問いしるべ
問いから始める物理 光

光

偏光の例題

著者:柚木芹香

本体の節の2つの考え方(電場を透過軸や入射面に対して成分に分けること,強さは振幅の2乗で決まること)を,偏光板の組み合わせ,水面の照り返し,液晶の画素に使います.どの例題でも,電場の向きを図に書き込んでから計算してください.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

強さ I0 の自然光を,透過軸を鉛直にした偏光板 A に当て,その後ろに透過軸を水平にした偏光板 B を置く.偏光板はすべて理想的とする.

  1. B を通った光の強さを求めよ.

  2. A と B の間に,透過軸が鉛直と角 θ をなす偏光板 C を差し込む.B を通った光の強さを θ の関数で表し,最大になる θ と最大値を求めよ.

  3. θ=30∘ のとき,B を通った光の強さは I0 の何倍か.

強さI_0の自然光が,鉛直な透過軸のA,鉛直と角θをなす透過軸のC,水平な透過軸のBの順に進む.各板の透過軸と,AとCの間,CとBの間の電場の向きを示す.各板と電場の面は光に垂直で,正面から描いて並べている.透過光の強さは示さない. 強さI_0の自然光が,鉛直な透過軸のA,鉛直と角θをなす透過軸のC,水平な透過軸のBの順に進む.各板の透過軸と,AとCの間,CとBの間の電場の向きを示す.各板と電場の面は光に垂直で,正面から描いて並べている.透過光の強さは示さない.
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考え方 自然光は1枚目で半分になる.その後は,板を通るたびに,直前の偏光の向きと透過軸のなす角でマリュスの法則を使う.

  1. A を通った光は強さ I0/2 の鉛直な直線偏光である.B の透過軸とのなす角は 90∘ なので,B を通る強さは I02cos2⁡90∘=0 である.

  2. C を通ると強さは I02cos2⁡θ で,偏光の向きは C の透過軸の向きになる.B の透過軸とのなす角は 90∘−θ なので

I=I02cos2⁡θsin2⁡θ=I08sin2⁡2θ

である.最大は 2θ=90∘,すなわち θ=45∘ のときで,最大値は I0/8 である.

  1. sin2⁡60∘=3/4 より I=332I0≈0.094I0 である.

確かめ:θ=0 なら C は A と同じ向き,θ=90∘ なら B と同じ向きで,どちらも (1) と同じく0になる.光を減らすはずの板を足すと明るくなるのは,C が鉛直な偏光を斜めの偏光に作り直し,B の透過軸に沿う成分を生むからである.偏光板はただの「ふるい」ではなく,通った光の偏光の向きを透過軸の向きに変える.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

晴れた日,湖の岸で水面の照り返しを見る.水の屈折率を n=1.33,空気の屈折率を1とする.照り返しのもとになる空の光は自然光で,水面に入射する強さを I0 とする.入射角がブルースター角のとき,s偏光(電場が入射面に垂直)の強さの反射率は Rs=0.077 である(第26章のフレネルの式から出る値).また,同じ向きから目に届く,水の中から出てきた光の強さを 0.020I0 とし,これは自然光とする.水面は平らとする.

  1. 照り返しが完全な直線偏光になるとき,入射角と,照り返している空の部分の高度(水平面からの角)を求めよ.照り返しの電場はどちらを向いているか.

    1. のとき,裸眼で見た照り返しの強さと,水の中から来る光の強さの比を求めよ.透過軸が鉛直の理想的な偏光サングラスをかけると,それぞれの強さはどうなるか.

  2. サングラスをかけたまま首を 20∘ 傾けた.照り返しと,水の中から来る光の強さの比を求めよ.

空の自然光が法線から角θ_Bで水面に入射する.反射光は岸で偏光サングラスをかけた観測者の目へ進み,屈折光は水中へ進む.空の光の向きの高度は,水面の入射点から空へ向かう方向と水平面との間の弧で示す.電場の向き,角の数値,求める強さは示さない. 空の自然光が法線から角θ_Bで水面に入射する.反射光は岸で偏光サングラスをかけた観測者の目へ進み,屈折光は水中へ進む.空の光の向きの高度は,水面の入射点から空へ向かう方向と水平面との間の弧で示す.電場の向き,角の数値,求める強さは示さない.
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考え方 ブルースター角では反射光はs偏光だけになる.自然光の強さの半分がs偏光である.偏光サングラスは,照り返しの電場の向きと透過軸のなす角でマリュスの法則を使う.

  1. tan⁡θB=1.33 より θB=53.1∘ である.入射角は法線(鉛直)から測った角なので,空の部分の高度は 90∘−53.1∘=36.9∘ である.照り返しはs偏光だけなので,電場は入射面に垂直である.入射面は鉛直な面だから,電場は水平で,見る向きに垂直である.

  2. 自然光のうちs偏光の強さは I0/2 なので,照り返しの強さは

Ir=RsI02=0.077×I02=0.0385I0

である.水の中から来る光 0.020I0 との比は 0.0385/0.020≈1.9 で,照り返しの方が約2倍明るい.サングラスをかけると,照り返しの水平な電場は鉛直な透過軸と直交するので,強さは0になる.水の中から来る光は自然光なので,半分の 0.010I0 が通る.照り返しが消えて,水の中が見えるようになる.

