問いしるべ
問いから始める物理 万有引力と天体

万有引力と天体

軌道の方程式と保存則の連立

著者:柚木芹香

運動方程式を u=1/r と θ で書き直して軌道の式を導き,それが楕円などの曲線になることを確かめます.また,近点と遠点で角運動量保存とエネルギー保存を連立して,軌道の大きさと速さを決めます.

定理 数学の道具:θ を変数にする微分と軌道の方程式

時刻を消して θ で微分する. L>0(反時計回り)とし,u=1r とおくと,r2θ˙=Lm より θ˙=Lmu2 である.軌道の上では r は θ の関数なので,連鎖律で r˙=drdθθ˙.さらに r=1u を連鎖律で微分して drdθ=−1u2dudθ.合わせると

r˙=−1u2dudθ⋅Lmu2=−Lmdudθ

で,u2 が打ち消し合う.これが u を使う理由である.r˙ をもう一度,θ を通して時間で微分すると

r¨=ddθ(−Lmdudθ)⋅θ˙=−L2m2u2d2udθ2

となる.また rθ˙2=1u⋅L2m2u4=L2m2u3 である.

軌道の方程式. 中心力の er 成分を F として,m(r¨−rθ˙2)=F に入れると

−L2mu2(d2udθ2+u)=F

万有引力 F=−GMmu2 なら,両辺を −L2mu2 で割って d2udθ2+u=GMm2L2=1ℓ である.w=u−1ℓ は d2wdθ2=−w を満たすので,第7章の単振動の一般解と同じく w=Acos⁡(θ−θ0) と書ける.

どんな曲線か. r(1+ecos⁡θ)=ℓ で rcos⁡θ=x だから r=ℓ−ex.両辺を2乗して r2=x2+y2 を使うと

(1−e2)x2+2eℓx+y2=ℓ2
  • e<1:a=ℓ1−e2 とおいて x について平方完成すると,(x+ae)2a2+y2aℓ=1.中心が (−ae,0),長半径 a,短半径 b=aℓ=a1−e2 の楕円で,O は中心から ae ずれた焦点にある.

  • e=1:y2=ℓ2−2ℓx で,放物線.

  • e>1:x2 と y2 の係数の符号が逆になり,双曲線.

練習 1. (1) u が一定の解から,円軌道の半径を求めよ.(2) e=2 の双曲線軌道で,r が限りなく大きくなる θ を求め,物体の進む向きが全体で何度曲げられるかを求めよ.

答え:(1) u=1ℓ より r=ℓ=L2GMm2.(2) 1+2cos⁡θ=0 より θ=±120∘.物体は θ=−120∘ の向きの遠くから来て,θ=120∘ の向きへ去る.来るときの進む向きは −120∘+180∘=60∘ の向き,去るときは 120∘ の向きなので,60∘ 曲げられる.

練習 2. e=0.50 の楕円軌道 r=ℓ1+ecos⁡θ で,r の最小値と最大値を ℓ で表し,その比を求めよ.

答え:θ=0 で rmin=ℓ1.5=23ℓ,θ=180∘ で rmax=ℓ0.50=2ℓ.比は 3.

定理 数学の道具:楕円の幾何と保存則の連立

楕円の幾何. 長半径 a,短半径 b,離心率 e の楕円では rp=a(1−e),ra=a(1+e),rp+ra=2a,b2=a2(1−e2)=rpra.離心率は e=ra−rpra+rp で求められる.

近点・遠点の連立. 質量 M の天体のまわりの質点について,近点と遠点で

rpvp=rava,12vp2−GMrp=12va2−GMra

が成り立つ.第1式で va を消し,1−rp2ra2=(ra−rp)(ra+rp)ra2 を使って ra−rp で割ると

vp2=2GMrarp(ra+rp),va2=2GMrpra(ra+rp)

が得られる.エネルギーは Em=12vp2−GMrp=−GMra+rp=−GM2a で,前の節で軌道の式から出した E=−GMm/2a と一致する.

使い方. 近点の速さを vp とし,k=rpvp2GM(円軌道の速さの2乗との比)とおくと,ra=krp2−k である.1<k<2 が楕円で,k=2 で遠点が無限大になり放物線に変わる.

練習 1. ra=3rp の楕円の a,e,vp/va,および近点の速さが円軌道の速さ GM/rp の何倍かを求めよ.

答え:a=2rp,e=12,vpva=3.vp2=32GMrp より 3/2≈1.22 倍.

練習 2. ra=2rp の楕円について,a,e,vp/va と,近点の速さが GM/rp の何倍かを求めよ.

