動径速度は vr=v∗2−vt2=ev∗ である.したがって1機目は (vr,vt)=(v∗/5,26v∗/5),2機目は (3v∗/5,4v∗/5).内向きなら動径成分だけが負になる.エネルギーの等しさだけから軌道が同じだとは結論できない.

ポイント 教える人へ

  • 噴射の前後と,噴射のない区間で保存する量を分けさせる.

  • 速度は軌道の接線方向であり,近点・遠点では位置ベクトルに垂直である.

  • 数学上の近点が地表より内側なら,外部軌道の式の適用範囲を確認させる.

  • 同じエネルギーでも角運動量により軌道の形が変わることが重要である.