問いしるべ
問いから始める物理 仕事とエネルギー

仕事とエネルギー

ポテンシャル図の演習

著者:柚木芹香

グラフの傾き,谷の深さ,エネルギー線との交点を順に読んでみましょう.図に現れる領域のうち,粒子が実際に行き来できる範囲を説明してください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

粒子のポテンシャルが U(x)=12k(x−a)2 である.k=2.0Nm−1,a=1.0m,粒子の質量は m=1.0kg,全エネルギーは E=4.0J とする.

  1. 動ける範囲と転回点を求めよ.

  2. 速さが最大になる位置とその速さを求めよ.

  3. x=0 における力の向きを求めよ.

放物線とエネルギー線.放物線U=k(x−a)²/2と水平線Eを示している.交点をP,Q,谷底をCとするが,座標や答えは記していない. 放物線とエネルギー線.放物線U=k(x−a)²/2と水平線Eを示している.交点をP,Q,谷底をCとするが,座標や答えは記していない.
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考え方 K=E−U が負にならない範囲を探す.力はエネルギー線との縦の差ではなく,曲線の傾きから読む.

  1. 12k(x−a)2≤E より |x−a|≤2E/k=2.0m.したがって −1.0m≤x≤3.0m である.両端では K=0 となり,力は領域の内側を向くので転回する.

  2. U が最小の x=a で運動エネルギーは最大の 4.0J.vmax=2E/m=8≈2.8ms−1 である.つり合い位置を通過する粒子が静止しているとは限らない.

  3. F=−k(x−a) なので x=0 では F=+2.0N,右向きである.粒子が左へ進んでいる場合は減速し,右へ進んでいる場合は加速する.力の向きだけで進行方向までは決まらない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

x=0 付近で定義された3つのポテンシャル U1=ax4,U2=−ax4,U3=bx3 を考える.a,b>0 である.

  1. 各場合の力を求め,原点がつり合いの位置であることを示せ.

  2. 原点のつり合いの安定性を,少し左右にずらしたときの力から判断せよ.

  3. U″(0)=0 だから中立である,という判断は正しいか.

原点付近の3つのポテンシャル.原点付近のax⁴,−ax⁴,bx³を3つの小グラフに描く.原点に点を打ち,安定性の答えは書いていない. 原点付近の3つのポテンシャル.原点付近のax⁴,−ax⁴,bx³を3つの小グラフに描く.原点に点を打ち,安定性の答えは書いていない.
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考え方 2階微分が0のときは,それだけでは判定できない.元の関数の形や復元力の向きを調べる.

  1. F1=−4ax3,F2=4ax3,F3=−3bx2 で,いずれも原点では0である.

  2. U1 では右へずれると左向き,左へずれると右向きの力が働くので安定である.U2 では左右ともずれを広げる力が働き,不安定である.U3 では原点以外で常に左向きの力が働く.左へわずかにずらして静かに置くと原点から遠ざかるので,不安定である.右側で原点へ向かうことだけを見て安定と呼んではいけない.

  3. どの場合も U″(0)=0 であるのに,安定性は同じではない.中立とは近くへずらして静止させても力が0でそのままとどまれる場合であり,近くでポテンシャルが平らである必要がある.原点で接線が水平というだけでは足りない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

ある滑らかなポテンシャルには,左の谷底A,中央の山頂B,右の谷底Cがあり,その値は順に −4J,2J,−1J である.左右の遠方では U は増大し,ほかにつり合い点はない.

  1. E=0J のとき,左の谷から右の谷へ移れるか.転回点は全体で何個あるか.

  2. E=3J のときはどうか.

  3. 質量 2.0kg の粒子が E=3J で動くとき,AとCでの速さを比較せよ.

左右で深さの異なる谷.左右で深さの異なる二重井戸に,谷底A=−4 J,山頂B=2 J,谷底C=−1 Jを記し,E=0とE=3 Jの線を示している.交点は小さな点だけで示す. 左右で深さの異なる谷.左右で深さの異なる二重井戸に,谷底A=−4 J,山頂B=2 J,谷底C=−1 Jを記し,E=0とE=3 Jの線を示している.交点は小さな点だけで示す.
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考え方 水平なエネルギー線と曲線の交点を数え,U≤E の領域がつながっているかを見る.存在する全ての領域を,一つの粒子が移動できるとは限らない.