答え:a=32rp,e=ra−rpra+rp=13,vpva=2.vp2=2GMrp⋅rara+rp=43GMrp より 4/3≈1.15 倍.

例題

地球の GM=3.98×1014m3s−2,半径は R=6.37×106m とする.

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

地球のまわりを楕円軌道で回る衛星の近地点の高度が 300km,そこでの速さが 8.50kms−1 である.

焦点に地球を置く楕円と,両端での接線方向の速度を示す.遠地点の未知の高度は記さない. 焦点に地球を置く楕円と,両端での接線方向の速度を示す.遠地点の未知の高度は記さない.
  1. 遠地点の高度を求めよ.

  2. 遠地点での速さを求めよ.

解答を見る

考え方 k から ra を出し,va=vprp/ra を使う.

  1. rp=6.37×106+3.0×105=6.67×106m.

k=rpvp2GM=6.67×106×(8.50×103)23.98×1014=1.21,ra=krp2−k=1.02×107m

高度は ra−R≈3.9×106m(約 3900km).

  1. va=vprpra=8.50×6.6710.2≈5.5kms−1.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

高度 300km(半径 r1=6.67×106m)の円軌道から,静止衛星の軌道(半径 r2=4.22×107m)へ,ホーマン遷移軌道で移る.加速は瞬間的に接線方向に行う.

2円に接する半楕円と2つの加速点.半径比は指定されたr₂/r₁に合わせた. 2円に接する半楕円と2つの加速点.半径比は指定されたr₂/r₁に合わせた.
  1. 遷移軌道の近地点・遠地点の速さを求めよ.

  2. 2回の加速の Δv1,Δv2 と合計を求めよ.

  3. 遷移にかかる時間を求めよ.

解答を見る

考え方 遷移軌道は近地点 r1,遠地点 r2 の楕円で,円軌道の速さとの差が Δv になる.

  1. 遷移軌道では,rp=r1,ra=r2 だから

vp=2GMr2r1(r1+r2)≈1.02×104ms−1
va=vpr1r2≈1.6×103ms−1
  1. 半径 r1,r2 の円軌道の速さは,それぞれ 7.73×103ms−1,3.07×103ms−1.よって

Δv1=vp−7.73×103≈2.4×103ms−1,Δv2=3.07×103−va≈1.5×103ms−1.合計は約 3.9×103ms−1.

  1. 遷移軌道の長半径は a=r1+r22=2.44×107m.半周するので t=πa3GM≈1.9×104s,約 5.3 時間である.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

太陽のまわりを回る彗星の近日点距離が 0.40 天文単位(地球の公転半径が 1 天文単位),遠日点距離が 40 天文単位である.地球は半径 1 天文単位の円軌道を速さ 29.8kms−1 で公転している.

近日点0.40天文単位,遠日点40天文単位の楕円と,半径1天文単位の地球軌道を同じ縮尺で描いた. 近日点0.40天文単位,遠日点40天文単位の楕円と,半径1天文単位の地球軌道を同じ縮尺で描いた.
  1. 彗星の長半径,離心率,公転周期(年)を求めよ.

  2. 近日点と遠日点での速さを求めよ.

解答を見る

考え方 太陽の質量を知らなくても,地球の公転から GM⊙=vE2×1 天文単位と書ける.周期は地球との比で出す.

  1. a=0.40+402=20.2 天文単位.e=40−0.4040+0.40=0.980.地球(a=1,T=1 年)と第3法則で比べて,T=20.23/2≈91 年.

  2. 地球の公転速さ vE について vE2=GM⊙/(1 天文単位).単位を天文単位でとると

vp2vE2=2rarp(ra+rp)=2×400.40×40.4=4.95 より vp=2.22vE≈66kms−1.遠日点では va=vprpra=66×0.4040≈0.66kms−1.

ポイント ここまでのまとめ

  • r˙=−Lmdudθ(u=1/r)を使うと,運動方程式は d2udθ2+u=1ℓ になり,解 r=ℓ1+ecos⁡θ は e<1 で楕円(a=ℓ1−e2),e=1 で放物線,e>1 で双曲線.

  • 楕円では rp+ra=2a,rpra=b2,e=ra−rpra+rp.

  • 近点・遠点の rpvp=rava とエネルギー保存の連立から,vp2=2GMrarp(ra+rp),E=−GMm2a が得られる.

  • ホーマン遷移では,遷移軌道の速さと円軌道の速さの差が Δv.周期は長半径だけで決まる.

  • 地球の公転との比で,太陽の質量を知らなくても彗星の周期や速さが出せる.