問いしるべ
問いから始める物理 力と運動の法則

力と運動の法則

圧力と浮力の演習

著者:柚木芹香

圧力は面を押す強さ,浮力は表面に働く力の合計です.水面,圧力を比べる高さ,液体に入っている体積を図で確かめてから式を立ててください.特に断らない限り,液体は静止し,水の密度は ρw=1.0×103kgm−3,g=9.8ms−2 とします.空気の浮力,糸の体積,表面張力を無視します.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

密度 8.0×102kgm−3 の油を厚さ 0.25m だけ水の上に重ねる.水中の圧力計は,境目から 0.40m 下にある.液面の大気圧を p0=1.0×105Pa とする.

  1. 圧力計の位置の圧力を求めよ.

  2. 圧力計の小さな受圧面を水平から鉛直に回すと,圧力の値は変わるか.

油と水の2層と圧力計を示す模式図. 油と水の2層と圧力計を示す模式図.
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考え方 境目で圧力は連続する.液面から計器まで,層ごとの圧力増加を足す.

  1. p−p0=ρog×0.25+ρwg×0.40=5880Pa だから,p≈1.06×105Pa.計算の内訳を示すため桁を残した.圧力増加は約 5.9×103Pa である.

  2. 同じ位置なら変わらない.静止した流体の圧力は面の向きによらず,力の向きだけが面に垂直な向きへ変わる.ρgh の単位は kgm−1s−2=Pa.油の厚さを0にすれば水だけの式に戻る.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 m=0.12kg,外側の断面積 S=4.0×10−4m2 の密閉した細長い円筒を,鉛直に浮くように下端へおもりを内蔵した密度計として使う.液体に沈む部分の長さを d とする.外側は一様な円筒形で,長さは 0.50m.

  1. 密度 ρ と d の関係を求めよ.水と密度 8.0×102kgm−3 の液体での d を計算せよ.

  2. 密度に等間隔の目盛りをつけると,円筒上でも等間隔になるか.

鉛直に浮く円筒の密度計を示す模式図. 鉛直に浮く円筒の密度計を示す模式図.
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考え方 液体を押しのける体積は Sd.液体の密度が変わっても密度計の重さは変わらない.

  1. ρSdg=mg より d=m/(ρS).水では d=0.30m,もう一方では d=0.375m≈0.38m.どちらも円筒の長さ未満で,液面から上に出る部分がある.

  2. d は ρ の逆数に比例するので等間隔にならない.dddρ=−m/(Sρ2) だから,密度が大きい側ほど目盛りの間隔は狭い.m/(ρS) は長さの次元をもち,密度が大きい液体では浅く沈むという直感とも合う.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

同じ固体をばねばかりでつり,空気中では 2.94N,水に完全に沈めると 1.96N,未知の液体に完全に沈めると 2.16N を示した.固体は容器に触れず,液体を吸収しない.

  1. 固体の体積と密度を求めよ.

  2. 未知の液体の密度を求めよ.

同じ固体を3つの環境でつるを示す模式図. 同じ固体を3つの環境でつるを示す模式図.
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考え方 水中の目盛りは重力から浮力を引いた値である.固体の体積は変わらないので,目盛りの減少の比が液体の密度の比になる.

  1. 質量は m=2.94/9.8=0.300kg.ρwVg=2.94−1.96=0.98N より V=1.0×10−4m3.したがって ρs=m/V=3.0×103kgm−3.

  2. ρ/ρw=(2.94−2.16)/(2.94−1.96)=0.78/0.98 より ρ≈8.0×102kgm−3.力の比は無次元である.目盛りが空気中と等しければ,この模型では液体の密度は0となる.水中でも張力が正なので,糸はたるまない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

体積 V=2.0×10−3m3,密度 ρs=6.0×102kgm−3 の球を水に全部沈め,球から容器の底への鉛直な糸で止める.球の下面には水が回り込み,球は底に触れない.

  1. 糸の張力を求めよ.