  1. 中央の山頂では U=2J>E なので通過できない.左右の谷にはそれぞれ2個ずつ,合計4個の転回点がある.左にいる粒子が往復するのは左側の2点の間だけである.

  2. 山頂でも K=3−2=1J>0 なので,左右の谷を行き来できる.転回点は両外側の2個となる.中央の山頂はつり合い点だが,このエネルギーでは停止点ではない.

  3. Aでは KA=7J,Cでは KC=4J.したがって vA=7≈2.6ms−1,vC=2.0ms−1 で,深い谷のAの方が速い.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

粒子が x>0 の範囲で U(x)=A/x2−B/x のポテンシャルを受ける.A,B>0 で,無限遠で U=0 とする.

  1. つり合い位置 x0 と最小値 Umin を求めよ.

  2. E=−B2/(8A) のときの転回点を求めよ.

  3. 谷底に静止した粒子を無限遠まで運ぶのに必要な最小仕事を求めよ.

逆数のポテンシャルと転回点.U=A/x²−B/xの曲線,谷底C,負のEの水平線と交点P,Qを示す.求める座標は書いていない. 逆数のポテンシャルと転回点.U=A/x²−B/xの曲線,谷底C,負のEの水平線と交点P,Qを示す.求める座標は書いていない.
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考え方 まず微分で谷底を求める.転回点の方程式には x2 を掛けて,2次方程式へ直す.

  1. U′=−2A/x3+B/x2=0 より x0=2A/B.代入して Umin=−B2/(4A).また U″(x0)=2A/x04>0 で安定である.

  2. A−Bx=Ex2 に指定の値を代入すると B2x2−8ABx+8A2=0.よって

x−=(4−22)AB,x+=(4+22)AB

となる.両者は正で,x−<x0<x+.粒子はこの間に束縛される.転回点では力が0ではないため,停止した後は内側へ引き返す.

  1. 無限遠で速さも0になる極限が必要仕事の下限である.Wmin=0−Umin=B2/(4A).無限遠に有限の速さを残すなら,その運動エネルギーの分だけ余分な仕事が必要である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

ポテンシャル U(x)=U0[1−cos⁡(x/L)] の中で,質量 m の粒子を x=0 から右へ速さ v0 で送り出す.U0,L>0 である.

  1. 原点付近の復元力の係数を求めよ.

  2. 12mv02=U0 のとき,原点を含む運動範囲と最大速さを求めよ.

  3. 右隣の山頂 x=πL を速さ0でなく通過するための初速の条件を求めよ.

周期的なポテンシャルの形.U₀[1−cos(x/L)]を−πLから3πLまで示し,E=U₀の線を重ねる.極値と交点に点を打つが,転回点の座標は記していない. 周期的なポテンシャルの形.U₀[1−cos(x/L)]を−πLから3πLまで示し,E=U₀の線を重ねる.極値と交点に点を打つが,転回点の座標は記していない.
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考え方 近似を使う場面と,元の関数を使う場面を区別する.山頂までの大きな移動を,原点近くの放物線で計算してはいけない.

  1. 力は F=−(U0/L)sin⁡(x/L).原点近くでは sin⁡(x/L)≈x/L なので F≈−(U0/L2)x であり,復元力の係数は k=U0/L2.

  2. U=U0 は cos⁡(x/L)=0 を与え,最初の左右の転回点は x=±πL/2.したがってこの区間を往復する.U が最小の原点で速さが最大となり,vmax=2U0/m=v0.別の谷にも許される領域はあるが,山を越えてそこへ移ることはできない.

  3. 山頂の高さは 2U0 なので,通過には 12mv02>2U0,すなわち v0>2U0/m が必要である.等号では山頂で運動エネルギーが0になり,非零の速さで通過する条件を満たさない.

ポイント 教える人へ

  • 図の縦軸は実際の高さではなくエネルギーであると確認する.

  • 速さは縦の差,力は傾きから読むことを対比させる.

  • つり合い点と転回点を混同していないか,そこでの力と速さを別々に尋ねる.

  • 2階微分が0のときは結論を急がず,元の曲線の形へ戻らせる.