  1. 透過軸は鉛直から 20∘ 傾くので,水平な電場とのなす角は 70∘ になる.照り返しの通る強さは

0.0385I0cos2⁡70∘=0.0385I0×0.117=0.0045I0

である.水の中から来る光は自然光なので,傾けても 0.010I0 のままである.比は 0.0045/0.010≈0.45 で,照り返しが水中の光の半分ほどまで戻ってくる.

確かめ:(3) で傾きを0にすれば照り返しは0,90∘ にすれば 0.0385I0 がすべて通り,(2) の2つの場合に一致する.ここでは入射角がちょうどブルースター角としたが,実際の水面は波で傾きがばらつくので,照り返しにはp偏光も少し混ざり,サングラスでも完全には消えない.それでもブルースター角の前後ではp偏光の反射率がs偏光よりずっと小さいので,大部分を消せる.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

液晶ディスプレイの1つの画素を,次のように模型化する.裏側の光源から強さ I0 の自然光が出て,透過軸が x 方向の偏光板1,液晶の層,透過軸が y 方向の偏光板2を順に通る.液晶の層は,通る直線偏光の向きを角 φ だけ回し,強さは変えないとする.電圧をかけないとき φ=90∘ で,電圧を上げると φ は小さくなり,十分大きな電圧で0になる.偏光板は (3) 以外では理想的とする.

  1. 画素から出る光の強さ I を φ で表せ.電圧をかけないときと十分大きな電圧をかけたときに,画素はそれぞれ明るいか暗いか.

  2. 最も明るいときの 1/4 の明るさを表示するには,φ をいくらにすればよいか.

  3. 実際の偏光板は,透過軸に沿う直線偏光でも強さの 85 %しか通さない.透過軸に垂直な直線偏光は完全に遮るとする.また,色を出すために画素の前にカラーフィルターを置き,フィルターに入射する光の強さの 1/3 だけを通すとする.最も明るいとき,光源の光の何 %が画面から出てくるか.

光源,x方向を通す偏光板1,液晶の層,y方向を通す偏光板2,カラーフィルター,観測者を左から並べる.各層と電場は光に垂直な面の正面図である.問題文で与えた電圧をかけない場合を描き,液晶分子の90°のねじれと各層間の電場の向きを示す.求める強さや角の計算結果は示さない. 光源,x方向を通す偏光板1,液晶の層,y方向を通す偏光板2,カラーフィルター,観測者を左から並べる.各層と電場は光に垂直な面の正面図である.問題文で与えた電圧をかけない場合を描き,液晶分子の90°のねじれと各層間の電場の向きを示す.求める強さや角の計算結果は示さない.
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考え方 偏光板1で自然光は半分の強さの x 偏光になる.液晶で向きが φ 回った直線偏光と,偏光板2の透過軸のなす角を求めて,マリュスの法則を使う.

  1. 偏光板1を通った光は,強さ I0/2 の x 方向の直線偏光である.液晶を通ると,偏光の向きは x 軸と角 φ をなす.偏光板2の透過軸(y 方向)とのなす角は 90∘−φ なので

I=I02cos2⁡(90∘−φ)=I02sin2⁡φ

である.電圧をかけないとき φ=90∘ で I=I0/2,画素は明るい.十分大きな電圧では φ=0 で I=0,画素は暗い.

  1. 最も明るいときは I0/2 なので,sin2⁡φ=1/4,sin⁡φ=1/2 より φ=30∘ である.

  2. 偏光板1で自然光の半分が止められ,さらに透過軸に沿う光の 85 %だけが通る.液晶で 90∘ 回った光は偏光板2の透過軸に沿うので,ここでも 85 %が通る.カラーフィルターで 1/3 になるから,出てくる割合は

12×0.85×0.85×13≈0.12

で,約12 %である.

確かめ:(1) の式は φ の増加とともに0から I0/2 まで単調に増えるので,電圧で φ を連続的に変えれば中間の明るさを作れる.(3) から,液晶ディスプレイでは光源の光の大部分が熱になることが分かる.最初の偏光板で必ず半分を失うのが大きい.ここでは液晶の層が偏光の向きを回すだけとしたが,これは分子のねじれがゆるやかで,複屈折による位相差が十分大きいときの近似である.この条件が崩れると出てくる光は楕円偏光になり,暗い画素が完全には暗くならない.

ポイント ここまでのまとめ

  • 偏光板を何枚も通すときは,1枚ごとに直前の偏光の向きと透過軸のなす角でマリュスの法則を使う.通った光の偏光の向きは透過軸の向きになる.

  • 直交した2枚の偏光板の間に斜めの偏光板を入れると光が通り,45∘ で最大の I0/8 になる.

  • 水面の照り返しはブルースター角の前後で電場が水平な直線偏光になり,透過軸が鉛直の偏光サングラスで消える.首を α 傾けると sin2⁡α の割合が戻る.

  • 液晶の画素は,偏光の向きを回す角 φ を電圧で変え,直交した偏光板で I=I02sin2⁡φ の明暗を作る.