  2. 糸を切った直後の球の加速度を求めよ.水の抵抗と,球の加速に伴って周囲の水を動かす効果は無視する模型とする.

底につないだ水中の球を示す模式図. 底につないだ水中の球を示す模式図.
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考え方 浮力が重力より大きいので,糸が下向きに球を引いている.切った直後には,その力だけがなくなる.

  1. 上向きを正にすると ρwVg−ρsVg−T=0.よって T=(ρw−ρs)Vg=7.84N≈7.8N.

  2. m=ρsV=1.2kg だから a=T/m≈6.5ms−2,鉛直上向きである.一般式は a=g(ρw/ρs−1).密度が等しければ張力も加速度も0になる.実際の液体では周囲の水も動くため,(2)は指定した模型での値である.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

断面積が両脚とも S=2.0×10−4m2 のU字管に水を入れ,初めの水面を同じ高さにする.左脚へ,水と混ざらない油(密度 ρo=7.5×102kgm−3)を体積 60cm3 だけ注ぐ.両端は大気に開いており,管は十分に長い.

  1. 左脚の水と油の境目が下がる距離と,右脚の水面が上がる距離を求めよ.

  2. 左の油面と右の水面の高低差を求め,どちらが高いか答えよ.

初めの水面と,左脚へ注ぐ油を示す.注いだ後の液面の高さは図に入れていない. 初めの水面と,左脚へ注ぐ油を示す.注いだ後の液面の高さは図に入れていない.
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考え方 同じ高さの水の圧力を等置するだけでなく,水の体積が変わらない条件も使う.

  1. 油の柱の高さは h=60×10−6/S=0.30m.左の境目が x 下がると,両脚の断面積が等しいので右の水面は x 上がる.境目の高さの圧力は,左では p0+ρogh,右では p0+ρwg(2x) である.よって x=ρoh/(2ρw)=0.1125m≈0.11m.両方ともこの距離だけ動く.

  2. 油面は初めの高さより h−x,右の水面は x 上なので,高低差は h−2x=h(1−ρo/ρw)=0.075m.油面が高い.重力加速度は消え,密度の比と長さだけが残る.密度が等しければ高低差は0で,液面がそろう.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

質量 m=0.50kg,体積 V=1.0×10−3m3 の小さな球を水中に完全に沈め,水槽の左右の底に固定した2本の糸で静止させる.糸が球から下向きに延び,左の糸は鉛直と 30∘,右の糸は鉛直と 60∘ をなす.球は壁と底に触れない.

  1. 左右の糸の張力を求めよ.

  2. 液体の密度を徐々に下げるとき,同じ配置でつり合える密度の下限を求めよ.

下向きの2本の糸で止める球を示す模式図. 下向きの2本の糸で止める球を示す模式図.
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考え方 重力と浮力の差を,2本の糸の鉛直成分で支える.水平成分は互いにつり合う.

  1. 左右の張力を T1,T2 とすると,T1sin⁡30∘=T2sin⁡60∘,T1cos⁡30∘+T2cos⁡60∘=(ρwV−m)g=4.9N.第1式より T1=3T2 で,第2式は 2T2=4.9.したがって T1=2.453≈4.2N,T2=2.45≈2.5N.両方とも正なので,仮定した糸の向きと合う.

  2. 糸は押せないので ρV−m≥0 が必要.下限は ρ=m/V=5.0×102kgm−3.等号では両張力が0で,張った糸で配置を保つにはこれより大きい密度が要る.下限より低いと球は沈み,この配置では静止できない.張力は (ρV−m)g に比例し,単位も力になる.

ポイント 教える人へ

  • 圧力計の向きを変える問いで,圧力と力の向きを区別できるか確かめる.

  • 浮力の体積は,物体全体か沈んだ部分かを毎回指さして答えさせる.

  • U字管では,同じ高さの圧力の条件と,水の体積の条件を別々に説明させる.

  • 糸の張力が負になったら,数値をそのまま採用せず,糸がたるむ条件へ戻らせる.